1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

孤独な超大国

1999年5月号

サミュエル・ハンチントン/ハーバード大学政治学教授

グローバル政治は、冷戦期の二極システムから、湾岸戦争期の単極システムを一時的に経験し、現在は二十一世紀における真の多極時代を迎えるまでの、「単=多極」時代にある。しかもアメリカ国内に単極システムへの復帰を求める政治基盤は存在しないし、他の諸国がそれを望んでいるわけでもない。当然、「アメリカ人はそれがあたかも単極世界であるかのように行動し、話すのをやめるべきである」。重要なグローバル規模の問題に対応する場合には、「そのすべてをめぐって大国の協調をとりつける必要があるし、単独の経済制裁や介入は、外交政策を破綻させる処方箋のようなものだ」。現在の世界秩序がアメリカという超大国と、地域的大国、そしてナンバーツーの地域大国のそれぞれの「パワーと文明によって」規定されていることを認識しつつ、今後は大国の一つとして存在していく道をアメリカは学ぶべきだろう。

新興市場のための自助ガイド

1999年4月号

マーティン・フェルドシュタイン  ハーバード大学経済学教授

一九九七年以来、世界各地を襲っている金融危機は、今後も間違いなく起こる。「死と税金から人間が逃れられないように、世界は国際経済危機から逃れられない」のだ。しかも、最後の貸手である国際通貨基金(IMF)のやり方では、うまくいかないことはすでに自明であり、韓国はその具体例である。細かな条件をつけた、小出しの救済パッケージでは、危機克服に必要とされる短期的信頼を回復できない。幸い、経常収支の赤字、短期借り入れの肥大化など、新興市場国で通貨危機を起こす犯人はわかっているし、その連鎖のメカニズムも大筋で判明している。端的に言えば、新興市場諸国にとっての悪夢である取りつけ騒ぎまがいの通貨危機に対する防波堤は、外貨準備など、流動性を増す以外にない。「大規模な外貨準備、外貨融資へのアクセスなど、大量の国際的流動性を持つ国は、通貨投機の対象にはなりにくい」のだ。知恵を絞るべきは、新興市場諸国がいかにして流動性を増すかである。

新たなテロリズムへの対策

1999年4月号

ギデオン・ローズ  外交問題評議会・国家安全保障プログラム副議長

「これまでになかったタイプのテロリズムの危険が高まっている」。テロリストの行動が予測しにくくなり、彼らが破壊力の大きい兵器を簡単に入手できる時代になったからである。核兵器、生物兵器、化学兵器などの大量破壊兵器によるテロが起きる時代は目前に迫っているのか。外交問題評議会の研究員ギデオン・ローズが、最近出版された五冊のテロリズムに関する書物を紹介するとともに、新たな形態のテロリズムへの対策を提言する。

次なる金融危機に備えよ

1999年4月号

ジェフリー・E・ガーテン エール大学教授

金融危機は今後も間違いなく起こる。この点では、ワシントンとウォールストリートの見解は一致している。問題は、危機の最悪の局面は過ぎ去ったという認識、そして処方箋をめぐる見解の不統一ゆえに、すでに憔悴しきっている危機管理者たちの今後に対する決意が揺らぎかねないことだ。たしかに、各国の規制・監視・政治システムは一様ではなく、現代の資本主義を支えるにはどのような政治・経済・社会メカニズムが必要かという点での統一見解はない。ただし、「市場マジック」に対する盲目的な思い込みゆえに、新興市場で堅固な近代的銀行制度と規制システムを構築するには何が必要かが無視されていたのは間違いない。新興市場諸国のインフラ整備、先進諸国側の金融商品への監視強化、国際的な金融機関の強化とすみ分け、政治と経済のリンケージの認識など、対処すべき課題は数多い。グローバルな金融秩序の規律を正していかない限り、危機の揺れ戻しは今後も大きいままだろう。

アメリカとヨーロッパ : 巨人の衝突

1999年4月号

C・フレッド・バーグスティン 国際経済研究所所長

ユーロの導入によって、ヨーロッパは経済領域でアメリカと対等の立場を手にしつつある。これによって、米欧の大西洋関係も劇的な変化を迎えるだけでなく、基軸通貨一極の時代から主要通貨並立の時代へと移行する。例えば、巨大な貿易赤字を賄うためには,アメリカもまた海外の資本を引き寄せようと、より高い金利を払わなければならなくなることを意味する。それだけに,米欧間の協調と管理という、あるべき路線を一歩踏み違えると、肥大化するアメリカの貿易赤字と保護主義が、手に負えない状況をつくりだす危険性も高い。ユーロとドルの変動枠の設定を目指した交渉を手はじめに、米欧の基盤を固め、これに日本、さらに他のG7諸国を加えた多層的な通貨・貿易秩序の形成を目指すべきである。今や米欧による二極パートナーシップを抜きにしたグローバル経済の安定などあり得ないのだから。

米中関係の試金石としての環境問題

1999年4月号

エリザベス・エコノミー  外交問題評議会研究員

開発かそれとも環境保護かというつば競り合いのなか、中国の指導者は開発のペースが環境悪化のペースを上回ることを期待し、環境問題を世界の他の地域に押しつけ、もっぱら開発を優先させるという行動に出た。国内的に、現政権が正統性を維持できるかどうかが、ひとえに急速な経済成長を持続できるかにかかっていたからだ。だが、昨今の経済ブームが残した環境問題は、脆弱な社会・政治・経済上のインフラを脅かしており、中国の経済成長、つまりは共産党政府の正統性の基盤が持続可能かどうかも危うくなっている。米中関係の厳しい現実からみて、環境問題を新たな対立の火種ではなく協調の手がかりとするには、政治色の弱い「米中環境・開発フォーラム」に中核的役割を与え、フォーラムへの両国の企業、非政府組織(NGO)、研究財団の参加を積極的に働きかけていくべきだろう。

ロシア・ユーラシアニズムと「反西欧」の構図

1999年4月号

チャールス・クローバー 『ファイナンシャル・タイムス』キエフ支局長

ユーラシアニズムとは、「西欧とは異なるロシアのユニークなアイデンティティを確立させようとする試みのことで、ユーラシア中枢に位置するロシアを起点に南や東へと目を向け、この巨大大陸の東方正教会系の民族と、イスラム人口を地政学的観点から一つにまとめあげる」ことを構想している。具体的には、「国内の経済政策面では左派よりで、対外政策面でアラブ諸国を助け、東方世界に傾斜し、旧ソビエト地域の統合を強化する政策である」。すでにロシア共産党のジュガーノフ委員長や、プリマコフ首相は、ユーラシアニズムという理念を政治外交の世界で具体化させ、少なくとも、国内政治そして一部外交面でも勝利を収めつつある。伝統主義と集団主義をつうじて、ユーラシアにおける民族集団を一手に取りまとめ、反リベラル・反欧米のスタンスで大同団結させようとするこのロシアの試みは、「西欧(WEST)」、そして世界にとってなにを意味するのだろうか。

国家間戦争から内戦の時代へ

1999年3月号

スティーブン・R・デービッド ジョンズホプキンス大学政治学教授

冷戦が終わり、今や内戦がほぼ唯一の戦闘形態となった。国家間戦争ほど関心を引かないとはいえ、各国の内戦は紛争勢力の「本来の意図とは関係のないところ」で、国境を超えた破壊的衝撃を伴う。しかも、対外的にダメージを与えるという意図に導かれていないだけに、内戦の発生を抑止するのは難しい。例えばサウジアラビアだ。世界一の石油資源を持つこの国で内戦が起きれば、油田地帯が戦場と化し、紛争勢力にその意図がなくても、世界経済は瞬く間に窒息する。しかもサウジアラビアで国内紛争が起きる可能性は現実に高い。われわれは、一刻も早く「安全保障上の脅威のすべてが、一貫した信条を持つ敵対勢力によって周到に準備されているわけではなく、具体的目的に導かれているわけでもなければ」、適切な政策をとれば抑止できる性格のものでもないことを肝に銘じるべきだ。内戦への対応を考えない限り、われわれにとって軍事的選択肢は、自国防衛の強化か予防的先制攻撃の二つしかない。

フクヤマの愚かな議論

1999年3月号

バーバラ・エーレンリック  作家 /ブライアン・ファーガソン  ラトガーズ大学人類学准教授

「遺伝的に攻撃的な性質を持つ男性に代わって、より穏やかで争いを好まない性質を持つ女性が政治に参加し、その比重が増していけば、国際関係はより平和になる」。フランシス・フクヤマは、論文「もし女性が世界政治を支配すれば」でこう主張した。フクヤマは、男性(オス)の攻撃性は遺伝子に組み込まれているとし、その例として、オランダやタンザニアで見られたオスチンパンジー同士の残虐な闘いや、数万年前からあったとみられる男性による大量虐殺を挙げる。しかも、環境や文化をつうじて、遺伝子に刻まれた男性の攻撃的な性格を克服する試みには限界があると主張した。人類学、そして広く社会科学全般が、性、民族、人種の普遍性を基盤に、思想や理論を組み立ててきただけに、フクヤマの指摘は大きな波紋をよんだ。以下は、文化や環境から人間が受ける影響、フェミニズム、そして人類学の立場からのフクヤマ論文に対する重厚な反論。

新エネルギー資源の誕生

1999年3月号

リチャード・G・ルガー 米上院議員  ジェームス・ウールジー 元CIA長官

いずれは枯渇する石油資源、とくに中東石油への依存は、安全保障、環境、経済のどの側面でみても好ましくない。幸いにも、遺伝子工学の進歩、そして生成技術の発展によって、これまでの穀物エタノールから、遺伝子工学を駆使したバイオマス・エタノールへのシフトが起きつつあり、いずれ石油への依存から離脱するのも夢ではない。「エネルギー熱量は若干低いとはいえ、オクタン価でみれば、バイオマス・エタノールはガソリンをはるかに上回り、より高い燃焼効率をも持つ。さらに、温室効果ガスの排出を大きく削減でき、空気の質も改善できる」
この「科学的ブレークスルー」を放置して、しだいに先細りとなりつつある中東の石油資源への依存を続けるのは、経済,環境,国際安全保障のいずれの面でも賢明ではない。環境に優しく、価格的にも問題のない、バイオマス・エタノール実用化の時代がすぐそこまで来ており,その実用化へ向けて全力を注ぎ込むべきである。

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