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嵐の前の静けさ
―― 次にブラックスワン化する国は

ナシーム・ニコラス・タレブ ニューヨーク大学教授
グレゴリー・F・トレバートン 米国家情報会議議長

The Calm before the Storm

Nassim Nicolas Taleb アメリカの哲学者でニューヨーク大学教授(リスク・エンジニアリング)。金融数理の理論家でヘッジファンドの運用を手がけた経験もある。2007年に出版した『ブラックスワン』は世界で大きな話題となった。
Gregory F. Treverton 米国家情報会議議長。ランド研究所のグローバルリスクと安全保障センターのディレクターを経て現職。

2015年1月号掲載論文

国家の脆弱性の基準は五つ存在する。中央集権型の統治システム、画一的で硬直的な経済体制、過大な債務とレバレッジ、政治的硬直性、そして近い過去に衝撃から立ち直った経験をもっていないことだ。この基準に照らせば、世界地図は大きく違ってみえてくる。意外にもいつも混乱しているイタリアに脆弱性を示す兆候はない。政治危機が間欠泉のように吹き出すにも関わらず、うまく分権化されており、その都度、立ち直っている。一方、サウジは石油資源に経済を依存し、政治的に硬直的で、高度な中央集権国家だ。日本も「穏やかな脆弱性」を抱える国に分類できる。非常に大きな対GDP比債務残高を抱え、その多くの時期を通じて一つの政党が政治を支配し、輸出に依存し、「失われた10年」から完全には立ち直れずにいる。そして中国だ。過去の混乱で培った中国の体力は、債務や集権化という弱点を補うほどに強靱だろうか。おそらく答はノーだ。時が経つにつれて、北京がブラックスワン化するリスクは高まっていく。・・・・

  • 混乱と安定の因果
  • リスクとしての中央集権構造
  • 経済的脆弱性のルーツとは
  • 政治的ボラティリティの効用
  • どの国が大きな脆弱性を抱えているか

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