スターリンとヒトラー
―― 二十世紀を分けた独裁者の思想と地政学戦略
2017年11月号

人種偏見をもち、ソーシャル・ダーウィニズムを信じ、地政学をゼロサムで捉えていたヒトラーが、ドイツの民族的優位を立証するには、(ヨーロッパ支配に加えて)ソビエトとイギリスの双方を粉砕する必要があった。スターリンとの不可侵条約をさらに深化させて、大英帝国のすべてを手に入れる作戦に乗り出すべきか、それとも、ターゲットをソビエトに据え、大英帝国の攻略を後回しにすべきか。一方、スターリンは、大規模な軍備増強路線で戦争に備えつつも、ドイツとの戦争を避け、ドイツがイギリスとの対決へと向かうような環境を作り出そうとしていた。彼はドイツ軍が物資不足に苦しんでいることを理解していた。ソビエトからのさらなる物資供給を必要としているドイツが、その供給を途絶えさせるソビエトとの戦争を開始するのは自滅的だと読んでいた。・・・