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テロに関する論文

CFRインタビュー
拡大・激化するパキスタンの過激主義

2007年10月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

「パキスタンは軍人が支配する国から、元軍人が支配する国へと変貌しようとしており、ムシャラフ大統領が次の任期において軍服を身につけることはないはずだ。……逆説めいた言い方だが、今後も軍部がパキスタン社会の中枢勢力であり続けると考えられる以上、(軍の反発がなければ)政治体制の移行がかなり進むのではないかと思う」。パキスタンの政治改革の行方をこのように前向きに評価しつつも、いまやパキスタンは「タリバーン化」という現象に直面していると米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長は警告する。過激派とテロリストはすでにパキスタン西部と北西辺境州に深く根を下ろしている。心配なのは、パキスタンの中核である都市部へとこうした過激主義が拡大していることで、宗教施設「ラール・マスジード」での占拠事件や、最近におけるカラチでのテロ事件はその具体例だと指摘した同氏は、「パキスタンの現実は、かつてのイラクやアフガニスタンを想起させるものへとしだいに変化しつつある」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクからの撤退か、増派策の遂行か

2007年9月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会シニア・フェロー

多くの議会指導者は、大統領が想定する増派路線よりも少ない戦力で活動し、完全な撤退はしないという中道路線を重視している。……その理由は、彼らが、大統領の増派路線が不評であること、そして一方で、犠牲を引き受けるのをやめて撤退するのも政治的に敗北を認めることにつながることを理解しているからだ。だが、この程度の戦力では、任務上の有意義な成果を上げることは期待できない。数万人の兵士を残留させても、米軍がテロ集団のターゲットにされるだけの話だ。つまり、何か有意義なことをするにも、犠牲者を少なくするにも規模が小さすぎる。論争されている路線の両極端に位置する二つの選択肢、つまり増派か完全撤退策のほうが、その間に位置する路線よりも合理性がある。(スティーブン・ビドル)

CFRインタビュー
米軍増派とスンニ派との協調でイラクは安定化へと向かいだした

2007年9月号

マイケル・J・ミース 米陸軍士官学校政治学教

スンニ派の部族が米軍との協調を求めてきたのは、アルカイダのイデオロギーがシャリア(イスラム法)を基盤とする過度に厳格なものであることにスンニ派も気づきだし、最終的にタリバーン流のイデオロギーを拒絶したからだ。地方における治安の安定化をもたらしている米軍とスンニ派の協調がなぜ実現したかについて、ウエスト・ポイント(米陸軍士官学校)の政治学教授で、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官の顧問を務めるマイケル・ミース大佐は、こう指摘する。「イラク・アルカイダ機構は、組織に忠誠を尽くす人物の結婚相手に部族長の娘を差し出すように強要し、気に入らぬ者の首をはねることも気にかけなかった」。スンニ派が嫌がることをアルカイダが無理強いし、大量虐殺を行うなか、スンニ派部族も「もうたくさんだ」と考えるようになった、と。邦訳文は英文からの抜粋・要約。ミースの意見は彼個人のもので、ペンタゴンの公的立場とは関係ない。聞き手はグレッグ・ブルーノ(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRミーティング
S・ハドレー大統領補佐官が語るイラクの行方
―― 増派策の成功を拡大し、政治的和解を進めるには

2007年9月号

スピーカー スティーブン・ハドレー 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
司会 トマス・R・ピカリング 元米国連大使

イラクのスンニ派部族がアルカイダに立ち向かうために、米軍やイラク政府と協調するようになったように、シーア派の部族が、イランの支援を受けたマフディ軍団に立ち向かうような環境を作る手助けができればと思う。そして、バグダッドのイラク政府が、こうした二つの流れを、脅威としてではなく、うまく生かすべき機会として捉えるようにわれわれは強く働きかける必要がある。スンニ派、シーア派の部族集団が米軍やイラク政府と協力するように働きかけ、治安の確保に向けた流れを作り出し、人々が安心して暮らせるような環境を作る必要がある。これを、われわれはボトムアップ型の政治的和解プロセスと呼んでいる。……今後政治的に必要なのは、イラクの連邦制がどのような形態のものになるか、それがいかに機能するかについて、(シーア派、クルド人、スンニ派)三つのグループが共有できるビジョンを形作ることだ。……われわれが、破綻したイラクを(アメリカの)次期政権に委ねることはない。成功を収めつつあり、継続する価値のある路線を新政権に託すことになるだろう。

「私は、(ニューヨーク)市長としての経験から、都市の問題地域の治安をうまく確立すれば、安心して生活できる全体的秩序を速やかに回復できることを知っている。商店主は店を開け、人々も帰ってくる。子供たちが歩道で遊ぶようになり、節度ある法に守られたコミュニティーが再生する。同じことが世界秩序についても言えると思う。世界における治安の悪い地域の秩序の乱れを放置しておけば、問題は広がりを見せていく。悪い行いを放置すれば、さらに悪い行動を助長することになる。だが、国際的な基準やルールを支えていくためのバランスのとれた試みを行えば、民衆、経済、そして国家は躍動感と繁栄を手にできるようになる。決意ある行動によって支えれば、市民社会は混沌を抑え込むことができる」

CFRインタビュー
ムシャラフ大統領の内憂外患
――選挙を控えたパキスタンの混迷

2007年8月号

テレシタ・C・シャッファー 戦略国際問題研究所南アジアプログラム・ディレクター

チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

CFRインタビュー
ガザは孤立しても、ハマスは封じ込められない
 ――二極化するパレスチナ

2007年6月号

アンソニー・コーデスマン 戦略問題国際研究所 戦略問題担当議長

先月号に掲載した「パレスチナ危機のなか、なぜ中東和平への機運が高まっているのか」でマーチン・インディクは、「国際社会の支援をバックにファタハが治安部門の強化を図っていることに危機感を募らせたハマスは、ファタハが力をつける前に粉砕しておく必要があると判断し、その結果、パレスチナは内戦状況に陥った」と分析した。インディクの予想通り、いまやファタハはガザ地区への影響力を失い、「西岸はファタハが、ガザ地区はハマスが支配する」という分断状況に陥っている。戦略国際問題研究所(CSIS)の中東問題の専門家であるアンソニー・コーデスマンは、ファタハによる統治がこれまで腐敗し、効率に欠けていたことを思えば、ハマスをガザに封じ込められるとは考えにくいと指摘し、今後、ハマスが力を得ていく可能性を示唆する。西岸(ファタハ、自治政府)とイスラエルの協調が進む可能性はあるとしても、パレスチナの二極化は当面続き、これが「イスラエル、アメリカ、西岸」と「イラン、シリア、ヒズボラ」の国際的対立として、広がりをみせていく危険もある。コーデスマンは二極化によって「パレスチナで大規模な紛争が起きるとは考えにくいが、パキスタンからアルジェリアにいたる一連の地域がますます不安定化する危険がある」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

アルカイダ・ストライクスバック

2007年6月号

ブルース・リーデル ブルッキングス研究所 セバン中東研究センターシニア・フェロー

現在のアルカイダは、パキスタンに非常にすぐれたプロパガンダチームを擁し、グローバルな活動能力を持つテロネットワークである。二次的な独立拠点をイラクに持ち、ヨーロッパへの影響力も強めている。指導層はほぼ手つかずのままで存続している。指揮統制系統を分散化し、意見決定を下位委譲しているために、ザルカウィのような主要なプレーヤーが死亡しても、生き残り、活動を継続できる。同盟勢力であるタリバーンもアフガニスタンで再び影響力を強めている。一方、混沌とした状況をつくりだしてしまったアメリカのイラク占領はビンラディンの計画を先に進めるのに手を貸してしまっている。ビンラディンはかねて、「イラク」をアメリカを陥れる罠にしようと試みてきたが、いまや戦略を拡大し、アメリカとイランを戦争へと向かわせようと画策しているようだ。

CFRインタビュー
アフガニスタンの統治能力整備への支援を

2007年3月号

サイード・ジャワード
駐米アフガニスタン大使

「アフガニスタンでの治安面での問題はテロによってつくりだされている。しかし、これは、テロリストやタリバーンがアフガニスタンで大きな力を持っていることを意味しない。むしろ、アフガニスタン政府が行政サービスを提供したり、市民を保護したりする能力に限界があることが問題だ」。アフガニスタンの日常生活を脅かしているのは、テロリストの攻勢だけでなく、援助不足ゆえにアフガニスタン政府がうまく統治能力を確立できないことにあるとサイード・ジャワード駐米アフガニスタン大使は強調する。「民衆の必要を満たせるようにカブールの行政、統治能力を改善しないことには、軍事作戦だけでは状況の改善は見込めない」。ジャワードは、「われわれは、アメリカそして国際社会が、テロリスト勢力を壊滅した後のアフガニスタンが国家として持ちこたえられるように統治能力の整備に投資することを望んでいる」と指摘し、「アフガニスタンで平和を勝ち取らない限り、対テロ戦争はうまくいかない」と語った。聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgの副編集長)。

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