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論文データベース(最新論文順)

アメリカの少子高齢化の意味合い
―― EU、中ロ、日本との比較

2021年8月号

ニコラス・エバースタット アメリカンエンタープライズ公共政策研究所 議長(政治経済担当)

日本やヨーロッパそして中ロ同様に、アメリカも人口成長率の鈍化と出生率の着実な低下という厳しい現実に直面している。出生率の低下は将来に対する人々の自信も低下させるだけに懸念すべき事態だ。だが、こうした人口動態の変化から、アメリカの国際的地位の低下を直ちに心配する必要はない。アメリカの出生率が人口置換水準を維持できた最後の年は2008年だが、日本とEU諸国は1970年代に、中国とロシアは90年代初頭にすでに出生率が人口置換水準以下に落ち込んでいる。さらに、10年以上前からアメリカでも出生数と死亡数のギャップが縮まり続けているが、EU諸国は2012年頃から、日本では2007年以降、出生数よりも死亡数の方が多い状態が続いている。アメリカは今後数十年にわたって、相対的にはライバル諸国に対する人口動態上の優位を維持していくだろう。

ワクチン革命への課題
―― そのポテンシャルを開花させるには

2021年7月号

ニコル・ルリエ  感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)  戦略アドバイザー ヤコブ・P・クレイマー  CEPI臨床統括者 リチャード・J・ハチェット  CEPI最高経営責任者

ウイルスの遺伝子配列の特定からmRNAを利用したワクチンが臨床試験に入るまでに要した期間は3カ月足らず。この技術があれば、致命的なパンデミックを引き起こすかもしれない未知の病原体「疾病X」に備えることもできる。だが課題も多い。「免疫がどの程度持続するのか」が分かっていない。生産能力が依然として限られ、保管の問題があるために、大規模な接種キャンペーンを実施するにはロジスティック面での問題を伴う。さらに、感染力が強い変異株が世界で急速に拡散しており、それが従来の株よりも致死的なのか、ワクチンの効果が弱まるかが依然としてはっきりしない。より基本的には、迅速かつ適切に機能するアウトブレイクの監視システムと国際的なデータ共有が必要になる。・・・。

「帰ってきたアメリカ」は本物か
―― クレディビリティを粉砕した政治分裂

2021年7月号

レイチェル・マイリック   デューク大学研究助教授(政治学)

「本当にアメリカは帰ってきたのか」。トランプだけではない。同盟国はアメリカの国内政治、特に今後の外交政策に大きな不確実性をもたらしかねない党派対立を気にしている。これまでは、外交が政治的二極化の余波にさらされることは多くなかったが、もはやそうではなくなっている。議会での政治対立ゆえに条約の批准が期待できないため、米大統領は議会の承認を必要としない行政協定の締結を多用している。だがこのやり方は、次の政権に合意を簡単に覆されるリスクとコストを伴う。国内の政治的二極化が続き、ワシントンが複雑な交渉に見切りをつけ、新政権が誕生するたびに既存のコミットメントが放棄されるようなら、「敵にとっては侮れない大国、友人にとっては信頼できる同盟相手としてのワシントンの評判」は深刻な危機にさらされることになる。

パンデミックによる「学校閉鎖」と格差拡大
―― 途上国の学校再開への投資を

2021年7月号

エミリアナ・ベガス  ブルッキングス研究所 シニアフェロー

富裕国に比べて低所得国や中所得国でより長期にわたって学校が閉鎖され、そもそも恵まれない生活環境にあるか、クラスについていけずにいた子供たちがリモートによる学習でさらに取り残されている。こうした学習機会の損失が世界の貧困国で集中的に起きている。質の高い学校教育を受けた子供たちは、そうできなかった子供よりも将来多くの所得を得るようになり、国レベルでみても質の高い教育を与える国は、より高い経済成長率を達成する傾向がある。このトレンドからみれば、現状は今後問題がさらに深刻化していくことを示唆している。低所得国と中所得国の学校をこのままの状態で放置すれば、貧困と格差はますます深刻になる。コミュニティ、政府、国際機関は公立学校、特に貧しく、疎外された地域で暮らす子供たちが通う学校の再開と改善に投資する必要がある。

米同盟国が核武装するとき
―― クレディビリティの失墜と核拡散の脅威

2021年7月号

チャック・ヘーゲル 元米国防長官(2013―15) マルコム・リフキンド 元英外務大臣(1995―97) ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長 アイボ・ダールダー シカゴ外交問題評議会会長

中国とロシアが核戦力を近代化し、強硬路線に転じるにつれて、アジアとヨーロッパ双方の米同盟諸国は軍事的脅威の高まりにさらされている。一方で「アメリカは長年の軍備管理合意から距離を置き、米市民も、もはやグローバルなエンゲージメントに前向きではない」と同盟諸国はみている。このために「自国の防衛と安全保障をワシントンに頼れるのか、それとも、核武装を考える時期がきたのか」と考え始めている。脅かされているのは、アメリカへの信頼そして地球上で最大の破壊力をもつ兵器の拡散を阻止してきた数十年にわたる成功にほかならない。うまく対処しない限り、アメリカの同盟諸国は核武装を選択することになるかもしれない。

米経済とインフレ論争
―― インフレは本格化するか、収束するか

2021年7月号

ロジャー・W・ファーガソンJr 米外交問題評議会特別フェロー(国際経済担当)

連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定者が、2021年の平均インフレ率を約2・5%と予測し、その後、低下していくと考えているのに対して、他のエコノミストは、インフレ率は4%にまで上昇し、今後数年でさらに上昇するとみている。FRBの意思決定者は、「金利の引き上げに踏み切る段階になるまで、今後も忍耐強く状況を見守る」とコメントしており、受け入れ可能な範囲を超えた、突出した物価上昇があっても、それは、パンデミックによる経済シャットダウン後の経済再開に派生する一時的なボトルネック現象だとみている。だが、現在のインフレ率の上昇は一時的なものだとみなす、FRBの分析が間違っていれば、そして、FRBは認識面で後れをとっているという批判派の見方が正しければ、アメリカ経済だけでなく、世界の他の地域の経済も無傷では済まなくなる。

米台自由貿易協定の締結を
―― その地政経済学的意味合い

2021年7月号

デビッド・サックス  米外交問題評議会リサーチアソシエーツ ジェニファー・ヒルマン  米外交問題評議会シニアフェロー

中国は2010年に経済協力枠組み協定(ECFA)を台湾と締結し、関税と貿易障壁を大幅に引き下げることに合意している。この状況で、北京によって台北が他国との自由貿易協定を結ぶ道が閉ざされれば、必然的に台湾経済は追い込まれ、中国の台湾に対する影響力は大きくなっていく。一方、米台自由貿易協定を結べば、中国を牽制し、他の諸国が台北との貿易交渉を開始するための(北京に対する)政治的盾を提供できる。中国が軍事力を強化し、自信を高めているだけに、ワシントンは、中国の冒険主義を抑止する追加措置を特定する必要がある。台湾との自由貿易協定は経済的恩恵をもたらすだけでなく、アメリカが台湾との関係を重視していることを示す強いシグナルを中国に送り、台湾の自信を高め、台北は強い立場から北京にアプローチできるようになる。いまや野心的な米台自由貿易を模索すべきタイミングだろう。

アイデンティティと中国の政治・外交
―― 共産党の自画像と北京のアジェンダ

2021年7月号

オッド・アルネ・ウェスタッド  イェール大学教授(歴史学)

中国を支配しようとする者にとって、アイデンティティ、領土、文化に関する問いにどう答えるかは極めて重要だ。大清帝国の瓦礫の上に現代中国を構築した共産党にとって「中国とは何か、そして中国人とは誰か」を定義することは、「中国的特質を持つ社会主義」を育むのと同じくらい重要だった。それだけに、広東省南部の人々のほとんどが「自分を中国人だ」と自覚しているのに、チベットや新疆にルーツがある人々がそうではないと考えていることは大きな問題だ。共産党は国内で生活する人すべてを中国人と定義している。そして、共産党が、国の領土主権にこだわっているのは、帝国から引き継いだ領土の一部で、その支配に挑戦する動きが生まれることを警戒しているからに他ならない。台湾ほど中国の出方を警戒すべき場所はない。北京は、いつでも好きなときに力によって乗っ取る権利があると考えている。

中国を引き裂く大潮流
―― そこにある二つの中国

2021年7月号

エリザベス・エコノミー   外交問題評議会  シニアフェロー(中国研究担当)

中国政府の勝利主義的レトリックの背後には、不都合な真実が隠されている。それは、社会がやっかいな形で複雑に分裂しつつあることだ。ジェンダーと民族を基盤とする差別が横行し、オンライン空間での憎悪に満ちた、ナショナリスティックな発言がこれに追い打ちをかけている。起業家や研究者を含む「クリエーティブな社会階級」は官僚と衝突している。ジャック・マーのように、政府の介入を公然と批判し、厳格な処分対象とされた者もいる。都市部と農村部の深刻な格差もなくなっていない。これらの分断ゆえに、重要な社会集団が中国の思想・政治的生活に完全に参加できずにいる。この状況が放置されれば、習近平が言う「中華民族の偉大なる復興」は夢のままで終わる。

対中戦争に備えるには
―― アジアシフトに向けた軍事ミッションの合理化を

2021年7月号

マイケル・ベックリー  タフツ大学准教授(政治学)

もし中国が台湾を攻略すると決めたら、米軍がいかにそれを阻止しようと試みても、中国軍に行く手を阻まれると多くの専門家はみている。だが、これは真実ではない。中国の周辺海域や同盟国にミサイルランチャー、軍事ドローン、センサーを事前配備すれば、(容易に近づけぬ)ハイテク「地雷原」を形作れる。これらの兵器ネットワークは、中国にとって無力化するのが難しいだけでなく、大規模な基地や立派な軍事プラットフォームを必要としない。問題は、アメリカの国防エスタブリッシュメントがこの戦略への迅速なシフトを怠り、時代遅れの装備と重要ではないミッションに資源を投入して浪費を続けていることだ。幸い、中国に厳格に対処すること、そしてアジアへの戦力リバランシングについては超党派の政治的支持がある。適正な戦略にシフトしていく上で欠けているのは、トップレベルのリーダーシップだけだ。

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