1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― シリア紛争と中東に関する論文

トルコ帝国の幻想
―― 大いなる野望、ぜい弱なパワー

2026年2月号

アスリ・アイディンタスバス ブルッキングス研究所 フェロー

エルドアンは、オスマン帝国のような歴史的役割をトルコは回復できると考えているのかもしれない。だが、彼が思い描く「トルコ主導の地域秩序」という野望は現在のトルコには実現できない。シリアの復興を含めて、そのような秩序構想を支える経済力はないし、イスラエルとの対立も抱え込んでいる。トランプの支持もあてにはできず、湾岸諸国もトルコの野心を警戒している。エルドアンはオスマン帝国のスルタンになる夢を抱いているのかもしれないが、中東全域をカバーする唯一の支配勢力であった時代へと時計の針を戻す試みは、幻想に終わるだろう。

イスラエルの覇権幻想
―― 破壊では平和は築けない

2025年12月号

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学、国際政治)

中東の地域的リーダーシップは軍事的優位だけでは得られない。他の地域大国の一定の合意や協力が必要になることをイスラエルは理解すべきだ。現実には、中東でイスラエルのリーダーシップを望む者など誰もいない。むしろ、地域諸国はイスラエルの暴走するパワーを警戒し、脅威とみなし始めている。民衆蜂起の再燃を恐れる湾岸の指導者たちは、アラブ民衆のイスラエルに対する怒りを十分に感じとり、それを政策に織り込んでいる。これまで中東における軍事的拡張主義やガザを破壊する行動をとっても、大きな代価を支払わずに済んできたために、イスラエルは今後も問題にはならないという感覚をもっているが、それは大きな間違いだ。

イスラム国の復活
―― シリアの内戦化を阻むには

2025年12月号

キャロライン・ローズ ニュー・ラインズ研究所ディレクター
コリン・P・クラーク ソウファン・グループ 研究ディレクター

2024年のアサド政権崩壊以降、シリアでは、イスラム武装組織が台頭し、国内の宗派対立が激化している。一方で、イスラエルはシリア空爆を続け、シリアの新政権内の対立も激化している。しかも、かつてシリア国土の3分の1を支配したイスラム国勢力(ISIS)が再台頭している。シリアの治安部隊がISISや他のテロ組織に対抗できる態勢を確立すれば、米軍は撤退できるが、いまはまだその時ではない。このように不安定な時期にアメリカが時期尚早に撤退すれば、ISISを勢いづかせ、米軍がシリアに派遣された本来の目的を損なうことになりかねない。

中東の新たな仲介者
―― 湾岸諸国の新しい役割

2025年9月号

ハサン・T・アルハサン 英国際戦略研究所 中東政策担当シニアフェロー
エミール・ホカイエム 英国際戦略研究所 ディレクター(地域安全保障担当)

湾岸諸国の核心的な戦略利益は、イラン、イスラエル、またはトルコのような第3のアクターを含むいかなる国も、地域的支配を確立する力をもてないようにすることだ。ワシントンを、イスラエルを抑え、地域紛争を永続的に終わらせる上での信頼できるパートナーとみなす考えは裏切られた。結局、ホワイトハウスはネタニヤフの戦略を受け入れた。いまや湾岸諸国は、より不安定な中東に備える計画を立てることを迫られている。特に、ネタニヤフが表明した「中東の再編」という考えを彼らは深く憂慮している。中東を戦争態勢から解き放つために、湾岸諸国に何ができるのか。それは、イランとアメリカ間の核合意を調停することかもしれない。

ロシアの基地は温存されるか
―― シリアの体制崩壊とロシア

2025年1月号

トーマス・グラハム 米外交問題評議会 特別フェロー

アサド後のシリアにおける、ロシアの当面の関心は、タルトスの海軍基地、そしてフミイエム空軍基地を守ることだろう。これらの基地は、中東におけるロシアの影響力を行使する上で重要なだけでなく、東地中海への足場だし、リビアやサヘルでの軍事プレゼンスを含む、北アフリカでのロシアの作戦を支援する後方支援の拠点でもある。プーチンがシリアにおけるロシアの軍事基地を簡単に放棄することも、大きな戦略的後退を穏やかに受け入れることもあり得ない。そのような事態は、大国としてのロシアの評判を落とすだけでなく、プーチンの国内での政治的地位も失墜させることになる。

アサド後のシリア
―― 待ち受ける危険

2025年1月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会シニアフェロー(中東担当)

シリアの権力者となって四半世紀近くが過ぎた段階で、バッシャール・アサドは権力ポストを追われ、アサド王朝は終わりを迎えた。アサド体制はわずか2週間で、説明のつかぬ形で一掃された。もちろん、ダマスカスにどのような後継政権が誕生するかには、数多くの疑問がある。イスラム主義政治勢力がシリアでパワーを蓄積していることをかねて警戒してきたアラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヨルダン、エジプトが、ハヤト・タハリール・シャム(HTS)がダマスカスで統治体制を組織化するのを傍観するとは考えにくい。今後、HTSに対する反対運動が発生するかもしれない。シリアが暴力的な未来に向かう運命にあるわけではないが、新体制に対する反乱リスクを考えないのは軽率だろう。

イランの戦略目的は何か
―― 混乱と変動から利益を引き出せる理由

2024年5月号

スザンヌ・マロニー ブルッキングス研究所 ディレクター(外交政策プログラム担当)

テヘランは混乱のなかにチャンスをみいだしている。イランの指導者たちは、ガザ戦争を利用し、エスカレートさせることで、イスラエルを弱体化させてその正統性を失墜させ、アメリカの利益を損ない、地域秩序を自国に有利なものへ変化させようとしている。混沌とした状況から自国の利益を導き出すイランの能力を侮るべきではない。攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。

戦争で溢れる世界
―― なぜ紛争が多発しているのか

2023年12月号

エマ・ビールズ 欧州平和研究所 上級顧問
ピーター・ソールズベリー コロンビア大学 国際公共政策大学院 非常勤教授

世界は、「平和」のゴールポストを紛争解決から紛争管理へシフトさせてしまった。だが、中東やその他の地域で起きている出来事は、紛争を管理できる期間が限られていることをわれわれに教えている。世界で戦闘が激化し、紛争の根本的な原因が解決されないままであるため、従来の平和構築や開発のツールはますます効果がなくなってきている。停戦交渉を「和平プロセス」と表現し、和平が何年も何十年も先のことではなく、すぐそこにあるかのように説明されると、銃声が一時的に静まり返っただけで、和平は達成されたと錯覚することがあまりにも多い。紛争とその悪影響を解決し、管理するための新たなアプローチが早急に求められる。

追い込まれたエルドアン
―― トルコへの毅然たる新アプローチを

2023年11月号

ヘンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

「強い反応を示せば彼の挑発に乗ることにならないか」。ワシントンはこれまでエルドアンの挑発にどう対応するかに苦慮してきた。だが、ますます支離滅裂な即興路線をとり、トルコ経済の運営を見誤ったことで、ついに彼も追い詰められている。ほぼ間違いなく、トルコ経済は、国際通貨基金(IMF)の支援を求めざるを得なくなるし、大惨事を回避するには、アメリカから援助を求めざるを得なくなる。一貫して毅然と行動することで、アメリカはトルコとの新たな関係を築くことができる。イタリアやポルトガルとの関係に近い、正常な関係をトルコとの間で構築しなければならない。そのチャンスをつかむ必要がある。

ハマスのイスラエル攻撃
―― イランの関与レベルは(10/8)

2023年11月号

レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

サウジ・イスラエルの関係正常化が実現すれば、湾岸地域が対イランでまとまる危険があり、テヘランはそのような合意を阻止しようと躍起になっていた。イスラエルとイランの水面下での戦争はしばらく前から展開されてきた。革命防衛隊コッズ部隊のトップ、エスマイル・カアニ将軍が、ハマスの代表を含む過激派と会合を開き、イスラエルへの攻撃を調整するように促したとも報じられている。イスラエルも、イランの高官や科学者、シリアで活動するイラン系民兵組織を攻撃のターゲットにしてきた。一方で、(イランが支援する)ヒズボラの活動、レバノンに紛争が飛び火するかが、ワイルドカードとみなされている。・・・

Page Top