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環境とエネルギーに関する論文

米天然ガス輸出が変える欧州の地政学
―― ロシア対アメリカ

2017年10月号

アグニア・グリガス アトランティック・カウンシル  シニアフェロー

2014年末にLNG輸入インフラを建設するまで、リトアニアはロシアからパイプラインで供給される天然ガス資源に完全に依存してきた。ロシアは、この状況につけ込み、政治的緊張が高まると、東中欧諸国向けの天然ガス価格を引き上げ、資源を政治ツールとして用いてきた。だが、いまやアメリカのLNGがヨーロッパ市場に流れ込み始めた。8月に実現したテキサス州からリトアニアへのLNG輸出は、アメリカが天然ガスをめぐるパワフルなグローバルサプライヤーとなりつつあることを示しているし、米企業はガスプロムの伝統的市場でも市場競争を積極的に展開していくつもりだ。これによって、米ロ間の地政学に新たな変数が持ち込まれる。ロシアというサプライヤーへ依存し続けることを長く心配してきたヨーロッパの資源輸入国は、その不安から解放されることになるだろう。

エネルギーの歴史と原子力オプション
―― 再生可能エネルギーでは地球を救えない

2017年9月号

マイケル・シェレンバーガー エンバイロンメンタル・プログレス 設立者

「薪や動物糞から石炭」、「石炭から石油」、そして「石油から天然ガス」へと、人類はこれまで3度にわたって大きなエネルギーシフトを経験し、いまや「化石燃料から再生可能エネルギーへの第4のシフト」が起きつつある。しかし、環境へのダメージを少なくするには、より信頼できるエネルギー密度の高い資源へとシフトしていく必要があるにも関わらず、これまでとは違って、現在のエネルギーシフトではエネルギー密度が低い再生可能エネルギーへの移行が起きている。現実には、再生可能エネルギーでは超高層ビル、地下鉄、そして都市でひしめき合うように生活する数多く市民の物質的需要を満たすことはできない。環境へのダメージを少なくし、より信頼できるエネルギー密度の高い資源へシフトしていくには原子力というオプションしか残されていない。・・・

イスラエルと日本
――関係強化に向けた期待と不安

2017年9月号

マシュー・ブルーマ 法政大学講師(国際政治)
エイタン・オレン 国際政治研究者

これまでとかく疎遠だった日本とイスラエルも、いまや、グローバルエネルギー市場と日本国内の政治・経済情勢の変化、そして世界の地政学的パワーバランスの構造的シフトを前に、緊密な協力関係を模索している。安全保障とテクノロジーの最前線にあるイスラエルとの戦略的関係を強化していく路線は、国際社会におけるより独立した影響力あるパワーとしてのプレゼンス確立を目指す日本の新戦略によって導かれている。中国が中東でのプレゼンスを強化していることへの焦りも関係しているかもしれない。もちろん、課題は残されている。日本企業は依然として対イスラエル投資への不安を払拭できずにいるし、政府も、イスラエルとの関係強化によって中東の複雑な宗派間紛争に巻き込まれる恐れがあることを懸念している。・・・

逆風にさらされる米環境・公衆衛生政策
―― トランプ政権の暴走を止めるには

2017年8月号

フレッド・クラップ 米環境保護基金 代表

環境保護に関するトランプの姿勢は一貫している。(国際合意を含めて)環境対策を減らしていくことを考えている。トランプと閣僚の多くは、「人間の(経済)活動を、気候変動を引き起こしている主因」とみなす科学的なコンセンサスさえ受け入れていない。むしろ、規制緩和と雇用創出という名目で、国内の化石燃料生産量を増やし、温室効果ガスと汚染物質の排出量規制を緩和し、環境保護庁(EPA)を骨抜きにしたいと考えている。だがそのようなことをすれば、疾病が広がり、早死が増え、経済は弱体化し、環境分野でのリーダーシップを中国に譲ることになる。だが、カリフォルニアやニューヨークなどの州が他に先駆けて再生可能エネルギーを支援しており、トランプが何をしようと、電力産業で再生可能エネルギーの存在感が高まっていくのは間違いない。政府による規制撤廃プロセスに対抗して、市民がその意思を表明するチャンスは残されている。・・・

スマート化するエネルギー・電力産業
―― 技術革新がもたらす機会とリスク

2017年7月号

デビッド・ビクター カリフォルニア大学サンディエゴ校教授 カッシア・ヤノセック マッキンゼー&カンパニー アソシエートパートナー

水圧破砕、水平掘削という技術革新によってシェール資源の開発が可能になったことは広く知られているし、これらのテクノロジーが、2008年7月の1バレル145ドルというかつてない高値から、いまやその約3分の1へと原油価格を引き下げることに一役買ったのは間違いない。だが、これは始まりに過ぎなかった。現在では、「複雑なシステムのよりスマートな管理」や「データ分析」、そして「オートメーション」によってエネルギー産業は再び変貌し始め、エネルギー企業の生産性と柔軟性はさらに高まっている。しかもこれらの変化は資源開発企業だけでなく、電力を生産・供給するセクターも変貌させ始めている。より分権化され、消費者にフレンドリーで、さまざまな資源で生産した電力をきわめて信頼性の高い送電ネットワークに統合する力をもつ、新しい電力産業が誕生しつつある。・・・

イラン核合意と中東の核拡散リスク
―― UAEの原子力開発の真意はどこに

2017年4月号

ヨエル・グザンスキー テルアビブ大学国家安全保障研究センター リサーチフェロー

すべてが予定通りにいけば、2017年5月までには、アラブ首長国連邦(UAE)で最初の原子炉が稼働する。豊富な原油資源を持っているとはいえ、UAEは自国の天然資源を温存し、輸出できる資源を確保するためにも、エネルギーミックスに原子力を加えて多様化する必要に迫られている。一連の原子炉が完成すれば、UAEの電力需要の4分の1を満たせると考えられている。一方で、このような民生用原子力プログラムから得られる核開発能力を利用して「アラブ諸国はいずれ核兵器を開発するのではないか」という懸念も浮上している。今後の流れを左右する大きな変数は、イランが核合意を順守するかどうか、そして「ウラン濃縮を行わない」と表明したUAEがその約束を今後も守るかどうかだ。しかし、トランプ大統領がイラン核合意を解体すると表明しているだけに、すでに事態は流動化している。・・・

石油戦略の挫折とサウジの経済改革
―― サウジによる石油市場支配の終わり

2017年4月号

ニコラス・ボロッズ 戦略情報コンサルタント
ブレンダン・メイガン マクロ経済分析者

サウジ政府が「経済の石油資源依存からの脱却が必要なこと」を明確に認識しているのは明らかだが、この認識は、2014―16年の石油増産戦略が失敗に終わった結果、サウジが石油市場を支配できた時代が終わったことを事実として受け入れざるを得なくなったことにも関係している。市場シェアの低下を前に、リヤドは(原油安に振れていたにもかかわらず)減産を拒否してかつてない増産に踏み切り、その結果、原油価格はさらに下落した。サウジは「潤沢な外貨準備がある以上、原油安にも何とか耐えられるが、アメリカとイランのライバル企業は競争を断念するだろう」と先行きを読んで、賭けに出た。しかし、これは失敗に終わった。ごく最近まで、改革は無気力なペースでしか進んでいなかったが、原油戦略が挫折した以上、もはやゆっくりとした改革程度ではリヤドが先を切り開けないことは明らかだろう。・・・

トランプリスクが促す世界秩序の再編
―― 各国のリスクヘッジで何が起きるか

2017年3月号

スチュワート・パトリック  米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルガバナンス)

トランプ政権が同盟関係へのコミットメントを弱め、保護主義的な経済・貿易政策をとり、地球温暖化対策を放棄すれば、同盟国は、自国の安全保障、繁栄、市民の安定した生活を、独立性を高めることで強化しようと模索し始めるだろう。地政学領域では、各国は、「アメリカ」と「自国にとって重要な地域大国」、つまり、アジアにおける中国、ヨーロッパにおけるロシア、中東におけるイランとの関係を見直すことで、リスクヘッジを試みる。この流れのなかで、日本と韓国は核開発を真剣に検討するようになるかもしれないし、バルト諸国は、アメリカを見限って「フィンランド化」に踏み切るかもしれない。経済領域では、中国が主導する一帯一路構想などの、アメリカが関与していないアレンジメントを各国は求めるようになるだろう。もちろん、トランプ政権が伝統的なアメリカのリーダーシップを放棄していくにつれて、他の諸国がリスクヘッジ策をとると決まってはいない。そうなるかどうかは、「大統領としてのトランプの選択」に左右される。

原油供給とアメリカの軍事戦略
―― ペルシャ湾岸からの米軍撤退を

2017年2月号

チャールズ・L・グレーザー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学)
ローズマリー・A・ケラニック ウィリアムズ・カレッジ 准教授(政治学)

湾岸石油の供給混乱を阻止するために必要なコストは、いまや軍事関与によって得られる恩恵を上回りつつある。冷戦期には国家安全保障と経済的繁栄の二つがペルシャ湾岸に関与する目的だったが、いまや重視されているのは経済的繁栄だけだ。しかもほとんどのアメリカ人が経済利益のために米軍をリスクにさらすことに否定的になり、ペルシャ湾岸への軍事介入の敷居は高くなっている。むしろ、湾岸石油の大規模な供給混乱の衝撃を緩和する非軍事的クッションに投資して、軍事コミットメントをやめるための選択肢を作り出すべきではないか。実際、戦略備蓄を増大させれば、アメリカは(ホルムズ海峡)封鎖その他で市場に供給されなくなった原油を(当面は)代替できる。消費を抑える燃費基準の引き上げも、ガソリン税の引き上げも、供給の乱れの衝撃を小さくする助けになる。短期的にはともかく、最終的には湾岸への軍事関与を打ち切るための措置をとる必要がある。

サウジの歴史的選択
―― 王国は社会・経済改革という嵐に耐えられるか

2016年12月号

ニコラス・クローリー フロントライン・アドバイザリー創設者
ルーク・ベンシー セキュリティ・マネジメント・インターナショナル マネジング・ディレクター

リヤドを経済・社会変革に駆り立てているのは、原油安ではなく、むしろ、ユースバルジに象徴される人口増大問題だ。たとえ原油価格が上昇しても、今後の人口増を考慮すれば、家計収入の80%が公的部門の給与とさまざまな補助金に依存している現在の経済モデルは維持できなくなる。だからこそ、リヤドは行動計画「ビジョン2030」を実行しようと試みている。これは、改革が引き起こす政治・経済・社会的大混乱のなかで、かつてない規模の若者たちが成人していくことを意味する。経済改革の設計者(政府)と社会的安定の擁護者(治安当局)は、緊密に連携しながら、この国の文化的アイデンティティの中核部分を慎重に再調整していかなければならない。激しい抵抗に直面するのは避けられないが、改革に失敗すれば、サウジは、現在のいかなる脅威よりもはるかに危険な、国内の全面的な不安定化という事態に直面することになる。

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