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権威主義体制の台頭に関する論文

プーチンの心理と世界観
―― ロシアの核使用リスクを考える

2023年7月号

ローズ・マクダーモット ブラウン大学 教授(国際関係論)
リード・ポーリー ブラウン大学 アシスタントプロフェッサー(政治学)
ポール・スロビック オレゴン大学 教授(心理学)

戦場での大敗も経済制裁も、プーチンに迷いを生じさせることはない。ウクライナの降伏を手に入れない限り、彼が和平に応じることはないだろう。「流れは自分の側にあり、現在の消耗戦が長引けば、ウクライナ軍とウクライナ支援国が疲弊してくる」という読みに賭けているのかもしれない。だが、権力を維持することを重視する彼のナルシズムゆえに、時間枠が限られてくるかもしれない。軍の将軍や傭兵の指導者が内紛を続けるなか、彼は戦争を早く終わらせるためにもっと大きなリスクを引き受けるかもしれない。認知バイアスとプーチンに特徴的ないくつかの心理的傾向からみて、追い込まれたと感じれば、彼は非常に危険な事態を作り出すかもしれない。戦争の歴史で裏付けられた心理学の理論とエビデンスは、欧米諸国が核攻撃の高いリスクを想定して備えるべきことを示唆している。

多極世界という神話
―― 多極構造でも二極構造でもない世界

2023年6月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマスカレッジ教授(政治学)
ウィリアム・C・ウォルフォース ダートマスカレッジ教授(政治学)

米中が二大国であることは間違いないが、多極構造を成立させるには、ほぼパワー面で互角の大国が、少なくとも、もう一つ存在しなければならない。だが、フランス、ドイツ、インド、日本、ロシア、イギリスなど、3位に入る可能性のある国は、いずれも米中と互角のパワーをもつ国とは言えない。中ロ関係がアップグレードされても、この二カ国は地域的軍事大国に過ぎない。地域的なバランシングが可能な二つの大国が一緒になっても、グローバルなバランシングはできない。そのためには、ロシアと中国がともにもっていない、そして、すぐにはもつことができない軍事力が必要になる。現状は、部分的ながらも、依然としてアメリカの一極支配構造にある。

戦争発言の真意
―― 習近平発言をどう受け止めるべきか

2023年5月号

ジョン・ポンフレット ワシントンポスト紙 前北京支局長
マット・ポッティンジャー 元米大統領副補佐官

2022年12月以降、中国政府は、北京、福建、湖北、湖南を含む各地で有事動員センターを相次いで開設している。国営メディアによると、台湾と海峡を隔てた福建省の各都市では、防空壕と少なくとも一つの「戦時救急病院」の建設や整備が始められている。しかも、習近平は、中華民族の偉大なる復興の「本質」は「祖国の統一」だと明言している。台湾の編入と「中国民族の偉大なる復興」の相関性を示唆しつつも、彼が、かくも明確にその関連を示したことはなかった。欧米は習近平の発言を真剣に受け止めるべきだろう。彼は、台湾を統合するためなら、武力行使も辞さないつもりだ。

反米パートナーシップのリアリティ
―― 中露関係をどう評価するか

2023年5月号

トーマス・グラハム 米外交問題特別フェロー ロシア・ユーラシア担当

2023年3月、中露の指導者は「ルールを基盤とする米主導の国際秩序を覆して、多極化を模索する」意図を確認しつつも、習近平はロシアに兵器を提供するとは明言しなかった。現実には、ウクライナ戦争の軍事的膠着状態は北京に恩恵をもたらしている。ウクライナ侵略は、アメリカの関心と資源をインド太平洋地域から遠ざけ、ロシアは経済的生命線を中国に頼らざるを得なくなっている。しかも、重要な天然資源、特に石油やガスをロシアから安価に入手できる。この計算を前提にしたのか、今回も、習近平はロシアが十分に戦いを継続できる道徳的・物的支援を約束しつつも、ロシアが優位を得るのに必要な支援には踏み込まなかった。・・・

トルコ地震とエルドアンの政治的命運
―― エルドアン政治の終わり?

2023年4月号

ソネル・カガプタイ ワシントン・インスティチュート  トルコ研究プログラム ディレクター

1999年のトルコ大地震では、民衆と家父長的国家間の「社会契約の限界」が露わになった。地震とそれに続く経済危機が社会不満を高め、オスマン帝国の残骸のなかで国を再建してきた「世俗的でしばしば非自由主義的なケマル主義者の政治体制」の崩壊が進んだ。その瓦礫のなかから、エルドアンと彼のイスラム主義政党が権力を握り、トルコを変貌させていった。だがいまや、エルドアンはかつてとは逆の立場に立たされている。今回の大地震は、約25年前の地震と同じように、石灰化した政治秩序を崩壊させるかもしれない。

まかり通る不正とポリクライシス
―― インピュニティで世界を捉えると

2023年4月号

デービッド・ミリバンド 元イギリス外相

ロシアのウクライナ戦争から世界的な食糧不足、気候変動に至るまでの、多層的な脅威を前に、いまや「ポリクライシス(複合危機)」という表現をよく耳にする。問題の一つは、インピュニティ(不正が咎められないこと)が、現在のグローバルな危険を拡大させ、その余波があらゆる人に及んでいることだ。そして、ポリクライシスの原因と対応を考えるとき、民主主義対独裁主義、北対南、右対左といった対立構図の議論はあまり役に立たない。むしろ、グローバルな課題を、民主主義と独裁主義の闘いではなく、「インピュニティ」対「説明責任」の闘いとして位置づけ直せば、グローバルな聴衆に対して、問題をもっと包括的に語りかけることができる。インピュニティの指標には、紛争と暴力、人権侵害、説明責任を果たさない統治、経済的搾取、環境破壊という五つの指標がある。

イランとロシアのパートナーシップ
―― 孤立国家の連帯は続くのか

2023年4月号

ディーナ・エスファンダイアリー 国際危機グループ(ICG) 中東・北アフリカプログラム 上級アドバイザー

イラン・ロシア間の緊密な協力関係は、特有の環境に導かれている。ウクライナ戦争の兵器需要が高まるなかで、世界の主要なテクノロジー供給国がロシアとの取引を閉ざしていなければ、モスクワがテヘランに助けを求めることはなかっただろう。一方、核合意再建の不調や国内の抗議行動を前に、イランの国際的な孤立も深まっていた。だが、このような歴史の偶発性が、重要な長期的同盟を誕生させることもある。イランとロシアは、引き続き、欧米の影響を押し返し、孤立から身を守り、米主導の秩序に対抗する連合を維持していくだろう。お互いに信頼し合っているわけでも、好きですらないかもしれない。だが、どのような協力なら自国の助けになるかを両国はともに理解している。

中ロ同盟のポテンシャルと限界
―― 分断された世界と中ロの連帯

2023年4月号

パトリシア・M・キム ブルッキングス研究所 フェロー

習近平が、「より欧米中心ではない世界」を目指すためのパートナーにプーチンを選んだことは、結果的に逆効果になるかもしれない。北京とモスクワの優先順位には食い違いがあり、ロシアの先行きもみえないために、両国が協調して既存秩序を抜本的に変革していく能力には限界がある。当面、アメリカと同盟国は、世界の安定を維持することへの北京の強い関心をうまく利用して、両国がより破壊的な道を歩むのを防ぐことに焦点を当てるべきだろう。中ロが世界の多くの地域で既存の国際秩序に対する不満を動員していることを認識した上で、「欧米とその他」、特にグローバルサウスとの間のギャップを埋める作業にも着手する必要がある。・・・

中国の経済強制策を抑止せよ
―― 集団的レジリアンスの形成を

2023年3月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

北京はこの十数年にわたって、「台湾と交流し、香港の民主化を支持した貿易相手国、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットにおける抑圧を批判した国や企業」に禁輸措置をとり、大衆の不買運動を焚きつけて報復してきた。北京が貿易パートナーに対して経済的な無理強いをする理由の一つは、「相手国が自国に報復措置をとることはない」と自信をもっているからだ。だが、単独では劣勢でも、オーストラリア、日本、韓国、アメリカがまとまれば、中国に対抗できる。この4カ国の連帯に北京の無理強いに遭ったことがある諸国を参加させれば、集団的レジリアンスはさらに強力になり、中国の高圧的行動、経済的無理強いを抑止できるようになる。

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

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