1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

AI統治と軍備管理の教訓
―― 壊滅的事態を回避する米中の責務

2023年12月号

ヘンリー・A・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエイツ会長
グレアム・アリソン ハーバード大学教授

この2年にわたって、AI革命の最前線にいるテクノロジーリーダーたちと問題を検証してきたわれわれ二人は、「AIの無制限、無節操な進化はアメリカと世界に破滅的な結果をもたらす」という見通しには大きな説得力があり、「各国の指導者はいますぐ行動を起こさなければならない」という結論に達した。そうする上で、われわれは冷戦期の核管理の歴史から教訓を学ぶことができる。大国間戦争が80年近くもなかった国際秩序を形作るなかでわれわれが学んだ教訓は、いまAIと対峙する指導者にとって最良の指針となる。AIのもっとも危険な発展と応用を防止するためのガイドラインを作成する機会を手にしている米中は、この機会を早い段階で生かす必要がある。

ハマス・イスラエル戦争の現状
―― 人道問題、ヒズボラ、ハマス後のガザ(11/2)

2023年12月号

<スピーカー>
マックス・ブート 米外交問題評議会シニアフェロー(国家安全保障研究)
スティーブン・A・クック 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)
リンダ・ロビンソン 米外交問題評議会シニアフェロー(女性と外交政策担当)
レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)

<プレサイダー>
マイケル・フロマン 米外交問題評議会会長

イスラエルの行動は戦争犯罪だと広く批判されている。ターゲットをもっと注意して選ぶ必要がある。一方、ハマスの行動が戦争犯罪であることも明らかだ。・・・彼らは、民間人地域のなかや地下に軍事施設を作り、イスラエルがハマスに攻撃をするたびに巻き添え犠牲が出る可能性を最大化している。これは、非常に残忍で醜い戦争形態だ。(M・ブート)

イランの戦略的第3の支柱は、国連であれ、イスラム協力機構であれ、国際社会を動員することだ。要するに、国際社会を動員してイスラエルに停戦に応じるように圧力をかける。目的はもちろん民間人の犠牲を回避することだが、実際には、ハマスを存続させることにある。
(R・タキー)

難しいとしても、(ハマス後のガザには)パレスチナ人による解決策が求められる。但し、ひどく人気のないマフムード・アッバス議長の権限を西岸からガザ地区まで拡大できるかは、わからない。ガザ地区でまとまり、ガザ地区を管理できる指導者が他にいるはずだ。アッバスはガザを統治できるような人物ではない。(S・クック)

戦争とソーシャルメディア
―― もう一つの戦争(10/27)

2023年12月号

ファラ・パンディス 米外交問題評議会 非常勤シニアフェロー(対テロ、イスラム研究)

ハマスはイスラエルの破壊とユダヤ人の根絶を求めているが、「西洋はイスラムを憎んでいる」というアルカイダが持ち出したストーリー(物語)が、ハマスの世界観を可能にするエコシステムの基盤に存在する。しかも、普通の人々がソーシャルメディアのコンテンツを制作し、感情を煽り、ストーリーを強化している。すでに、10月7日以降、イラクとシリアで米軍に対する攻撃が相次いでいる。米国内でも新たなリスクが生じるだろう。国土安全保障省は、ガザ紛争が進むにつれて、イスラエル人、パレスチナ人、ユダヤ教徒、イスラム教徒、そしてシーク教徒のようなこれらの宗教の信者と誤認された人々に対する暴力が米国内で増加する危険があると警告している。米政府は反イスラムや反アラブのヘイト、そして反ユダヤ主義に対抗していくために、道徳的、戦略的にもっと努力する必要がある。

イスラエル・イラン戦争のリスク
―― ガザ紛争が長期化すれば(10/19)

2023年12月号

ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー

これまで、イスラエルとイランは、制御不能なエスカレーションリスクを冒すことなく、定期的に相手を挑発できると考えてきた。だが、いまやガザにおける戦争が、そうした微妙な計算を狂わせつつある。テヘランは、イスラエルとハマスの戦争を、レバノンやシリアでの代理(傀儡)勢力の攻撃によってイスラエルの能力を低下させるチャンス、あるいはイラクやシリアの米軍に対する武装勢力による攻撃の再開を促すチャンスとみなすかもしれない。こうした作戦はすでに進行しているのかもしれない。紛争が長引けば、安定化へのインセンティブは低下し、イスラエルとイランの衝突リスクは高まっていく。戦争がまだこの地域に広がっていないとしても、世界の指導者たちは、戦争の拡大はあり得ないと錯覚してはならない。

紛争と人道的危機
―― イスラエル・ハマス戦争(10/17)

2023年11月号

クリスティーナ・ブーリ CFR リサーチ・アソシエーツ(中東研究)
ダイアナ・ロイ ライター・エディター www.cfr.org

ガザ住民の避難場所は限られている。イスラエルは封鎖の一環として、ガザとの2つの境界を閉鎖した。ガザとラファ検問所(国境)を共有するエジプトが唯一の避難先だ。しかし、アメリカや国連の要請にもかかわらず、エジプト政府は民間人のための避難回廊を設置することに消極的で、イスラエルの空爆によってラファはすでに機能不全の状態にあるとしている。「もはや、食料、電気、燃料を気にしている段階ではない」と人道支援団体パレスチナ赤新月社のスポークスマン、ネバル・ファルサフはAP通信に語っている。「今心配なのは、生き残れるかどうかだ」

ロシアの反欧米連合
―― アメリカの敵を束ねると

2023年11月号

ハンナ・ノッテ ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ユーラシア不拡散プログラム・ディレクター

ウクライナでの戦争が「ロシアのパワー、利益、影響力を大きく低下させている」と欧米の高官が状況を捉えているのなら、それは考え直す必要があるだろう。ベネズエラから北朝鮮まで、ロシアは、アメリカやヨーロッパを敵視する多くの国々との軍事協力を強化し、深化させている。これらの国々には、欧米という敵を共有している以上の共通点はあまりないかもしれないし、特に強力な国もない。しかし、これらの国々が一緒になれば、モスクワがウクライナとの戦争を続けるのを助けることができる。アメリカはこの「ロシアの枢軸」に対するバランスをとるために、欧米のパートナーシップと同盟に再投資する必要がある。

次の経済ショックにいかに備えるか
―― グローバル経済を待ち受ける衝撃

2023年11月号

クリスタリナ・ゲオルギエバ 国際通貨基金専務理事

急速なグローバル化と統合の時代は終わりを告げ、保護主義が台頭し、分断化潮流が生じている。こうして、グローバル経済の脆弱性と不確実性が高まっている。さらに、軍事紛争が食糧不安を深刻にし、エネルギーやコモディティ市場を混乱させ、サプライチェーンを寸断するかもしれない。深刻な干ばつや洪水がさらに発生すれば、何百万人もの人々が気候難民化する恐れがある。一つだけ確かなことは、グローバル経済がショックに直面することだ。国際通貨基金(IMF)を含む国際機関、債権者、債務者は状況に適応し、変化に備えなければならない。ショックの影響を受けやすい世界にあって、一国だけでなく集団として経済のレジリエンスを協調して高める必要がある。

ウクライナと欧州、ロシアの未来
―― 対ロ封じ込めの時代へ

2023年11月号

マイケル・キマージュ 米カトリック大学 歴史学教授

ウクライナ戦争に、国家としてのウクライナの完成を見いだすこともできる。ウクライナは欧米と調和した国家アイデンティティを築きつつある。一方、プーチンそしていかなるロシアの指導者にとっても、欧米の安全保障構造の一翼を担う、パワフルなウクライナを受け入れることはあり得ず、こうして、欧米に対する不満と恨みに駆り立てられるロシアが誕生するだろう。この場合、アメリカと同盟国は、冷戦期のようなロシア封じ込め策をとることを余儀なくされるかもしれない。ヨーロッパの影響が冷戦後のウクライナを変貌させたように、今後は、ウクライナがヨーロッパ統合に影響を与えることになるだろう。それは、超国家の流れを強化するのか、それとも国家意識を強化するのか。

中露に挟まれたモンゴルの選択
―― アメリカは何をオファーできるか

2023年11月号

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ 元モンゴル大統領補佐官(外交政策担当)
セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学 特別教授

中国とロシアにほぼ全面的に経済を依存する内陸国のモンゴルは、それでも、二つの隣国の違いを利用し、あるいは欧米との関係を強化することで、中露から距離を置こうと試みてきた。だが、いまや中露はますます接近し、モンゴルが両国の立場の違いを利用する余地は小さくなっている。アメリカは、モンゴルとの貿易・投資関係を促進し、教育・訓練プログラムを通じてモンゴルへの長期的なコミットメントを示すべきだし、モンゴル側は、外国人投資家を安心させ、透明で予測可能な経済環境を整備する試みを強化する必要がある。必要とされているのは、ロシアの高圧路線や中国の執拗な覇権主義に直面しているモンゴルへの手堅い経済関与だろう。

大いなる誤算
―― ガザ侵攻というイスラエルの間違い(10/14)

2023年11月号

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)

ガザ侵攻は、人道的、道徳的、戦略的な大惨事を引き起こすことになるだろう。イスラエルの長期的な安全保障を損ない、パレスチナ人に計り知れない人的ダメージを強いるだけでなく、中国との競争におけるアメリカの核心的利益さえも脅かす。作戦を先に進めるイスラエルの動きは、国際社会の激しい批判にさらされる。しかも、この紛争は、新たなパレスチナ人の強制移住の引き金となる恐れがあるし、ガザ侵攻はヒズボラを行動に駆り立てるレッドラインになるかもしれない。イランについては、これまでのところ、アメリカもイスラエルも自制的な立場をとっているが、長期化する戦争のダイナミクスが何を引き起こすは分からない。戦争が長引けば、世界はイスラエル人とパレスチナ人の犠牲者の映像を目の当たりにし、さらに予期せぬ混乱の事態に直面することになるかもしれない。

Page Top