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米外交評議会緊急ミーティング
天安門ペーパーの衝撃

ジェームス・ホーグ フォーリン・アフェアーズ誌編集長
ケニス・リーバサル 前国家安全保障会議アジア担当シニア・ディレクター
アンドリュー・ネーサン コロンビア大学政治学教授(天安門ペーパー共同編集者)
ジェームス・リリー 元駐北京アメリカ大使(1989-1991)
チャス・フリーマン 元国務省中国部長、元駐サウジ・アメリカ大使
オービル・シェル カリフォルニア大学教授

"The Tiananmen Papers: Are They Authentic? What Do They Mean?"

ジェームス・ホーグ フォーリン・アフェアーズ誌編集長
ケニス・リーバサル 前国家安全保障会議アジア担当シニア・ディレクター
アンドリュー・ネーサン コロンビア大学政治学教授(天安門ペーパー共同編集者
ジェームス・リリー 元駐北京アメリカ大使(1989-1991)
チャス・フリーマン 元国務省中国部長、元駐サウジ・アメリカ大使
オービル・シェル カリフォルニア大学教授

2001年2月号掲載論文

中国の民主改革路線派の人物によって、ひそかに中国から持ち出された膨大な量の中国政府機密文書を英訳・編纂した『天安門ペーパー』が書籍(The Tiananmen Papers, Public Affairs, New York)として二〇〇一年一月にアメリカで出版され、その抜粋がフォーリン・アフェアーズ二〇〇一年一/二月号に掲載された。この議事録は一月十一日にニューヨークの外交問題評議会で開かれたこの文書に関するディスカッションの要約・抜粋である。二人の元大使を含む五人の出席者はすべて中国専門家で、アンドリュー・ネーサンとオービル・シェルは天安門ペーパー編纂プロジェクトに直接かかわり、英語版の『天安門ペーパー』の序文とあとがきをそれぞれ書いている。またジェームス・リリーは天安門事件当時の駐北京アメリカ大使。

  • 文書は本物か
  • 文書は歪曲されているか
  • 文書を持ち出した人物の動機は何か
  • 文書の出版で北京の政治力学はどう変わる
  • 天安門ペーパー出版で米中関係はどうなる

ホーグ 一九八九年春、中国の三百以上の都市で学生運動が起き、中国の権力者はこれにどう対処するか非常に大きな課題に直面した。状況への対応を討議した中国政府の重要な会議、電話の記録、安全保障リポートが、中国共産党指導層内の改革派の代理人によってアメリカへと持ち込まれた。この人物によれば、アメリカへと文書を持ち込んだ目的は、「二〇〇二年から二〇〇三年に予定されている権力交代期が視野に入ってきている今、中国の政治改革再開に向けた流れを作り出す」ことにある。この代理人によれば、共産党内の改革主義者たちは、「政治改革はまず中国政府の天安門事件についての公的解釈、つまり、この事件を、近代化を求める学生運動ではなく、反革命分子による反乱と決めつけた政府の『評決』を再検討することによって始まる」と考えている。

天安門事件前夜の共産党政府、学生運動の立場はともに、白黒で判断できるような明快な状況にはなかった。学生運動の指導者や参加者はめまぐるしく入れ替わり、学生の要求も刻々と変化した。一方、共産党の管理体制を維持しつつ、平和的にデモを解決して秩序を回復するという点で当初ほぼ一枚岩だった中国政府も、学生運動の背後に外部勢力による共産党政府の転覆をねらう策謀が存在するのではないかと懸念しだす。その結果、この運動を軍事的に弾圧するという手法が浮上し、政府上層部の立場も二分されてゆく。

今日は、この文書の信憑性、文書を提供した人々の動機や、天安門ペーパーが中国とアメリカの政治と政策にどのような影響を与えるかを議論したい。では、アンドリュー・ネーサンから。この文書は信頼できるものかどうか、また、文書をアメリカに持ち込んだ人物の意図は何なのだろうか。

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