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ロシアに関する論文

Z・ブレジンスキーとの対話
――イラン抑止、ロシアの欧米化、 アジア外交の非軍事化を

2012年5月号

ズビグニュー・ブレジンスキー カーター政権大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、サム・ファイスト CNN 副会長

われわれがかつてソビエトを抑止し、現在も北朝鮮を抑止できているとすれば、イランを抑止できないと考える理由はあるだろうか。イランに対しては空爆ではなく外交と抑止路線を重視していく必要がある。・・・一方、ロシアについては、この国で市民社会が台頭していることに注目すべきだろう。帝国としての過去にこだわるプーチンも、市民社会が作り出す圧力の前に、路線を見直さざるを得なくなるはずだ。・・・・東アジアについては、中国との衝突を避けるべきで、アメリカはこの地域の軍事紛争には関与すべきではない。必要なのは、紛争を阻止するために介入することだ。もちろん、今後も維持していくべき軍事的利益も残されているが、こうした路線の前提として日本と中国の和解を促す必要がある。われわれの極東政策における軍事的色彩を弱めていく必要がある。・・・・

歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を

2012年2月号

フランシス・フクヤマ
スタンフォード大学シニアフェロー

社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。

追い込まれたウクライナの危険な賭け
―― ロシアかEUか、それとも革命か

2012年1月号

ラジャン・メノン 米リーハイ大学教授(国際関係) / アレクサンダー・J・モティル 米ラトガーズ大学教授(政治学)

無策、無能で、政治腐敗にまみれ、権威主義的。こうした形容詞で語られるウクライナのヤヌコビッチ政権は、市民の支持を失っている。2011年半ば、追い詰められたヤヌコビッチ大統領は、もっとも痛みが少なさそうな安易な打開策を選んだ。ヨーロッパの価値を無視したまま、EUに接近する策をとったのだ。しかも、プーチンが標榜する関税同盟への参加を拒否しておきながら、ロシアとも良好な関係を維持しようと究極の二股をかけている。だが国内情勢からみると、こうした打開策はすでにタイミングを失している。ヤヌコビッチの最大の成果とは、世論を反ヤヌコビッチでまとめあげたことくらいで、市民の怒りはどうみても行き場を失っている。このままでは政府機能が麻痺し、社会不満が拡大し、2012年のどこかの段階で市民の怒りが大きな形で爆発する危険がある。

CFRインタビュー
プーチン時代の終焉か?

2012年1月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア担当シニア・フェロー

ロシアの民衆が抗議行動を展開しているのは、下院選挙の不正に対してだけではなく、プーチンが出馬を表明している3月の大統領選挙のことを気に懸け、プーチンに対する反発を強めているからだ。・・・プーチンの再出馬表明を前に、人々は「結局、プーチンがすべてを決めているわけで、自分たちの意見など考慮されることはない」と考えるようになった。この社会風潮のなか、プーチン陣営は3月の大統領選挙で決選投票に持ち込まれるのではないかと心配し始めている。実際、プーチンが二人の候補のうちの一人にすぎなくなった環境では非常に多くのロシア人が、反プーチン票を投じるかもしれない。・・・ロシアにおける選挙の特徴は、何かに対する反対票が大きな流れを作り出すことにある。これまでプーチンは、何かの大義や敵を特定して民衆を動員する政治的才能をいかんなく発揮してきた。最初の大統領選挙ではチェチェンの分離主義を敵として引き合いに出し、2回目の選挙ではオリガーク(新興財閥)を、(後継者の)メドベージェフが勝利を収めた3度目の選挙では、欧米をやり玉に挙げた。だがいまや、民衆を動員できるスローガンは「反プーチン」そのものになりつつある。

「競争的権威主義」国家は帝政ドイツと同じ道を歩むのか
―― ビスマルクの遺産と教訓

2012年1月号

マイケル・バーンハード フロリダ大学政治学教授

異なる社会集団が権力を競い合うことは許容されるが、公正な選挙という概念は踏みにじられ、支配エリートによって野党勢力は抑え込まれ、リベラルな規範などほとんど気にとめられることはない。ロシアからペルー、カンボジアからカメルーンにいたるまで、帝政ドイツにルーツを持つこの「競争的権威主義」体制をとる国はいまも世界のあらゆる地域に存在する。かつてのドイツ同様に、現在の競争的権威主義国家も世界を揺るがす衝撃を作り出すことになるのか、それとも、民主化への道をたどっていくのか。これを理解するには、ビスマルクが育んだ政治文化が、なぜ彼の没後数十年でドイツを壊滅的なコースへと向かわせたのかを考える必要がある。結局、「支配エリートたちが完全に自由な政治制度がもたらす政治的不透明さに対処していく気概を持つかどうか」が、競争主義的権威主義体制を民主化へと向かわせるか、それとも独裁者の聖域を作り出すことになるのかを分けるようだ。

ロシアの「死にゆく社会」
―― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

2011年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所議長

この20年間、ロシアでは、戦時でもないのに人口が減少するという極めて異例の現象が続いている。総人口は減り、死者の数が増え、人的資源が危険なまでに損なわれている。都市化が進んだ教育水準の高い社会で、しかも平時において、なぜこれほど死亡率が高いのか、その理由は謎に包まれている。このままでは、人口の減少がロシアの経済と軍事力を大きく損なうのは避けられない。問題は、ロシア政府が人口減少トレンズを認識しつつも、危機の深刻さを過小評価し、対策の効果を過大評価していることだ。人口減によって、モスクワは世界経済のパイに占める比率が小さくなることを覚悟しておくべきだし、すでにロシアの軍事力、特に兵力面で大きな制約が作り出されている。自信を失ったモスクワはいずれ無謀な対外行動をとるようになるかもしれない。兵力の低下と軍事技術の衰退に直面したロシア軍の高官たちが、核兵器使用の敷居を低くする恐れは十分ある。・・・

原発事故が子供たちと経済に与えた影響
―― チェルノブイリの教訓
(1986年発表論文)

2011年9月号

ベネット・ランバーグ カリフォルニア大学国際戦略センター 上席リサーチアソシエーツ

チェルノブイリ事故の放射能はヨーロッパへと飛散し、大陸に大きな懸念と心理的なトラウマを作り出した。欧州経済共同体(EEC)は、チェルノブイリから半径1000キロ以内の地域・国から生鮮食料品の輸入を禁止し、公衆衛生当局は、異なる放射線量基準を用いて、チェルノブイリの周辺地域で生産された野菜やミルクが消費されるのを阻止するために様々な措置をとった。・・・低レベル放射線被曝がどのような影響を人体に与えるかについては、専門家の間でもコンセンサスはない。われわれが自然界から放射能を日常的に受けていることは誰もが知っているし、特定の放射性物質は体内でも生産される。必ずしも無害とは言えない、こうした「バックグラウンド」放射線量のレベルは一般に年間100ミリレム(=1ミリシーベルト)と考えられている。この数字が、人工放射線被曝のベースラインとされたにすぎない。・・・・

CFRインタビュー
メドベージェフのロシアからプーチンのロシアへ

2011年9月号

スティーブン・セスタノビッチ 外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

2000年から2008年まで大統領を務めたプーチンのロシアでの人気は依然として高い。だが、多くの人は、彼が大統領に返り咲けば「時代からの逆行になる」と考えている。メドベージェフが近代国家の建設にコミットしているのに対して、プーチンは「過去の人」とみなされており、今後、メドベージェフは自らの改革アジェンダをめぐって、どのように首相としての権限を利用していくか先の読めない状況に直面する。さらに、メドベージェフと対立して財務相を辞任したアレクセイ・クドリンが野党勢力の指導者に転じれば、非常に重要な政治的台風の目になる可能性がある。この場合、プーチンがこれまでうまく束ねてきたエリート層に亀裂が生じることを意味するからだ。プーチンもメドベージェフも、いったいどの程度の政治家が今後クドリンに続くかを考えざるをえなくなるだろう。

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