CFRインタビュー
ドルの衰退を考える
2009年12月号

1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2009年12月号
2009年12月号
連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、将来における経済危機を避けるには米中間の巨大なグローバル・インバランスの是正に直ちに取り組む必要があると警告し、米議会のメンバーの多くも、米中の不均衡は人民元が過小評価されていることが元凶だとみなし、人民元の切り上げが必要だと考えている。だが、スティーブン・ローチは、人民元が過小評価されていることを貿易問題の元凶とみなすのは間違っており、そうした見方は、政治的なまやかしの類にすぎないと言う。インバランスの是正に向けて中国の国内消費を刺激するには、社会保障制度を整備するように北京に働きかけるべきだと提言する同氏は、アメリカの失業率の上昇と低成長が続くなか、米議会が保護主義的な対中法案を成立させれば、ドル暴落のきっかけになりかねないと警告した。
2009年12月号
中央統制経済システムにおいて政府が銀行に資金を提供するように命じ、地方政府がインフラプロジェクトを通常予算の別枠で実施するとすれば、経済が数値上成長するのは当然のことだ。減税措置が導入され、それによって得た資金の使途が個人に委ねられるアメリカとは大違いだ。国家発展改革委員会(NDRC)がGDP成長の目盛りを8に合わせれば、8%の成長を手にできる。2009年前半のGDP成長率が7・1%、後半が9%に達すると思われるので、数字は奇跡のように8%の成長ということになる。だが・・・ (S・ローチ)
2009年12月号
急速な経済成長を遂げたトルコ政府は次第に欧米から距離を置き、独自の外交路線を取り始めている。イラクのクルド人勢力と接触し、中東での紛争や危機の仲介を手がけ、ロシアとの関係も強化している。イスラム系のエルドアン政権は、欧米に背を向け、イスラム世界の代弁者になることを望んでいるのだろうか。どちらの方向を目指すとしても、今後のトルコの運命を大きく左右するのは、(これまで大きな権勢を振るい政治に介入してきた)軍の動きではない。既に軍事クーデターの時代は終わっているのかもしれない。むしろ政府が内外のクルド人問題にどのような対策をとるかでトルコの今後は左右される。より広義には、憲法と古びた政治制度を刷新する必要がある。これこそ、近隣諸国とトルコの和解を達成する大きな第一歩になるはずだ。
2009年12月号
2009年12月号
アメリカが対外赤字を削減し、管理していこうと真剣に試みれば、アメリカに次ぐ3大経済大国である中国、日本、ドイツを含む諸国に大きな課題を不可避的に突きつけることになる。アメリカが世界経済における最後の買い手としての伝統的な役割を終えていくのであれば、経済成長を達成するために輸出の拡大に多くを依存してきたこれらの国々も、国内需要を急速に拡大していかなければならなくなるからだ。だが、このような世界経済の構造転換が実現すれば、グローバル経済の持続的成長が可能になるだけでなく、各国の経済成長もより安定したものになる。
2009年11月号
諸外国がアメリカの大規模な財政赤字を(米国債の購入などを通して)ファイナンスし続けるとすれば、現在の危機をもたらした状況が再現され、金融メルトダウンのリスクが再び生じる。同時に、外国資金への需要がますます高まっていけば、いずれその構図は維持不能になり、2030年に到達するはるか前にドル価値は暴落し、ハード・ランディングという事態に直目する。幸運に恵まれて今後において危機を回避できたとしても、ますます多くの所得を対外債務の返済に充てなければならなくなり、アメリカ人の生活レベルは低下する。・・・すでにアメリカの運命は、中国だけでなく、日本、ロシア、そして数多くの産油国など、債権国の手に握られている。速やかに持続可能な経済ポジションへと立ち返り、その路線を維持していかない限り、経済、外交領域での政策上の自由も次第に損なわれていくだろう。
2009年11月号
アメリカの核戦力の削減ばかりを求め、敵の軍事基盤を攻撃する核能力を重視しない人々は、核武装国との間で通常(戦力)戦争が一度始まれば抑止力を維持していくのが難しくなることを理解していないようだ。攻撃をすれば間違いなく反撃されると敵が確信しなければ、信頼できる抑止力は形成できない。しかし、核保有国との通常戦争において、現状の核の路線や戦略では信頼できる抑止力は形成できない。アメリカが、潜在的な敵による核攻撃を抑止するには、アメリカの指導者が実際に行使できる、報復攻撃のための選択肢を準備しておくべきだ。
2009年11月号
敵対勢力との交渉に入ることに条件をつけたいという欲求の方が、相手との間に抱える懸案についての合理的な分析をし、微妙な論争を試みようとするインセンティブよりも大きい。このため、とかく政治的ご都合主義や単純な分析から交渉に入る条件が付けられてしまう。だが、このやり方は全くの逆効果で、実際には、交渉に入るための条件をまったくつけない方が、昨今におけるやり方、特にアメリカやイスラエルのやり方よりも外交交渉はうまく機能する。交渉を重視する賢明な外交政策も、交渉上の障害を可能な限り事前に取り除こうするあまり、逆に間違いを犯すことがある。安易に考案された交渉に入るための前提条件こそ、交渉による平和を勝ち取るための最大の障害となることが多い。
アメリカの宗教指導者は、宗教を遠ざける普通の人々を非難するどころか、そうした人々の存在を布教のチャンスとみなした。彼らは、人々は罪のあがないの呼びかけに自由に個人的に応じることができると教えた。こうした指導者が標榜する神学は、常に揺れ動いているアメリカのような国にはぴったりだった。神への信仰を失い、変化する経済・社会環境を前に心のよりどころを求める人々をアメリカの宗教指導者はうまく取り込んできた。・・・