1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― イランの核開発に関する論文

イランを内包する新中東秩序の構築を
―― 中東の安定を取り戻すには

2018年4月号

バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院院長

中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

イラン民衆の本当の不満
―― 保守派を見限り、改革を求める若者たち

2018年2月号

アレックス・バタンカ 米中東研究所シニアフェロー

なぜ2017年末に、イラン民衆は街頭デモに繰り出し、不満の声を上げたのか。経済的苦境をその理由に挙げるメディアは多い。しかし、改革路線を示唆してきたロウハニが逆に保守・強硬派にすり寄る事態を前に、民衆が失望し、怒りを募らせていることを忘れてはならない。最高指導者の地位を得たいロウハニの個人的思惑もあるのかもしれない。しかし、民衆がデモに繰り出したのは、選挙で選ばれた大統領と議会の立場を、ハメネイや革命防衛隊など選挙を経ない保守強硬派が無視するか、覆している現状に、もはや我慢できなくなったからだと考えることもできる。「ハメネイに死を」、「聖職者たちを政治から追い出せ」というデモ隊のスローガンは、いまやイランの民衆が、1979年のイラン革命以降、もっとも過激な変革を求めていることを意味する。

イランとイスラム国
―― テヘランにとっての新しいテロの脅威

2017年8月号

アリアネ・M・タバタバイ ジョージタウン大学客員研究員

イスラム国(ISIS)というスンニ派テロ集団はシーア派を敵視していただけでなく、近代においては類い希な残虐性をもっていたために、テヘランはこの脅威を強く意識してきた。イラクのイスラム国勢力が力をもち始めると、イランは速やかに革命防衛隊の精鋭部隊であるアル・クッズ旅団(コドス軍)をイラクへ派遣し、その後シリアにも部隊を展開し、イラン軍部隊が後にこれに合流した。イラクではイスラム国勢力を力で押し返そうと試みたが、シリアではそれほど力を入れなかった。テヘランは、イラクにおけるイスラム国の活動は自国の領土、人口、利益に対する明確な脅威と認識していたのに対して、シリアはこのテロ勢力を封じ込める場所と考えていたからだ。このやり方が逆効果だった部分もある。2017年6月、イスラム国がテヘランでのテロに成功している。・・・

トランプと戦争
――イラン、中国、北朝鮮との戦争シナリオを考える

2017年5月号

フィリップ・ゴードン 米外交問題評議会シニアフェロー

歴史を顧みれば、トランプのような指導者が市民の不満を追い風に権力を握り、敵を屈服させると約束しつつも、軍事、外交、経済上の紛争の泥沼にはまり込み、結局は後悔することになったケースは数多くある。もっとも、トランプの主張が正しい可能性もある。大規模な軍部増強、予想できない行動をとる指導者のイメージ、一か八かの交渉スタイル、そして妥協を拒む姿勢を前に、他の諸国が立場を譲り、アメリカを再び安全で繁栄する偉大な国にするかもしれない。だが、彼が間違っている可能性もある。核合意を解体し、中国との貿易戦争を始め、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験を力尽くで阻止すれば、そのすべてが紛争へとエスカレートしていく恐れがある。トランプの常軌を逸したスタイルと対決的な政策が、すでに不安定化している世界秩序を崩壊させ、アメリカがイラン、中国、北朝鮮との紛争へと向かっていく恐れもある。

イラン核合意と中東の核拡散リスク
―― UAEの原子力開発の真意はどこに

2017年4月号

ヨエル・グザンスキー テルアビブ大学国家安全保障研究センター リサーチフェロー

すべてが予定通りにいけば、2017年5月までには、アラブ首長国連邦(UAE)で最初の原子炉が稼働する。豊富な原油資源を持っているとはいえ、UAEは自国の天然資源を温存し、輸出できる資源を確保するためにも、エネルギーミックスに原子力を加えて多様化する必要に迫られている。一連の原子炉が完成すれば、UAEの電力需要の4分の1を満たせると考えられている。一方で、このような民生用原子力プログラムから得られる核開発能力を利用して「アラブ諸国はいずれ核兵器を開発するのではないか」という懸念も浮上している。今後の流れを左右する大きな変数は、イランが核合意を順守するかどうか、そして「ウラン濃縮を行わない」と表明したUAEがその約束を今後も守るかどうかだ。しかし、トランプ大統領がイラン核合意を解体すると表明しているだけに、すでに事態は流動化している。・・・

なぜイランはロシアに基地使用を許したか
―― 歴史的不信と中東新秩序への野望

2016年10月号

モフセン・ミラニ
南フロリダ大学教授(政治学)

第一次世界大戦後にイギリスとフランスが描いた中東の政治秩序はいまや崩壊しつつあり、ロシアもイランも新しい秩序における自国の居場所に思いを巡らしている。プーチンにとって、ロシアを中東のプレイヤーとして再確立することは、彼の悲願であるグローバルな大国の座を取り戻す上でもきわめて重要な一里塚だ。一方、イランはシリアの将来を決める現在の内戦を、今後の中東秩序を左右する重要な試金石とみなしている。テヘランは、ロシアとの協調は中東での影響力を強化する効果的な手段になると考えているようだ。こうした思惑ゆえに、ロシアに大きな不信感をもつイランも、ロシア軍に国内基地の利用を認めるという驚くべき決定を下した。ロシアとのより緊密な軍事・安全保障関係を築くことで、イランはアメリカの中東政策に対する保険策をとろうとしているとみなすこともできる。・・・

アメリカのイラン・ジレンマ
―― 和解と対立の間

2016年9月号

リュエル・マーク・ゲレチェット 民主主義防衛基金(FDD)シニアフェロー
レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー(中東担当)

ワシントンは、イランと和解することも対決することもできる。しかし、二兎を同時に追うことはできない。核合意を結び、しかも戦争疲れした米市民が中東から手を引きたいと考えている以上、対決路線をとるのはかなり難しい。一方、テヘランは依然としてイラク政府への影響力を行使している。イスラム国(ISIS)に対するイラクの戦略を指令し、イラク内のスンニ派に対する強硬策を促しているのは、イランの革命防衛隊だ。しかもシリアでは、依然としてバッシャール・アサドを支持している。ペルシア湾岸地域でもイランは策謀をめぐらしている。それでも核合意をめぐる譲歩のバランスをとるには、欧米はビジネス上の恩恵を確保する必要があると考えるのも無理はない。そして、核合意は崩壊したと判断しない限り、次期政権を含む今後の政権に経済制裁という選択肢はないも同然だ。・・・

対イラン強硬策を
―― イスラエル、湾岸諸国との連帯を模索せよ

2016年2月号

エリオット・コーエン ジョンズホプキンス大学ポール・ニッツスクール 教授(戦略研究)
エリック・エーデルマン ジョンズホプキンス大学ポール・ニッツスクール 戦略研究センター客員研究員
レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

イランの核問題に関する最終合意として知られる包括的共同作業計画(JCPOA)は、歴史上もっとも大きな問題を内包する軍備管理合意の一つだ。この合意ではイランがウラン濃縮をする権利だけでなく、ウラン濃縮を産業化する権利さえも認められている。研究・開発施設の建設も許容され、検証・査察制度も実質的に骨抜きにされている。要するに、イランは経済制裁の解除を手にするだけでなく、核開発を正統化することに成功した。ワシントンはアメリカとイランが友好関係など構築できる環境にないことを理解できずにいる。イランの指導者たちが理解している通り、現実にアメリカとの良好な関係を築けば、イランの政治体制そのものが脅かされる。いまや、ワシントンはイスラエル、湾岸諸国とともに、イランに対する圧力行使策をとる以外に道はない。そうしない限り、中東の不安定化とイランの影響力拡大が続くことになる。

サウジとイランの終わりなき抗争
―― 対立が終わらない四つの理由

2016年2月号

アーロン・デビッド・ミラー ウッドロー・ウィルソンセンター 副会長 (ニュー・イニシアティブ担当)、ジェイソン・ブロッドスキー  ウッドロー・ウィルソンセンター (リサーチアソシエーツ)

スンニ派の盟主、サウジは追い込まれていると感じている。原油価格は低下し、財政赤字が急激に増えている。イエメンのフーシ派に対する空爆コストも肥大化し、イランが地域的に台頭している。サウジは、複数の嵐に同時に襲われる「パーフェクトストーム」に直面している。一方、シーア派のイランは核合意によって経済制裁が解除された結果、今後、数十億ドル規模の利益を確保し、新たに国際社会での正統性も手に入れることになる。しかもテヘランは、シリアのアサド政権、イラク内のイラン寄りのシーア派勢力、レバノンのヒズボラを支援することで、地域的影響力とパワーを拡大している。シリア、イラクという中東紛争の舞台で、サウジとイランは代理戦争を展開し、いまや宗派対立の様相がますます鮮明になっている。このライバル抗争は当面終わることはない。その理由は四つある。・・・

イラン核合意と北朝鮮の教訓
―― 合意を政治的に進化させるには

2015年5月号

ジョン・デルーリー 延世大学准教授

イランとの核合意にとって、北朝鮮への核外交が失敗したことの中核的教訓とは何か。それは、最善の取引を交わしたとしても、合意そのものは外交ドラマのプレリュードにすぎないということだ。テヘランが平壌と同じ道を歩むのを阻むには、今後、テヘランがこれまでとは抜本的に異なる新しいアメリカや地域諸国との関係、国際コミュニティとの関係を築いていけるようにしなければならない。アメリカは北朝鮮との核合意を結びながらも、政治的理由から合意を適切に履行せず、結局、北朝鮮は核開発の道を歩み、核保有を宣言した。米議会からリヤド、エルサレムにいたるまで、イランとの核合意に反対する勢力がすでに動きだしている。相手国との関係の正常化こそが、核開発の凍結を実現する最善の方法であることを忘れてはならない。そうできなかったことが北朝鮮外交失敗の本質であり、この教訓をイランとの外交交渉に生かしていく必要がある。

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