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トランプリスクが促す世界秩序の再編
―― 各国のリスクヘッジで何が起きるか

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルガバナンス)

Trump and World Order ―― The Return of Self-Help

Stewart M. Patrick米外交問題評議会シニアフェロー(グローバルガバナンス担当)。専門は多国間協調、国際機関、グローバル統治など。

2017年3月号掲載論文

トランプ政権が同盟関係へのコミットメントを弱め、保護主義的な経済・貿易政策をとり、地球温暖化対策を放棄すれば、同盟国は、自国の安全保障、繁栄、市民の安定した生活を、独立性を高めることで強化しようと模索し始めるだろう。地政学領域では、各国は、「アメリカ」と「自国にとって重要な地域大国」、つまり、アジアにおける中国、ヨーロッパにおけるロシア、中東におけるイランとの関係を見直すことで、リスクヘッジを試みる。この流れのなかで、日本と韓国は核開発を真剣に検討するようになるかもしれないし、バルト諸国は、アメリカを見限って「フィンランド化」に踏み切るかもしれない。経済領域では、中国が主導する一帯一路構想などの、アメリカが関与していないアレンジメントを各国は求めるようになるだろう。もちろん、トランプ政権が伝統的なアメリカのリーダーシップを放棄していくにつれて、他の諸国がリスクヘッジ策をとると決まってはいない。そうなるかどうかは、「大統領としてのトランプの選択」に左右される。

  • リベラルな秩序の終わり
  • 中国の台頭とリスクヘッジ
  • ヨーロッパと中東はどう動くか
  • 重商主義の復活
  • 地球温暖化リスク
  • トランプの選択

<リベラルな秩序の終わり>

フランクリン・D・ルーズベルト政権以降の歴代13人の米大統領たちは、アメリカがグローバルなリーダーシップを主導すべきことを前提として受け入れてきた。それぞれの外交政策は違っていても、歴代の米大統領たちは、アメリカは自国の安全と安定を超えた世界的な貢献を心がけ、(経済面でも)「世界経済(貿易)はゼロサムゲームではない」という明確なメッセージを示してきた。

だが、そうした姿勢も変化しようとしている。ドナルド・トランプ大統領は「アメリカの経済利益を確保することに焦点を合わせたナショナリスト的で取引型の外交政策をとる」と約束している。一方で彼は、自由世界の擁護者としての伝統的な役割をめぐる遠大なビジョンも、その枠組み内で経済がどのように機能するかについても語っていない。外交政策と経済については(アメリカの利益を第1とする)狭義の国家的優位を確保することが自分の政策の指針であることを明らかにしており、それが1945年以降、アメリカが擁護してきたリベラルな世界秩序にどのような衝撃を与えるかなど気に懸けていないようだ。

もちろ

ん、リベラルな秩序は2016年11月8日よりもはるか前から不安定化していた。外からは中国やロシアの挑戦によって、内からは、日本経済の停滞、そして2016年のイギリスの国民投票で欧州連合(EU)離脱が支持されたことを含む、一連のヨーロッパ危機によって秩序は揺るがされていた。
トランプが大統領として何をするかは、誰にもわからない。しかし、少なくとも大統領候補としての彼は、伝統的な同盟関係を見直し、既存の貿易合意を引き裂き、中国に対する貿易障壁(関税)を引き上げ、気候変動に関するパリ協定もイランとの核合意も破棄すると約束してきた。この挑発的な選挙公約を現実に実施すれば、トランプはもはや自分では制御できない大きな流れを作り出し、欧米を中心とする秩序の危機はさらに深刻化していく。

この新しい流れを前に、「アメリカの影響力に反対し、国際機関におけるアメリカの目的を阻むための連帯」に参加する国も出てくるだろう。一方、他に選択肢がなく、安全保障・経済上の恩恵を温存するため、あるいはイデオロギー的に近いという理由から、沈黙を決め込み、ワシントンとの絆を維持する国もあるはずだ。一方

で、予見できず、突然の動きをみせるアメリカへの対策として、保険策をとろうとする国も出てくるだろう。

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