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権威主義体制の台頭に関する論文

中ロによる民主国家切り崩し策
―― 台頭する権威主義モデルと追い込まれた欧米

2018年11月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際リパブリカン研究所 シニアアドバイザー

民主主義を切り崩していけば、欧米の影響力低下というトレンドを加速し、ロシアと中国の地政学的目標を促進できる。これが、中ロが共有している中核ビジョンだ。自国のパワーをアメリカのそれと比較して相対的に捉えるモスクワと北京は、欧米民主国家を衰退させれば、自国の国際的な地位向上につながると考えている。ロシアが民主体制を様々な方法で混乱させ、切り崩す一方で、中国が欧米民主主義の代替モデルを示し、困難な状況にある国に援助や投資を提供することで、弱体な民主国家が欧米から離れていく環境が作り出されている。これが侮りがたい権威主義モデル台頭の潮流を作り出しつつある。

中国モデルとは何か
―― 権威主義による繁栄という幻想

2018年8月号

ユエン・ユエン・アン ミシガン大学准教授(政治学)

途上国は「リベラルな民主主義」よりも「中国モデル」に魅力を感じ始め、習近平自ら、「他の諸国は人類が直面する問題への対策として、中国のやり方に学ぶべきだろう」と発言している。当然、中国モデルが注目を集めているが、それがどのようなものかという質問への答は出ていない。その経済的成功が何によって実現したかも定かではない。現実には、鄧小平期の北京が、官僚制度の改革を通じて、地方の下級官僚たちが、現地の資源を用いて経済開発を急速に進めるのに適した環境を提供したことが、中国モデルの基盤を提供している。だが、こうした特質は民主国家にとっては、おなじみのものだ。懸念すべきは、中国モデルが欧米や途上世界で広く誤解されていること、そして中国のエリートたちでさえ、中国モデルを誤解していることだろう。

人工知能とデジタル権威主義
―― 民主主義は生き残れるか

2018年8月号

ニコラス・ライト インテリジェント・バイオロジー  コンサルタント(神経科学者)

各国にとっての政治・経済的選択肢は「民衆を抑圧し、貧困と停滞に甘んじるか」、それとも「民衆(の創造力)を解き放って経済的果実を手に入れるか」の二つに一つだと考えられてきた。だが、人工知能を利用すれば、権威主義国家は市民を豊かにする一方で、さらに厳格に市民を統制できるようになり、この二分法は突き崩される。人工知能を利用すれば、市場動向を細かに予測することで計画経済をこれまでになく洗練されたものにできる。一方で、すでに中国は、サーベイランスと機械学習ツールを利用した「社会信用システム」を導入して「デジタル権威主義国家」を構築し始めている。20世紀の多くが民主主義、ファシズム、共産主義の社会システム間の競争によって定義されたように、21世紀はリベラルな民主主義とデジタル権威主義間の抗争によってまさに規定されようとしている。

習近平革命の本質と衝撃
―― 外交と内政の垣根を取り払った権威主義国家

2018年6月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)

1940年代以降、毛沢東は共産革命を主導し、1970年代末以降は鄧小平が経済改革路線と低姿勢外交という第2の革命を通じて「中国経済の奇跡」の基盤を築いた。そしていまや、習近平は「第3の革命」に着手している。鄧小平が開始した「改革と開放プロセス」のペースを鈍化させるか覆し、新中国の原則をグローバルレベルで促進することに習は努めている。対外政策と国内政策の垣根を取り払い、その政治的モデルを輸出し、権威主義志向をもつ外国の指導者たちを支える一方で、国際法の基盤を損なう行動、他の諸国の主権を脅かす行動をとっている。いまや、中国は、非自由主義国家としては初めてリベラルな世界秩序におけるリーダーシップを模索している。

欧米経済の衰退と民主的世紀の終わり
―― 拡大する「権威主義的民主主義」の富とパワー

2018年6月号

ヤシャ・モンク ハーバード大学講師(行政学)
ロベルト・ステファン・フォア メルボルン大学講師(政治学)

北米、西ヨーロッパ、オーストラリア、そして日本という、第二次世界大戦後にソビエトに対抗して西側同盟を形成した民主国家は、19世紀末以降、世界の所得の大半を占有する地域だった。しかしいまや、この1世紀で初めて、これらの国が世界の国内総生産(GDP)に占める割合は半分を割り込んでいる。国際通貨基金(IMF)は、今後10年もすれば、その比率はかつての3分の1へ落ち込むと予測している。今後を見通す上で現実的なシナリオは二つしかない。一つは中国を含む、世界でもっともパワフルな独裁国家の一部がリベラルな民主国家に移行すること。もう一つは、民主主義の支配的優位の時代が、敵対する政治体制との闘争という新時代が到来するまでの幕間の出来事に過ぎなかったことが立証されることだ。いずれの場合も、欧米民主主義の時代が終わりを迎えるのは避けられない。

中国の政治介入に揺れるオーストラリア
―― 民主的対抗策の原則を探る

2018年5月号

ジョン・ガーナー 元豪首相上級アドバイザー

オーストラリアにおける「中国の影響力とソフトパワーに対するとらえどころのない不安」は、「中国共産党による水面下での政治介入に対する明確な懸念」へとすでに変化している。中国とつながっている政治資金提供者が政治へのアクセスと影響力を強め、大学は中国の「プロパガンダのツール」として取り込まれている。一方、キャンベラは、明確な現状分析によって、リスクを管理し、ダメージを特定する一方で、全般的な中国とのエンゲージメントを維持するという問題と恩恵を区別する対応をみせている。リスクとダメージを管理する一方で、相手にエンゲージし続けるためのバランスをとるのは容易ではない。いずれ、同じような環境に遭遇する民主国家の指導者たちは、オーストラリアの経験と対策を注意深く見守る必要がある。

中国とロシアは、権威主義国家の閉鎖性と民主国家の開放性という非対称性につけ込んで、「世界における自国のイメージを形作り、自国に対する民主国家の行動を枠にはめるための」キャンペーンに巨額の資金を注ぎ込み、その余波は世界に及んでいる。しかし、民主社会が権威主義国家のシャープパワーに対抗していく上で留意すべきことがある。それは、権威主義と同じやり方で相手のシャープパワーに対抗措置をとってはならないということだ。そのような過剰反応を示せば、自らのソフトパワーを傷つけることになる。アメリカ社会へのアクセスを閉ざしたり、その開放性を無くしたりすれば、ソフトパワーという大切な資産を損なうことになる。

トルコ政府の「国境を越えた抑圧」
―― グローバルパージが法の支配を脅かす

2018年3月号

ネイト・シェンカン フリーダムハウス プロジェクトディレクター

エルドアン大統領は、国内の抑圧体制を強化するだけでなく、外国のトルコ系コミュニティも弾圧の対象にしている。その主要なターゲットはギュレン派だ。2013年にかつての盟友、フェトフッラー・ギュレンと決裂して以降、エルドアンは彼を目の敵にし、国の内外でギュレン派を抑圧する「グローバルパージ」を展開している。すでにアンカラは、外国にいたトルコ人数百名の逮捕と身柄引き渡しを実現し、ギュレン派が運営する各国の学校も閉鎖するように相手国政府に圧力をかけている。この動きを通じて、トルコは、国内での権利や自由の抑圧を国境の外でも強要するシステムへと国際秩序を変貌させつつある。「グローバルパージ」が脅かしているのは、外国のトルコ系コミュニティだけではない。世界の法の秩序に対する脅威を作り出している。

民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
―― モスクワの策略に立ち向かうには

2018年1月号

ジョセフ・R・バイデン 前米副大統領
マイケル・カーペンター 前米国防副次官補

ロシア政府は政治腐敗まみれの泥棒政治システムを守ろうと、その生存を外から脅かす最大の脅威と彼らがみなす「欧米の民主主義」に対する国境を越えた闘いを挑んでいる。欧米を攻撃することで国内の政治腐敗や経済的停滞に人々が目を向けないようにし、ナショナリズム感情を煽り立てて国内の反体制派を抑え込み、民主主義国家を守勢に立たせることで欧米諸国が国内の分断線対策に専念せざるを得ない状況を作り出そうとしている。この環境なら、モスクワは国内の権力基盤を固めることに専念し、「近い外国」に対して思うままに影響力を行使できる。だが、プーチンとその取り巻きたちは、アメリカの民主主義の最大の強さは市民の政治参加にあることを理解していない。米大統領が対策を拒んでも、われわれが行動を起こす。

民主国家を脅かす 権威主義国家のシャープパワー
―― 中ロによる情報操作の目的は何か

2017年12月号

クリストファー・ウォーカー 全米民主主義基金 副会長(分析・研究担当)
ジェシカ・ルドウィッグ 全米民主主義基金 リサーチオフィサー

民主国家をターゲットにするロシアの情報操作の目的は、アメリカやヨーロッパの主要国を中心とする民主国家の名声そして民主的システムの根底にある思想を多面的にかつ容赦なく攻撃することで、自国をまともにみせることにある。一方、中国の情報操作は、問題のある国内政策や抑圧を覆い隠し、外国における中国共産党に批判的な声を可能な限り抑え込むことを目的にしている。権威主義国家の対外的世論操作プロジェクトは、ソフトパワー強化を目指した広報外交ではない。これをシャープパワーと呼べば、それが悪意に満ちた、攻撃的な試みであることを直感できるだろう。その目的は民主国家の報道機関に(自国に不都合な情報の)自己規制(検閲)を強制し、情報を操作することにある。

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