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― シリア紛争と中東に関する論文

イランの孤立と米シリア戦略
―― なぜ親アサド同盟は分裂したか

2018年7月号

イラン・ゴールドバーグ センター・フォー・アメリカン・センチュリー シニアフェロー(中東安全保障プログラム)
ニコラス・A・ヘラス センター・フォー・アメリカン・センチュリー  フェロー

ロシアはアサドが権力を維持できるように支えてきたが、アサド政権にとってもっとも重要な同盟相手のイランは介入を利用して、シリアでの永続的な軍事的プレゼンスを確保するのが狙いだった。イランが大がかりに介入したことで、シリアの戦況は大きく塗り替えられたが、現在のイランはシリア国内に展開する軍事力をテコに、イスラエルに軍事的圧力をかけようと試みている。こうしたイスラエルとの対決路線を重視するイランの路線が、アサドを支える他の国際プレイヤーとの軋轢を生み出している。シリアの統治体制を固めていくにつれて、アサドそしてロシアを含むアサドを支援する勢力は、大統領としてのアサドのプレゼンスを正常化し、再建に向けた資金を確保しようと試みており、イスラエルとの戦争は望んでいないからだ。

シリア内戦と外部パワー
―― アフリンの攻防と勝者なき紛争の行方

2018年4月号

アーロン・ステイン  アトランティックカウンシル レジデント・シニアフェロー

ロシア、イラン、トルコ、アメリカというシリア内戦に介入している外部パワーは、アサド政権同様に、紛争終結を望みつつも、譲歩を拒んでいる。シリアの反政府勢力への影響力をもつトルコは反クルドの立場からアフリンに介入し、クルド人を紛争期のパートナーとしてきたアメリカは軍事的成功を政治目標に結びつけようと、米軍をシリア北東部に当面駐留させるつもりだ。ロシアは内戦を終結へ向かわせるという大きな目的から、紛争終結のカギを握る(反政府勢力への影響力をもつ)トルコの協力を失うような危険は犯したくないと考えている。一方、アサド政権とイランは、トルコの介入は反政府勢力を勢いづけると反発している。この流れを変えない限り、シリア内戦は今後も続き、さらに多くの人の命が奪われることになる。

プーチンが思い描く紛争後のシリア
―― 戦後処理と各国の思惑

2018年2月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー・モスクワセンター所長

バッシャール・アサドはダマスカスの権力を握っているかもしれないが、シリアの政治的風景はもはや元に戻せないほどに変化している。シリアはすでにアサド政権、反アサド、親トルコ、親イランの勢力、さらにはクルド人という五つの勢力がそれぞれに管理する地域へ実質的に分裂している。ロシアは、この現実を受け入れようとしないアサドだけでなく、紛争期の同盟国であるイランの動きにも対処していく必要がある。アサド政権だけでなく、イランやトルコのシリアに対する思惑が変化していくのは避けられず、これに関連するイスラエルの懸念にも配慮しなければならない。今後、外交領域で勝利を収めるのは、戦闘で勝利を収める以上に難しい課題になっていくだろう。

シリア内戦後を考える
―― アメリカに何ができるのか

2017年12月号

ロバート・S・フォード 元駐シリア米大使

イスラム国勢力の衰退によってシリア内戦が終わりに近づいても、アサド政権と反政府勢力やクルド人勢力との新しい紛争が待ち受けている。特に、西部からデリゾールにかけての「イランとロシアが支援するシリア政府軍」と、デリゾール東部を支配している「アメリカが支援するシリア民主軍」がいずれ戦火を交えることになるかもしれない。ワシントンも決断を迫られる。撤退すべきかどうか、撤退するとすれば、いつどのように撤退するかを決めなければならない。アサド政権を支援するイランがシリアでの影響力を高め、ロシアもプレゼンスを確立している。ここでシリア民主軍、クルド人勢力を助ければ、アメリカは新しい紛争に巻き込まれることになる。・・・

イランが警戒するクルド独立の動き
――クルド独立シナリオが刺激する中東秩序の再編?

2017年11月号

アリアネ・M・タバタバイ ジョージタウン大学外交大学院 客員助教

イラクのクルド人が独立国家を作り、それを維持することに成功すれば、イランは非常に大きな余波にさらされる。イラン国内のクルド人の分離独立の動きが刺激されるからだ。これが、国内の他の少数民族を独立に向けた動きに駆り立てる恐れもある。しかも、イラク北部からイラン西部にかけてのクルディスタン地域はほぼ自由に移動できるだけでなく、言語とメディアを共有している。それだけに、イラクにおけるクルド独立運動がイランに政治的余波をもたらす可能性は高い。テヘランは、今回の住民投票を単発的な出来事とはみていない。(イラク北部に留まらず)イラン、シリア、トルコからクルド人地域を分離・独立させて、クルド人がクルディスタンに新たな国を作るためのより包括的な試みの一歩ではないかと考えている。

シリア東部をめぐる米ロ・イランの攻防
―― シリアにおける政治ゲームの始まり

2017年7月号

アンドリュー・タブラー ワシントン近東政策研究所  シニアフェロー

イラクと国境を接するシリア東部をめぐる攻防戦が始まっている。すでにアメリカは4月にアサド政権をミサイル攻撃しただけでなく、5月には親アサド勢力を空爆し、シリアのクルド人勢力への軍事援助の強化を発表している。ロシアとイランも、シリア東部におけるイスラム国勢力の崩壊によってシリア政府が失地を回復するチャンスがもたらされると考え、アサド軍支援を強化している。特にテヘランはイランからイラク、シリア、そしてヒズボラが支配するレバノンをつなぐシーア派の回廊を形成することを狙っている。当然、米ロの安全に関する覚書が、今後シリアにおいて試されることになるし、控えめにみても偶発事故が起きる危険は高まっている。いまやアメリカとその同盟国諸国の部隊が、アサドの部隊だけでなく、アサドを支えるロシアやイランの部隊と直接的軍事衝突に巻き込まれる恐れが出てきている。

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

CFR Interview
シリア、イランのヒズボラ・コネクション

2013年3月号

マシュー・レビット
ワシントン近東政策研究所 シニアフェロー

シリアでアサド政権が追い込まれていくにつれて、ヒズボラは、シリアにある自分たちの兵器を、レバノン山岳地帯の洞窟に設けた兵器庫など、安全な場所に移したいと考えている。イスラエルが空爆で攻撃したのは、そうした兵器を積んでレバノンに運びだそうとしていたトラック車列だった。スンニ派の過激派、シーア派の過激派は、アサド体制の崩壊に備えて、それぞれ自分たちに忠実な武装勢力の組織化を進めている。われわれが目にしているのは、紛争の第2局面に向けた兵器の備蓄・調達に他ならない。さらに、イランがヒズボラへの武器提供をシリア経由で行うことが多いことも、今回の空爆の構図に関係している。現状ではヒズボラとイランは非常に緊密な関係にあり、アメリカの情報コミュニティは、両者の関係を「戦略的パートナーシップ」と描写している。

CFR Interview
イラン・シリア問題に揺れるロシア外交
――なぜプーチンは中東を歴訪したか

2012年7月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

(シリア問題をめぐって)「欧米とアラブ世界が連帯し、その一方にロシアとイランがいる」という構図ができあがってしまっている。これまでシリアのバッシャール・アサドを支持してきたために、ロシアは非常に厄介な状況に追い込まれている。プーチンが最近中東を歴訪したのは、まさしく、ロシアの中東外交が手詰まり状況にあるからだ。彼はロシアの立場を中東の指導者に説明する必要があったし、なぜ中東諸国の批判に耳を貸そうとしないかについて弁明を試みる必要があった。いまや、シリアへの路線ゆえに、中東におけるロシアのイメージは大きく失墜し、アラブ諸国は「ロシア政府は経済的、地政学的思惑絡みでアサド政権を支持しており、中東地域の政府と民衆が気に懸けている人道問題を無視している」と批判している。

イラクがシリアを擁護する理由
――「イラン化する」イラク

2012年5月号

モハマド・バッジ  米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー(非常勤)

シリアで民衆蜂起が起きて以降、イランは(シリアの体制を支えていく上で)イラクのマリキ首相を重視するようになり、イラクの同盟勢力がシリア政府を支援することを望むようになった。これまでシリアを批判してきたとはいえ、現在のイラクはイランに多くを依存している。イラクにとって、イランは重要な貿易相手だし、イランとの貿易がイラク経済を動かすエンジンの役目を果たしている。マリキがイランとの関係を清算することはおそらくあり得ない。シリア政府支援をめぐってイランとイラクが一定の協力関係にあることは、おそらくはシリアへの軍事支援物資を積んでいると考えられるイランの輸送機がイラク領空を通過するのを認めていることからも明らかだろう。もちろん、イランと敵対するスンニ派アラブ諸国は、この現実に不満を募らせている。

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