1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

国防と安全保障に関する論文

ウクライナの武装抵抗運動
―― 占領と抵抗、紛争拡大リスク

2022年4月号

ダグラス・ロンドン 元米中央情報局上級作戦担当官

プーチンが国境線の見直しや、ウクライナ政府の打倒などの大きな目的をもっているとすれば、軍事的にウクライナを支配しても武装抵抗運動が起きるのは避けられない。モスクワはすでにウクライナを占領した後に逮捕するか、暗殺する政治、治安関係者のリストを作成し、一方で傀儡政権を任せる候補となる親ロシア派のリストを作っていると言われる。攻略した地域における武装抵抗運動のリーダーや支援者を排除するために迅速に動くことで、ロシアは運動を抑え込もうと試みるだろう。だが、抵抗運動の活動が拡大すれば、ベラルーシやカザフスタンなどロシアの軌道内にある諸国も不安定化させ、最終的にそれはロシア国内にも波及するかもしれない。プーチンは、最初の戦闘目的が達成された後に、ロシアの予備役部隊に「平和維持軍」として占領の任務にあたらせることを示唆しているが、それでどうにかなるはずはない。

激変する欧州安全保障構造
―― ロシアのウクライナ支配がヨーロッパを変える

2022年4月号

リアナ・フィックス  ジャーマン・マーシャル財団 レジデントフェロー  マイケル・キメージ  カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアがウクライナを支配するか、広く不安定化させれば、米欧にとって困難な新時代が始まる。ヨーロッパにおけるアメリカの優位は制約され、ヨーロッパは、EUやNATOの中核メンバーしか守れなくなり、加盟国以外の国は孤立する。米欧の指導者たちは、欧州安全保障構造の見直しとロシアとの大規模な紛争を回避するという二つの課題に直面し、いずれにおいても、核武装した敵と直接対決するリスクを考慮しなければならなくなる。アメリカと同盟国は、ウクライナでのロシアの軍事行動の結果、新たな欧州安全保障秩序を構築するという課題に十分な準備ができていないことを認識することになるだろう。欧米はロシアを過小評価してはならない。希望的観測に基づくストーリーに依存すべきではない。

北朝鮮危機と台湾有事
―― 半島危機と台湾有事のリンケージ

2022年3月号

ソンミン・チョ 米国防総省 アジア太平洋安全保障研究センター 教授 オリアナ・スカイラー・マストロ  スタンフォード大学 国際問題研究所センターフェロー

北朝鮮がアメリカとその同盟国をミサイル発射で挑発したタイミングで、中国が他の地域で行動に出る恐れがある。すでにそのリスクは高まっているのかもしれない。中国と競い合っているアメリカにとっては特に深刻なダメージになるだろう。戦略的競争の時代にある現在、朝鮮半島、東シナ海、台湾海峡は、良くも悪くも、ますます関連性とリンケージを高めている。こうした安全保障環境の変化に対応するには、日米韓の戦略家がこれらの問題をパッケージ化して捉え、対応策を考案しなければならない。金正恩や習近平を牽制するには、必要なら二つの戦争を同時に戦い、その双方に勝利できることを立証する必要がある。

アメリカは台湾をめぐる戦争で敗北する軌道にある。だが今からでも路線を見直せる。既存のすぐに手に入る軍事資源の分配を見直し、より効率的な計画を立て、重要な同盟関係をうまく生かせば、アメリカは早ければ2020年代の半ばまでには、台湾をめぐる戦争を阻止し、必要であれば相手に勝利する能力を手に入れているはずだ。中国共産党の自制心や10年以上先にならなければ利用できない技術に賭けるのではなく、アメリカの議会と政府は、新たな太平洋防衛戦略を遂行しなければならない。「バトルフォース2025」を新たに構築すれば、アメリカとその同盟国は、中国の侵攻を短期的に抑止し、必要に応じて撃退できるようになる。

機密情報公開のリスクと恩恵
―― 情報公開と抑止の微妙なバランス

2022年3月号

ダグラス・ロンドン 元CIA秘密情報部上級作戦担当官

米英は、ロシアのウクライナ攻撃の可能性を示唆する機密情報を次々と世界に公表してきた。機密情報を公開すれば、相手の行動をある程度抑止できるかもしれないし、情報を利用してイベントを形作ることもできるかもしれない。だがこのやり方は、アメリカの情報活動についての洞察を敵に与え、相手が機密保持態勢を強化する恐れもある。ワシントンがロシアの行動と意図を明らかにすればするほど、プーチンが逃げ口上を使って面目を保つのは難しくなるのは事実だろう。だが、それにも限度がある。バイデン政権は、大きな暴露が強いインパクトを与えるだけでなく、自らの手を縛ることにならないように注意すべきだろう。

サイバー攻撃と地政学対立
―― 攻撃のインセンティブを低下させるには

2022年3月号

ドミトリ・アルペロビッチ シルバラード・ポリシー・アクセラレータ 共同設立者兼会長

アメリカのサイバー戦略の大半は、攻撃の原因を取り除くのではなく、その余波を管理することに重点を置き、攻撃からの防衛そして抑止を試みてきた。だが結局のところ、サイバー攻撃は「地政学的緊張の結果」であり、その根底にある相手国との問題を解決しない限り、その現象は抑え込めない。貿易戦争の手を緩めることを条件にすれば、北京は知的財産のサイバー窃盗を抑えることに同意するかもしれない。同様に、ロシアの不正なサイバー活動を阻止したければ、ロシアの内政問題と地域問題にアメリカが介入するのではないかという、モスクワの懸念を緩和しなければならない。問うべきは、アメリカと同盟国に、サイバー空間の問題を他の地政学的課題よりも優先して対処する意思があるかどうかだ。

プーチン・ドクトリンの目的
―― 勢力圏の確立とポスト冷戦秩序の解体

2022年3月号

アンジェラ・ステント ブルッキングス研究所 非常駐シニアフェロー

「欧米は30年にわたってロシアの正統な利益を無視してきた」。この確信がプーチンの行動を規定している。近隣諸国、旧ワルシャワ条約機構加盟国の主権上の選択を制限するロシアの権利を再び主張し、そうした制約を課すロシアの権利を欧米に認めさせることを彼は決意している。要するに、ロシアのことを、近隣地域に特別な権利をもち、あらゆる重大な国際問題について発言権をもつ、尊敬し、畏怖すべき大国として接するようにさせることが大きな狙いだ。プーチン・ドクトリンは、世界の権威主義政権を擁護し、民主主義国家を弱体化させることも意図している。ソビエト崩壊という結末を覆し、大西洋同盟を分裂させ、冷戦を終結させた地理的解決策を再交渉すること。これがプーチンの包括的な目的だ。

台湾有事と日米同盟
―― 事前協議で解決しておくべき課題

2022年2月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会 リサーチフェロー

中国は尖閣諸島を「台湾省」の一部とみなしているため、台湾をめぐって紛争になれば、尖閣諸島も攻略しようとするかもしれない。米軍の介入にもかかわらず、中国が目的を達成すれば、日本は、同盟国のアメリカはひどく弱体化したとみなし、外交政策や防衛態勢を根本的に見直さざるを得なくなるだろう。中国による台湾編入が成功すれば、日本の経済的安全保障も損なわれる。だが、市民の平和主義が根強いために、アメリカを支援することに伴う潜在的なコストやリスクが、日本による支援を制約することになるかもしれない。アメリカにとって重要なのは、中国が挑発もされないのに台湾を攻撃した場合に日本がどのように反応するか、東京がどのようなタイプの支援をどの程度提供する用意があるかについての理解を深めておくことだろう。

ロシアの衰退という虚構
―― そのパワーは衰えていない

2022年1月号

マイケル・コフマン  新アメリカ安全保障センター ディレクター(ロシア研究プログラム) アンドレア・ケンダル・テイラー  新アメリカ安全保障センター ディレクター (トランスアトランティック安全保障プログラム)

人口減少や資源依存型経済など、ロシア衰退の証拠として指摘される要因の多くは、ワシントンの専門家が考えるほどモスクワにとって重要ではない。プーチン大統領が退任すれば、ロシアが自動的に対米対立路線を放棄すると考えるべきではない。プーチンの外交政策は、ロシアの支配層に広く支持されており、クリミア編入をはじめとする未解決の紛争も彼の遺産とみなされている。アメリカとの対立は今後も続くだろう。つまり、ワシントンには中国に焦点を合わせ、ロシアの衰退を待つという選択肢はない。アメリカのリーダーは、ロシアを衰退途上にある国とみなすのではなく、永続的なパワーをもつ大国とみなし、ロシアの本当の能力と脆弱性を過不足なく捉えて議論しなければならない。

国際社会における台湾の役割
―― 「権威主義VS.民主主義」モデル競争のなかで

2021年11月号

蔡英文 中華民国総統  (邦訳文はタイトル、小見出しを含めてフォーリン・アフェアーズ・ジャパンの編集によるものです。より直接的なニュアンスその他については英文をご覧ください。https://www.foreignaffairs.com/articles/taiwan/2021-10-05/taiwan-and-fight-democracy)

パンデミックを経て、(大陸の)権威主義政権は「自分たちの統治モデルが民主主義のそれ以上に21世紀の要請にうまく適応できる」とさらに確信するようになった。これがイデオロギー競争をさらに加速している。台湾は(多くの意味で)競合する二つのシステムが交差するポイントに位置している。力強い民主主義と欧米のスタイルをとりながらも、中国文明の影響を受け、アジアの伝統によって規定されている台湾は、そのプレゼンスと持続的な繁栄を通じて、中国共産党が主張するストーリーへの反証を示すと共に彼らの地域的野心に対する障害を作り出している。・・・中国共産党が突きつける脅威を認識するにつれて、各国は台湾と協力することの価値を理解するだろう。台湾が倒れれば、地域的平和と民主的同盟システムにとって壊滅的な事態になる。

Page Top