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2022年11月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2022年11月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2022年11月号 目次

地政学とグローバルな課題の衝突

  • 危険な10年をいかに乗り切るか
    地政学、グローバルな課題、アメリカの弱体化

    リチャード・ハース

    雑誌掲載論文

    地政学的競争の激化が、温暖化に象徴されるグローバルな課題をめぐる国際協調をさらに難しくし、一方で国際環境の悪化が地政学的緊張をさらに高めている。しかも、アメリカはさらに弱体化し、世界への関心を失っている。グローバルな課題と世界の(細々とした)対応間の恐ろしいほどのギャップ、ヨーロッパとインド太平洋における大国間戦争リスクの上昇、イランが中東を不安定化させるリスクの拡大、これらが渾然一体となって、第二次世界大戦以降、もっとも危険な瞬間が作り出されつつある。現在と同様に困難で危険な10年、つまり、伝統的な地政学リスクと増大する一方のグローバルな課題が共存する時代を乗り切っていくには、何が必要なのか。

  • 帝国の衰退と歴史の教訓
    米中ロの衰退と混乱に備えよ

    ロバート・カプラン

    雑誌掲載論文

    米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。中国はその運命を切り抜けられるかもしれないが、容易ではないはずだ。アメリカも、先行きを悲観して現実的なアプローチに転換する時期が遅れれば、状況はさらに悪化していく。

  • 分裂した世界とグローバルな脅威
    パンデミック・気候変動と大国間競争

    トーマス・ライト

    Subscribers Only 公開論文

    この100年で最悪のパンデミックはいまも収束していない。気候変動危機も加速する一方だ。しかも、大国間競争という環境下で、ワシントンはこれらのトランスナショナルな脅威に対処していく戦略を考案していかなければならない。米中のライバル関係は熱い戦争は引き起こしていないが、冷たい戦争に火をつけかねない状況にある。だが、未来のパンデミックに備え、気候変動と闘うには、ライバル諸国、特に中国との協調を模索しなければならない。だが一方で、協調路線が破綻した場合に備える必要もある。同盟諸国とパートナー諸国が、グローバルな公共財のためにより大きな貢献をするバックアッププランも用意しておくべきだろう。2020年には存在しなかったそうした計画を、次の危機までに間違いなく準備しておかなければならない。

  • 複雑系の崩壊は突然、急速に起きる
    グローバル経済とアメリカという複雑系の将来

    ニーアル・ファーガソン

    Subscribers Only 公開論文

    歴史は循環的で、その流れはゆっくりとしか変化しないという考えがもし間違っていたら。周期性がなく、静的であるとともに、スポーツカーのように、急発進するとしたら。崩壊プロセスが数世紀という時間枠で進むのではなく、夜の泥棒のように、突然にやってくるとしたら。複雑系には一定の特徴がある。小さな刺激で非常に大きな、そして、しばしば予期せぬ変化が急激に起きることだ。グローバル経済はまさしく複雑系だ。格付け会社による米債券の格付けの引き下げといった、突然の悪い知らせが、緊急ニュースとしてヘッドラインを飾る日がやってくるかもしれない。今後を考える上で、非常に重要な鍵を握るのは、こうした突然の変化だ。過去の帝国や現在のグローバル経済のような複雑適応系では、それを構成する一部の有効性に対する信頼がなくなっただけでも、システム全体が非常に大きな問題に直面する。

  • 嵐の前の静けさ
    次にブラックスワン化する国は

    ナシーム・ニコラス・タレブ

    Subscribers Only 公開論文

    国家の脆弱性の基準は五つ存在する。中央集権型の統治システム、画一的で硬直的な経済体制、過大な債務とレバレッジ、政治的硬直性、そして近い過去に衝撃から立ち直った経験をもっていないことだ。この基準に照らせば、世界地図は大きく違ってみえてくる。意外にもいつも混乱しているイタリアに脆弱性を示す兆候はない。政治危機が間欠泉のように吹き出すにも関わらず、うまく分権化されており、その都度、立ち直っている。一方、サウジは石油資源に経済を依存し、政治的に硬直的で、高度な中央集権国家だ。日本も「穏やかな脆弱性」を抱える国に分類できる。非常に大きな対GDP比債務残高を抱え、その多くの時期を通じて一つの政党が政治を支配し、輸出に依存し、「失われた10年」から完全には立ち直れずにいる。そして中国だ。過去の混乱で培った中国の体力は、債務や集権化という弱点を補うほどに強靱だろうか。おそらく答はノーだ。時が経つにつれて、北京がブラックスワン化するリスクは高まっていく。・・・・

  • 解体する秩序と帝国主義の教訓
    強制力と合意の間

    ニック・ダンフォース

    Subscribers Only 公開論文

    西洋の帝国主義が一時的であれ、大きな流れを作り出せたのは、「強制力を行使する地域」と「相手の同意を求める地域」を明確に区別していたからだ。「パワー面で見劣りする国が相手なら力で支配できるかもしれない。しかし、相手が帝国のライバルとなると、周到な外交とうまく調整された協調が欠かせない」。これが当時の考えだった。このコンセンサスを無視して、ヨーロッパで帝国の建設を目指したヒトラーの試みは、悲劇を引き起こした。プーチンが、ロシアが主導する独立国家共同体(CIS)を形作ったのは繁栄を共有することを考えたからではない。帝国主義国家が世界の多くの地域を力で統治することに道を開いた国家パワーの格差がいまや消失し、新たな枠組みを考案する必要に迫られたからだ。すでに各国間、地域間のパワーの格差は消失している。ここでかつての帝国主義の歴史からどのような教訓を引き出すか。帝国にノスタルジアを抱くのも、帝国の強制力を正当化するのも間違っている。・・・

  • 習近平の本質
    奢りとパラノイアの政治

    蔡霞

    雑誌掲載論文

    習近平は中国の政治派閥のすべてから反発を買っている。彼が伝統的な権力分配構造を破壊したことに憤慨し、その「無謀な政策が党の将来を危うくしている」と考えているエリートは少なくない。民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる統治スタイルへの社会の反発も大きい。いまや、天安門事件以降初めて、中国の最高指導者は政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面している。今後、統治スタイルがさらに極端になれば、彼がすでに引き起こしている内紛は激化し、反発は大きくなる。習近平が脅威を感じ、大胆な行動に出れば、ますます反発が大きくなるという悪循環が生じるかもしれない。・・・

  • 大国間のライバル関係を制御する
    競争と協調の間

    ダニ・ロドリック、スティーブン・M・ウォルト

    雑誌掲載論文

    国際社会の中央における権限が確立されていない世界では、競争のインセンティブがあらゆるところに存在し、強国は互いに相手を警戒する。主要国のいずれかが経済的・地政学的優位の獲得を優先課題に据えれば、穏やかな世界秩序が実現する可能性は遠のいていく。だが、ライバル国や敵対する国であっても、合意や調整を探るように促す枠組みがあれば、問題を管理できるようになる。「対立する二国が合意できる部分や禁止すべき行動を特定し、互恵的な妥協点を探り、単独行動は合理的な範囲内に収めるように促す」。たとえ、合意を形成できないとしても、この枠組みは国家間のコミュニケーションを促し、合意できない理由を明らかにし、自国の利益を守ろうとするときも他国を傷つけないように配慮するインセンティブを高めることができるだろう。・・・

グローバル・リセッションと 中国経済の停滞

  • 迫り来るグローバル・リセッション?
    インフレ、為替、中央銀行のジレンマ

    ブラッド・セッツァー

    雑誌掲載論文

    いまや、中国、アメリカ、ヨーロッパという世界経済の主要エンジンのすべてが減速しつつある。中国経済は実質的にリセッションに陥り、ヨーロッパ経済もエネルギー不足によって冬にはリセションに入ると考えられる。アメリカ経済も停滞に向かいつつある。グローバルな経済停滞が主要国におけるインフレ圧力をどの程度迅速に低下させるかが、今後考えるべき大きなテーマになるだろう。長期的なインフレの定着リスクよりも、インフレ抑制のために採用した措置がうまく機能しすぎて、現在の世界的な引き締め策が中国の不動産不況、エネルギー市場の混乱と重なり合って深刻な景気後退をもたらすリスクが警戒されている。円安ドル高、イギリス経済の混乱という問題もある。金融市場は明らかに神経質になっている。・・・

  • 追い込まれた中国経済
    もはや低成長を受け入れるしかない

    マイケル・ペティス

    雑誌掲載論文

    中国にとって、投資率が高いことは悪いことではなかった。かつて必要とされていたのはまさしく投資主導型の経済開発モデルだった。問題は不動産とインフラ部門での非生産的投資の時代があまりに長く続いたことだ。15年ほど前から、債務が国内総生産(GDP)成長率を上回るペースで増加し始め、肥大化していった。しかもいまや不動産バブルははじけ、新しい経済モデルへ移行するしかない状況にある。中国が消費(内需)主導型の成長へシフトできるとは考えにくい。投資を急速に減らして成長率の大幅な低下を受け入れるか、問題を先送りし、債務の急増によって路線維持が困難になるまで、現在の投資主導型路線を続けるしかないだろう。だが最終的には、経済成長は急激に減速し、その減速の仕方は、中国、中国共産党、そして世界経済に深刻な影響を与えることになるはずだ。・・・

  • 中国経済は低成長期へ
    世界経済への意味合い

    ダニエル・H・ローゼン

    Subscribers Only 公開論文

    企業投資、家計や政府の支出、貿易黒字からみても、中国の国内総生産(GDP)がこれまでのような成長を持続できるとは考えにくい。現実には、2022年に2%の成長を維持することさえ難しく、正確に計測すれば、2022年はゼロ成長、あるいは景気後退に陥る危険もある。基本的な財政・金融・その他の改革を遂行せずに、政治的に決定された高い成長目標を永続的に達成できると信じる理由はどこにもない。ワシントンは「中国経済が問題に直面している」という現実への関心を責任ある形で喚起すべきだろう。中国の経済成長の鈍化は、14億の中国人だけでなく、世界の多くの人の経済的繁栄を損なうことになるのだから。・・・

  • 中国における大家族時代の終焉
    中国の野望と人口動態トレンド

    ニコラス・エバースタット、アシュトン・バーデリ

    Subscribers Only 公開論文

    大家族の衰退という中国で進行するトレンドがいまや大きな流れを作り出している。この現象が引き起こす衝撃を北京が十分に認識していないだけに、家族構造の変化は、今後長期にわたって、中国の大国化願望を脅かし続けるだろう。1世代後の中国は、この人口動態上の逆風ゆえに、当局が想定するほど豊かでも生産的でもないはずだ。伝統的にライフボートの役目を果たしてきた大家族主義や血縁的つながりが衰退し、大規模な社会保障国家をあと1世代で構築しなければならないとすれば、経済外交と国防政策を通じて外国に影響力を与える北京の手段は大きく制約される。いずれ中国は経済パワーが低下し、国防政策を下方修正せざるを得ない状況に直面する。

  • 中国を引き裂く大潮流
    そこにある二つの中国

    エリザベス・エコノミー

    Subscribers Only 公開論文

    中国政府の勝利主義的レトリックの背後には、不都合な真実が隠されている。それは、社会がやっかいな形で複雑に分裂しつつあることだ。ジェンダーと民族を基盤とする差別が横行し、オンライン空間での憎悪に満ちた、ナショナリスティックな発言がこれに追い打ちをかけている。起業家や研究者を含む「クリエーティブな社会階級」は官僚と衝突している。ジャック・マーのように、政府の介入を公然と批判し、厳格な処分対象とされた者もいる。都市部と農村部の深刻な格差もなくなっていない。これらの分断ゆえに、重要な社会集団が中国の思想・政治的生活に完全に参加できずにいる。この状況が放置されれば、習近平が言う「中華民族の偉大なる復興」は夢のままで終わる。

  • コロナウイルス・リセッション
    経済は地図のない海域へ

    モハメド・A・エラリアン

    Subscribers Only 公開論文

    2008年のグローバル金融危機に続くグレートリセッションは低成長、(量的緩和などを通じた)金融の人為的安定、格差の拡大を特徴とする「ニューノーマル」を作りだし、その後の10年で中間層が空洞化し、政治的な怒りと反エリート感情が高まりをみせていった。コロナウイルスショックもグローバル経済を大きく変化させ、ポスト「ニューノーマル」をもたらすと考えられる。脱グローバル化、脱リージョナリズムが加速し、世界の生産と消費のネットワークが再編されていく。費用対効果と効率を心がけてきた官民双方は、リスク回避とレジリエンス(復元力)の管理を重視せざるを得なくなる。ウイルスショックから立ち直った世界が目にするグローバル経済は完全に姿を変えているはずだ。

  • 低成長と中国経済の課題
    内需主導型成長への転換は実現するか

    ブラッド・セッツァー

    Subscribers Only 公開論文

    高い貯蓄率は借金頼みの経済成長を促すことで、中国の金融システムが現在抱える問題を生み出してきた。貯蓄が多いということは、消費が弱い(消費に回す資金が乏しい)ことを意味するからだ。このため過去20年間、中国経済の成長は内需ではなく、輸出または定期的な投資拡大によって支えられてきた。だが不動産デベロッパーもいまや債務問題に苦しんでいる。しかも、地方政府の歳入は、デベロッパーへの土地売却に大きく依存してきたために、現在の不動産不況で大きく圧迫されている。地方政府が誘導する投資ではなく、個人消費に牽引された、より健全な経済を築くには、政府の財政措置を拡大しなければならない。北京は、国内債務が拡大して投資主導型経済成長の時代が終焉し、歴史的な高度成長は過去のものになったという困難な現実を受け入れる必要がある。

Current Issues

  • ヒジャブとイランの反体制運動
    保守強硬派に対する社会反乱

    モハマド・アヤトラヒ・タバール

    雑誌掲載論文

    22歳の女性が風紀警察で拘束中に死亡したことをきっかけとするイラン女性たちの抗議運動は、今後、大きな変革を引き起こすかもれない。ヒジャブの着用は、イスラム国家・イランのアイデンティティーのシンボルとされてきただけに、女性たちがヒジャブを脱ぐことを国が許せば、聖職者による支配構造が弱体化し、最終的には崩壊する恐れもある。一方で、民衆をなだめるのも難しい。「改革を約束する選挙」を利用することで、これまでイランの体制は民衆の不満を管理してきた。しかし、「選挙で選ばれた」政府が、宗教エスタブリッシュメントに歩調を合わせるのをみてきた民衆は、もはや選挙で有意義な改革を実現できるとは考えてない。新たな社会契約が示されない限り、民衆の怒りは行き場を失い、政府との対決路線、反乱へ向かっていくかもしれない。・・・

  • クレムリンのクーデター?
    ソビエトの権力抗争史とプーチンの未来

    セルゲイ・ラドチェンコ

    雑誌掲載論文

    プーチンがウクライナ戦争の劣勢を覆せぬなか、潜在的な後継者たちが、ライバルの動向を窺い、後継シナリオをあれこれ考えているのは間違いないだろう。プーチンの打倒を目指す者は数多くいる。おべっか使いの側近や危機マネージャーなど、後継候補たちは多彩な顔ぶれだ。大統領への忠誠心で選ばれた人物たちだとしても、裏切りが横行する環境ではそれは相対的なものでしかない。プーチンを完全に信頼している者はいないし、側近たちが互いに相手を信頼しているわけでもない。事実、ソビエト時代のクーデターは、権力中枢における人間関係、ライバルたちの野心と裏切りによって引き起こされてきた。行動を突き動かしたのは、指針とするイデオロギーや政治的な原則ではく、赤裸々な野心だった。成功はタイミングと流れに左右される。その鍵は、現職の指導者が弱気になったときに素早く、果敢に動けるかどうかだ。・・・

  • 領土「併合」とプーチンの賭け

    トーマス・グラハム

    雑誌掲載論文

    主要国がロシアによる「併合」を認めないとしても、モスクワが、これらの地域をロシアの領土と位置づければ、「領土」を守るための試みを強化することが正当化される。部分的な動員、将来におけるより全面的な動員、そして潜在的な核兵器の使用もこの文脈に位置づけることができる。もっとも、モスクワが総動員を回避したのは、ロシアの若者がウクライナにおけるプーチンの目標のために実際に戦い、死ぬ準備ができているかどうかを疑っていたからだという見方が広がっている。だが、最近におけるロシア軍の撤退とウクライナ戦争での進展のなさから、強硬派の批判を緩和するために部分的であっても動員を実施せざるを得なかった。紛争が続くにつれて、モスクワはこの二つの課題間で今後もバランスをとることを強いられるだろう。実際、プーチンが直面しているもっとも深刻な抵抗は、より攻撃的な行動を求める強硬派かもしれない。・・・

  • 水素エネルギーが地球環境を救う?
    新エネルギー技術のポテンシャル

    S・フリオ・フリードマン

    雑誌掲載論文

    カナダ、チリ、ドイツ、日本を含む、世界の35カ国以上が水素エネルギー戦略を導入し、促進している。クリーンな水素エネルギーは、気候変動に対処していく上で不可欠なだけでなく、貿易や商業面での競争力を強化する大きなチャンスだと考えられているからだ。特に、太陽光や風力、水力、原子力から得たクリーンな電力を使って、水を水素と酸素に分解する「グリーン水素」の製造が大きな注目を集めている。だが、気候変動との闘いにおいてグリーン水素のポテンシャルを最大限に引き出すには、各国がインフラ整備に投資するともに、新しいエネルギー市場が急速に商業化されたときに必ず生じるリスクを緩和していく政策が必要になる。

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