1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― シリア紛争と中東に関する論文

アメリカは中東をいかに失ったか
―― 米中東戦略の妄想

2023年6月号

リサ・アンダーソン コロンビア大学 名誉教授(国際関係)

ワシントンの中東戦略は「妄想」に過ぎなかった。それは、高潔な意図を抱いた政治家たちが、実際には知識も関心もほとんどない地域に「壮大なアイデアを押し付ける」ことで作り上げられてきた。ワシントンは長年、促進すべき何かではなく、「阻止すべき何か」で、中東をネガティブに定義してきた。現在のアメリカは中東で何を促進したいのか。ワシントンが中東におけるアメリカの国益を定義しない限り、間違ったエンゲージメント政策をとり、再び、何かを阻止することに終始するだけだろう。中国の最近の外交的勝利が示唆するように、そのような阻止戦略で失敗するケースは今後ますます増えていくだろう。

中東秩序の分水嶺
―― イラン・サウジ合意と米中競争

2023年5月号

マリア・ファンタッピー 在ローマ 国際関係研究所(IAI)
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 教授

サウジは、イランとの関係正常化交渉に中国を関与させるのが、合意を永続化させるための間違いのない保証になると考えた。イランも、習近平は信頼できる仲介者の役割を果たすことができると考えた。一方、「アラブ・イスラエル同盟がイランを封じ込める」という構図を期待してきたワシントンの立場は非現実的になった。リヤドはアメリカだけでなく、ロシアや中国とも緊密で独立した関係をもつことを望んでいる。エジプト、イラン、イスラエル、トルコとのバランスをとりながら、サウジの安全を守り、地域に影響力を行使する、重要な役割を担っていると自負している。

中国と中東
―― 中東における米中の役割

2023年5月号

トリタ・パルシ クインシー研究所上席副会長
ハリド・アルジャブリ 亡命サウジ人心臓専門医

2023年3月のイラン・サウジ国交正常化合意は、中東全域に前向きな衝撃を与えるだろう。中東での外交的仲介をめぐって、今回、中国が主導的役割を果たしたことは注目に値する。ワシントンの戦略的間違いが、イランとサウジの双方に信頼される数少ない大国の一つとして中国の台頭を促した。カーター・ドクトリンを封印したトランプがサウジをイランとの外交に向かわせ、バイデンの人権外交が、中東における仲介役としての中国の台頭に道を開いた。中国の安定性は、イラン、イスラエル、サウジと良好な関係を維持し、この三国間の争いに完全に中立を保っていることによって生まれている。・・・

変化する中東地政学に即した政策を
―― より多くをより少ない資源で実現するには

2020年12月号

マーラ・カーリン  ジョンズ・ホプキンス大学  戦略研究ディレクター タマラ・コフマン・ウィッテス  ブルッキングス研究所中東政策センター シニアフェロー

パンデミックとその後の原油価格暴落という双子の危機によって、サウジを含む湾岸アラブ諸国は富の大幅な減少に直面し、内外でのプロジェクトをこれまでのように進められなくなっている。中国やロシアの影響力もそれほど大きくなっていない。ロシアの中東関与は依然として手探りだし、中国は経済関係の促進に熱心だとしても、地域紛争に関わって手を汚すつもりはない。要するに、アメリカは依然として大きなコストや長期的なコミットメントをしなくても、より安定した中東を形作る機会を手にしている。地域内の地政学的競争を抑え、イランの行動により効果的に立ち向かい、可能な限り(イランとサウジの)代理紛争を解決することに努力すれば、ワシントンは中東における支配的優位を失うことなく、関与を控えることができるだろう。

中東における全面戦争のリスク
―― 何が起きても不思議はない

2020年1月号

ロバート・マレー 国際危機グループ(ICG) プレジデント

中東のいかなる地域における衝突も中東全体を紛争に巻き込む引き金になる恐れがある。一つの危機をどうにか封じ込めても、それが無駄な努力になる危険が高まっているのはこのためだ。しかも、国家構造が弱く、非国家アクターが大きな力をもち、数多くの大きな変化が同時多発的に進行している。イスラエルと敵対勢力、イランとサウジ、そしてスンニ派の内部分裂が存在し、これらが交差するだけでなく、ローカルな対立と絡み合っている。「サウジに味方をすることは、(イエメンの)フーシに反対するということであり、それはイランを敵に回すことを意味する」。こうしたリンケージが入り乱れている。ワシントンが中東から撤退するという戦略的選択をしようがしまいが、結局、アメリカはほぼ確実に紛争に巻き込まれていく。

CFR In Brief
シリア北西部の現状
―― そこに誰がいるのか

2019年12月号

リンジー・メイズランド
CFR.org アジア担当ライター

アンカラが南部国境線に近いシリア北部にトルコ軍を投入したことで、シリア内戦は新たな局面を迎えている。わかり難いのは現地でどのようなプレイヤーたちが活動しているかだ。
10月9日、シリアに展開する米軍が国境地帯から撤退した後、トルコ軍は国境を越えて、実質的なクルド人地域に進攻した。一方クルド人勢力の要請に応じてシリア軍が北東部に進攻した。
トルコ軍とクルド人勢力との間で交戦が起き、トルコ軍によるクルドの民間人を対象とする残虐行為があったとも報道された。10月下旬、ロシアのソチでプーチンとエルドアンが会談し、安全地帯の設定を含む国境地帯に関する合意が交わされた。
ロシアは「クルド人勢力の撤退はすでに完了した」と表明し、国境地帯をロシア軍とトルコ軍が合同パトロールをしている。事態は依然として流動的で、特にクルド人勢力がこれまで管理してきたイスラム国戦闘員の拘束施設や難民キャンプがどのような状態にあるかが懸念されている。(FAJ編集部)

ロシアとポストアメリカの中東
―― 中東のパワーブローカー

2019年12月号

ユージーン・B・ルーマー カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・プログラム ディレクター

1980年代末の帝国の解体とともに、ソビエト・ロシアは中東から姿を消した。一方ワシントンは、この地域で戦争を戦い、政治ビジョンを押し付け、中東の覇権国として振舞うようになった。だが、2015年秋に流れは変化した。モスクワはシリアにロシア軍を派遣し、パワーブローカーとしての足場を中東に築き、今後ここから立ち去るつもりはない。だが、シリアの外国プレイヤーであるイラン、トルコ、イスラエルとの関係を管理するだけでなく、モスクワはサウジを含むアラブ諸国との関係も形作っていかなければならない。問題は、治安と安定そして近代化の機会をアラブ社会が求めているのに対して、ロシアがオファーできるものをほとんど何も持っていないことだ。・・・・

粉砕されたクルド人の夢
―― エルドアンとトランプの誤算

2019年12月号

アンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

トランプは(米軍のシリアからの撤退という)クルド人に対する裏切り行為への米社会の反発を過小評価し、エルドアンは、トルコの残忍な侵攻作戦に対する国際社会の反発を軽くみていたようだ。アメリカの議会、軍、官僚、メディアは「(イスラム国との戦いの中枢を担った)同盟勢力であるシリアのクルド人をなぜあっさりと見限ったのか」と困惑した。しかも、クルド人が支配してきた地域に収容されている1万2000人のイスラム国戦闘員と4万人の家族が収容施設から外へ出る恐れもある。カリフ国家を打倒するという数年に及んだ困難な試みの成果を、(米軍を撤退させ、トルコのシリア侵攻を認めたことで)トランプはあっさりと台無しにしたのかもしれない。いまやトルコと欧米の関係だけでなく、トルコの国内政治も、トルコと中東におけるクルド人との関係も不安定化している。

トランプの撤退宣言とシリアの現実
―― 介入目的を下方修正するしかない

2019年6月号

ブレット・マクガーク 前米大統領特使(対イスラム国有志連合担当)

2018年12月、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を命じるという驚くべき決定を下し、アメリカのシリア戦略を根底から覆した。現在の課題は、次に何が起きるか、そして今後数カ月間で現地の米軍プレゼンスが削減されていくとしても、シリアにおける利益を守るために何ができるかを特定することだ。バッシャール・アサドが退陣することも、イランがシリアからいなくなることもあり得ないし、トルコは厄介なプレイヤーのままだろう。一方で現在のシリアにおける主要なパワーブローカーがロシアであることをワシントンは認識しなければならない。幸い、米ロの利益には重なり合う部分がある。ともにシリアの領土保全を望み、イスラム国勢力やアルカイダの聖域を誕生させてはならないと考え、イスラエルとの緊密な関係をもっている。・・・

動き出したクルド統一国家への流れ
―― クルドの覚醒と中東の未来

2019年4月号

アンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

これまでクルド人は中東各国で分かれて暮らし、しかも内部対立を抱えていた。だが、シリア紛争とイスラム国勢力が作り出した混乱と騒乱のなかで国境を越えた連帯を形成したクルド人は、いまやイラク、トルコ、シリアで明確な政治的プレゼンスを確立し、ヨーロッパでも力強いディアスポラ・コミュニティが誕生している。クルド語によるソーシャルメディアと文化作品も登場している。これらの流れが重なり合うことで、汎クルドのアイデンティティが強化されている。もちろん、イラン、トルコというクルディスタン統一への障害は存在する。しかし最近のイベントによって、クルド人国家の建設プロセスはすでに始まっている。統一された、単一の独立したクルディスタンが存在しなくても、クルド人の覚醒が始まっている。・・・

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