1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

歴史認識と国際政治に関する論文

「中国の偉大な復興」と栄光の記憶
―― 偉大な過去の神話と屈辱の世紀

2017年7月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会 アジア研究部長

習近平の「中華民族の偉大な復興」というスローガンは中国民衆の共鳴を呼んだ。これは「屈辱の世紀」に耐えた中国を「正しい地位」に復帰させ、国際秩序の中心を超えたその上に位置づけるというストーリーだ。しかし、朝貢外交の時代を下敷きにするこの歴史認識は正しいとは言えない。現実には、周辺国は中国を怒らせずにわが道を行くために、さまざまな口実を駆使し、場合によっては真っ向から中国の意向を無視してきた。正確でない歴史認識を基に未来を語る中国に、われわれはどう対処していけばよいのか。実際、習近平政権は、外国のアイデアと資本が入ってくるのを制限する一方で、中国の対外的な政治的、経済的、軍事的影響力の強化を模索している。・・・

オバマ広島訪問後の日米関係
―― 安倍首相はパールハーバー訪問を

2016年6月号

ザック・プリスタップ/タフト大学フレッチャースクール アシスタント・ディレクター

オバマの広島訪問を日米関係の新しいチャプターの幕開けとして位置づけなければならない。安倍首相は、誠意の返礼として、2016年の真珠湾攻撃75周年記念式典に参加すべきだろう。真珠湾を訪問すれば、広島と長崎への原爆投下を(パールハーバーに始まる)歴史の流れのなかに位置づけ、その認識を高めることができる。さらに、日本が過去の歴史を見直すのではなく、平和の促進にコミットしていることを世界に示すことにもなる。両国が共有する痛ましい過去に正面から向き合うことで、日米は、歴史論争によってとかく外交的に紛糾し、機能不全に陥ることの多い東アジアに優れた先例を示すこともできる。歴史を刻む相手国の都市への相互訪問は、両国の指導者がとるべき正しい行動だろう。

自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、(経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・

オバマは広島を訪問すべきなのか
―― 感情と理念と政治

2016年5月号

ジェニファー・リンド ダートマス・カレッジ准教授

日本人の多くは、米大統領が被爆地を訪問することで、アメリカが原爆使用という過去と正面から向き合う機会が作り出されることを願っている。すでにホワイトハウスは、日本の市民グループ、軍縮運動家、子供たちなどから、オバマ大統領の広島訪問を希望する手紙を何千通も受けとっている。大統領の広島訪問を待望する人の多くは、「重要なのは謝罪ではない」と考えている。だが、米大統領が広島を訪問すれば、結局は東アジア地域の厄介な歴史問題がさらに複雑になる恐れがある。アメリカ大統領が「被害者としての日本」という考えの中枢である被爆地を訪問すれば、韓国など、日本の近隣諸国の多くはそれを快く思わないからだ。しかもアメリカでは大統領選挙が控えている。大統領が、献花された石碑の前に立ち、黙祷を捧げるにはあまりにも騒々しい環境にあるのは間違いない。・・・・

キッシンジャーの歴史的意味合い
―― なぜ彼はリアリストと誤解されたか

2015年10月号

ニーアル・ファーガソン ハーバード大学教授(歴史学)

キッシンジャーは広く「リアリスト」だと考えられている。だが、彼は外交キャリアの初期段階から、理想主義者として活動してきた。確かに、彼はウッドロー・ウィルソンのような理想主義者ではないが、リアリストでもない。哲学的な意味では間違いなく理想主義者だった。キッシンジャーが重視したのは、ライバルや同盟国との関係を理解する上で歴史が重要であること。外交政策決定の多くは不毛の選択肢のなかから、ましな選択をすることに他ならないこと。そして、指導者たちが、道徳的な空虚なリアリズムに陥らないように心がけなければならないことだった。1968年末同様に、深刻な戦略的混乱のなかにある現在、ワシントンはキッシンジャー流の外交アプローチを切実に必要としている。しかし、まず政策決定者そして市民は、「キッシンジャーの意味合い」を正確に理解する必要がある。

欧米はロシアへの約束を破ったのか
―― NATO東方不拡大の約束は存在した

2014年12月号

ジョシュア・R・I・シフリンソン  テキサスA&M大学准教授

「NATOゾーンの拡大は受け入れられない」と主張するゴルバチョフ大統領に、ベーカー米国務長官は「われわれも同じ立場だ」と応えた。公開された国務省の会議録によれば、ベーカーはソビエトに対して「NATOの管轄地域、あるいは戦力が東方へと拡大することはない」と明確な保証を与えている。この意味ではNATOを東方に拡大させないという約束は明らかに存在した。約束は文書化されなかったが、東西ドイツは統合し、ソビエトは戦力を引き揚げ、NATOは現状を維持する。これが当時の了解だった。ドイツ統一に合意すれば欧米は(NATOの東方拡大を)自制するとモスクワが考えたとしても無理はなかった。しかし、「ワシントンは二枚舌を使ったという点で有罪であり、したがって、モスクワのウクライナにおける最近の行動も正当化される」と考えるのは論理の飛躍がある。・・・・

北東アジアにおける歴史戦争
―― アメリカの関与がなぜ必要か

2014年5月号

ギウク・シン
スタンフォード大学教授(社会学)
ダニエル・C・シュナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター
アソシエート・ディレクター

第二次世界大戦に由来する未解決の歴史問題が、北東アジアの地域的緊張の背景に存在する。歴史問題が日本と韓国というアメリカの主要な同盟国を反目させ、日本と中国のライバル関係を再燃させている。だが、この現状をめぐって、東アジアの戦後秩序を形作ったアメリカにも責任があることを認識する必要がある。アメリカは、冷戦という特有の環境のなかで戦後処理を行い、以来、状況を放置してきた。日本は「ドイツがいまも謝罪の必要性を認識し、自己検証の試みを続けていること」から教訓を学ぶ必要があるし、アメリカも戦争と過去に正面から向き合い、米大統領はヒロシマあるいはナガサキを訪問し、日本に原子爆弾を投下した結果、非常に多くの人命が奪われたことに対する自らの考えを示すべきだ。そうしない限り、北東アジアの歴史問題にアメリカが介入することは正当化できない。・・・・

CFR Update
衝突する日韓の自画像
―― 未来志向の日韓共同宣言を

2014年3月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニアフェロー(朝鮮半島担当)

この60年で韓国は近代化と民主化を見事に実現したが、20世紀初頭の40年間にわたって堪え忍ばざるを得なかった日本による植民地支配の記憶が、韓国の国家アイデンティティの中枢にいまも位置づけられている。この歴史的経験ゆえに、韓国のアイデンティティは反日という枠組みで長く規定されてきた。日本も被害者意識をもっている。第二次世界大戦における敗戦と原爆投下、そして(東京裁判に象徴される)戦時の行動に関する戦後の解釈をめぐって差別されてきたと考えている。こうした自画像が日本人のアイデンティティを複雑にし、侵略者として自らを認識できずにいる。・・・二つの自画像が重なり合うことで政治が動き、その相互作用によって自らが好む歴史解釈が強化され、領土問題への対応は硬直化していく。・・・この状況で欠落しているのは両国の政治家のリーダーシップに他ならない。

中国と日本の相互認識
―― 歴史的遺産とイデオロギー的遺産の呪縛
(1972年発表)

2012年11月号

チャーマーズ・ジョンソン
日本政策研究所・所長(論文発表当時)

1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。中国人から見れば、日本はもはやアジアではなかった。日本は、紛れもなく帝国主義国家そのものだった。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。

統合の危機とヨーロッパの衰退

2012年10月号

ティモシー・ガートン・アッシュ
オックスフォード大学歴史学教授

戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

Page Top