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論文データベース(最新論文順)

漂流する日本の政治と日米同盟

2011年9月号

エリック・ヘジンボサム ランド研究所シニア・ポリティカルサイエンティスト
エレイ・ラトナー ランド研究所アソシエート・ポリティカルサイエンティスト
リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授

もはや日米関係が未来を明確に共有しているとは言い難い。改革によって(官僚主導から政治主導への)制度上の明確な権限移譲が実現するどころか、むしろ政治家の抗争、政治家と官僚の抗争が誘発され、その結果、権力の空白が生じ、政府の政策決定能力が損なわれている。これが日米関係、日米同盟にとって何を意味するかを考えなければならない。アメリカは日本に国益を有しているし、日本が困難な状況に陥った場合には、手を差し伸べる道義的な責任も負っている。だが、日本の先行きは依然として不透明で、しかも、いまや国防予算削減の時代にある。ワシントンはアジアにおける重要な目標を定義し、それに応じて資源を振り分けていくことを考えるべきだ。日米同盟を守っていくのが最優先課題でなければならないが、ワシントンは他の地域的なパートナーとより緊密に協力していく態勢を整えておくべきだろう。

CFRインタビュー
紛争介入戦略の終わり
―― 予算削減に応じた対外コミットメントの見直しを

2011年9月号

リチャード・ベッツ 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

おそらく国防予算に大なたが振るわれるのは避けられない。われわれの軍事的なコミットメント、能力、資源、戦略をバランスのとれたものにしなければならない。予算を削減しなければならないのなら、バランスをとるためにコミットメントを引き下げるしかない。アメリカは常設軍を持っていなかった第二次世界大戦前の状況へ回帰していくべきだろう。訓練、研究・開発、組織構造、メンテナンスを重視し、状況が変わり、世界情勢が悪化した場合には、戦力増強のベースになるこれらの軍事インフラを用いて、戦力を迅速に動員していくやり方に切り替えていくべきだ。特に、高度な先端技術を用いた戦闘機、戦艦、大規模な兵器システムの導入には慎重でなければならない。われわれの軍事技術領域における優位を可能な限り維持するために、研究・開発は続けるべきだが、国際情勢が悪化し、先端兵器が必要になるまでは、そうした兵器を大規模に配備すべきではないだろう。

新しい朝鮮半島を思い描く
―― 毅然たる態度で南北間の信頼を形作る

2011年9月号

朴槿恵(パク・クネ)
韓国ハンナラ党前党首

北朝鮮と韓国は互いに相手を信頼していない。これが、朝鮮半島における真の和解を長く阻んできた。残されていたわずかな信頼さえも、2010年に北朝鮮が起こした一連の事件によって消失してしまった。・・・・・・とはいえ、「片手では拍手できない」ということわざが韓国にある。南北間の平和も双方が努力しなければ実現しない。この半世紀以上にわたって、北朝鮮は国際的規範を無視し続けてきた。もちろん、平壌の挑発行動にはソウルは毅然と対処しなければならないが、一方で、両国間の関係改善の新たな機会には開放的な態度をとるべきだろう。いまや南北間の信頼は地に落ちているが、逆に言えば、信頼関係を再構築していく機会を手にしていると考えることもできる。朝鮮半島を紛争ゾーンから信頼のゾーンへと変えるために、韓国は信頼構築政策(trustpolitik)をとり、グローバルな規範に基づき、ともに信頼できる期待を育んでいかなければならない。

食糧危機、ドル安、金融危機に翻弄される人道援助
―― なぜ支援がそれを必要としている人々に届かない

2011年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

飢饉がアフリカ東部を襲い、緊急食糧支援、人道支援が必要とされているにも関わらず、必要としている人々のもとに支援がうまく届いていない。理由は多岐にわたる。2002年と現在の価格を比較すると、米の国際価格は204%、小麦は164%、トウモロコシは260%上昇していることからも明らかなように、穀物価格が軒並み上昇している。しかも、援助が通常ドル建てで行われるために、昨今におけるドル価値の低下は、同じドルで調達できる穀物の量が小さくなっていることを意味する。さらに、人道的危機に対しては大規模な援助をしてきたイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドなどは、国が破綻するのを避けるために対外援助を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれている。しかも、武装勢力が人道支援活動にとって障害を作り出している。これらは、アフリカの角地域でかつてなく大規模な飢饉が起きているにも関わらず、食糧援助の対象にできる人々の数が大きく減少していることを意味する。問題は、こうした複合危機解決の糸口が見えないことだ。・・・

企業の知的財産を盗み出すサイバーセフトの衝撃

2011年9月号

ドミトリ・アルペロビッチ マカフィー脅威研究担当副社長

サイバー空間でのスパイ活動、そしてサイバーセフト(経済・金融情報の窃盗)がかつてない規模で行われている。膨大な経済情報や知的財産が企業から盗み出されて、ライバル国、あるいは潜在的敵国の経済にそのまま利用されている。この状況が、過去6年、あるいはそれ以上にわたって続いている。いまやその脅威は、国家レベルの経済繁栄を脅かすほどに大きくなっている。スパイ活動やサイバーセフトは経済のすべてのセクターで横行している。・・・現状を放置すれば、国の経済の存続を左右する深刻な脅威になり、経済全体が破壊されかねない。問題は、サイバースパイやサイバーセフトの被害にあっても、企業が事件の公表をためらっていることだ。

パリとベルリンの経済官僚たちは、「この10年にわたって、周辺国は生産性が伸びていないにも関わらず、賃金レベルを引き上げたのが間違いだった」と批判するが、考えるべきは、周辺国がその資金をどこから調達したかだ。資金の出所はフランスとドイツの銀行だ。つまり、(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)などの周辺国の一つでも債務を履行できなくなれば、危機はEUの主要国へと瞬く間に広がりをみせていく。そして、ヨーロッパの危機はMMFとCDSのエクスポージャーによって、アメリカの銀行にも非常に深刻なダメージを与え、ヨーロッパとアメリカのリセッションはますます深刻になる。ここで、中国は何をするだろうか。のどから手が出るほど欲しがっているあらゆる技術、宇宙工学技術、金融資産をヨーロッパから非常に安い価格で入手するかもしれない。中国が台頭し支配的な影響力を持つようになるのが間近なのか、遠い将来なのかはともかく、欧米はグローバルな金融システムを、自分たちにダメージを与え、中国を大きく利することになる装置へと変貌させてしまっている。

CFRインタビュー
なぜ、パレスチナは国連に活路を求めたのか

2011年9月号

エドワード・デレジアン ジェームズベーカー公共政策研究所ディレクター

パレスチナは国連安保理、あるいは総会において国家として承認を取り付けることで、イスラエルと同じ交渉上の立場を手に入れたいと考えているようだ。これによって(エルサレムの帰属、パレスチナ難民の帰還権、ユダヤ人入植地、国境画定など)最終地位問題を前倒しして交渉できるようになる。・・・パレスチナが今回のような行動に出たのは、イスラエルの入植地問題(住宅建設)が(イスラエルとパレスチナ間だけでなく、アメリカとイスラエル間の)大きな対立の争点となったことで、ワシントンの路線が行き詰まってしまい、交渉の進展が望めなくなったためだ。・・・・

イギリスの暴動と緊縮財政路線
―― 緊縮財政と階級政治の政治学

2011年9月号

マティアス・マタイス アメリカン大学准教授

2011年夏、イギリスの複数の都市で起きた暴動の背景には、財政・債務危機と政府の緊縮路線に対する反発があった。暴動は、緊縮財政路線への不満と階級政治が重ね合わせられた結果の社会反乱であり、その構図は、30年前にイギリスで起きた暴動を彷彿とさせる。当時のサッチャー首相はこの危機に強硬な治安対策で対処した。その後、小さな政府を目指すネオリベラリズム路線が消費の拡大をもたらし、経済を浮遊させたことで、最終的に危機は克服された。だが、いまは消費の拡大など望みようもない状況だ。政府は銀行救済のために介入したが、貧困層への救済策はとらなかった。それどころか、福祉と社会保障プログラムを打ち切らざるを得なくなった。イギリスが陥っている事態は、他の諸国にとっても他人(ひと)事ではないだろう。結局のところ、大きな社会格差、低成長、そして緊縮財政はイギリスに特有のものではない。いまや主要先進国を含む、多くの諸国が似たような状況に直面しているのだから。

米財政を左右する医療保険制度改革

2011年9月号

ピーター・R・オルザック シティグループグローバルバンキング担当副会長

現在から2050年までに、連邦政府の医療関連支出はGDPの5・5%から12%以上にまで増大し、財政を大きく圧迫する。国際社会におけるアメリカのポジションは、この医療コストの爆発的な増大をうまく管理できるかどうかに左右される。この問題をうまく管理できなければ、アメリカは厳しい財政危機に直面するか、医療部門以外への投資能力を失う事態に追い込まれる。医療制度を根本的に見直し、エビデンスと医療の質に基づき、医師を含む医療プロバイダーがより良いツールを患者に提供し、医療の価値と質を高めるインセンティブを持つような医療制度を形作る必要がある。現在の医療保険制度改革がうまく機能すれば、2028年以降は医療改革法によって連邦政府の医療支出全体が少しずつ減少し始める。だが、そこにたどり着くには、非常に困難で複雑なプロセスをクリアしていかなければならない。

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