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論文データベース(最新論文順)

追い込まれたエルドアン
―― トルコへの毅然たる新アプローチを

2023年11月号

ヘンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

「強い反応を示せば彼の挑発に乗ることにならないか」。ワシントンはこれまでエルドアンの挑発にどう対応するかに苦慮してきた。だが、ますます支離滅裂な即興路線をとり、トルコ経済の運営を見誤ったことで、ついに彼も追い詰められている。ほぼ間違いなく、トルコ経済は、国際通貨基金(IMF)の支援を求めざるを得なくなるし、大惨事を回避するには、アメリカから援助を求めざるを得なくなる。一貫して毅然と行動することで、アメリカはトルコとの新たな関係を築くことができる。イタリアやポルトガルとの関係に近い、正常な関係をトルコとの間で構築しなければならない。そのチャンスをつかむ必要がある。

イスラエルがガザに侵攻すれば
―― ヒズボラ、西岸、イラン(10/9)

2023年11月号

ブルース・ホフマン 米外交問題評議会シニアフェロー(テロ、テロ対策担当)

ヒズボラとハマスとの長年のつながり、そしてヒズボラとハマスをともに支えるイランがこれらのテロ集団を存続させることに大きな関心をもっていることを考えると、イスラエルがガザへの地上戦を開始した場合、ヒズボラは基本的に自らの意思だとしても、完全にイランの意向に同調して、イスラエルとの戦争に参戦する可能性が高い。この場合、その帰結は非常に大きなものになる。さらに、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ武装勢力はいつ行動を起こしてもおかしくなく、イスラエルが大規模な地上攻撃を試み、ガザを再占領すれば、そのリスクは一気に高まるだろう。この場合、別の疑問が生じる。三正面戦争に直面した場合、イスラエルは、テヘランがその手下に攻撃を控えるように求めることを期待して、イランをターゲットにして圧力を高める行動をとるだろうか。

ハマスのイスラエル攻撃
―― イランの関与レベルは(10/8)

2023年11月号

レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

サウジ・イスラエルの関係正常化が実現すれば、湾岸地域が対イランでまとまる危険があり、テヘランはそのような合意を阻止しようと躍起になっていた。イスラエルとイランの水面下での戦争はしばらく前から展開されてきた。革命防衛隊コッズ部隊のトップ、エスマイル・カアニ将軍が、ハマスの代表を含む過激派と会合を開き、イスラエルへの攻撃を調整するように促したとも報じられている。イスラエルも、イランの高官や科学者、シリアで活動するイラン系民兵組織を攻撃のターゲットにしてきた。一方で、(イランが支援する)ヒズボラの活動、レバノンに紛争が飛び火するかが、ワイルドカードとみなされている。・・・

台湾海峡で中国を抑止するには
―― アメリカの能力と決意を示せ

2023年11月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会フェロー
イヴァン・カナパシー 元国家安全保障会議 ディレクター

いまや、外交は綻びをみせ、抑止力は形骸化している。しかも、中国のリスク許容レベルは高まり、台湾海峡における不安定化要因は増える一方だ。ワシントンは、対中抑止力が低下していることを認識した上で、武力行使が破滅的な結果を招くことを習近平に理解させるために、さらなる措置を講じなければならない。そのためには、北京との摩擦が大きくなることを受け入れ、台湾の戦闘能力を高め、台湾軍の訓練や米軍アドバイザーの派遣を含めて、台湾のために軍事介入するアメリカの能力と決意を示さなければならない。アメリカとパートナーは、武力行使が解決策にはならないことを中国に認識させる必要がある。

台湾がとるべき道
―― 対話による戦争回避を

2023年11月号

侯友宜 台湾国民党 総統候補

国民党の北京へのアプローチは、中国による武力行使への反対に留まるものではない。非対称戦争能力を慎重に強化し、完成させる一方で、中国との誤解をなくして、いかなる危機も両岸の対話を通じて解決していくことにある。平和には対話も必要であり、私は中華民国の憲法と法律に則したやり方で、北京との建設的な交流を試みるつもりだ。台湾海峡とインド太平洋地域の安定を維持するために、抑止(Deterrence)、対話(Dialogue)、ディエスカレーション(De-escalation)という「三つのD」戦略を私は提案する。

BBCとイギリスのソフトパワー
―― 政府と国際放送の関係を考える

2023年10月号

サイモン・J・ポッター ブリストル大学教授(現代史)

1927年に開始されたBBC(英国放送協会)ワールド・サービス(国際放送)は、現在も、短波ラジオをデジタルメディアやソーシャルメディア・チャンネルと組み合わせて提供している。だが、BBCが国内で政治的に敵視されているために、イギリスのソフトパワーを長く形作ってきたワールド・サービスは財政危機に直面し、すでに、アジアの言語やアラビア語での放送を打ち切っている。解決策は、ワールド・サービスを国家が直接出資する別組織としてBBCから切り離すことかもしれないが、国営の国際放送など、世界のリスナーにとって魅力的なはずはない。BBCを敵視する国内保守派は、イギリスの重要なソフトパワーツールを危険にさらしていることになる。

世界はAIを統治できるのか
―― 手遅れになる前に規制を

2023年10月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ 社長兼創設者
ムスタファ・スレイマン インフレクションAI CEO兼共同創設者

AIシステムの恩恵が明らかになるにつれて、システムは巨大化し、機能は改善され、安価になり、あらゆるところに存在するようになる。しかし、自動車を運転するシステムは戦車も操縦できる。病気を診断するアプリケーションは、新たな病気を誕生させて兵器化できるかもしれない。世界の指導者たちはAIを規制する必要性を口にするが、依然として規制に向けた政治的意思が欠落しているようだ。AIを最大限に制約すれば、生活を変えるようなプラス面を見送ることを意味するが、AIを最大限に自由化すれば、破滅をもたらしかねないマイナス面のすべてを引き出す危険を伴う。これを回避するための、規制・統治レジームとは何か。

イノベーションと社会
―― 何が社会と技術の関係を規定するのか

2023年10月号

ダイアン・コイル ケンブリッジ大学教授(公共政策)

人が技術をどのように理解するか、つまり新しい発明の役割についてどのようなストーリーを描くかによって、その技術がどのような結果をもたらすかも左右される。新技術が人間の労働を補助するために使われるのか、それとも人間の労働に取って代わるのかによって、雇用や所得に与える影響は大きく違ってくる。おそらく現時点でもっとも重要なことは、技術の進歩によってもたらされる新たな経済的利益は、国や労働組合のような社会組織がハイテク企業の市場パワーへの対抗バランスを提供できる場合にのみ、広く共有されていくということだ。逆に言えば、人々が新しいテクノロジーの前で無力化するとすれば、そうなることを社会が認めた場合ということになる。

欧米はウクライナを見捨てるのか?
―― キーウは欧米の心変わりに備えよ

2023年10月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授

アメリカではウクライナ支援が政治論争の対象とされ、「外国のパートナーや同盟国への支援にどれだけ配慮し、そのためにどの程度支出すべきか」という歴史的論争の最新のテーマに据えられている。もちろん、トランプが大統領に再選されれば、ウクライナにとっては壊滅的な事態になるだろう。経済的圧力にさらされているヨーロッパでも、勝利への楽観論が揺らぎ始め、ウクライナで展開される大規模で全面的な戦争に対する不安が高まっている。だが、ロシアを封じ込め、ウクライナの主権を守ることは、欧米の第一の利益であること、そして、欧米の無関心と焦りが、この戦争におけるプーチンの最終兵器であることを忘れてはならない。

流動化したロシア政治
―― プーチン体制の衰退と新タカ派の台頭

2023年10月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター シニアフェロー

モスクワは疲弊し、プーチンは内部抗争に対処できずに孤立している。人々は反乱を前にしても無気力な対応を示す政府に困惑し、エリートたちは再び体制が脅かされれば逃げだそうと考えている。戦争はロシアを変化させた。プーチン体制、エリートのプーチンへの認識、この戦争への民衆の態度などに、大きな変化が生じている。もちろん、プーチン体制が否定され、現体制が崩壊するとは限らない。それでも、現在の流れは、ロシアをはるかにまとまりのない国、つまり、内部矛盾と紛争にあふれ、より不安定で先のみえない国に変化させている。プーチンが築き上げた国内秩序は一段と揺らぎ、世界はより危険で、予測不可能なロシアと対峙することになるだろう。

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