
1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2009年11月号
IMFが各国のグローバル経済再生に向けた対策の監視と評価をするとしても、すべてはトリッキーだ。なにせ相手は主権国家だ。しかも、内需と外需のバランスに焦点をあて、為替レートにさえ口出しするとなると、スムーズにいくはずはない。大きな問題は、例えば、IMFが中国に対して「貴国の経常黒字が急速に増大している以上、より迅速に為替を適正なレベルへと向かせるべきだ」と言えるかどうか、そうして、アドバイスを受けた国がそれを聞き入れるかどうかだ。・・・これから半年後に監視と評価をめぐってIMFに何か言われたからといって、アメリカの大統領や財務長官が「わかった。IMFの言うとおりだ。早速予算を見直そう」と言うはずはない。
2009年11月号
「グローバル・インバランスを是正していくための具体的措置を支持するような政治基盤はいかなる国にも存在しない。・・・日本の鳩山由紀夫首相にとっても、グローバル・インバランスの是正とは、外国市場の需要の落ち込みで日本の製造業が苦しんでいるときに、さらに輸出の伸びを抑えなければならないことを意味する。・・・・世界の指導者はよりバランスのとれた世界経済の構造をつくりたいと願っているかもしれない。だが、その実現に向けて早急に措置を講じることはないだろう」。
2009年11月号
現在の経済トレンドを示す指標を見る限り、かなり、ゆっくりとしたペースの経済回復しか期待できないと思う。今回の世界経済の回復は、われわれがこれまでに知るものよりも、はるかにゆっくりとしたものになる。そして、今後10年間における最大の疑問は、「十分な需要を作り出すのが誰になるか」ということだ。これまでも長い間、グローバル・インバランスの問題は議論されてきたし、世界経済の構造を改善していくために各国がどのような政策をとればよいかが争点とされてきた。問題は、これらの政策の多くが短期的な痛みを伴う恐れがあり、それゆえに、政治的には魅力ある選択肢ではないことだ。
2009年11月号
交渉に入ることに合意し、段階的な譲歩に応じることで国際社会から援助を引き出し、その後、交渉から離脱して挑発行動を取り、より大きな見返りが期待できる状態になってから、再び交渉テーブルに戻る。北朝鮮の指導者は15年にわたってこのやり方を繰り返してきた。・・・援助なしでは生きていけない北朝鮮が援助を引き出すツールである核やミサイル開発プログラムを放棄することはあり得ない。認識すべきは、外からの圧力には効果がなく、変化は北朝鮮の内側からしか起こりえないということだ。必要なのは、アメリカと同盟国が、北朝鮮民衆に対して自分たちの生活とは違う、非常に魅力的な代替策が外の世界に存在するのを教えていくことだ。
2009年11月号
2009年11月号
銀行貸し出しが大幅に増えない限り、マネタリーベースの拡大そのものがインフレを誘発することはないし、現実には銀行貸し出しが大幅に増大するような事態には依然としてなっていない。・・・ただし、金融引き締め路線を志向していても、将来どこかの時点で中央銀行が政府の財政赤字を埋め合わせざるを得なくなると人々が考えるようになれば、実際のインフレと将来のインフレ期待は上昇する。・・・私自身は、大規模な資源ギャップ(高失業率と低い資本稼働率)が存在しているところに、マネーサプライの急拡大という事態が重なったと現状を理解している。(C・エバンス)
温室効果ガス排出量削減の世界的取り組みが、一つのグローバルな条約を基盤に展開していくことはあり得ないし、2009年12月に包括的な合意が成立する見込みもほとんどない。地球環境対策を強化したいと考えている政府官僚や活動家は戦略を見直すと同時に、コペンハーゲン会議への大きな期待を引き下げるべきだ。グローバルな条約ではなく、野心的な国単位の政策と、排出量削減のための特別な機会に焦点を合わせたクリエーティブな国際協調を組み合わせた「ボトムアップアプローチ」を試みるべきだ。コペンハーゲンでの交渉の目的を、先進国の排出量削減へのコミットメントを強化し、途上国の環境対策を経済成長、安全保障、大気汚染など、途上国の指導者がすでに心配し始めている他の領域の問題へとリンクさせる程度へと引き下げない限り、会議はなんの成果も得られないまま終わることになる。
2009年10月号
世界のワクチンメーカーは、2009年にパンデミック(世界的流行)が宣言されたH1N1のワクチン生産に力を入れている。だが、「現在9カ国(アメリカ、カナダ、西ヨーロッパの5カ国、オーストラリア、日本)に存在するワクチンメーカーは、合計すれば8億4000万人分のワクチンを生産できるだけで、・・・これでは、数十億の人々にワクチンを提供することは到底できない」。「ワクチンメーカーを国内にもつ9カ国の総人口は7億5000万。・・・ワクチンの生産国は、国内用の十分なワクチンを確保した上で、他の諸国のワクチンを輸出することになるだろう」。十分なワクチンと抗ウイルス薬が存在しない以上、呼吸器疾患その他、インフルエンザが関わってくる疾患への対策をグローバルレベルで考える必要がある。