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経済・金融に関する論文

貿易合意そのものではなく、 貿易合意の中身が問題だ

2008年10月号

オースタン・グールズビー バラク・オバマ米大統領候補・経済政策顧問

 バラク・オバマ民主党大統領候補の経済政策首席顧問を務めるオースタン・グールズビーは、「これまでの自由貿易合意の内容を見直す」と公言している「オバマ候補は保護貿易論者」だという共和党の言い分は間違っていると指摘し、次のように反論している。
 「オバマ候補は(貿易合意を再交渉して)労働と環境に関する基準を貿易合意に埋め込んでいくべきだと考えている。……多くの自由貿易合意文書は千ページにも達するが、そのうちの980ページは個別企業や独占企業への利益供与に関する記述であり、とても経済学者が考える自由貿易とは言えない内容だ」。
 また、グールズビーは共和党が求めている国内油田の増産についても、国内で増産を試みても焼け石に水で、むしろ、代替エネルギー、再生可能エネルギーへの投資を増やすとともに、エネルギー使用効率の向上とエネルギー消費の削減という二つの目標を模索していくべきだとコメントした。
 聞き手は ジョアンナ・クロンスキー(www.cfr.org の キャンペーン2008スタッフ)。

ベン・ステイル、セバスチャン・マラビーが 分析する米金融市場混乱の余波

2008年10月号

スピーカー ベン・ステイル ・・・ 米外交問題評議会・国際経済担当ディレクター
司会 セバスチャン・マラビー ・・・ 米外交問題評議会・地政経済学センター所長

 連邦準備制度理事会(FRB)が不良債権の多くを救済するようになり、FRBのバランスシートがさらに毀損されていけば、市場は警戒しだす。FRBが、金融機関、あるいは金融機関の資産の一部を、資金を投入して支えことで市場を安心させようと試みれば、大がかりなドル離れが起き、他の通貨建ての投資へと向かう可能性がある。例えば、ユーロ建ての資産や金への投資が進むだろう。(B・ステイル)

 人民元レートを低く抑えることで、輸出産業のブームを支えて、「雇用製造装置」を動かし、繁栄を持続することが、中国政府の正統性を支える最善の方法だと北京は考えてきた。だが一方で、人為的に人民元の価値を長期的に低くとどめれば、経常黒字は増え続け、さらに膨大な外貨準備を抱え、結果的に、資金をアメリカに注ぎ込むことになる。だが、これは中国にとっていいことだろうか。依然として貧しく、道路を建設し、インフラを整備する必要があるにもかかわらず、中国の多くの資金がアメリカのドル建て資産へと向かっている。……これまでのやり方に対する反対意見も出てきている。(S・マラビー)

自由貿易は雇用創出に貢献できる

2008年10月号

ジョン・B・テイラー ジョン・マケイン米大統領候補・経済政策上級顧問

共和党大統領候補ジョン・マケインの経済政策上級アドバイザーを務めるジョン・B・テイラーは、雇用を創出し、アメリカ経済を復活させるには力強い貿易政策が必要だとしつつも、一方で、「マケイン候補は失業者対策を見直し、競争環境、技術革新、生産体制の変化のあおりを受けて、雇用を失った人々に救いの手を差し伸べるつもりだ」とコメントした。
アメリカの競争力を強化するには、法人税率の引き下げ、自由貿易合意、金融改革が不可欠だと指摘した同氏は、エネルギー資源については、マケインは国内の石油生産の増強を試みるとともに、原子力、バイオ燃料、環境保護も重視していると語った。
 聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgのデピュティー・エディター)。

CFRブリーフィング
F・バーグステンが分析する中国経済の脅威と機会

2008年6月号

スピーカー
C・フレッド・バーグステン/国際経済ピーターソン研究所所長
司会
セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会・地政経済学研究センター所長

中国は、為替政策、貿易、エネルギー政策、対外援助などの一部の領域をめぐって、現在の経済秩序の規範、指針、ルール、制度的アレンジに反するような行動をとっている。中国が既存のシステムを混乱させる戦略の一環として、システムの一部に挑戦していると言うつもりはないが、そこにいるのはたんなる経済超大国ではない。おそらくは、現在のゲームルールに則して行動することに乗り気でない経済超大国だ。…だが最近では、国際経済システムが必ずしもうまく機能しなくなっていることも考えなければならない。実際、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、主要7カ国(G7)などの伝統的な機関はこの10年にわたってうまく機能していない。つまり、中国の挑戦を別にしても、現在のシステムを改革し、変化させていく必要がある。この意味では、中国の挑戦をよい刺激とみなすこともできる。だが、どの方向に変化させて、努力していくかが問われる。

CFRインタビュー
戦争と経済
――イラク戦争のもう一つの問題

2008年5月号

ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス副会長

歴史的にみて、大がかりな戦争を始める前には、戦費のどの程度を税金でまかなえるか、どの程度の債務を背負い込むことになるかについての熱い論争が展開されてきた。南北戦争前には、25%を税金で支払い、75%を借金でまかなうことが合意されていた。
 第二次世界大戦期にも、税金と借金の比率を半々とすることで合意が形成されていた。だが、イラク戦争の場合、そうした戦費調達の議論は一切行われなかったし、同世代で大半の重荷を担うという話もなかった。それどころか、減税の話がでているし、通常、戦期には抑え込まれるはずの国内支出もイラク戦争期には増大している。
 イラク戦争の戦費の多くは透明性に欠けるし、いかにして戦費を調達するかについての議論も事前には行われなかった。今後、われわれはイラク戦争をめぐってこの点を問題として取り上げていく必要がある。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

中国が世界貿易機関(WTO)の前身である、関税貿易一般協定(GATT)への加盟申請をしたのは1986年。そして、実際に加盟を果たしたのは2001年だった。……なぜ各国政府は、このような面倒な手続きをこなしてまで、かつては「金持ちクラブ」と揶揄されていたWTOに加盟しようとするのだろうか。
 ……実際には、各国の政治指導者が根本的な改革の必要性と必然性に気づき、外部からの支援がなければそのような変革を成し遂げることができないことを認識したことが、WTOへの加盟を模索した大きな理由だろう。政治指導者がある種の外圧を必要とし、WTOがそれを提供したと考えるべきだろう。
 ……WTO加盟をめざすことで得られる自己抑制によって良い統治が促進されることになり、その結果、経済的繁栄がもたらされることになる。

中国とインドはアフリカをめざす
―― 中印との貿易をアフリカの経済開発につなげるには

2008年4月号

ハリー・G・ブロードマン 世界銀行アフリカ地域経済顧問

アフリカと中国、インドの貿易がこれまでにないペースで拡大しており、アフリカの指導者は、現在の中国とインドとの経済関係をもっとうまく利用して成長に弾みをつけるべきだろう。中国とインドのアフリカへの進出拡大は、アフリカ諸国が限られた一次産品への極端な依存状況から脱し、労働集約的な軽工業品とサービス産業へとシフトしていく大きな機会を提供している。この機会を生かすには、改革を通じて市場競争力や統治の質を高め、インフラを整備し、好ましい投資環境を整備しなければならない。改革がきちんと実行されれば、中国とインドのアフリカへの経済進出は、世界の最貧層の3億人が暮らし、最も困難な開発上の問題を抱えるアフリカの発展と世界経済への統合を実現するためのかつてない呼び水になるかもしれない。

コペンハーゲン・コンセンサス
――デンマークでアダム・スミスを読む

2008年4月号

ロバート・カットナー
アメリカン・プロスペクト誌共同編集長

現在のデンマークモデルの中核は、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と雇用保障(ジョブ・セキュリティー)のバランスをうまく組み合わせた「フレキシキュリティー」という概念、つまり、労働市場の柔軟性と雇用保障を両立させていることにある。労使協調路線がとられ、極端に高い課税率も結局は、社会サービスとして市民に還元されている。世界でもっとも平等で社会格差が小さく、それでもきわめてリバタリアンな思想を持つこの国は、どのようにして平等と効率、社会的正義と自由貿易を両立させているのか。グローバル化がつくりだす問題に対処するために、資本主義国がデンマークモデルを取り入れる余地はあるのか。

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