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環境とエネルギーに関する論文

兵器化されたエネルギー資源
―― 復活した戦略ツールの脅威

2026年1月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア大学国際公共政策大学院 コロンビア・クライメートスクール学院長
ミーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際関係)

ワシントンは、ロシアやイランの石油を購入する国々に厳しい制裁措置を検討し、北京は、半導体、軍事アプリ、電池、再生可能エネルギーに不可欠な重要鉱物やレアアースの輸出を定期的に制限している。いまや、世界市場そのものが分断され、エネルギーが新たに兵器化されている。各国は、エネルギーの兵器化が間違いなく引き起こす変動から市民と企業を守る方法を見いだす必要がある。リスクを減らすには、生産量を増やすだけでなく、消費量を減らし、クリーンエネルギー投資を増やさなければならない。実際、気候変動の脅威そのものよりも、エネルギー安全保障強化の必要性が、クリーンエネルギーの導入と化石燃料の使用削減の強力なインセンティブを作り出すことになるかもしれない。

木材資源と非合法マネー
―― 国際犯罪組織による森林伐採

2025年8月号

ユスティナ・グゾフスカ セントリー エグゼクティブ・ディレクター
ユローラ・フェリス セントリー ディレクター(非合法財務政策対策担当)

森林の違法伐採は、自然環境の破壊にとどまらず、麻薬カルテル、テロ組織、ならず者国家の資金源とされ、いまや国際安全保障上の脅威を作り出している。南米、アフリカ、東南アジアなどを中心に、国家・非国家アクターを問わず悪辣なアクターが違法伐採を試みている。世界の木材取引の15―30%が非合法だとみなす推定もある。違法行為による収益が増大する一方で、その脅威は過小評価されたままだ。各国が違法伐採を真剣に取り締まるまでは、犯罪者たちは森林伐採を通じて資金を調達し続けるだろう。

エネルギー転換の幻
―― 現状認識と現実的アプローチ

2025年6月号

ダニエル・ヤーギン S&Pグローバル副会長
ピーター・オルザグ ラザード社CEO兼会長
アタル・アルヤ S&Pグローバル チーフエネルギーストラテジスト

再生可能エネルギーによる電力生産は増えているが、化石燃料による電力生産も史上最高レベルに達している。しかも、世界人口の8割が暮らすグローバル・サウスでは、「脱炭素化」の前にまず「炭素化」が進むと考えられる。つまり、現在進行しているのは、「エネルギー転換」というよりも、むしろ「エネルギーの追加」に他ならない。実際には、エネルギー転換は、エネルギーだけの問題にとどまらない。それは、世界経済全体を再構築するに等しい。経済成長、エネルギー安全保障、エネルギー・アクセスが関わってくる以上、われわれはより現実的なエネルギー転換の道筋を模索する必要がある。

領土拡張時代の到来
―― 気候変動と土地・資源争奪戦

2025年4月号

マイケル・アルバータス シカゴ大学 政治学教授

気候変動によって、他国による領土征服の脅威が再び地政学の中枢要因に浮上している。温暖化は勝者と敗者を作り出す。例えば、温暖化を追い風にできるカナダやロシアが勝者に、異常気象に苦しむアメリカや中国は敗者になるかもしれない。実際、異常気象による壊滅的な災害に直面しているアメリカは、グリーンランドやカナダの一部を含む北方の国への領土的野心から具体的な行動をみせるかもしれない。気候変動による深刻な脅威に直面する中国も、資源、生活可能な土地、地政学的優位を確保しようと、東南アジアへ侵入し、ロシア東部や北朝鮮の領土さえ奪いとるかもしれない。気候変動のもっとも劇的な影響を経験するのはこれからであり、土地をめぐる競争は始まったばかりだ。

フィッシュ・ウォーズ
―― 水産資源をめぐる紛争

2024年9月号

サラ・グレーザー 世界自然保護基金(WWF) シニア・ディレクター
ティム・ギャローデット 元米商務次官

水産資源は世界に食料を提供し、漁業は何億人もの雇用を生み出し、各国の経済を支えている。だが、気候変動などの要因によって重要な水産資源の漁場が変化しつつあり、これが、漁業セクターにおける違法操業や強制労働の原因となっている。水産資源はますます希少化し、今後が予測できなくなっている。この状況で、水産資源をめぐる争いが負のスパイラルに陥れば、影響は紛争にとどまらなくなる。基幹産業の混乱、エコシステムの破壊、食糧安全保障の劣化、雇用問題の悪化など、より広範な問題を引き起こす恐れがある。いま、政策決定者に求められているのは、チャンスがあるうちに紛争予防のためのアクションをとることだ。

気候変動とポピュリスト
―― 温暖化対策と文化戦争

2024年9月号

エドアルド・カンパネッラ ハーバード大学ケネディスクール リサーチフェロー
ロバート・Z・ローレンス ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際貿易、投資)

ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。

ドイツ経済の試練
―― 改革を阻む構造的要因

2024年4月号

スダ・デービッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ドイツ地域ディレクター兼シニアフェロー
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

ドイツ経済の強さの歴史的源泉が、エネルギー集約的で化石燃料を使用する産業にあることを考えれば、経済構造の移行には官民双方での大規模な投資も、すぐれた労働力も必要になる。だが、現状では、投資を阻む「債務ブレーキ」の制約が行く手を阻み、移民を嫌う右派ポピュリズムが台頭している。経済が停滞しているにも関わらず、厳しい財政ルールと連立政権内の分裂が、ドイツが必要とする規模の改革を阻んでいる。それでも、軍需産業を強化するだけでなく、脱炭素化を加速するグリーン産業、世界経済の未来を形作る新技術に国の資源を投入しなければならない。そして、経済成長を支える移民政策を守る政治的意志を結集する必要がある。・・・

気候変動型災害に備えるには
―― 緩和と適応を連動させよ

2023年10月号

アリス・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境問題担当)

2023年に発生した気候災害の規模は、政府や政策立案者がもはや温暖化の緩和策、つまり、二酸化炭素やメタンなど大気中に排出される有害な汚染物質を削減する戦略に焦点を当てるだけでは不十分であることを、われわれに再確認させた。世界各国は、異常気象に耐えられるように、インフラや政策を見直して「適応」にもっと注意を払う必要がある。十分な対応を怠れば、気候変動が引き起こす過酷な衝撃が、広く世界において人々の生命、生活、コミュニティを押し潰すことになるだろう。温暖化対策に「適応」を含めて、対策の幅を広げ、緩和と適応の2つのアプローチを連動させる必要がある。

新産業政策の恩恵とリスク
―― 建設的な国際協調か補助金競争か

2023年7月号

デビッド・カミン ニューヨーク大学ロースクール教授
レベッカ・カイザー フォーダム大学ロースクール教授

グローバルミニマム課税の成功は、大企業が利益を最大化しようと、国を競い合わせることに対して、各国が協力して「法人税引き下げによる底辺への競争」を回避できることを示した。問われているのは、国家安全保障や気候変動との闘いに不可欠な産業の生産拠点をどこに移すかをめぐっても、ワシントンが友好国や同盟諸国と協力して、解決策を見出せるかどうかだ。気候変動問題への対応、新サプライチェーンの構築、中国の脅威への対応といったわれわれと友好国が共有する目標を達成するための措置をめぐって協力できなければ、ワシントンは、同盟諸国や信頼できる貿易相手国との間で激しい競争を新たに引き起こすことになる。それを回避するには何が必要なのか。

気候変動と海面レベルの上昇
―― 温暖化リスクを伝えるもう一つの指標

2023年5月号

アリス・C・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境担当)
レイフ・ポマランス 元国務副次官補(環境・開発担当)

海面上昇は、海岸線の侵食、、下水の逆流、沿岸コミュニティの水没と集団移住など、気候変動が引き起こす問題を気温上昇以上に具体的に想起させる。気温上昇を1・5度に抑えることの重要性をより理解しやすくするために、各国は気温だけでなく、海面上昇の上限を設定すべきではないか。IPCCの推定では、気温上昇が1・5度以内にとどまれば、2100年までに世界の海面が上昇する中間値は約36―76センチに収まるとされるが、温室効果ガスの排出量がほとんど減少しなければ、アメリカでは2100年までに海面が106―213センチ上昇する危険がある。すでに、国連安全保障理事会は2023年2月に、海面上昇に焦点を絞った会合を開催している。

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