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ドナルド・トランプに関する論文

CFR in Brief
民主主義とポピュリズム
―― トランプ後のアメリカ

2021年2月号

ヤシャ・モンク  ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院 准教授

トランプが(選挙は盗まれたという)大統領選挙に関する自分の嘘を多くのアメリカ人に真実だと思い込ませ、対立候補の当選が認定されることに抗議して何万人もの支持者を動員できたという事実は、かなり多くの人がこの種のポピュリズムのアピールを受け入れていることを意味する。「大統領か憲法か」の選択に直面して、彼らはトランプを選んだ。しかし、米議会を襲撃した暴徒をアメリカの真の姿とみなしてはならない。バイデンは、トランプの反民主的な過激主義を非難する上で明確かつ率直でなければならない。しかし一方で、トランプに投票した人々のことを、救いようのない嘆かわしい人々と描写することなく、危険なデマゴーグへの忠誠を放棄するようにアプローチし、「すべてのアメリカ人の大統領になれること」を立証しなければならない。

分裂と相互不信をいかに修復するか
―― 寸断されたアメリカの政治と社会

2021年2月号

イザベル・ソーヒル ブルッキングス研究所シニアフェロー

「すべてのアメリカ人の大統領になる」。現状からみて、これほど難しい課題もない。支持政党を分ける大きな要因はもはや政策ではなく、心の奥底にある価値観やアイデンティティだ。このために(自分の支持政党ではない)「もう一つの政党」は反対政党であるだけでなく、敵とみなされている。そして政治とは、共通の問題に対処していくための妥協点をみつけることではなく、自分の側が相手に勝利を収めるための闘いとみなされている。バイデンはブルーカラーの労働者、高齢の文化的伝統主義者、急進的な変化を恐れる女性たちに寄り添っていくつもりだ。警察の予算を打ち切ることはなく、中産階級の増税もしない。彼は社会を統一したいと考えている。取り残された人々に手を差し伸べ、すべてのアメリカ人が意見の違う人々をより尊重するように求めることから始めるべきだろう。それが、アメリカの魂を取り戻すことになる。

新大統領が直面する内外のアジェンダ
―― バイデンが生かすべき機会を検証する

2021年1月号

サマンサ・パワー  ハーバード大学 ケネディスクール教授

新政権は、国内問題の解決を優先し、パンデミックを終わらせ、社会に広く恩恵を与える平等な経済再生を一気呵成に実現し、ほころびをみせ始めた民主的制度を改革しなければならない。バイデンは、経済的不平等、システミックな人種差別、気候変動に正面から向きあって、アメリカを「よりよい再生(build back better)」へ向かわせることで、現在の危機を克服していくと語っている。当然、ワクチンのグローバルな流通を先導し、留学生のためのアメリカでの教育機会を拡大し、内外で政治腐敗と闘っていく姿勢をアピールしなければならない。アメリカの強さを利用し、中国の行き過ぎた対外関与が作り出した空白をうまく利用すれば、そうした構想は、アメリカの能力への信頼を大きく引き上げることができる。これが、今後、アメリカの利益を促進するために必要なパートナーシップの説得や連帯の構築に向けた基盤を作り出すことになる。

米新政権への北京の期待と不安
―― 米中関係のリセットは可能か

2020年12月号

チェン・リー   ブルッキングス研究所中国センター ディレクター

米大統領選挙後の中国のソーシャルメディアは全般的に安堵と楽観主義にあふれていた。バイデン次期政権の誕生を歓迎していた。だが、そうした楽観ムードも短期間で変化するかもしれない。4年前、北京はトランプ大統領誕生を同様に歓迎していたからだ。北京の指導者の多くは、トランプのことを一緒に何かを達成できるビジネスマンとみていたが、これは希望的観測にすぎなかった。中国の外交エスタブリッシュメントは、警戒と慎重さを維持しつつも、バイデン政権の誕生で関係が改善すればよいと考えている。だが、トランプの対中政策を形作った条件の多くがいまも存在するだけに、米中という超大国間関係のリセットはそう簡単ではないだろう。

イラン政策をトランプから救うには
―― イランとの関係正常化を模索せよ

2020年12月号

トリタ・パーシ  クインシー研究所 上席副会長

トランプ政権は、後継大統領のイラン政策を枠にはめ、アメリカが離脱した核合意の運命を封印したいと考えている。トランプは最後の10週間を利用して、洪水のごとく、経済制裁を乱発してイランを締め上げ、新政権の課題を実現不可能な状況に陥れるつもりだ。だが、バイデンはかつてオバマが(イラン強硬策にアメリカを向かわせようとした)ネタニヤフイスラエル首相を出し抜いたように、トランプの裏をかいて、核合意を超えて両国の関係を大局的に捉えるべきだろう。例えば、イランとの直接的な外交関係をもてば、アメリカがこの地域の紛争を避け、問題があるとワシントンが考えるイランの政策により効果的に影響を与えられるようになる。・・・

世界を修復し、建設する
―― ポストトランプ外交の前提

2020年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会会長

深刻な混乱を引き起こしたこの4年間の米外交は、パンデミックとともに、アメリカと世界に大きなダメージを与えてきた。アメリカの名声そして戦後75年にわたって構築されてきた貴重な同盟関係や国際的制度が深く傷つけられた。トランプ路線を覆すのは歓迎されるとしても、それだけでは問題は解決しない。修復と建設が必要だ。修復とは、存在するが壊れているものを再び機能させることで、建設とは、新しく何かを創造することだ。最初の6―9カ月のバイデン外交は修復に徹すべきで、建設の機会や特定領域の必要性に対処していくのはその後でなければならない。真っ先に取り組むべきはパンデミック対策であることは、はっきりしている。その後にも、地球環境問題、中国、北朝鮮と問題は山積している。

トランプ後もポピュリズムは続く
―― 民主主義はなぜ衰退したのか

2020年12月号

ダロン・アセモグル   マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

ポピュリスト運動は、不平等とエリートに対する怒りを背景に台頭した。しかし、なぜアメリカの有権者は不平等が拡大し、超富裕層が普通の人々を踏み台にして恩恵を得ていた2016年に、左ではなく右を向いたのだろうか。実際には、右派ポピュリズムは、トランプが共和党を乗っ取る20年以上前から強力な政治トレンドとして再浮上していた。政治を二極化させ、政治秩序を解体したのは、グローバル化、デジタル技術、オートメーション技術の拡大が伴う社会経済問題に民主制度がうまく対応できなかったからだ。再び似たような権威主義のポピュリストが登場して、権力を握ることを阻止したいのなら、この流れを理解し、対策をとらなければならない。トランピズムのルーツは、トランプで始まり、終わるものではない。

破壊された米外交
―― 戦後秩序の終わりと次期政権の選択

2020年10月号

リチャード・ハース  米外交問題評議会会長

今後の世界では紛争がより一般的になり、民主主義はさほど一般的な政治制度ではなくなっていく。友人を安心させ、敵を抑止する同盟関係の作用が弱まっていけば、核拡散が加速し、大国の勢力圏が拡大していく。貿易はより管理され、ゆっくりと成長する程度で、縮小していくかもしれない。ドルの影響力も低下するだろう。そして戦後75年間続いた世界秩序は確実に終わる。唯一の疑問は、何が旧秩序にとって代わるかだ。その多くは、アメリカが今後どのコースをとるかに左右される。トランプの外交ブランドがさらに4年続くようなら、第二次世界大戦後から2016年までアメリカが主導したモデルが規範からの逸脱とみなされ、孤立主義、保護主義、ナショナリズムの単独行動が本流とみなされることになる。

解体する米韓同盟
―― 変化するアメリカの国防戦略

2020年8月号

スー・ミ・テリー  戦略国際問題研究所  シニアフェロー

北朝鮮との取引を無謀に模索する一方で、トランプはソウルとの関係に大きなダメージを与えた。北朝鮮の核兵器は手つかずのままだが、ボルトン回顧録が明らかにしている通り、長くアジアにおけるアメリカの防衛戦略の要だった米韓同盟は、トランプが再選されれば、もはや生き残れないかもしれない。米軍は「韓国を守るために」現地に駐留しており、この保護の代価として韓国はアメリカにより多くを支払うべきだとトランプは信じている。ボルトンによると、トランプは、アメリカ政府が部隊派遣からきちんとした利益を確保できるように、同盟国は「コストプラス50%」を支払うべきだと考えている。当然、韓国のアメリカへの信頼はひどく揺るがされており、かつてのような関係に戻ることは、おそらくないだろう。

アメリカ社会の分裂と解体
―― 唐突な国家破綻を回避するには

2020年7月号

ダロン・アセモグル マサチューセッツ工科大学 教授(政治経済学)

白人警察官がアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドを(首を足で押さえつけて)残酷に殺害した事件は、大規模な抗議行動を誘発した。かつて白人至上主義者を「とてもよい人々=very fine people」と呼んだ指導者が、この危機に米大統領として建設的な発言ができるはずはなかった。しかし、多くのアメリカの都市で起きた暴動に対するトランプの反応は、彼の(でたらめな)基準からみても衝撃的だ。デモ参加者を悪者とみなして催涙ガスの使用を促し、デモ対策として国内で軍を配備するための1807年の反乱法を発動することさえ示唆した。トランプが選挙に敗れ、素直にホワイトハウスを去ったとしても、新政権が、トランプをかつてホワイトハウスに送り込んだアメリカ社会の構造的問題に取り組まない限り、うまく修正できないダメージに直面する。(アメリカの制度に対する市民の)信頼を取り戻すには、次の政権は風土的病的な広がりをみせる人種差別と格差に対処していく必要がある。

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