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Classic Selection 2005
平和的台頭への道筋

鄭必堅/中国改革フォーラム理事長

China's "Peaceful Rise" to Great-Power Status

Zheng Bijian 中国の国内問題、国際問題、開発問題の研究と分析を行う非営利の非政府組織である中国改革フォーラムの理事長。同氏は、共産党大会(全国代表大会)で討議されるリポートの草稿を5度にわたってまとめている。学会の重鎮で、共産党の高官。

2005年9月号掲載論文

中国政府は2050年までに、民主的で経済的に繁栄する文化的な社会主義国家となるための開発戦略をすでに書き上げており、この時期までに先進世界における中レベルの国家となれば、「平和的な台頭」に成功したことになる。その過程で、時代遅れの社会管理政策を変化させて、「調和的な社会主義社会」を建設することを目的にしている。中国は民主的制度と法の支配を強め、精神文明に基づく安定した社会を構築しようと試みている。

  • 急速な発展の光と陰
  • 経済改革・開放路線
  • 平和的台頭に向けた今後の課題
  • 世界への衝撃

<急速な発展の光と陰>

最近では中国の急速な成長が世界で大きな関心を集めている。中国の影響力の拡大、軍事力の強化にはじまり、エネルギー需要の増大にいたるまで、多方面での中国の台頭の意味合いが、中国国内、そして国際社会で熱く議論されている。この点からも、中国がこれまでに達成した成果、そしてさらなる発展に向けた今後の軌道を適切に理解することが重要であろう。

1978年に経済の改革・開放路線を開始して以来、中国は平均で年9・4%のペースの成長を遂げており、これは世界的にみても、もっとも急速な成長ペースである。78年当時、世界経済に占める中国経済の比率は1%未満で、対外貿易総額も206億ドルにすぎなかった。しかしいまや中国経済は世界経済の4%を占め、対外貿易の価値は8510億ドルに達し、世界で3番目の貿易大国に成長している。しかも中国は数千億ドル規模の外国からの投資を魅了し、国内での民間投資も1兆ドルを超えている。12年前の中国には、携帯電話サービスはほとんど存在しなかったが、いまやその利用者は3億人と他のいかなる国よりも多い。そして、2004年6月の時点で、ほぼ1億人がインターネットにアクセスしている。

中国は78年に設定した目的をすでに達成している。成長の恩恵が広く平等に行き渡っているとはいえないが、それでも市民の生活レベルは全般的に向上している。この27年間の改革と成長は、中国の労働力の力、創造性、購買力、経済成長へのコミットメント、国家としての凝集力、団結力の高さを世界に見せつけた。こうした潜在力のすべてがさらに開花していけば、世界経済の成長のエンジンとしての中国は世界に計り知れぬほどの大きな貢献をすることになるだろう。

しかし、コインの裏側にも目を向ける必要がある。経済成長だけで、中国の発展をとらえることはできない。中国には13億の人々がいる。経済、社会開発上のいかなる小さな問題であっても、それがこの巨大な社会集団に影響を与えれば、非常に深刻な問題と化す。しかも、中国の人口は今後も増え続け、2030年には15億人に達すると考えられる。中国経済の規模はまだアメリカの7分の1、日本の3分の1にすぎない。1人あたり所得でみると、中国は依然として低所得の途上国で、世界100位のレベルに甘んじており、この点で、世界経済に与える影響はいまも限られている。

貧困層をうまく削減できていないことに派生する開発上の大きな課題にも中国は直面している。こうした膨大な人口を支えるエネルギー、原材料、水などの資源が不足していることも次第に問題化しつつあるし、特に資源の効率利用とリサイクル化がうまく進まなければ深刻な問題になる。中国の1人あたり水資源の量は、世界平均の4分の1しかないし、耕作可能な土地の1人あたりの面積も世界平均の40%しかない。中国の石油、天然ガス、銅、アルミニウム1人あたり資源も、世界平均からみれば、それぞれ8・3%、4・1%、25・5%、9・7%しかない。・・・

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