1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

権威主義体制の台頭に関する論文

こう着状態が長期化するにつれて、ミャンマー経済は崩壊へ向かい、貧困化する人が急増している。医療システムはすでに破綻し、武力衝突が激化するなか、大規模な難民が中国、インド、タイなどの近隣諸国へ流出することになるだろう。破綻国家への道をたどるミャンマーの混乱につけ込もうとする勢力が台頭するかもしれない。課題は国家的破綻の期間を短くし、弱者を守り、新しい国家を作り、より自由・公平で豊かな社会の建設を始めることだ。今後、平和なミャンマーが出現するとすれば、民族ナショナリズムのストーリーに支配されない、新しい国家アイデンティティが共有され、改革を経た政治経済体制が根付いた場合だけだろう。2月のクーデターだけでは危機を説明できない。現状は数十年にわたって国家破綻プロセスが続き、国家建設に失敗し、あまりに長期にわたってあまりに多くの人にとって社会と経済が不公正だったことによって引き起こされている。

「帰ってきたアメリカ」は本物か
―― クレディビリティを粉砕した政治分裂

2021年7月号

レイチェル・マイリック   デューク大学研究助教授(政治学)

「本当にアメリカは帰ってきたのか」。トランプだけではない。同盟国はアメリカの国内政治、特に今後の外交政策に大きな不確実性をもたらしかねない党派対立を気にしている。これまでは、外交が政治的二極化の余波にさらされることは多くなかったが、もはやそうではなくなっている。議会での政治対立ゆえに条約の批准が期待できないため、米大統領は議会の承認を必要としない行政協定の締結を多用している。だがこのやり方は、次の政権に合意を簡単に覆されるリスクとコストを伴う。国内の政治的二極化が続き、ワシントンが複雑な交渉に見切りをつけ、新政権が誕生するたびに既存のコミットメントが放棄されるようなら、「敵にとっては侮れない大国、友人にとっては信頼できる同盟相手としてのワシントンの評判」は深刻な危機にさらされることになる。

アイデンティティと中国の政治・外交
―― 共産党の自画像と北京のアジェンダ

2021年7月号

オッド・アルネ・ウェスタッド  イェール大学教授(歴史学)

中国を支配しようとする者にとって、アイデンティティ、領土、文化に関する問いにどう答えるかは極めて重要だ。大清帝国の瓦礫の上に現代中国を構築した共産党にとって「中国とは何か、そして中国人とは誰か」を定義することは、「中国的特質を持つ社会主義」を育むのと同じくらい重要だった。それだけに、広東省南部の人々のほとんどが「自分を中国人だ」と自覚しているのに、チベットや新疆にルーツがある人々がそうではないと考えていることは大きな問題だ。共産党は国内で生活する人すべてを中国人と定義している。そして、共産党が、国の領土主権にこだわっているのは、帝国から引き継いだ領土の一部で、その支配に挑戦する動きが生まれることを警戒しているからに他ならない。台湾ほど中国の出方を警戒すべき場所はない。北京は、いつでも好きなときに力によって乗っ取る権利があると考えている。

中国を引き裂く大潮流
―― そこにある二つの中国

2021年7月号

エリザベス・エコノミー   外交問題評議会  シニアフェロー(中国研究担当)

中国政府の勝利主義的レトリックの背後には、不都合な真実が隠されている。それは、社会がやっかいな形で複雑に分裂しつつあることだ。ジェンダーと民族を基盤とする差別が横行し、オンライン空間での憎悪に満ちた、ナショナリスティックな発言がこれに追い打ちをかけている。起業家や研究者を含む「クリエーティブな社会階級」は官僚と衝突している。ジャック・マーのように、政府の介入を公然と批判し、厳格な処分対象とされた者もいる。都市部と農村部の深刻な格差もなくなっていない。これらの分断ゆえに、重要な社会集団が中国の思想・政治的生活に完全に参加できずにいる。この状況が放置されれば、習近平が言う「中華民族の偉大なる復興」は夢のままで終わる。

対中戦争に備えるには
―― アジアシフトに向けた軍事ミッションの合理化を

2021年7月号

マイケル・ベックリー  タフツ大学准教授(政治学)

もし中国が台湾を攻略すると決めたら、米軍がいかにそれを阻止しようと試みても、中国軍に行く手を阻まれると多くの専門家はみている。だが、これは真実ではない。中国の周辺海域や同盟国にミサイルランチャー、軍事ドローン、センサーを事前配備すれば、(容易に近づけぬ)ハイテク「地雷原」を形作れる。これらの兵器ネットワークは、中国にとって無力化するのが難しいだけでなく、大規模な基地や立派な軍事プラットフォームを必要としない。問題は、アメリカの国防エスタブリッシュメントがこの戦略への迅速なシフトを怠り、時代遅れの装備と重要ではないミッションに資源を投入して浪費を続けていることだ。幸い、中国に厳格に対処すること、そしてアジアへの戦力リバランシングについては超党派の政治的支持がある。適正な戦略にシフトしていく上で欠けているのは、トップレベルのリーダーシップだけだ。

中国の台湾侵攻は近い
―― 現実味を帯びてきた武力行使リスク

2021年7月号

オリアナ・スカイラー・マストロ   スタンフォード大学国際関係研究所 センターフェロー

この数カ月、北京が平和的な台湾アプローチを見直し、武力による統一を考えていることを示唆する不穏な動きがある。「アメリカが台湾有事に介入してきても、状況を制することができる」と考えられている。かつては台湾への軍事作戦など現実的オプションではないと考えていた中国政府も、いまや、それを現実の可能性として捉えている。習近平は台湾問題を解決するという野心を明らかにし、武力統一というオプションへの中国市民と軍指導層の支持も強化されている。この30年で初めて、ほぼ1世紀にわたる内戦を決着させるために中国が軍事力を行使する可能性を真剣に憂慮すべき環境にある。

チベットという名の監獄
―― 第2の新疆ウイグルか

2021年6月号

ハワード・W・フレンチ  コロンビア大学 ジャーナリズム大学院教授

2008年、ダライ・ラマの亡命50年の節目を前に、一連の大規模な抗議デモが起きた。このデモの背景には、北京がチベット文化を弱め、チベット仏教の力を弱めようとすることに対する怒りだけでなく、尊敬されているダライ・ラマが亡命先で死去して、北京がその後継者を指名してチベット仏教を乗っ取るのではないかという不安があった。チベットの緊張が近く再び山場を迎える恐れがある。85歳のダライ・ラマが命の終わりに近づいているかもしれないからだ。すでに北京は、中国共産党が次のダライ・ラマ指名プロセスを管理すると発表している。このような異例の措置をとれば、新たなチベット騒乱をもたらす導火線に間違いなく火をつけることになる。

中ロ離間戦略を
―― 対ロエンゲージメントのポテンシャル

2021年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター 大西洋横断安全保障プログラム ディレクター
デヴィッド・シュルマン 共和党国際研究所 シニアアドバイザー

中国とロシアの利益の重なり合い、軍事力その他の分野での相互補完性は、アメリカのパワーに対する両国の脅威をたんなる足し算以上に大きくしている。中国は、ロシアとの関係を利用して軍事力のギャップを埋め、技術革新を加速し、アメリカのグローバルリーダーシップを切り崩そうとしている。一方、国際社会で周辺化されていくことを警戒するモスクワは、アメリカがロシアと交渉せざるを得ないと考える環境を作り出そうと考え、北京との関係をそれを強化するための手段とみているようだ。例えば、中国に洗練された兵器を販売することで、モスクワはそうした関係の構築を模索してきた。ワシントンは関係の強化へと両国を向かわせるような行動を避けつつ、中ロの接近と協調をいかに制約するかをクリエーティブに考える必要がある。

「台湾と中国」というアメリカ問題
―― 台頭する新興国と衰退する超大国

2021年6月号

チャールズ・L・グレーザー  ジョージ・ワシントン大学エリオット・スクール 教授(政治学、国際関係論)

ワシントンは慎重なアジア政策をとっていると考えられているが、実際には、環境が変化していることを考慮せずに、既存のコミットメントを維持している。かつてのようなパワーをもっていない大国が、現状を無理に維持しようと試みれば、非常に危険な賭けに打って出る恐れがある。もちろん、東アジアの同盟関係へのコミットメントは維持すべきだが、台湾を含む南シナ海地域への関与路線は見直すべきだろう。アメリカのパワーが低下しているのなら、最善の選択肢はコミットメントを減らすことかもしれない。これは、南シナ海において中国がより多くの影響力をもつことを認め、台湾を手放し、もはや東アジア地域における支配的なパワーではないことをワシントンが受け入れることを意味する。・・・

中国の空虚な地政学戦略
―― 友人も影響力も得られない

2021年6月号

オードリー・ウォン  ハーバード大学ケネディスクール&MIT 安全保障プログラム  ポストドクトラルフェロー

貿易交流や一帯一路を通じた融資、ワクチンやマスクの供与など、中国は経済力をツールに地政学的影響力を高めているとみなされている。債務トラップ外交で相手国に過大な債務を負わせて自国の影響力を高め、言うことを聞かぬ相手は経済的強制策で締め上げる。多くの専門家がこの事態を懸念している。だが中国のパフォーマンスは、考えられているほど見事ではない。経済的影響力を用いた戦略的試みはしばしば抵抗に遭遇している。中国の融資や投資受け入れ国は中国企業の手抜き工事、見積もりに収まらぬコストの肥大化、環境の悪化に不満を募らせている。北京の高官たちは、融資によって経済開発が進めば、受け入れ国は中国に感謝し、好感情をもつようになると考えているかもしれない。しかし、この認識が間違っていると信じるべき理由がある。・・・

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