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2019年6月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2019年6月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2019年6月号 目次

AIのポテンシャルと開発競争のリスク

  • 人工知能の恩恵とリスク
    ―― 誰も勝者になれない世界を回避するには

    ポール・シャーリ

    雑誌掲載論文

    19世紀の産業革命は世界に大きな経済成長だけでなく、戦車、機関銃、毒ガス兵器をもたらした。人工知能(AI)はこれらに匹敵する変化を誘発することになる。AIは医療から交通に至るまでのあらゆる分野で大きな恩恵とともに大きなリスクも生み出す。最大のリスクは、AI軍事システムを最初に開発した国が、ライバル国に対して圧倒的な優位を手に入れられるために、いい加減なテストだけで、システムを一刻も早く導入せざるを得ないと考えるかもしれないことだ。こうして非常に深刻な問題が作りだされる。AIシステムの導入を競い合うのではなく、その安全性の検証と研究に多国間で投資すべきだ。そうしない限り、「誰も勝者になれない世界」が創り出されることになる。

  • AIと未来の戦争
    ―― アメリカが軍事的に衰退する理由

    クリスチャン・ブローズ

    雑誌掲載論文

    人工知能を組み込んだ自律的軍隊を構築するのが望ましいだけでなく、それが技術的に可能になっている。米軍は、低コストの自律型航空機から無人潜水艦までの、将来の戦力整備を目的とする数多くの開発プログラムをもっている。目的はさまざまなプラットフォームを導入することではなく、よりスピーディに「キルチェーン」を実現することにある。現状で、時代遅れの一つのプログラムに投資されている金額で、数十の自律的システムを導入できるし、これによって、より高度な能力を手に入れられる。目的は、もちろん、戦争を挑発するためではなく、それを抑止することにある。アメリカは、このタイプの軍隊を組み立てる資金、人的資源、テクノロジーを兼ね備えている。問題は、新軍事技術革命を生かしたシステム移行に想像力と決意をもたらせるかどうかだ。

  • テクノロジー・ワールド
    ―― 地政学革命としての人工知能

    ケビン・ドラム

    Subscribers Only 公開論文

    産業革命は世界を変えたが、機械が人間の筋肉の代役を果たすようになっただけで、人の頭脳が依然として必要とされたために、高賃金雇用が数多く創出された。しかしデジタル革命を担うのは、人間の頭脳を代替する人工知能(AI)だ。本質的に、人間レベルのAIは人間ができることすべてをより巧みに遂行できる。おそらくロボットはすべての仕事の4分の1(25%)以上を担うことになると考えられている。しかも、真に開花するまでに100年以上を要した産業革命とは違って、デジタル革命による雇用喪失はわずか数十年で加速していく。これに比べれば、中国の台頭などの21世紀の地政学的動向は、あと20年もすれば、どれも、取るに足らぬ問題にすぎなくなる。どの国が世界最高のAIを保有しているかですべては決まるし、政府形態も流動化していく。

  • 人工知能と中国の軍事パワー
    ―― 戦場の「技術的特異点」とは

    エルサ・B・カニア

    Subscribers Only 公開論文

    今後数十年もすれば、人工知能(AI)が戦争の概念を変化させるかもしれない。2017年6月に中国電子科技集団は119台のドローンによる編隊飛行を成功させ、世界記録を更新した。紛争になれば、中国軍が安価なドローン編隊で、空母のように高価なアメリカの兵器プラットフォームをターゲットにするかもしれない。AIとロボティクスが戦争で広く応用されるようになれば、AIの急激な技術成長が刺激され、人間の文明に計り知れない変化をもたらす「シンギュラリティ=技術的特異点」が現実になると予測する専門家もいる。この段階になると、AIを導入した戦闘が必要とするスピーディな決断に人間はついていけなくなるかもしれない。軍は人間を戦場から引き揚げ始め、むしろ監視役に据え、無人システムに戦闘の大半を遂行させるようになるかもしれない。

  • AI軍拡競争を超えて
    ―― 危険な米中ゼロサム志向を回避せよ

    レムコ・スヴェッツロット

    Subscribers Only 公開論文

    すでにAIについては多くのことが言われている。AIの「スキル・バイアス」によって、多くの低スキルおよび中スキルの労働者が経済に生産的に貢献できなくなり、失業率が大幅に上昇すること、そして優良企業を強化する自己補強サイクルをもつAIが流れを独占に向かわせがちで、このトレンドが国内および国家間の格差を悪化させることだ。実際、AIは2030年までに約16兆ドルのGDP成長をもたらすが、その70%が米中に集中するとみなす予測もある。では、米中のどちらが勝者となるか。「2020年までに中国はアメリカに追いつき、2025年までに抜き去り、2030年までにはAI産業を支配している」と予測する警告もある。だが、本当にそうなるだろうか。・・・

  • 人工知能とデジタル権威主義
    ―― 民主主義は生き残れるか

    ニコラス・ライト

    Subscribers Only 公開論文

    各国にとっての政治・経済的選択肢は「民衆を抑圧し、貧困と停滞に甘んじるか」、それとも「民衆(の創造力)を解き放って経済的果実を手に入れるか」の二つに一つだと考えられてきた。だが、人工知能を利用すれば、権威主義国家は市民を豊かにする一方で、さらに厳格に市民を統制できるようになり、この二分法は突き崩される。人工知能を利用すれば、市場動向を細かに予測することで計画経済をこれまでになく洗練されたものにできる。一方で、すでに中国は、サーベイランスと機械学習ツールを利用した「社会信用システム」を導入して「デジタル権威主義国家」を構築し始めている。20世紀の多くが民主主義、ファシズム、共産主義の社会システム間の競争によって定義されたように、21世紀はリベラルな民主主義とデジタル権威主義間の抗争によってまさに規定されようとしている。

  • 次なるサイバー超大国 中国
    ―― 主導権はアメリカから中国へ

    アダム・シーガル

    Subscribers Only 公開論文

    いずれ中国はサイバースペースを思いどおりに作り直し、インターネットの大部分は、中国製ハードウエアを利用して中国製アプリで動くようになるかもしれない。「難攻不落のサイバー防衛システム」を構築し、インターネット統治についての中国モデルの影響力を強化するだけでなく、人工知能(AI)や量子コンピュータ部門でも世界のリーダーになることを目指し、大がかりな投資をしている。途上国では、中国の「サイバー主権」統治モデルが大きな支持を集めているし、中国は、第5世代モバイル通信システム(5G)の技術標準を確立したいと考えている。もはやワシントンがいかに手を尽くそうと、今後、サイバースペースの主導権がアメリカから中国へシフトしていくのは避けられない。

急変する地政学環境

  • トランプの撤退宣言とシリアの現実
    ―― 介入目的を下方修正するしかない

    ブレット・マクガーク

    雑誌掲載論文

    2018年12月、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を命じるという驚くべき決定を下し、アメリカのシリア戦略を根底から覆した。現在の課題は、次に何が起きるか、そして今後数カ月間で現地の米軍プレゼンスが削減されていくとしても、シリアにおける利益を守るために何ができるかを特定することだ。バッシャール・アサドが退陣することも、イランがシリアからいなくなることもあり得ないし、トルコは厄介なプレイヤーのままだろう。一方で現在のシリアにおける主要なパワーブローカーがロシアであることをワシントンは認識しなければならない。幸い、米ロの利益には重なり合う部分がある。ともにシリアの領土保全を望み、イスラム国勢力やアルカイダの聖域を誕生させてはならないと考え、イスラエルとの緊密な関係をもっている。・・・

  • 中ロパートナーシップの高まる脅威
    ―― 手遅れになる前に行動を起こせ

    アンドレア・ケンドール=テイラー、デビッド・シュルマン

    雑誌掲載論文

    中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

  • 「歴史の終わり」と地政学の復活
    ―― リビジョニストパワーの復活

    ウォルター・ラッセル・ミード

    Subscribers Only 公開論文

    政治学者フランシス・フクヤマは、「冷戦の終わり」をイデオロギー領域での「歴史の終わり」と位置づけたが、多くの人は、ソビエトの崩壊はイデオロギー抗争の終わりだけでなく、「地政学時代の終わり」を意味すると考えてしまった。現実には、ウクライナをめぐるロシアとEUの対立、東アジアにおける中国と日本の対立、そして中東における宗派間抗争が国際的な紛争や内戦へとエスカレートするリスクなど、いまや歴史は終わるどころか、再び動き出している。中国、イラン、ロシアは冷戦後の秩序を力で覆そうとしており、このプロセスが平和的なものになることはあり得ない。その試みは、すでにパワーバランスを揺るがし、国際政治のダイナミクスを変化させつつある。いまや、リベラルな秩序内に地政学の基盤が築かれつつあるのを憂慮せざるを得ない状況にある。・・・・

  • さようなら、国際主義のアメリカ
    ―― トランプ時代の歴史的ルーツ

    エリオット・A・コーエン

    Subscribers Only 公開論文

    トランプの「アメリカ第1主義」は、外交の初心者が犯した間違いではなく、アメリカのリーダーたちが戦後外交の主流概念から距離を置きつつあるという重要な潮流の変化を映し出している。先の大戦期及びその直後に成人した世代は、アメリカが世界をリードしなければ、いかに忌まわしい世界が出現するかを本能的に理解していた。これは、戦争で苦しんだ末に得た教訓だった。しかし、この世代の多くが亡くなり、具体的に秩序を形作った子どもの世代も少なくなってきている。これが、今後の米外交政策にもっとも重要な帰結を与えることは間違いない。トランプが大統領の座を退いても、「アメリカのリーダーシップなき世界」がどのような末路を辿るかを知る人々が支えたかつてのコンセンサスへアメリカが回帰していくことはない。残念ながら、不幸な結果を記憶している人々はもうすぐいなくなる。

  • 習近平革命の本質と衝撃
    ―― 外交と内政の垣根を取り払った権威主義国家

    エリザベス・エコノミー

    Subscribers Only 公開論文

    1940年代以降、毛沢東は共産革命を主導し、1970年代末以降は鄧小平が経済改革路線と低姿勢外交という第2の革命を通じて「中国経済の奇跡」の基盤を築いた。そしていまや、習近平は「第3の革命」に着手している。鄧小平が開始した「改革と開放プロセス」のペースを鈍化させるか覆し、新中国の原則をグローバルレベルで促進することに習は努めている。対外政策と国内政策の垣根を取り払い、その政治的モデルを輸出し、権威主義志向をもつ外国の指導者たちを支える一方で、国際法の基盤を損なう行動、他の諸国の主権を脅かす行動をとっている。いまや、中国は、非自由主義国家としては初めてリベラルな世界秩序におけるリーダーシップを模索している。

  • 中ロによる民主国家切り崩し策
    ―― 台頭する権威主義モデルと追い込まれた欧米

    アンドレア・ケンドール=テイラー他

    Subscribers Only 公開論文

    民主主義を切り崩していけば、欧米の影響力低下というトレンドを加速し、ロシアと中国の地政学的目標を促進できる。これが、中ロが共有している中核ビジョンだ。自国のパワーをアメリカのそれと比較して相対的に捉えるモスクワと北京は、欧米民主国家を衰退させれば、自国の国際的な地位向上につながると考えている。ロシアが民主体制を様々な方法で混乱させ、切り崩す一方で、中国が欧米民主主義の代替モデルを示し、困難な状況にある国に援助や投資を提供することで、弱体な民主国家が欧米から離れていく環境が作り出されている。これが侮りがたい権威主義モデル台頭の潮流を作り出しつつある。

  • サウジアラビアとイラン
    ―― ビン・サルマンへの権力集中の意味合い

    トビー・マティーセン

    Subscribers Only 公開論文

    最近の政治的パージによって、ビン・サルマン皇太子は政治的ライバルを追い落としただけでなく、これまでアブドラ一族が支配してきた国家警備隊を含む、サウジの軍事組織の全てをいまや直接・間接に支配している。彼は、周辺地域が抱える問題の多くはテヘランが背後で操っているとみなし、イランに対してより強硬な路線をとっている。この現状は危険に満ちている。イラン脅威論を利用して国内のナショナリズムを煽りたてるビン・サルマンが、いまやサウジの権力を一手に担おうとしているからだ。テヘランに対する強硬路線をとるビン・サルマンをイスラエルが支持し、彼がサウジにおける自らの権力基盤を固めるなか、ワシントンからテルアビブ、リヤド、そしてアブダビをつなぐ、対イランの新たな枢軸が形成されつつある。

  • 独裁者と欧米コンサルタント企業
    ―― その功罪をどう判断するか

    カルバート・W・ジョーンズ

    雑誌掲載論文

    中国からサウジアラビアまで、権威主義体制の指導者たちは、欧米諸国のトップクラスのコンサルティング企業、大学、シンクタンクの専門家への依存を高めている。2018年、ニューヨーク・タイムズ紙が、マッキンゼーが抑圧的で政治腐敗にまみれた体制との顧問業務を交わしていることを批判的に報道したことで、これが社会問題化した。欧米の専門家が中国やサウジのような国の独裁者にアドバイスを与えるのは問題があると考える人もいるし、そのアドバイスが、権威主義体制による反体制派の抑圧や人権侵害を助長する場合はなおさらだろう。但し、コンサルタントたちは、一部の批判派が考えているほどは権威主義体制を支えてはいない。実際には、国際的な専門家の存在が独裁者の国内における支持を低下させ、体制を弱体化させて、正統性を低下させている可能性もある。・・・

  • 米外交と同盟関係を支える価値
    ―― アメリカ・ファーストのコストは何を意味するか

    コーリー・シャーキー

    雑誌掲載論文

    トランプは無遠慮かつしばしば下品な表現で米外交の伝統を批判し、長年にわたって維持されてきた原則に対する疑問をうまく描き出した。だが、既にトランプ外交は米主導の秩序を支えてきた価値と原則を解体すれば、米戦略がどのような事態に陥るかを白日の下にさらし、逆にそうした価値や原則の重要性を立証している。「アメリカは絶望的なまでにつけ込まれ、過剰な任務を抱え込まされている」と考えるのを止め、多くの国が恩恵を手にできる結果を確保することで、目的を実現すべきであり、そうすれば、強制の必要性は低下し、考えを共有する諸国の責任分担も促すこともできる。重要なのは、一部で刷新が必要だとしても、伝統的な外交的価値と原則へ立ち返ることだ。

Current Issues

  • イギリスの混乱は長期化する
    ―― 断ち切れぬヨーロッパとの絆

    アマンダ・スロート

    雑誌掲載論文

    デービッド・キャメロンが、ブレグジットの国民投票に踏み切ったのは、保守党内部で長く続けられていた「ヨーロッパにおけるイギリスの立場」に関する論争に終止符を打ちたいと考えたからだった。だが、国民投票の結果、論争はさらに深刻化した。そして「EUの単一市場と関税同盟を離脱しつつ、(北アイルランドと)アイルランド間にはっきりとした国境が出現するのを回避し、イギリス全体としてのブレグジットの実現」を目指したテリーザ・メイのアプローチが、これまでのところ解決不能なトリレンマを作り出している。

  • イギリス政治の再編か
    ―― ブレグジットと伝統的政党の凋落?

    アナンド・メノン、アラン・ウェージャー

    雑誌掲載論文

    二大政党の牙城に第三政党がどこまで食い込み、政治を再編できるか。すでに、労働党はこれ以上の離党者を出さぬように、2019年3月に立ち上げられた新党、チェンジUKの立場を取り入れ、国民投票の再実施を支持している。だが、そのチェンジUKも(地方選挙で大きな躍進を遂げた)自由民主党と選挙協力をしない限り、中道派の票を奪い合うことになり、保守党の基盤に切り込めない。(一方、ナイジェル・ファラージが4月に旗揚げした「ブレグジット党」が支持を集めていると報道されている)。今後、国民投票をめぐって作り出された分裂が永続化するような、より抜本的な再編が起きるかどうか、これによって今後のイギリス政治は左右される。

  • ウクライナ大統領になったコメディアン
    ―― なぜ勝利し、何が待ち受けているか

    ピーター・ディッキンソン

    雑誌掲載論文

    ロシアとの戦争のただ中にある、広大で変化の激しい国の最高責任者となったコメディアンは、今後、世界におけるウクライナの地位を再定義していかなければならない。ウォロディミル・ゼレンスキーが政治腐敗に反対してきたことは誰もが知っている。だが、そのためには、政府機関の人材を全面的に刷新し、政治階級に認められている刑事免責を廃止しなければならない。彼を試す最大の試金石は、彼の政治的パトロンとみられるコロイモスキーとの関係をどうするかだろう。・・・

  • ポストメルケルで流動化するドイツ政治
    ―― クランプカレンバウアーの課題

    ソーステン・ベナー

    雑誌掲載論文

    「2021年まで首相は続投するが、CDUの党首ポストは辞任する」。メルケルがこう表明して以降、ドイツ政治は漂流している。2015年、反移民政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がCDU右派を脅かす主要な政治勢力として台頭し、移民を受け入れるか受け入れないかという新たな対立軸が、ドイツ政治を支配するようになった。後任の党首に選ばれたのはアンネグレート・クランプカレンバウアー。彼女のリーダーシップで世論の関心を移民から「将来のドイツの経済的成功に向けた基礎作り」へと向かわせられるかどうかが今後の鍵を握る。・・・

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