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2019年8月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2019年8月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2019年8月号 目次

人工知能のリスクをいかに管理するか

  • 人工知能への備えはできているか
    ―― うまく利用できるか、支配されるか

    ケネス・クキエル

    雑誌掲載論文

    AIは良くもあり、悪くもある。賢いが、鈍い部分もある。文明の救世主であるとともに、世界の破壊者でもある。実際、どのようにして決断を導き出しているか分からないし、それを人間が解明することもできない。特に、汎用人工知能(AGI)については、「独自に進化し、人間が管理できなくなるのではないか」と懸念され、特定型AIについても「デザイナー(である人間)がその意図を完全に伝えられず、壊滅的な結果が引き起こされるのではないか」と心配されている。一方で、AGIのことを心配するのは、火星が人口過剰になることを心配するようなもので、先ず、(AGIに関して)想定されていることが実現する必要があると主張する専門家もいる。イノベーションの進化ペースをどの程度「警戒」し、(機械のメカニズムに関する)説明の「正確さ」をどこまで求め、(個人データを利用することによる)パフォーマンス強化と「プライバシー」のバランスをどこに求めるか。社会がこれらのバランスをどうみなすかで、人間がAIとどのような関係を築いていくかが左右される。

  • スパイと嘘とアルゴリズム
    ―― 情報活動とソーシャルメディア

    エイミー・ゼガート、マイケル・モレル

    雑誌掲載論文

    情報機関は常に干し草の山のなかから針を見つけなければならなかったが、現在、干し草の山は指数関数的に大きくなっている。多数のスマートディバイスがインターネットにつながれ、オープンソース情報は爆発的に増えている。秘密情報はいまでも重要だが、どこにでもあるオープンソース情報が、大きな価値を持ち始めている。ロシア軍のウクライナ侵攻も、米軍のビンラディン急襲作戦も、第一報はソーシャルメディアによってもたらされた。いまやアメリカ戦略軍の地下核司令センターのスクリーンには秘密情報とともにツイッターが表示されている。問題は、米テクノロジー企業と情報機関の間にスノーデン事件以降存在する不信感のために、技術的協調が進まず、権威主義国家に比べて、サイバー情報面での戦略をうまく整備できないことだ。しかも、ディープフェイクという騙しのテクノロジーが登場しつつある。・・・

  • 知能ロボットと暗黒時代の到来
    ―― 高度に社会的なロボットの脅威

    アイラ・レザ・ノーバクシュ

    Subscribers Only 公開論文

    現状では、すべての社会的交流は人対人によるものだが、すでにわれわれは人工知能が人の交流の相手となる時代の入り口にさしかかっている。ほぼすべての雇用が脅かされ、新しいテクノロジーから恩恵を引き出せる人はますます少なくなり、失業が増大し、経済格差がさらに深刻になる。さらに厄介なのは、伝統的に人間関係を規定してきた倫理・道徳観に相当するものが、人間とロボットの間に存在しないことだ。ロボットが、人間のプライバシーや物理的保護を心がけ、道義的な罪を犯すことを避けようとする衝動をもつことはない。知能機械はいずれ人の心をもてあそび、十分な情報をもち、どうすればわれわれの行動に影響を与えられるかを学ぶようになる。つまり、「高度に社会的なロボット」によって人間が操られる危険がある。

  • 人工知能の恩恵とリスク
    ―― 誰も勝者になれない世界を回避するには

    ポール・シャーリ

    Subscribers Only 公開論文

    19世紀の産業革命は世界に大きな経済成長だけでなく、戦車、機関銃、毒ガス兵器をもたらした。人工知能(AI)はこれらに匹敵する変化を誘発することになる。AIは医療から交通に至るまでのあらゆる分野で大きな恩恵とともに大きなリスクも生み出す。最大のリスクは、AI軍事システムを最初に開発した国が、ライバル国に対して圧倒的な優位を手に入れられるために、いい加減なテストだけで、システムを一刻も早く導入せざるを得ないと考えるかもしれないことだ。こうして非常に深刻な問題が作りだされる。AIシステムの導入を競い合うのではなく、その安全性の検証と研究に多国間で投資すべきだ。そうしない限り、「誰も勝者になれない世界」が創り出されることになる。

  • テクノロジー・ワールド
    ―― 地政学革命としての人工知能

    ケビン・ドラム

    Subscribers Only 公開論文

    産業革命は世界を変えたが、機械が人間の筋肉の代役を果たすようになっただけで、人の頭脳が依然として必要とされたために、高賃金雇用が数多く創出された。しかしデジタル革命を担うのは、人間の頭脳を代替する人工知能(AI)だ。本質的に、人間レベルのAIは人間ができることすべてをより巧みに遂行できる。おそらくロボットはすべての仕事の4分の1(25%)以上を担うことになると考えられている。しかも、真に開花するまでに100年以上を要した産業革命とは違って、デジタル革命による雇用喪失はわずか数十年で加速していく。これに比べれば、中国の台頭などの21世紀の地政学的動向は、あと20年もすれば、どれも、取るに足らぬ問題にすぎなくなる。どの国が世界最高のAIを保有しているかですべては決まるし、政府形態も流動化していく。

  • 「ディープフェイク」とポスト真実の時代
    ―― 偽情報に対処する方法はあるのか

    ロバート・チェズニー、ダニエル・シトロン

    Subscribers Only 公開論文

    民主社会は不快な真実を受け入れなくてはならない。ディープフェイクの脅威を克服するには、嘘と付き合う方法を学ぶ必要があるからだ。非常にリアルな出来栄えで、偽物を見破ることが難しいレベルにデジタル加工された音声や動画を意味する「ディープフェイク」の登場によって、自分が言ったことも、したこともないことを、そのようにみせかけることができる。改ざんされた音声や動画が、本物と見分けがつかずに、十分な説得力をもっていれば、そして、それが社会的・政治的にそして国際関係に悪用されればどうなるだろうか。十分な対策は存在しない。人々がプライベートなフィルターバブルに引きこもり、自分の考えに合うものだけを事実とみなす世界に転落しないようにしなければならない。民主社会はレジリエンス(打たれ強さと復元力)を身に付けるしかない状況へ向かっている。

経済制度の目的と文化

  • 国内経済と世界経済のバランス
    ―― グローバル化と歴史の教訓

    ダニ・ロドリック

    雑誌掲載論文

    国が貿易するのは、他国を利するためではなく、国内に利益をもたらすからだ。そうした利益が国内経済に公正に分配されるのなら、(貿易への市場)開放を求める国際ルールは必要ではなくなる。国は自らの意思で国を開放しようとする。だが、昨今のハイパーグローバル化は、かつての「金本位制」のようなものだった。これによって、現状の問題の多くが作り出されている。より公正で持続性の高いグローバル経済を形作るつもりなら、より柔軟だった「ブレトンウッズ体制」に目を向けるべきだろう。経済・社会面でのギャップを埋めていくには、国内政策の優先度を引き上げ、国際政策のそれを引き下げる必要がある。グローバル統治(と国際ルール)は軽く柔軟なものにし、各国政府に独自の規制を選べるようにしなければならない。次のグローバル化の鍵はここにある。

  • 社会に貢献できる金融システムを
    ―― 金融危機の本質的教訓を生かすには

    ジリアン・テット

    雑誌掲載論文

    「経済を支配するのではなく、経済に奉仕する金融システムを構築する方法をアメリカは本当に知っているのだろうか」。悲しいことに、答えはおそらくノーだ。アメリカのバンカーが、規制当局、政治家、株主たちともに、金融危機とポピュリストの反動が再来するリスクを小さくすることを望むのなら、「ファイナンス」、「バンク」、「クレジット」の本来の意味を彼らのコンピュータスクリーン上に映し出しておくべきだ。これらの本来の意味に即して、銀行業を「目的達成のための手段で、信頼を基盤に社会グループによって遂行される活動」と捉えると、アメリカの金融の何が間違っていたか、将来に向けてそれをいかに是正していくべきかを考える助けになる。かつて同様に現在も、投資家は自身が理解していないことを過度に信用する傾向がある。信用市場を支えている信用の基礎を常に疑うしかない。

  • 資本にとって安全な世界を求めて
    ―― ハイエク、ネオリベラルと超国家主義の模索

    スティーブン・ワートハイム

    Subscribers Only 公開論文

    ハイエクやミーゼスを中心とするレッセフェールを守ろうとするネオリベラルのエコノミストたちは、ファシズムや共産主義だけでなく、(政府の経済への介入を求める)民主的大衆のパワーも抑え込もうと試みた。「どうすれば大衆民主主義から財産権を守れるか」。この課題は、1914年にヨーロッパが大戦に陥った瞬間に明らかになり、帝国が崩壊して、国民国家が数多く誕生したことでさらに深刻になった。彼らが見出した答は国家による恣意的な経済への介入を防ぐための「超国家主義」だった。戦後における最大の脅威を、東側の共産主義や西側の保護主義以上に、第3世界の経済ナショナリズムに求めたネオリベラルもいた。1995年、ネオリベラルたちはWTOの設立によってついに勝利を手にする。・・・

  • 福祉国家の崩壊とナショナリズムの台頭
    ―― ナショナリズムはいかに復活したか

    ジャック・スナイダー

    Subscribers Only 公開論文

    1980年代以降、先進国のエリートたちは、かつて政府が資本主義を制御するのを可能にした(社会保障制度などの)政治的管理体制を新自由主義の名の下に段階的に解体し始め、国の民主的体制を国際市場のロジックに適合するように見直しただけでなく、政策決定を市民への説明責任を負わない官僚や超国家組織に委ねてしまった。これが、欧米で「ポピュリスト・ナショナリズム」を急激に台頭させる環境を作り出した。ナショナリズムジレンマを解くには、レッセフェール政策そして説明責任を負わない超国家主義を放棄し、国家レベルでの民主的説明責任、競合する優先課題をめぐる妥協、そして国際機関との経済的調整といった戦後リベラリズムの基本的やり方を復活させなければならない。

  • 終末期を迎えた資本主義?
    ―― もはや民主政治では資本主義を制御できない

    マーク・ブリス

    Subscribers Only 公開論文

    資本主義と民主主義の緊張と妥協が相互に作用することで、これまで政治と経済のバランスが形作られてきた。民主体制のなかで、労働保護法や金融規制の導入、社会保障制度の拡大が実現することで、市場の猛威は緩和されてきた。こうして労働者は労働搾取を試みる資本家を抑え込み、企業は労働者の生産性を高めるための投資を重視するようになった。これが戦後における成長のストーリーだった。しかし「いまや政府は戦後の税金を前提とする国家から、債務を前提とする国家へと変貌している」。この変化は非常に大きな政治的帰結を伴った。政府債務の増大によって、国際資本が、各国の市民の望みを潰してでも、自分たちの意向を各国政府に強要する影響力をもつようになったからだ。格差が拡大し、賃金が停滞する一方で、政府は、資金力豊かな金融機関が問題の兆候を示しただけで救済の対象にするようになった。こうして市民たちは、いわゆる調整コストを運命として受け入れるのを次第に嫌がるようになった。・・・

  • リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

    シュロモ・アヴィネリ

    Subscribers Only 公開論文

    なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

  • 金融ビジネスに規律を与えるには
    ―― 問題は金融が経済を支配していることだ

    ジリアン・テット

    Subscribers Only 公開論文

    政府は金融エリートを押さえつけて金融を支配すべきなのか、それとも、単純にダイナミックな社会を実現するために必要なコストとして所得格差と不安定な金融を受け入れるべきなのか。いずれにしても、金融システムを混乱させることなく金融機関を破綻させられる程度にその規模を小さくする必要がある。そうしない限り、適切な市場を実現することはできない。政治指導者たちは、強力なバンカーと銀行グループが自分たちの目的のためにシステムを支配するのを許さないための制度や規制の構築に知恵を絞るべきだ。もちろん、このような改革がバンカーたちの反対にあうのは避けられない。透明性が高く競争的な金融システムはおそらく現在よりも金融機関にとって利益の小さいシステムになるからだ。しかし金融が安定しているほうがより公平な社会になる。そうなるのが、バンカーと非バンカーの双方にとっても望ましいはずだ。

  • マルキスト・ワールド
    ―― 資本主義を制御できる政治形態の模索

    ロビン・バーギーズ

    Subscribers Only 公開論文

    共産主義モデルを取り入れた国が倒れ、マルクスの政治的予測が間違っていたことがすでに明らかであるにも関わらず、その理論が、依然として鋭い資本主義批判の基盤とされているのは、「資本主義が大きな繁栄をもたらしつつも、格差と不安定化をもたらすメカニズムを内包していること」を彼が的確に予見していたからだ。欧米が20世紀半ばに社会民主的な再分配政策を通じて、資本主義を特徴づけたこれらの問題を一時的に制御することに成功して以降の展開、特に、70年代末以降の新自由主義が招き入れた現状は、まさにマルクスの予測を裏付けている。今日における最大の課題は、「人類が考案したもっともダイナミックな社会システムである」資本主義の弊害を制御できる新たな政治システムを特定することにある。しかし、そのためには先ず、社会民主的政策を含めて、過去に答が存在しないことを認識しなければならない。・・・

  • 21世紀の資本主義を考える
    ―― 富に対するグローバルな課税?

    タイラー・コーエン

    Subscribers Only 公開論文

    西ヨーロッパが19世紀後半に享受した平和と相対的安定は、膨大な資本蓄積を可能にし、先例のない富の集中が生じ、格差が拡大した。しかし、二つの世界大戦と大恐慌が資本を破壊し、富の集中トレンドを遮った。戦後には平等な時代が出現したが、1950年から1980年までの30年間は例外的な時代だった。1980年以降、拡大し続ける格差を前に、トマ・ピケティのように、19世紀後半のような世界へと現状が回帰しつつあると考え、格差をなくすために、世界規模で富裕層の富に対する課税強化を提言する専門家もいる。しかし、大規模な富裕税は、資本主義民主体制が成功し繁栄するために必要な規律や慣習とうまくフィットしない。もっとも成功している市民への法的、政治的、制度的な敬意と支援がなければ、社会がうまく機能するはずはない。

変化する大国間関係

  • ヨーロッパの自立と新米欧関係
    ―― 依存と支配からの独立

    アリーナ・ポリャコバ、ベンジャミン・ハダッド

    雑誌掲載論文

    ヨーロッパはアメリカの防衛の傘に入れてもらう代わりに、従順な立場をとり、一方、歴代の米指導者たちも、ヨーロッパが大混乱に陥るよりも、防衛にただ乗りされる方がましだと考えてきた。だが、その後の国際環境の変化を前に安全保障の優先順位を見直したアメリカは、ヨーロッパを危険な環境に放置するようになった。対米協調を国際関係におけるパワーバランスに置き換えがちだったヨーロッパにとって、「パワー」という概念を受け入れることが不可欠だ。一方、アメリカは、ヨーロッパが軍事力を強化しても、アメリカのリードに従うと期待するのは幻想であることを理解しなければならない。防衛支出を増やしたヨーロッパが、政治的に受身であり続けると期待するのは間違っている。いまや大西洋関係は大きな分岐点にさしかかっている。

  • 対中封じ込めは解決策にならない
    ―― 民主主義の後退と「中国モデル」の拡大?

    ジェシカ・チェン・ワイス

    雑誌掲載論文

    中国の対外的な行動と構想がリベラルな価値と秩序を脅かし、しかも、習近平は世界に中国的ソリューションをオファーできると明言している。しかし、民主主義が世界的に後退しているのは事実としても、そのトレンドのなかで北京が果たしている役割は過大評価されている。中国の行動は、内外で自分たちの地位を確固たるものにしたい北京の指導者たちの意向を映し出しているが、「チャイナ・モデル」の輸出はその目的ではない。当然、中国封じ込めは解決策にはならない。アメリカと同盟国が北京の行動に効果的に対処するには、もっと厳密に北京の行動を把握する必要がある。結局のところ、中国に対処していく最善の方法は、民主主義をよりよく機能させることだ。

  • 中国は貿易戦争をどうみているか
    ―― 自らを追い込んだトランプの強硬策

    アンドリュー・J・ネーサン

    雑誌掲載論文

    ナバロとライトハイザーは、「世界経済におけるアメリカの主導的役割を維持するには、中国の経済モデルを抜本的に変化させるしかない」という立場をトランプに受け入れさせ、強硬策に出た。しかし、貿易戦争は、ワシントンが考えるほど大きな痛みを中国に強いていないようだ。2019年に入って最初の5カ月で、中国の対米輸出は4・8%減少したが、同時期に、中国にとって最大の貿易相手である欧州連合(EU)への輸出は14・2%上昇し、EUからの輸入も8・3%上昇している。一方、アメリカの対中輸出は2019年に入って以降の最初の5カ月で26%以上の落ち込みをみせた。農業を含む、数多くの米セクターのダメージはかなりのレベルに達している。有利な状況を手にしているのは中国であり、北京に妥協するつもりはない。貿易戦争、米中経済の切り離しのあるなしに関わらず、中国はアメリカからの経済独立コースを着実に歩み続けている。

イラン危機 外交か戦争か

  • 制御不能な戦争
    ―― イランとの衝突は瞬く間に地域紛争へ拡大する

    イラン・ゴールデンバーグ

    雑誌掲載論文

    関係プレイヤーのなかに戦争を望んでいる者はいないが、それでも戦争になりかねない。アメリカとイランの局地戦は、スンニ派の湾岸諸国やイスラエル、一方でイランの同盟勢力であるイラク、レバノン、アフガニスタン、イエメン、シリアのシーア派を巻き込んだ地域紛争に瞬く間に拡大する。イランはホルムズ海峡を脅かし、世界の原油価格を高騰させる。大がかりな作戦が終わっても、紛争は続き、イランの傀儡勢力は、中東における米軍やそのパートナーを長期的に攻撃し続ける。イランから流出する難民が作り出す危機の地域的な不安定化作用がどのようなものになるかも考えなければならない。トランプ政権とイスラム共和国はもっと慎重になる必要がある。そうしない限り、両国は、瞬く間に制御不能となる危険で大きなコストを強いられる渦に巻き込まれるはずだ。

  • CFR Blog
    イランと石油の地政学

    エイミー・M・ジャッフェ

    雑誌掲載論文

    石油輸出国機構(OPEC)でのイランの影響力は低下し、原油の生産能力も低下しつつある。湾岸の産油国がロシアとの関係強化を模索しているのは、減産で原油価格を維持していくためだけでなく、ロシアとイランの間に楔を打ち込むという地政学的利益が期待できるからだ。一方、イランは、「資源ツールを越えた交渉カード」をもっていることを世界に示そうと、北朝鮮をモデルに、核開発プログラムを前倒しで再開するかもしれないし、それでもうまくいかなければ、(誰による仕業か分からない)グレーゾーンでのアラブ産油国のエネルギー施設への攻撃を続けるかもしれない。しかし、依然として外交路線を模索する可能性も残されている。現在のイランにとって本当の教訓とすべきなのが、北朝鮮ではなく、「政治腐敗、生産施設のメンテへの投資不足、外国投資の引き揚げによってその石油産業が機能不全に陥っている」ベネズエラかもしれないからだ。・・・

  • トランプ外交は誰を追い込んだのか
    ―― イラン、中国、北朝鮮それともアメリカ

    フィリップ・ゴードン

    Subscribers Only 公開論文

    威嚇、経済制裁、大言壮語で敵対勢力が譲歩するか、より優れた取引を手に入れられると期待するのがトランプの外交パターンだ。そうした戦術が何を引き起こすかを想定できず、逃げ場のない袋小路に自らを追い込むのもパターン化している。イランだけでなく、ベネズエラのケースでも「後退か軍事力行使」が残された選択肢となりつつあるし、中国と北朝鮮へのアプローチも同様に袋小路に追い込まれつつある。一方で、トランプが「戦争は望んでいない」とペンタゴンの高官に述べたとすれば、おそらく、彼はアメリカが不用意に紛争に巻き込まれていくリスクを予見し、それを回避したいと考えているのかもしれない。問題は、戦争を回避するのを助けてきた側近たちがもはやいないことだ。

  • イランを内包する新中東秩序の構築を
    ―― 中東の安定を取り戻すには

    バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

  • 米欧関係に生じた大きな亀裂
    ―― 金融自立と新同盟を模索するヨーロッパ

    ソーステン・ベナー

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの金融システムは、もはや公共財ではなく、ワシントンが他国を従わせるために一方的に振り回す地政学的ツールにされていると各国が考えるようになれば、それに翻弄されるのを防ぐ措置をとるようになる。既に、ヨーロッパはアメリカの金融覇権に挑戦することを決断している。外交領域も例外ではない。ドイツ外相は「既存のルールを守り、必要な場合には新ルールを導入し、各国の目の前で国際法が踏みにじられる事態に対しては連帯を示す有志同盟」の形成を明確にイメージし、既にカナダや日本に接触している。現状では、失敗を運命づけられている試みなのかもしれない。しかし、敵意あふれる世界で自分たちの立場を守っていくつもりなら、「自立」と「新しい同盟」が、ヨーロッパが取り得る唯一の賢明な方策かもしれない。

  • 外交的経済パワー乱用の果てに
    ―― 米単独行動主義で揺らぐ同盟関係

    ジェイコブ・ルー、リチャード・ネフュー

    Subscribers Only 公開論文

    経済制裁が機能するのは、制裁対象国が行動を変えることで、(制裁を緩和・解除させ)経済的窮状を切り抜けられると確信した場合だけだ。アメリカの要求を受け入れ、合意を順守しているにもかかわらず、解除された制裁の再発動という事態に直面するのなら、合意を順守しようとするインセンティブはなくなる。それだけでない。トランプ政権の関税引き上げ策や対イラン制裁に象徴される単独行動主義は、同盟関係を揺るがし始めている。仏独英などのワシントンの緊密な同盟諸国は、イラン政府と直接接触して、アメリカの制裁を回避し、核合意を維持していくために、ドルを基盤とする金融システムから決済を迂回させる方法を特定しようと試みている。仮に他の諸国が連帯してアメリカの制裁を拒絶するようになれば、ワシントンはすべての国に制裁を課すか、制裁を断念するかしかなくなる。・・・

  • トランプ・ドクトリン
    ―― 対イラン経済制裁への参加がなぜ必要か

    マイク・R・ポンペオ

    Subscribers Only 公開論文

    トランプ大統領が引き継いだのは、第一次世界大戦や第二次世界大戦前夜、あるいは冷戦のピーク時に匹敵する危険な世界だ。しかし、先ず北朝鮮に、そして現在はイランに対して大統領がみせている破壊的なまでの大胆さは、明確で強い信念と、核不拡散と強力な同盟関係を重視する姿勢を組み合わせれば、いかに多くのことを成し遂げられるかを示している。・・・率直な態度は交渉を妨げるという、古臭い思い込みにとらわれている人々も、ターゲットを絞り込んだレトリック、現実的な圧力行使策が、アウトロー国家を変化させ、現在も変化させつつあることを認めるべきだ。・・・われわれは、(イランとの)戦争は望んでない。しかし事態をエスカレートさせれば、イランの敗北に終わることを、われわれは明白にしておく必要がある。

アルコールとアメリカの精神

  • 飲むべきか、飲まざるべきか
    ―― アルコールとアメリカの精神

    スーザン・チーバー

    雑誌掲載論文

    ジョージ・ワシントンは適度なアルコールを与えてからでなければ、兵士たちを戦場に向かわせることはなかった」。イギリス軍の要塞に突入し、独立戦争の流れを変えたイーサン・アレンも、「いつもながら、リンゴ酒とラムのカクテルを燃料にしていた」。メイフラワー号の航海から独立戦争そして南北戦争にいたるまで、建国期のアメリカの歴史の節目には必ずアルコールが登場する。しかし、労働の節目で軽く一杯やることが農村コミュニティで受け入れられていた時代から、物理的な間違いが大きなコストを伴う工場労働の時代に移ると、飲酒に対する態度は一変する。1840年代までには禁酒運動が起きるようになり、1920年からの13年間にわたって現実に禁酒法が施行された。多くの意味で、飲酒容認派と禁酒派間の緊張、酒場の生活を支持する人々と家庭の生活を支持する人々の緊張は、アメリカ国家を形作る要因の一つだった。

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