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論文データベース(最新論文順)

ノーベル平和賞を受賞した ムハマド・ユヌスが語る市場経済と貧困撲滅

2007年3月号

ムハマド・ユヌス グラミン銀行総裁、 2006年度ノーベル平和賞受賞者

「これまで『ビジネス』は非常に狭義に定義されてきた。金を儲けることがビジネスと考えられてきた。だが、この解釈は間違っている。 もちろん、金儲けは悪いことではないが、金儲けと関連づけなくても、ビジネスが人々に恩恵をもたらすことができる点に目を向けるべきだろう。 この意味でのビジネスの場合、『人々のためになることをしたくて、このビジネスを行っている』と言うこともできる。それはそれで立派な『ビジネス』だ。 人間は金儲けの機械ではなく、さらに大きな価値を持っている。金儲けも素晴らしいが、他にも素晴らしいものはある。ビジネスを通じて世界が直面する問題を解決し、 後世に足跡を残せるとすれば、それは素晴らしいことだ。私はこの手のビジネスを、『ソーシャルビジネス(社会派ビジネス)』と呼んでいる。 」

CFRインタビュー
イランの安全を保証して、核問題の外交解決を目指せ

2007年3月号

ロバート・ハンター
ランド研究所上席顧問

ワシントンの対イラン強硬派は、軍事攻撃路線は断念しつつあるが、永続的な封じ込めを求めて、交渉路線を阻止しようとしている。ブッシュ政権内にイランとの交渉に前向きな勢力とこうした強硬派との対立があると指摘する中東問題の専門家ロバート・ハンターは、「交渉を開始する前に、イランにウラン濃縮を停止するように求めているようでは、イランが交渉に応じるはずはない」と指摘する。イランとの交渉が成立するかどうかは、われわれが北朝鮮同様に、イランに対しても、「行動を自重し、核開発計画をすべて公開し、テロ支援も行っていないことが確認できれば、われわれは貴国の安全を保証しよう」と言えるかどうかに左右されると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
アフガニスタンの統治能力整備への支援を

2007年3月号

サイード・ジャワード
駐米アフガニスタン大使

「アフガニスタンでの治安面での問題はテロによってつくりだされている。しかし、これは、テロリストやタリバーンがアフガニスタンで大きな力を持っていることを意味しない。むしろ、アフガニスタン政府が行政サービスを提供したり、市民を保護したりする能力に限界があることが問題だ」。アフガニスタンの日常生活を脅かしているのは、テロリストの攻勢だけでなく、援助不足ゆえにアフガニスタン政府がうまく統治能力を確立できないことにあるとサイード・ジャワード駐米アフガニスタン大使は強調する。「民衆の必要を満たせるようにカブールの行政、統治能力を改善しないことには、軍事作戦だけでは状況の改善は見込めない」。ジャワードは、「われわれは、アメリカそして国際社会が、テロリスト勢力を壊滅した後のアフガニスタンが国家として持ちこたえられるように統治能力の整備に投資することを望んでいる」と指摘し、「アフガニスタンで平和を勝ち取らない限り、対テロ戦争はうまくいかない」と語った。聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgの副編集長)。

安倍政権は改革政権となれるのか

2007年3月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート共同編集長
ピーター・エニス/オリエンタル・エコノミスト・レポート共同編集長

2005年の衆議院選挙で立証されたように、市民は改革路線を強く支持しているにもかかわらず、小泉がつくりだした改革の流れが鈍化するか、停止しかねないリスクが現に存在する。安倍の関心はもっぱら外交と社会政策に向けられており、経済には目を向けていないからだ。しかし、日本経済の再生はとうてい本物とは言い難く、改革を続けない限り、再度漂流しだすことになる。しかし、安倍の野心的な安全保障目標が、日本の経済的必要性を満たす糸口をつくりだすかもしれない。中国への対抗バランスを形成したい安倍は、例えば、オーストラリアとの自由貿易合意の締結にも意欲をみせているし、そうした合意を実現するには、農業部門の障壁その他をめぐって妥協しなければならず、それが日本経済を上向かせることにもつながるからだ。明らかなのは、安倍が改革に向けた行動を起こさなければ、政権は短命に終わるかもしれないし、日本の影響力も低下していくということだ。

5年前アメリカの研究者は、安倍政権と日本をどうみていたか
――安倍政権のアジェンダ

2007年3月号

◎スピーカー
ケント・E・カルダー
ジョンズ・ホプキンス大学教授
ライシャワー・センター所長
マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)
日本部長
◎司会
マーク・マニーン
米議会調査局(CRS)
アジア担当研究員

安倍政権は、オーストラリアとの安全保障関係、インドネシアとのパートナーシップを形成し、国際環境を形づくるために「民主主義と市場経済」というグローバルな規範を持ち出し、これまでの経済的影響力だけをツールとする戦略を一新した。その背景には、経済的ツールだけではもはや国際環境に対処できないという読みがある。……ある人にとってのナショナリズムが他の人にとっての愛国主義であることもある。安倍首相が求めている国家としての誇り・プライドについては、アメリカ人も理解している。日本人に……誇りを持って欲しいし、日本が国際的な役割を果たし、繁栄と安定の要として機能して欲しいと願っている。(M・グリーン)

政治構造的に、日本が将来を見据えた決意ある政策を表明することはあり得ない。選挙制度、政治的伝統その他の要因によって、日本の政策決定はどうしても視野の狭いものになりがちだ。国内志向が強いということもできる。潜在的なパートナーとしての日本という点では……日米関係が、米英関係のような存在になるとは考えにくいと私は思う。……文化的な違いゆえに、日本は経済領域を中心としたパートナーに留まると思う。(K・カルダー)

復活した日本と現実主義外交の伝統

2007年3月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長

日本の最大の強みは、国力を構成する軍事、経済、文化その他の要因を時代に即してうまく再定義してきたことにあり、小泉政権以降の日本政府は、アジアにおける主要なプレーヤーとしての地位を維持していこうと、新たな国力構成領域での強さを培いつつある。若手政治家たちは、日米同盟が両国にとってもっとうまく機能するようになることを願っており、より多くの役割を引き受け、その代わりにより多くを求めることについても躊躇しない。こうした状況にある以上、ワシントンが東京を犠牲にする形で北京との和解路線をとれば、東京は自主路線の度合いを高め、その結果、アジアの安全保障環境はますます不透明になる。ワシントンが中国との緊密な経済的絆に加えて、安定した戦略関係を築くことについて日本を過度に刺激しないようにするには、あくまでも東京との同盟関係を基盤に中国への関与策を進める必要がある。

移民労働力と経済成長を考える
――移民労働者は脅威か、恩恵か

2007年2月号

タマル・ジャコビー マンハッタン・インスティチュート シニア・フェロー

グローバル世界の新たな潮流のなかでも特に重要なのが、世界の労働市場の統合が進んでいることだ。アメリカでは多くの産業が単純(非熟練)労働力不足という問題を抱え込んでおり、これに呼応するかのように、メキシコ人を中心とする単純労働者がアメリカへとタイミングよく殺到し、増大するアメリカの労働需要を満たしてくれている。こうした移民たちは、アメリカ人労働者が嫌がる仕事を引き受けて産業を支えることで、経済的富の拡大、アメリカ人労働者のスキルアップの機会をもたらしている。移民の流入がアメリカ経済にとって有益であることがはっきりしている以上、移民を締め出すのではなく、移民流入をより効果的に管理する制度改革を模索すべきである。

2007年1月、中国はすでに打ち上げていた気象衛星を弾道ミサイルで破壊する実験に成功した。その結果、破壊された衛星やミサイルの破片や残骸が地球の軌道で漂泊することになり、これらが商業・軍事衛星その他と衝突する危険が生じている。また今回の実験をきっかけに、宇宙での軍拡レースが誘発される恐れもある。その後、中国はこれ以上実験をする予定はないと表明したが、1月11日の衛星破壊実験は中国が宇宙計画をめぐって大きな進歩を遂げていること、有事の際には、敵の情報収集衛星を破壊する能力を持っていることを世界に見せつけた。実験後、国際社会が中国に説明を求めたにもかかわらず、公式声明を発表するのに数日を要したため、実験をめぐる中国の意図が疑われ、北京が、穏やかな台頭、平和的台頭を本当に目指しているのかも疑問視されだしている。いまや軍事情報だけでなく、金融、経済取引システムの多くが、衛星によって統御されており、アメリカとロシアに加えて、中国が衛星破壊能力を手にしたことの意味合いは非常に大きい。

テロとの戦いの本当の意味は何か

2007年2月

トニー・ブレア/第73代英国首相

イスラム過激派は、イスラム国家の近代化など望んではいない。彼らは、中東地域にイスラム過激主義の弓状地域を形成し、イスラム世界の近代化を目指している穏健派による小さな流れをせき止め、イスラム世界が少数の宗教指導者が支配する、半ば封建的な世界へと回帰することを望んでいる。彼らが攻撃に用いる手段に対抗するだけではなく、こうした彼らの思想に挑まない限り、勝利は手にできない。人心を勝ち取り、人々を鼓舞し、われわれの価値が何を意味するかを示すことが戦いの本質である。力の領域においてだけでなく、価値をめぐる闘いで勝利を収めない限り、イスラム過激主義の台頭というグローバルな流れを抑え込むことはできない。

アフガニスタンを救うには

2007年2月

バーネット・R・ルービン/ニューヨーク大学国際協調センター研究部長

パキスタンとペルシャ湾岸諸国の援助をバックにタリバーンが再びアフガニスタンで台頭しつつある。パキスタン国内の部族地域に聖域を持っていることに加えて、タリバーンの統治システムが極めて効果的であり、一方、アフガニスタン政府が腐敗にまみれ、まともな統治が行われていないために、民衆の立場も揺らぎだしている。アフガニスタン軍と国際支援部隊が戦闘を通じてタリバーンをいくら打倒しても、パキスタン内にタリバーンが聖域を持ち、アフガニスタン政府が弱体で再建活動がうまく進んでいないために、それを本当の勝利に結びつけられない状況にある。アフガニスタンの内務省と司法制度を改革し、アメリカのパキスタンに対する路線を見直さないことには、対テロ戦争の最初の戦場へと再度引きずり戻されることになる。

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