本誌一覧

2026年6月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2026年6月号

購読はこちら

フォーリン・アフェアーズ・リポート2026年6月号 目次

覆された東アジアのパワーバランス

  • 北朝鮮の驚くべき台頭
    金正恩の勝利

    チュン・H・パク

    雑誌掲載論文

    驚くべき運命の逆転によって、現在の北朝鮮はいかに想像力たくましい専門家も予想できなかった形で台頭し、世界ののけ者から世界的なパワープレーヤーへと変貌を遂げている。新たなネットワークと能力を保有し、核保有国であり続けることへの黙認も存在する。北朝鮮の兵士がウクライナ戦争でロシア兵と共に戦い、いまや北朝鮮は反欧米陣営の一員として歓迎されている。新たな立場と能力を得て、近隣諸国を脅し、威圧する危険は高まっている。実際、金正恩は米韓同盟を試し、北京とモスクワがそれにどう反応するか見極めようと、具体的な行動をみせるかもしれない。

  • 日韓の核武装論を再検証する
    核拡散の連鎖を防ぐには

    ビクター・チャ、クリスティ・ゴヴェラ

    雑誌掲載論文

    韓国での世論調査では、核武装への支持率が75―80%に達し、日本でもかつてタブーとされてきた核問題についてオープンな議論をすることに、市民の56%以上が賛成している。こうしてメディアは、両国の核武装論を大きく取り上げるようになった。だが、実際の政策に大きな影響力をもつ両国の戦略エリートの多くは核保有に慎重な態度を崩していない。むしろ、単独で核を保有するよりも、アメリカとの同盟関係を通じた「核の共有」を模索する方が好ましいと考えている。ただし、こうした現状も、駐留米軍の規模が削減されるか、あるいは、日韓のどちらかが、核保有へ動けば、大きく揺るがされる危険がある。

  • 朝鮮半島のデタントを実現するには
    変化した北朝鮮にどう向き合うか

    ジョン・デルーリ

    Subscribers Only 公開論文

    韓国が、北朝鮮との外交交渉を実現するには、「北朝鮮の完全非核化」や「朝鮮半島の統一」という非現実的なレトリック、そして「制裁を通じて北朝鮮の行動を変えられる」という幻想を放棄しなければならない。一方で、トランプの劇場型アプローチを李大統領の現実主義的なアプローチで補完する必要もある。金正恩は北朝鮮の経済問題と将来の繁栄をもっとも気にしている。半島統一という非現実的な展望を退け、北朝鮮の完全な非核化に固執するのをやめ、平壌に健全な経済発展への道筋を提示できれば、デタントの可能性は開けてくる。

  • トランプと金正恩
    同盟国は悪辣な米朝取引に備えよ

    ビクター・チャ

    Subscribers Only 公開論文

    国際社会は北朝鮮の兵器開発・増強路線を止めさせることができず、いまや金正恩はこれまで以上に多くの交渉カードを持っている。当然、ワシントンのこれまでの北朝交渉モデルは選択肢にならない。条件を受け入れさせるには、大きな譲歩を示す必要がある。それは、北朝鮮を核保有国と認め、朝鮮半島から米軍を撤退させることを含む、同盟国に衝撃を与える内容になるかもしれない。ノーベル平和賞受賞への執着、ウクライナでの戦闘を終わらせたいという願望、そして金正恩に独特の友達意識をもつトランプは、北朝鮮の核保有を認め、同盟国を売り渡し、プーチンをなだめるような取引を、すべて「アメリカ・ファースト」の名の下に行うのかもしれない。

  • 韓国の核武装を認めよ
    北朝鮮の脅威とアメリカの干渉

    ロバート・E・ケリー、キム・ミンヒョン

    Subscribers Only 公開論文

    大陸間弾道ミサイルを開発した平壌は、いまや核兵器でアメリカの都市を攻撃する能力をもっている。このために、アメリカが(自国が反撃されるリスクを冒しても)韓国への安全保障コミットメントを果たすかどうかがいまや問われている。しかも、米韓同盟を批判してきたドナルド・トランプが大統領としての2期目を迎える。北朝鮮の核の兵器庫が拡大し、トランプ政権下のアメリカが後ろ盾としての信頼を失うにつれて、韓国の市民やエリートの核武装オプションへの支持は高まる一方だ。問題は、ワシントンが韓国の核武装路線に否定的なことだ。同盟国が危険にさらされたままの状態にあることを求めるのではなく、ワシントンは、ソウルが安全保障への道を自ら見つけることへの障害を取り払うべきだろう。

  • 同盟の流動化と核拡散潮流
    次の核時代に備えよ

    ギデオン・ローズ

    Subscribers Only 公開論文

    最近の展開からも、ウクライナやその他の国々への防衛支援をめぐるアメリカのコミットメントが完全には信用できないことは明らかだろう。ワシントンが安全保障コミットメントを果たすとは信用しなかったフランスのドゴール大統領は正しかった。拡大抑止(核の傘)はまやかしであり、それを信じた人々はお人好しのカモだった。なぜフランスに倣って、核戦力を獲得して、国の安全を確保しないのかと多くの国がいまや考えているはずだ。このまま秩序が解体し続ければ、韓国は、おそらく、この拡散潮流に乗って最初に核を保有する国になるだろう。ソウルが核武装すれば、東京もそれに続き、最終的にはオーストラリアもこれに加わるかもしれない。ヨーロッパでも同じ流れが生じつつある。

  • 米同盟諸国のジレンマ
    リスクヘッジを模索せざるを得ない

    ロバート・E・ケリー、ポール・ポアスト

    Subscribers Only 公開論文

    同盟諸国はトランプのやり方に耐え、持ちこたえているようにみえる。しかし、これまで以上に状況を深く憂慮している。アメリカによる安全の保証を確信できなければ、どうなるだろうか。同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。ワシントンの支援を期待しつつも、同盟諸国は、問題発生時にアメリカがいない事態に備え、リスクヘッジを始めている。

  • 日本の核ジレンマと国際環境
    能力も資源もあるが・・・

    マーク・フィッツパトリック

    Subscribers Only 公開論文

    反核感情の強い日本の科学者コミュニティが(政府による)核開発の要請に応じるとすれば、安全保障環境が大きく悪化した場合に限られる。そして、日本の政策決定者たちが核武装を真剣に考えるとすれば、韓国が核武装するか、ピョンヤンが現在の核の兵器庫を温存したままで朝鮮半島に統一国家が誕生した場合だろう。一方で、日本が核開発に乗り出せば、北京は軍備増強路線を強化し、北朝鮮による対日先制攻撃リスクを高めるかもしれない。韓国が核開発に乗り出し、地域的な緊張が大きく高まる恐れもある。核開発への東京の姿勢は、歴史的にも、アメリカによる核抑止の信頼性をどうみるかで左右されてきた。少なくとも、トランプがそのクレディビリティを大いに失墜させているのは間違いない。

  • 同盟国の核武装で戦後秩序の再建を
    独日加の核武装シナリオ

    モーリッツ・S・グレーフラート、マーク・A・レイモンド

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンは核不拡散政策の厳格な順守を見直し、カナダ、ドイツ、日本という少数の同盟国による核武装をむしろ奨励すべきだろう。この3カ国は、合理的な政策決定と国内の安定という面で実績があるし、アメリカとその同盟国に大きな恩恵をもたらしてきた戦後秩序の再建に貢献できる。ワシントンにとって、このような「選択的な核拡散」は、パートナーが地域防衛でより大きな役割を担い、アメリカへの軍事依存を減らすことも可能にする。これらの同盟諸国にとって、核武装は中ロなどの地域的敵対勢力の脅威だけでなく、同盟関係への関与を弱めるアメリカの戦略見直しに対する信頼できる防護策となる。

分断された世界と経済安全保障

  • 経済戦争をいかに戦うか
    分断された世界と経済的繁栄

    エドワード・フィッシュマン

    雑誌掲載論文

    各国は自国の経済的影響力がどこに存在するかを特定し、ライバルに対して影響力を行使するためのツールを考案している。これは、経済的軍拡競争に他ならない。経済戦争に向けた武装を進める一方で、他国が自国に対して使用する可能性のある経済兵器に対する防壁を築いている。この状況で、世界経済が対立するブロックに分裂していくと警告する専門家もいる。しかし、より大きな危険は、あらゆる国が利己的な経済行動をとり、1930年代に世界経済を崩壊させ、世界を第二次世界大戦へ向かわせたような、混沌とした分断が引き起こされることだ。それを回避する道は存在するのか。

  • 重要鉱物という不確実性
    求められるルールと規制

    ラバ・アレズキ、フレデリック・ファンデルプルーフ、マイケル・ロス

    雑誌掲載論文

    重要鉱物を取り巻くテクノロジー進化の軌道も地政学的な構造も、誰が基準を設定し、採掘ルールを執行し、供給をめぐる紛争を裁くのかも大きな不確実性のなかにある。問題は「資源の呪縛」や中国の独占状況だけではない。実際、何にどの重要鉱物が必要とされるかは、技術の進化によって決まるために、投資判断が非常に難しい。しかも、重要鉱物資源は紛争に悩まされる領有権論争のある地域に存在することが多く、その採掘や精製は石油よりも労働集約的で、市場の風向きも短期間で変わる可能性がある。どうみても、ルールと規制を含む、重要鉱物のより大きな管理システムが必要とされている。

  • 経済安全保障国家と地政学
    デリスキングとサプライチェーン

    ヘンリー・ファレル、エイブラハム・ニューマン

    Subscribers Only 公開論文

    いまや、消費者向け電子機器が簡単に兵器化され、高性能グラフィックチップが軍事用人工知能のエンジンに転用される時代にある以上、貿易と通商を安全保障から容易に切り離すことはできない。こうして生まれたのが「相互依存世界が作り出す脆弱性を管理するプロセス」としての「デリスキング」だ。経済安全保障の新概念を実践していくには、それに対応していくための政府構造の再編に取り組まなければならない。過去は適切な指標にはならないし、現在の問題は厳格な再評価を必要としている。高度な相互依存状況にあり、安全保障上リスクに満ちた世界にうまく適合していくには、経済安全保障国家の確立に向けた大きな改革が必要になる。

  • 国家資本主義の時代
    地政学的混乱と政府の経済介入

    ジャミ・ミシック、ピーター・オルザック、セオドア・ブンゼル

    Subscribers Only 公開論文

    貿易戦争、重要鉱物の輸出規制、そして大西洋同盟の亀裂を含む、地政学的混乱が、新たな経済手段を迅速に整備することを政府に迫り、すでに各国は国家資本主義へ深く足を踏み入れている。国の経済安全保障のために、企業行動の変化を強制する必要性があると考える政府は、輸出管理制度、投資審査メカニズム、補助金制度を駆使している。ますますホッブズ的な国際環境になる現状では、これまで以上に政府介入が必要なのかもしれない。しかし、経済ルールを政治家の恣意的な気まぐれに完全に置き換えるのは、大きな地政学的過ちにつながる。強権的で不安定な国の介入は、経済活動や競争を急速に萎縮させてしまう恐れがある。

  • 兵器化された相互依存
    経済強制時代をいかに生き抜くか

    ヘンリー・ファレル、エイブラハム・ニューマン

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。

  • 重要鉱物とサプライチェーン
    クリーンエネルギーと大国間競争

    モーガン・D・バジリアン、グレゴリー・ブリュー

    Subscribers Only 公開論文

    再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。

  • 兵器化されたエネルギー資源
    復活した戦略ツールの脅威

    ジェイソン・ボルドフ、ミーガン・L・オサリバン

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンは、ロシアやイランの石油を購入する国々に厳しい制裁措置を検討し、北京は、半導体、軍事アプリ、電池、再生可能エネルギーに不可欠な重要鉱物やレアアースの輸出を定期的に制限している。いまや、世界市場そのものが分断され、エネルギーが新たに兵器化されている。各国は、エネルギーの兵器化が間違いなく引き起こす変動から市民と企業を守る方法を見いだす必要がある。リスクを減らすには、生産量を増やすだけでなく、消費量を減らし、クリーンエネルギー投資を増やさなければならない。実際、気候変動の脅威そのものよりも、エネルギー安全保障強化の必要性が、クリーンエネルギーの導入と化石燃料の使用削減の強力なインセンティブを作り出すことになるかもしれない。

  • エネルギー転換の幻
    現状認識と現実的アプローチ

    ダニエル・ヤーギン、ピーター・オルザグ、アタル・アルヤ

    Subscribers Only 公開論文

    再生可能エネルギーによる電力生産は増えているが、化石燃料による電力生産も史上最高レベルに達している。しかも、世界人口の8割が暮らすグローバル・サウスでは、「脱炭素化」の前にまず「炭素化」が進むと考えられる。つまり、現在進行しているのは、「エネルギー転換」というよりも、むしろ「エネルギーの追加」に他ならない。実際には、エネルギー転換は、エネルギーだけの問題にとどまらない。それは、世界経済全体を再構築するに等しい。経済成長、エネルギー安全保障、エネルギー・アクセスが関わってくる以上、われわれはより現実的なエネルギー転換の道筋を模索する必要がある。

  • イランショックとエネルギー安全保障
    国際市場とエネルギー自給の間

    ジェイソン・ボルドフ、ミーガン・L・オサリバン

    Subscribers Only 公開論文

    ホルムズ海峡危機を前に、多くの国が、統合されたエネルギー市場を脆弱性のルーツとみなし、エネルギー自給を模索するようになるだろう。協調的な世界秩序がほころぶにつれて、相互依存よりも、地政学が優先され、エネルギー不安が高まっているからだ。長期的には、各国が国内のエネルギー市場を保護しようとする試みが、世界のエネルギーシステムを再編していくのかもしれない。だが、エネルギー自給を高めるために、国境の内側に後退することでエネルギー安全保障を強化できると考えるのは幻想に過ぎない。むしろ、破綻することなく、ショックを吸収できるだけの強靭なシステムを構築することを目標にしなければならない。

アメリカか中国か

  • 米欧中トライアングル
    米欧対立とヨーロッパの選択

    達巍

    雑誌掲載論文

    ヨーロッパにとって、アメリカとの対立は、中国との間で抱える課題以上に大きな危険をはらんでいる。中国との対立が主に貿易などの物質的利害にかかわるものであるのに対して、アメリカとの対立は欧州統合やリベラルな価値といった「アイデンティティ」そのものにかかわってくるからだ。実際、欧州右派を擁護するトランプ政権の攻撃的ナショナリズムは、ヨーロッパの統合プロジェクトそのものを脅かしている。アメリカに対抗するために、ヨーロッパが「中国カード」を切る可能性、あるいは、中国が「ヨーロッパカード」を切る可能性はどれくらいあるのか。それとも、世界は文明の衝突へ向かっていくのか。

  • 米中関係と同盟諸国
    トランプリスクと中国リスク

    マイケル・コブリグ

    雑誌掲載論文

    「略奪的な覇権国」のように行動するアメリカの圧力にさらされている各国の政治家たちは、リスク分散を図る以外に手はないと感じている。たしかに、中国の習近平国家主席と会談すれば、自分には他の選択肢があるというシグナルをトランプに送れる。だが北京に赴いても、中国への恭順が、経済協力の条件とされる。中国とより深く関われば、北京への従属というリスクを抱え込む。トランプが罠にはまり、アジア地域でのアメリカによる安全の保証や技術管理といった永続的な戦略利益を犠牲にして戦術的合意を優先すれば、習近平は、アメリカも北京に歩み寄る用意があると確信することになる。

  • 中国とヨーロッパの地政学
    米欧対立を中国は生かせるか

    ジュード・ブランシェット

    Subscribers Only 公開論文

    「トランプはプーチンとの関係改善に熱心で、アメリカの伝統的な同盟国に反感を抱き、貿易戦争が国内政治に及ぼす影響を軽視している」。北京は現状をこのようにみている。事実、米欧関係が大きな圧力にさらされているために、習近平は、ヨーロッパ各地に外交官を派遣して、中国を信頼できる代替パートナーとして売り込み、安定した経済協力の機会を提供できると強調している。実際、ウクライナの戦後開発を支援する上で、中国ほど有利な立場にある国はないだろう。各国がアメリカの後退の可能性に備えてリスクヘッジを試みるなか、北京は頼れるパートナーとして自らを位置づけたいと考えている。

  • ヨーロッパを取り戻す
    対米依存の呪縛を解くには

    マティアス・マティス、ナタリー・トッチ

    Subscribers Only 公開論文

    欧州連合(EU)は、アメリカに屈服するのをやめて、より大きな主権を構築しなければならない。ヨーロッパの運命はヨーロッパが握っているという感覚を取り戻す必要がある。戦略的自律性を強化することは、必ずしも、ワシントンとの対立や米欧同盟の放棄を意味しない。重要なのは、必要なときは「ノー」と言い、利害が一致しないときは独自に行動し、ヨーロッパ内で一貫性のあるプロジェクトを維持する能力をもつことだ。防衛体制の強化、貿易の多角化、ヨーロッパ独自の対中政策、そしてエネルギー転換と自律の強化という、構想を進めていく必要がある。

  • 地政学的「欧米」の終焉
    アメリカの離脱とポスト欧米世界の行方

    スチュワート・パトリック

    Subscribers Only 公開論文

    信頼できる地政学的単位としての欧米の終焉は、アメリカとかつてのパートナーが異なる行動と議論を示し、対立する状況を頻繁に出現させることになるだろう。ワシントンによる国際主義の放棄、自由主義的規範やアジェンダ設定への無関心は、欧米の価値と脅威認識にギャップを生じさせ、欧米の地政学連帯を根本的に分断していくはずだ。現在の流動的局面では、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカといった国々が、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、イギリスといった先進国と協力する機会を提供すると考えられる。だが、欧米という枠組みがなくなれば、疑念、敵意、対立、そして紛争が生じやすい世界が残されることになる。

  • トランプ戦略の末路
    主要国の反発と拒絶

    スティーブン・M・ウォルト

    Subscribers Only 公開論文

    ドナルド・トランプの中核目的は、ワシントンの特権的立場を利用して、同盟国と敵対国の双方から譲歩、貢ぎ物、恭順を引き出し、彼が純粋なゼロサムとみなす世界で短期的利益を模索することにある。この略奪的覇権主義は一時的には機能しても、長期的には失敗に終わる。対米依存を減らす努力をする国もあれば、アメリカのライバルと新たな取り決めを結ぶ国もあるだろう。そして相当数の国が、アメリカの利己的な行動へ報復する機会を待ち望むようになるだろう。結局、世界的な反発が高まり、ワシントンの主要なライバルにとって魅力的な機会がもたらされる一方、アメリカの安全、繁栄、影響力は低下していくだろう。

  • アメリカ後のアジア
    米戦略の破綻と中国の優位

    ザック・クーパー

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカがアジアへの経済的・政治的関与を削減していくにつれて、中国が、同盟国やパートナーを切り崩していくリスクにわれわれは直面している。すでに、こうした諸国の多くは、これまでの同盟や連携を再考し、北京の方がより魅力的なパートナーかもしれず、中国が地域の覇権国になるのは避けられないとの結論に近づいている。このために、第1列島線上の少数の国の防衛を重視するアメリカの戦略さえ、もはや維持できないかもしれない。アジア重視路線から離れ、後退を受け入れることが、アメリカのアジアにおける利益を守る最善の方法ではない。だがそうなるのは、避けられないだろう。

  • 中国の未来を考える
    「権威主義的繁栄」の影響力

    ラナ・ミッター

    Subscribers Only 公開論文

    習近平体制は、欧米と対立する一方で、ロシアを助け、国内では監視体制を強化し、少数民族を抑圧してきた。だが、現状から直線的にとらえて中国の将来を考えるのは、今も昔も間違っている。20年後に中国を担うのは、今よりも開放的な時代を青春期に経験している、現在40代の若いエリートたちだ。民主的でも、リベラルでもないかもしれないが、未来の中国はそれでも世界に「権威主義的繁栄」という政治・経済モデルを提供できる国に進化しているかもしれない。地政学的・経済的大国を目指し、その過程で、「中国の本質」を見失わないという、清朝期の二つの願いを実現することに北京は成功するのかもしれない。もちろん、それには条件がある。

  • トランプの強硬路線とアジア
    アジアを強制するか、見捨てるか

    リン・クオック

    Subscribers Only 公開論文

    アジア諸国が「中国かアメリカか」の二者択一を迫られれば、どう対応するだろうか。中国が常に利益を得るとは限らないが、地理的に近く、この地域と広範な経済的つながりをもち、経済的関与を戦略的優位に転化させるスキルをもつ中国は、もっとも利益を確保しやすい環境にある。アジアに選択を迫っても、その答えはワシントンの気に入るものにはならないかもしれない。一方でトランプ政権が、選択を迫るのではなく、同盟国やパートナーを見捨てることで、習近平と世界を勢力圏に切り分ける「グランド・バーゲン」をまとめようとする恐れもある。ワシントンが今後も圧力と無視という路線を組み合わせれば、北京を警戒する政府を中国の懐に送り込んでしまう危険がある。

変化した中東の政治

  • 米国に背を向けたアラブ諸国
    中ロと欧米の逆転

    アマネイ・A・ジャマル、マイケル・ロビンス

    雑誌掲載論文

    アラブ諸国政府はすでにアメリカとの関係を遮断し始めるか、ワシントンとの取引の一部を国内社会に伝えず、隠すようになった。アメリカとイスラエルが、イラン戦争を始めた結果、湾岸諸国は大きな被害を受け、一部の指導者はアメリカの金融機関からの資金引き揚げを検討している。いまやアラブ世界では、中ロの方が、欧米よりも道徳的優位をもつと考えられている。アメリカは、正統性を喪失している。

  • イラン戦争とサウジ
    アメリカ後の中東と新多国間枠組み

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    雑誌掲載論文

    サウジアラビアは、イランであれ、イスラエルであれ、地域覇権国の出現は望んでいない。一方で、アメリカの安全保障関与はもはや信用していない。引き続きアメリカに一定の支援を求めつつも、サウジは、今後、エジプト、パキスタン、トルコとの地域的連帯を深化させ、中国への依存度を高めていくと考えられる。ペルシャ湾の安全をめぐるイランとの合意も模索するだろう。イランは、リヤドに「サウジ国内の米軍基地がイラン攻撃に利用されないこと」を保証するように求め、一方、サウジはイランに「自国領土がもはやイランやその代理勢力による報復の標的とされないこと」を保証することを期待するだろう。

  • 戦争とシーア派の覚醒
    呼び覚まされた不安と恐怖

    ハミドレザ・アジジ

    雑誌掲載論文

    イラン戦争は、様々な領域でシーア派の不安と恐怖を高め、そのアイデンティティ志向を高めた。シーア派系の政治・軍事アクターも、利益とリスクをどのように判断するかの基準を見直している。こうして、2023年以降、数多くの挫折と弱体化を経験してきた抵抗の枢軸にも、再生の流れが生じている。だが今回は、テヘランによる調整を通じてではなく、むしろ苦境に立たされたシーア派のアイデンティティが促す、より自然な衝動によって、抵抗運動が再生されるだろう。イランとその地域ネットワークを弱体化させることを目的とした戦争が、それを支える社会的・政治的条件を強化してしまうかもしれない。

  • アメリカはアラブ世界を失いつつある
    アラブストリートの信頼を勝ち取るには

    マイケル・ロビンス、マニー・ジャマル、マーク・テスラー

    Subscribers Only 公開論文

    アラブ世界で反米感情が急激に高まっている。イスラエルがガザで軍事作戦を始めて以降、ヨルダンでは、アメリカを好意的にみなす人の割合が、2022年の51%から、最近実施された調査では28%に激減している。国内での反米感情の高まりゆえに、アラブの指導者で、ワシントンに協力しているとみなされたいと考える者はほとんどいない。アメリカのアナリストは、アラブ民衆の声は、米外交政策にはあまり関係してこないと軽くみているが、「アラブの指導者は世論に左右されない」という考えは神話にすぎない。アラブ市民のアメリカへの信頼を取り戻さない限り、アラブの指導者たちは対米協調を避け、アラブとイスラエルの国交正常化もイラン封じ込めも遠のき、中国を含むアクターがこの地域で台頭してくることになるだろう。

  • アラブストリートの反乱
    民衆の怒りが米外交を揺るがす

    マーク・リンチ

    Subscribers Only 公開論文

    「ガザへの爆撃がついに終わり、人々が家に帰れば、怒りの矛先は違う何かに向けられ、中東の地域政治は平常に復帰する」。ワシントンではこう考えられている。しかし、この仮説は、中東で世論がいかに重要になっているか、2011年の「アラブの春」の騒乱以降、何が本当に変わったのかを理解していない。アラブ民衆の怒りのタイプと激しさ、アメリカの優位の低下と正統性の崩壊、アラブ諸国の政権が地域間競争だけでなく国内体制の存続を優先していることから考えても、新しい地域秩序ではアラブの世論がより重視され、配慮されるようになるだろう。ワシントンがアラブの世論を今後も無視し続けるようなら、ガザ戦争後の計画を台無しにすることになる。

  • 中東の安定とシーア派の未来
    シーア派の国家への統合を

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    軍事的には、抵抗の枢軸はいまや粉砕されている。この枢軸を設計したイランの戦略家たちは高齢化し、アラブ世界のパートナーの多くは、イスラエルの攻撃で殺害されている。だが、抵抗の枢軸を支えてきたイラク、レバノン、シリアに残されたシーア派コミュニティに、それぞれの国で政治的未来、つまり、国境を越えたイデオロギーに代わる国内での役割と経済的機会を提供しない限り、中東の安定は再び脅かされる。生き残るためにシーア派が国境を越えた宗派的な共同体政治を模索すれば、広範な地域が不安定化する。シーア派が新しい中東秩序に利害をみいだせなければ、イラン封じ込めも難しくなる。

  • イスラエルの覇権幻想
    破壊では平和は築けない

    マーク・リンチ

    Subscribers Only 公開論文

    中東の地域的リーダーシップは軍事的優位だけでは得られない。他の地域大国の一定の合意や協力が必要になることをイスラエルは理解すべきだ。現実には、中東でイスラエルのリーダーシップを望む者など誰もいない。むしろ、地域諸国はイスラエルの暴走するパワーを警戒し、脅威とみなし始めている。民衆蜂起の再燃を恐れる湾岸の指導者たちは、アラブ民衆のイスラエルに対する怒りを十分に感じとり、それを政策に織り込んでいる。これまで中東における軍事的拡張主義やガザを破壊する行動をとっても、大きな代価を支払わずに済んできたために、イスラエルは今後も問題にはならないという感覚をもっているが、それは大きな間違いだ。

デジタルマガジン

カスタマーサービス

平日10:00〜17:00

  • FAX03-5815-7153
  • general@foreignaffairsj.co.jp

Page Top