リアリズムを捨てたハンチントンの変節
――移民社会アメリカのジレンマ
2004年7月号

エリートたちが国益を現実主義の立場から守っていこうとしても、大衆の幻想にどうしても振り回されてしまう。この点を驚くべき洞察力で分析し、エリートのリーダーシップを強く擁護してきたハンチントンだが、ここにきて突如、大衆迎合路線へと転じたようだ。アメリカの一般市民の感情的防衛本能のほうがエリートの冷淡なコスモポリタニズムよりも理にかなっていると主張した彼は、いまや移民排斥論を唱えはじめている。