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論文データベース(最新論文順)

イスラエルが近くヒズボラを攻撃し、第3次レバノン戦争が起きる危険がある。ヒズボラが保有するミサイルの備蓄規模が大きくなり、その攻撃精度も高まっている。しかも、攻撃精度の高い長距離ミサイルをシリアから入手し、地対空ミサイルの能力を向上させている可能性もある。これら三つの要因が伴う戦略バランスの変化ゆえに、イスラエルは自国の安全保障が脅威にさらされていると判断するかもしれないからだ。もっとも可能性が高いのは、イスラエルが、ヒズボラの長距離ミサイルを搭載した移動用コンボイ、レバノンにあるロケットやミサイルの兵器庫を攻撃することだ。国際社会はこの現実にどう対処すべきなのか。ヒズボラのパトロンと言われるシリアとイランはどう動くのか。

対イラン制裁ではウラン濃縮を阻止できない理由

2010年9月号

ホセイン・G・アスカリ ジョージ・ワシントン大学教授

イラン経済は、政府の経済運営が根本的に間違っているために破綻途上にあるが、核開発路線を止めさせようといくら経済制裁を試みても、イランの民衆はウラン濃縮路線を支持しているし、政府の補助金政策に依存している。したがって、民衆の怒りや不満が核開発を試みる政府に向けられることはあり得ない。そもそも、経済制裁でイランを締め付けるのは無理がある。何を経済制裁の対象にしようが、世界が市場経済体制のもとにある以上、需要があれば、それを満たそうとする流れが生じるのは避けられないからだ。これまでもイランは、ウラン濃縮やミサイル開発に必要な機材を闇市場から調達してきたし、最近でも、ロシアから洗練された対空防衛システムを輸入している。・・・決定的な効果を持つ制裁とは、イランの中央銀行をターゲットにすることだ。中央銀行に対する金融制裁は、金融領域における「核兵器」並の破壊力を持っている。しかし、アメリカ政府には、そう決断する政治的意思がない。

Classic Selection 2007
ヘッジファンド悪玉説は間違っている

2010年8月号

セバスチャン・マラビー ワシントン・ポスト紙コラムニスト

ヘッジファンドのアナリストのなかで大きな成功を手にできるのは、企業や通貨の価格が本来の価値を示していないことを見抜き、さまざまな金融資産の価格の間に論理的には説明できない矛盾があることを突き止める能力を持っている人物たちだ。そのような大成功を収めるアナリストたちは、彼らだけではなく、投資家にも莫大な利益をもたらす。割安となっている資産を買い、割高となっている資産を売ることによって、市場価格の歪みが消失するまで彼らは市場価格を変動させ続ける。その結果、最終的には世界の資本の効率的な分配が実現される。ヘッジファンドが生み出すリスクと、一方でその活動がリスクを減少させることをバランスよくとらえる必要があるし、ヘッジファンドを金融システムに対する危険な火種とみなすのは適切ではない。むしろ、ヘッジファンドは金融システムが火に包まれないように配慮する消防士の役割を果たしている。

ヘッジファンドの実像とリスク管理テクニック

2010年8月号

スピーカー
セバスチャン・マラビー モーリス・R・グリーンバーグ地政経済学センター所長
司会
ジェシカ・P・エインホーン 世界銀行専務理事、 ジョンズ・ホプキンス大学ポール・H・ニィツェ・スクール学院長

「ヘッジファンドの専門家に共通しているのは、どこから手をつけて良いか分からないような膨大なデータの解析を厭わないことだ。・・・彼らはアルゴリズムに精通しており、膨大なデータからパターンを見つけ出そうとする。これが(ルネサンス・テクノロジーズの)ジム・シモンズと彼のチームがやったことだ。そうやってモデルを作り上げた結果、ジム・シモンズは年間で約20億ドルを稼ぎ出した。ジム・シモンズは普通のウォール・ストリートの金融機関に収まるような人物ではない。彼は靴下をはかないし、車に乗ればぶっ飛ばす。ランブレッタ社のスクーターでボストンからボゴタまで行くような人物だ。そして彼は、オフィス内を一輪車で動きまわるような連中を採用する。・・・・私は金融イノベーションの価値を積極的に認めている。もちろん、リスクはなくならないと思う。為替も金利も変動し、洗練された経済において大切な資本を効率的に分配するのは今後も困難な仕事だろう。だが、資本形成を望むのであれば、誰かがこのリスクを引き受けなければならない。・・・そして、リスク管理にもっとも長けているのがヘッジファンドだ」(S・マラビー)

医療ツーリズム、途上国の貧困、 先進国の医師不足の負の連鎖
―― 危機にさらされる医療大国キューバ

2010年8月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当 シニア・フェロー

現在のキューバの医師と患者の比率は、1万人当たり59人と、世界的にみても非常に高いレベルにある。キューバは、基礎的な疾患が人々の生命を脅かすことのなくなった世界唯一の貧困国で、この領域でのキューバのパフォーマンスは他の追随を許さない。キューバは他の途上国へと医師を派遣し、いまや、医療関係者がキューバにとって最大かつ最善の「輸出品」だ。先進国からの医療ツーリズムの著名な目的地の一つでもある。チェ・ゲバラやフィデル・カストロの肖像画さえなければ、キューバの外国人用病院はヨーロッパや北米の一流クリニックとなんら変わらない。だが、問題もある。先進国との経済格差ゆえに、ひとたび対キューバ制裁や旅行規制が解除されれば、十分な手当を与えられていない有能な医師や看護婦が医師不足に悩む先進国へと一気に流出し、キューバの医療体制は崩壊の危機に直面する恐れがある。

ウクライナを ヤヌコビッチ大統領から救うには

2010年8月号

アレクサンダー・モティル ラトガーズ大学政治学教授

最終的に「ドタバタ劇場」と揶揄(やゆ)され、人々の期待を裏切る結果に終わった「オレンジ革命」を経て、ウクライナに誕生した新しい指導者は誰だったか。それは、皮肉にも、一度は手にしたかにみえた大統領ポストをオレンジ革命によって奪い取られたビクトル・ヤヌコビッチだった。ヤヌコビッチは、過去のマイナス・イメージを払拭する「民衆のための国、ウクライナ」という絶妙なスローガンを唱えて2010年2月の選挙でついに勝利を手にした。しかし、ヤヌコビッチは、まるでロシアへの忠誠を示すかのようなウクライナに不利な協定を結び、いまや国を裏切った指導者という烙印を押されている。しかも、適材適所とはかけ離れた政治的任命で組織されたヤヌコビッチ政権には、現在のウクライナに必要な経済改革を実行する能力も意思もない。人々の怒りと不満が行き所を失う前に、欧米、そしてロシアは、ヤヌコビッチに対して路線変更を迫り、混乱への道からウクライナを救い出さなければならない。

オバマ外交の正念場
―アフガンとイラン

2010年8月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会(CFR)会長

ロシア、中国との大国間関係を巧みに管理しつつも、オバマ政権は、成功する見込みの乏しいアフガンに大きすぎる投資をしているし、中東和平プロセスにも打開の兆しはない。それどころか、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラはロケットの調達を強化しており、「過去のケースから言えば、ここから情勢はさらに悪化していった」とリチャード・ハースCFR会長は中東情勢の今後に警鐘を鳴らす。アフガン同様に、オバマ政権にとって最大の課題の一つであるイラン問題については、アメリカとイスラエルが「イランが核兵器の開発に向けてどの程度まで歩を進めるのを許容するか、・・・(許容ラインを超えた場合に)それに対してどのような対策をとるかに関する決定をいつ下すか」が問われており、もはや、ポイントは「そうした決定を下すかどうかではない」とハースは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)。

新たな核拡散潮流を阻止するには
――北朝鮮、イランよりも、周辺国への核開発の連鎖を封じ込めよ

2010年8月号

グレゴリー・シュルテ 前国際原子力機関・ ウィーン国際機関米政府代表部大使

核拡散を阻止しようとする国際的な試みは、多くの場合、北朝鮮やイランの核の野望を封じ込めることに焦点が合わせられている。だが、このやり方を続けてもおそらくうまくはいかない。制裁や交渉をさらに試みても、北朝鮮やイランの現在の指導者たちの計算を変えることはできないからだ。むしろ、今後、核開発を試みかねない諸国に対する監視と説得を重視し、北朝鮮とイランに対しては、外交、制裁措置を、内からの変革を促すように戦略を再設計する必要がある。認識すべきは、いまや、特定国による核開発だけでなく、多国間による核開発の試みに備えていく必要があることだ。これ以上の核拡散を阻止するには、核施設の有無を突き止めるだけでなく、核開発の動機、核武装の模索の決断を促した計算についても解明を試みなければならない。核兵器を保有することによって得られると一般に考えられている恩恵と価値を引き下げ、新たな核の脅威に直接的にさらされている国が安心できるような安全保障環境を提供すれば、拡散のリスクを低下させることができるだろう。

ホノルル、ハーバード、ハイドパーク
―― バラク・オバマの政治的変遷

2010年8月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

アメリカの教育システムは人を故郷から遠ざけるようにできている。その狙いは青年をアイオワ州から連れ出すだけでなく、アイオワ州を青年の心の中から追い出すことにある。だが、アメリカで教育を受けて政治の世界を志す者は、このプロセスを逆戻りしなければならない。・・・クリントンはアーカンソー州で、どうしたら現地の人々と心を通わせることができるのか、何を話せばいいのか、そして何を話してはいけないのかを学んだが、ホノルル、ケンブリッジ、シカゴでの経験から、オバマがこれらを学ぶのは無理があった。ニューイングランドの改革主義思想の洗礼を受けているオバマが人種問題を超えた候補者となるには、まず人種問題を正面から受け止め、黒人の文化的背景を身につける必要があったし、ニューイングランド思想に反発するポピュリストにも対処していく必要があった。・・・

中国の北朝鮮路線は一枚岩ではない

2010年8月号

共同議長 チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
エヴァンズ・リヴィア コリア・ソサエティ前会長
スコット・スナイダー 米外交問題非常勤シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

プレサイダー
デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長

北朝鮮の学者、専門家、エンジニア、技術者に別の考え方、別の世界観があることを気づかせることほど、効率的で費用対効果の高いやり方はない。そのための投資をする価値はあるし、今回のリポートのハイライトの一つは、交流を通じて、北朝鮮の認識を内から変化させることを提言したことだ。(E・リヴィア)

タスクフォースは、制裁措置の継続実施を求めつつも、特にミサイル問題についての米朝二国間交渉も検討すべきだと提言している。実際、ミサイル技術を完全にマスターすれば、北朝鮮の地域的な脅威は本物になる。(S・スナイダー)

交渉、6者協議という側面では、われわれは大きな間違いを犯してきた。どうせ、北朝鮮は交渉をひっくり返すのだから、もう交渉するのは止めて、好きにさせればいいと判断してしまった。これは完全な間違いだった。(C・プリチャード)

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