1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

国防と安全保障に関する論文

エルドアンの予言
―― 軍事クーデターの政治的意味合い

2016年8月号

マイケル・J・コプロー イスラエル政策フォーラム 政策ディレクター

エルドアンが軍の影響力から逃れられると考えたことはなく、軍事クーデターが起きる危険を常に意識してきた。こうして彼はトルコ軍、ギュレン運動、ゲジパークにおける市民の抗議行動と、それが何であれ、あらゆる政府に対する挑戦を策略・陰謀とみなすようになった。もちろん、軍のクーデターが成功していても、この国の民主主義を支えたはずはない。最善のシナリオをたどったとしても、現在とは違う、権威主義体制を出現させていただけだろうし、悪くすると、内戦に陥っていた危険もある。だからといって、クーデターの失敗を民主主義の勝利とみなすのも無理がある。エルドアンは今回のクーデター未遂事件を根拠に自分の見方の正しさを強調し、大統領権限の強化と反エルドアン派の弾圧を含む、望むものを手に入れるために最大限利用していくだろう。

EUの存続を左右するイギリスの今後
―― EU離脱の余波を考える

2016年8月号

ジョン・マコーミック インディアナ大学教授(政治学)

キャメロンが国民投票の実施を求めた意図は、保守党内部での政治抗争を終わらせ、ナショナリスト政党であるイギリス独立党の台頭を抑え込むことにあった。国民投票を通じてイギリスとEUの関係をどのように改革していくかを有権者に描かせることもその狙いだった。しかしその結果は、キャメロンだけでなく、イギリスのEU懐疑論者たちが想定した以上のものになった。だが国民投票は政治的助言であり、イギリス議会が離脱を法制化しない限り、離脱は現実には起こりえない。たしかに、今回の国民投票がヨーロッパプロジェクトを解体へ向かわせる一連の動きを誘発する恐れもある。だが一方で、ブレグジットの政治・経済・社会コストがイギリスにとって非常に大きなものになり、他のメンバー国がEUからの離脱を問う国民投票の実施を躊躇うようになる可能性もある。

アメリカはグローバルな軍事関与を控えよ
―― オフショアバランシングで米軍の撤退を

2016年7月号

ジョン・ミアシャイマー/シカゴ大学教授(政治学)
スティーブン・ウォルト/ハーバード大学ケネディスクール教授(国際政治)

イラク、アフガニスタン戦争など、冷戦後のグローバルエンゲージメント戦略が米外交を破綻させたことが誰の目にも明らかである以上、いまやアメリカは「リベラルな覇権」戦略から、オフショアバランシング戦略へのシフトを試みるべきだろう。オフショアバランシング戦略では、アメリカの血と財産を投入しても守る価値のある地域はヨーロッパ、北東アジア、そしてペルシャ湾岸地域に限定され、その戦略目的はこれらの地域で地域覇権国が出現するのを阻止することにある。さらに、その試みの矢面にアメリカが立つのではなく、覇権国の出現を阻止することに大きなインセンティブをもつ地域諸国に防衛上の重責を担わせることを特徴とする。ヨーロッパにも、ペルシャ湾岸地域にも潜在的覇権国が登場するとは考えにくく、米軍を駐留させ続ける合理性はない。一方、北東アジアについては、地域諸国の試みをうまく調整し、背後から支える必要がある。・・・・

トルコはシリア難民を社会同化できるのか
―― シリア難民のなにが異質なのか

2016年7月号

ライアン・ジンジャラス 米海軍大学院 准教授(国家安全保障)

トルコの指導者たちは、トルコ生まれの子供がいるシリア人家族のほとんどはもうシリアに戻ることはないとみている。すでにシリア人たちはトルコのさまざまな町や都市で数千のビジネスを立ち上げている。第一次世界大戦後にトルコに定住した旧移民の多くは読み書きができず、しかも雇用、教育、土地を政府からの援助に依存していたために、トルコのアイデンティティーと市民権を受け入れる以外に道はなかった。だが、トルコに逃れてきたシリア人の多くは資本とスキルを持っているし、教育も受けている。すでにトルコのあちこちで、「リトルシリア」が誕生している。一方、トルコの政治勢力は国内に多数のシリア人難民がいることに不快感を示し、トルコの民族的統合性が損なわれかねないと憂慮しているが、トルコ社会に「シリアをルーツとするアラビア語のサブカルチャー」が生まれるのはおそらく避けられないだろう。・・・・

中東におけるロシアの原発戦略
―― 魅力的なモデルと地政学のバランス

2016年7月号

マシュー・コッテ/国際戦略研究所リサーチアソシエート(不拡散・核政策)
ハッサン・エルバーティミー/キングスカレッジロンドンポストドクトラル・リサーチャー

中東で原子力エネルギーが再び脚光を浴びている。2016年4月、ロシアの国営原子力企業・ロスアトムは、アラブ首長国連邦のドバイに事務所を開設した。エジプト、イラン、ヨルダン、トルコでのロシアの原子力プロジェクトを統括することがこの事務所の役割だと考えられている。「原子炉を現地で建設、所有、稼働し、電力を相手国に約束した価格で供給する」。これがロシアのビジネスモデルだ。モスクワ原子力関連の訓練と教育を相手国に提供することも約束しており、現地での雇用創出も期待できる。一方、モスクワは電力の売り上げだけでなく、電力供給プロセスを通じて中東諸国との経済的つながりも強化できる。しかし、シリアのバッシャール・アサドを支援することで、中東の地政学に関与しているだけに、ロシアが中東での原子力市場シェアを拡大できるかどうかは、テクノロジーとサービスを安価に提供することだけに左右されるわけではないだろう。・・・

変貌したドイツ外交
―― 「保護する責任」と「自制する責任」のバランス

2016年7月号

フランク=ヴァルター・シュタインマイアー ドイツ外相

ドイツが国際舞台で新たな役割を果たすことを望んだわけではない。むしろ、世界が大きく変化するなか、安定を保ち続けたドイツが中心的なプレイヤーに浮上しただけだ。いまやドイツはヨーロッパ最大の経済国家に見合う国際的責任を果たそうと試みている。コソボとアフガニスタンへの軍事的関与は、それまで「戦争」という言葉が禁句だった国にとって、歴史的な一歩を刻むものだった。ドイツが既定路線を見直したのは、ヨーロッパの安定とアメリカとの同盟を真剣に受け止めたからだ。それでもドイツは過去を踏まえて慎重に考える国家だ。変化に適応しながらも、自制や配慮を重視する信条と外交を重視していくことに変わりはない。過去を必要以上に償おうとしているのではない。むしろ、過去を踏まえて慎重に考える国家として、ドイツは歴史の教訓を現在の課題へのアプローチに生かそうとしている。

CFRブリーフィング
ブレグジットの明暗を考える
―― 三つの見方

web限定

ロバート・カーン / 米外交問題評議会シニアフェロー、セバスチャン・マラビー / 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)、ロジャー・ブートル / キャピタル・エコノミクス理事長

「ブレグジット」によって、ロンドンの金融パワーの優位が疑問視されるようになる。これまでロンドンは、「ヨーロッパ金融への玄関口」として機能してきた。外国の金融機関にとって、EUのメンバーであるイギリスのロンドンに拠点を設ければ、ヨーロッパ各国での規制や許認可に煩わされることなく、サービスを展開できた。このロンドンの機能は、EU金融市場の「シングルパスポート」として知られ、これが、世界の金融センター内でのロンドンの優位を支えてきた。(R・カーン)

イギリスのように、ユーロを導入していない他のEUメンバー国は、イギリスが離脱すれば、EUを快適な空間とは感じられなくなる。「ユーロ圏諸国は自分たちの優先課題を、ユーロを導入していないEUメンバー国に強要すべきではないとする」イギリスの主張によってこれまで救われてきたデンマークのような国は、今後、少数派として弱い立場に追い込まれる。(S・マラビー)

現状は維持不可能だ。ユーロが生き残るには、メンバー国間の財政政策のコンバージェンスと政治統合の深化が必要になる。イギリスがEUに残留すれば、こうした課題をめぐって、EUの主要グループの端に位置する(反対)少数派として非常に無様な状況に追い込まれる。・・・もはや、EUはイギリスがそのメンバーであることを望まないクラブに変化してしまっている。(R・ブートル)

ギャンブラーとしてのプーチン
―― ロシアのクリミア編入プロセスを
検証する

2016年6月号

ダニエル・トレイスマン / カリフォルニア大学ロサンゼルス校 教授(政治学)

プーチンがみせた一連の衝動的な対応からみて、クリミア編入は領土拡張計画の一環でもなければ、NATO拡大への対応でもなかった。ヤヌコビッチ政権が倒れて以降のウクライナ危機をめぐるプーチンの最大の懸念は、黒海艦隊が終結する、クリミアのセバストポリ軍港のリース契約をウクライナが打ち切ることだった。逆に言えば、キエフが軍港の2040年までのリース合意を尊重するとモスクワに保証していれば、この2年間のロシアと欧米の関係悪化は避けられたかもしれないし、ロシアがクリミアの編入というハイリスクの戦略をとる必要もなかったかもしれない。問題は、クリミアへの介入と編入が、プーチンが管理可能な脅威をめぐってさえ過大な戦略リスクを引き受けるようになったことを象徴していることだ。ウクライナであれ、シリアであれ、プーチンは危機に大胆かつ衝動的に対応することで、ロシアと世界に新たな危機を作り出している。

ロシア外交にみる悲しみと怒り
―― 外交的勝利と経済的衰退の間

2016年6月号

フョードル・ルキャノフ / 世界の中のロシア誌編集長

1991年後に出現した「新世界秩序」は、ミハイル・ゴルバチョフなどの改革主義のソビエトの指導者たちが、冷戦終結の最悪のシナリオを回避するために、思い描いた世界とはまったく違うものになった。クリミア編入とウクライナ危機は、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大だけでなく、冷戦終結以降、欧米の行動パターンが変化したことに対するロシアの答えでもあった。冷戦の終結とポスト冷戦世界に関する米ロの解釈の違いも、ロシアの行動を後押しした。実際、冷戦後の「新世界秩序」は平等な国同士のアレンジメントではなくなり、冷戦は欧米の原則と影響力(ソフトパワー)の明確な勝利とワシントンではみなされるようになった。・・・こうして「ロシアの指導層は欧米の拡大主義を覆すには、軍事力を行使してでも、その意図を明確にするしかない」と考えるようになった。・・・

情報収集技術の進化が外交と政治を変える
―― 秘密なき外交の時代

2016年6月号

シィーン・P・ラーキン /米外交問題評議会 ミリタリーフェロー(米空軍大佐)

インターネットやソーシャルメディアだけではない。誰もが、衛星画像やドローンがもたらす高度な情報を利用できる時代になった。ジャーナリストやNGO、ブロガーたちは、今後、クラウドソースのデータを使って、これまで以上に戦争犯罪を発見し、政府の欺瞞を暴くようになり、生体認証システムで秘密工作員の正体さえも特定できるようになる。政府は情報漏洩や内部告発にますます苦慮することになるだろう。もちろん、今後も、守られる機密情報もあるが、ユビキタスな監視活動によって、政府の活動の多くが白日の下にさらされ、その活動は内外の監視や批判を受けやすくなる。指導者はその決断について、これまで以上に説明責任を問われるようになるだろう。

Page Top