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権威主義体制の台頭に関する論文

民主国家に浸透する権威主義
―― 蝕まれるリベラルな民主主義

2017年11月号

ソーステン・ベナー 独グローバル公共政策研究所  ディレクター

欧米諸国による批判や敵意を前にすると国内が不安定化する傾向があるロシアなどの権威主義国家は、民主国家による民主化促進策、反体制派支援、経済制裁などを阻止するための盾を持ちたいと考えてきた。こうして、欧米の政治に介入したり、プロパガンダ戦略をとったりするだけでなく、資金援助をしている欧米の政党や非政府組織、ビジネス関係にある企業との関係を通じて、民主社会への影響力を行使するようになった。権威主義国家の最終的な目的は、自分たちの影響力を阻止できないほどに欧米の政府を弱体化させることにある。問題は、民主社会が外国の資金や思想の受け入れに開放的で、欧米のビジネスエリートが権威主義国のクライエントたちからも利益を上げようとしていること、しかも民主体制が弱体化しているために、彼らがつけ込みやすい政治環境にあることだ。・・・

アメリカ政治の分裂と民主体制の危機
―― ドナルド・トランプと競争的権威主義

2017年6月号

ロバート・ミッキー ミシガン大学准教授(政治学)
スティーブン・レヴィツキー ハーバード大学教授(政治学)
ルキャン・アハマド・ウェイ トロント大学教授(政治学)

トランプのアメリカがファシズムに陥っていくと考えるのは行き過ぎだが、彼が大統領になったことで、この国が「競争的権威主義」、つまり、有意義な民主的制度は存在するが、政府が反対派の不利になるように国家権力を乱用する政治システムへ変化していく恐れがある。政府機関を政治化すれば、大統領は調査、告訴、刑事責任の対象から逃れられるようになる。政党間の分裂が激しければ、議会の監視委員会が、行政府に対して超党派の集団的な立場をまとめるのも難しい。しかも、政党だけでなく、アメリカの社会、そしてメディアさえもが分裂している。いまや民主党員と共和党員は全く異なるソースのニュースを利用し、その結果、有権者はフェイクニュースを真に受け、政党のスポークスパーソンの言葉をより信じるようになった。現在の環境では、仮に深刻な権力乱用が暴かれても、それを深刻に受け止めるのは民主党支持者だけで、トランプの支持者たちはこれを党派的攻撃として相手にしないだろう。・・・

民主的安定という かつてない時代の終わり
―― 非自由主義的代替モデルとトランプの台頭

2017年2月号

ヤシャ・モンク ハーバード大学講師(政治理論)

われわれは新しい時代へのシフト、つまり、この半世紀にわたってわれわれが当然視するようになった民主的安定という、かつてない時代の終わりの始まりを目の当たりにしているのかもしれない。これまでと違うのは民主主義に対する代替モデルが生まれていることだ。プーチンは、すでに他国が模倣できるような「非自由主義的な民主主義モデル」を確立している。つまり、リベラルな民主主義は、1930年代のファシズム、1950年代の共産主義のような、イデオロギー上のライバルに再び直面している。しかも、トランプ大統領の誕生で、この半世紀で初めて、世界でもっともパワフルな国が、リベラルな民主的価値の促進や世界のリベラルな民主国家を脅威から守ることにコミットしなくなる恐れがある。・・・

トランプがすでに表明している外交路線の見直しを受け入れない限り、ロシア、シリア、イランの独裁政権が強化され、(関税引上げで中国を激怒させ)貿易戦争が起きる(それによって中国とアメリカの同盟諸国の関係も不安定化する)。(アメリカの資金と戦力の貢献を削減することで)北大西洋条約機構(NATO)にダメージを与え、NATO条約第5条の集団防衛へのアメリカの関与は揺らぎ、(シリアがさらに混乱することで)難民流入の新たな波でヨーロッパはさらに大きな圧力にさらされる。要するに、トランプ・ドクトリンは、アメリカの安全保障上の核心的利益を大きく傷つける。嘆かわしいことに、国際関係にトランプのアメリカ第1主義が適用され、それが新たなアメリカの外交政策の象徴とされれば、すでに歴史的な分水嶺に立たされているアメリカと世界はさらに困難な状況に直面することになる。

新「トルコ国家の父」を目指したエルドアン
―― なぜ権威主義的ナショナリズムへ回帰したのか

2016年12月号

ハリル・カラベリ ザ・ターキーアナリスト編集長

これまで経済・政治の自由化を約束してきたエルドアンが、なぜ非自由主義的な権威主義路線の道を歩んでいるのだろうか。いまや彼は伝統的な中東の強権者となり、自分の権力基盤を固め、ライバルを追放し、反体制派を抑圧している。エルドアンの本来の目的は、保守的な社会秩序を維持する一方で、クルド人などの国内の少数派民族・文化集団との関係を修復していくことにあった。クルド人を含む、トルコ市民の多くが信奉する「スンニ派イスラム」を国の統合原理にしたいと考えてきた。しかし、クルドとの和平に失敗したことからも明らかなように、「スンニ派イスラム」だけでは、21世紀に向けた持続的な政治秩序を育んでいくトルコのアイデンティティを形作れなかった。こうしてエルドアンは、伝統的な権威主義的ナショナリズムへと立ち返らざるを得なくなった。・・・

自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、(経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・

欧米はロシアへの約束を破ったのか
―― NATO東方不拡大の約束は存在した

2014年12月号

ジョシュア・R・I・シフリンソン  テキサスA&M大学准教授

「NATOゾーンの拡大は受け入れられない」と主張するゴルバチョフ大統領に、ベーカー米国務長官は「われわれも同じ立場だ」と応えた。公開された国務省の会議録によれば、ベーカーはソビエトに対して「NATOの管轄地域、あるいは戦力が東方へと拡大することはない」と明確な保証を与えている。この意味ではNATOを東方に拡大させないという約束は明らかに存在した。約束は文書化されなかったが、東西ドイツは統合し、ソビエトは戦力を引き揚げ、NATOは現状を維持する。これが当時の了解だった。ドイツ統一に合意すれば欧米は(NATOの東方拡大を)自制するとモスクワが考えたとしても無理はなかった。しかし、「ワシントンは二枚舌を使ったという点で有罪であり、したがって、モスクワのウクライナにおける最近の行動も正当化される」と考えるのは論理の飛躍がある。・・・・

民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か
 ――ブッシュ後の世界秩序の試金石

2008年11月号

チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学教授

民主国家が、今後の世界が多極化と政治的多様性に特徴づけられていくことを理解しないままに、民主国家連盟構想を実現しようと試みても、期待するような「歴史の終わり」という局面への道を切り開いていくことはできない。結局は行き止まりに遭遇するだけだ。新しいグローバルな秩序を誕生させるには、ワシントンとヨーロッパは、台頭する権威主義国家への認識を変えるとともに、北京とモスクワも欧米に歩み寄る必要がある。ワシントンは多様な政体から成る多極世界において、辛抱強く、しかも穏やかに行動していくことを学んでいかなければならない。そのためには、地域内の危機に対処できるように地域機構の能力を整備して強化し、世界の新たなパワーバランスを反映するように国連安保理を改革するとともに、また、主要経済国のフォーラムであるG8を、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、インドで構成されるG6とし、大国間協調の枠組みへと変化させていく必要がある。民主国家連盟構想では、解決策にならない。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年12月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イランVS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

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