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論文データベース(最新論文順)

フォーリン・アフェアーズ・コラム
対北朝鮮制裁を行い、金正日後に備えよ

2009年5月号

ビクター・チャ 前米国家安全保障会議アジア担当部長

「短期的には平壌のミサイル発射に対する制裁にむけた圧力をうまく作り出し、一方で、自由で民主的な統一朝鮮に備えた準備を長期的な観点から始める必要がある。……オバマ政権は北朝鮮を再度「テロ支援国家」にリストアップすることも検討すべきだし、金正日後の北朝鮮にどう対処していくかをめぐって中国、韓国との本格的な交渉を水面下で始め、北朝鮮が建設的な路線をとれば、その見返りに安全の保証と経済援助を与えるという取引を示すことで、(日本とともに)、潜在的な平壌の新指導層への接触を試みていくべきだろう」。

独立したアラブ世界は自由を手にできるか
―神権政治か民主主義か

2009年5月号

バーナード・ルイス プリンストン大学名誉教授

「現在のアラブ諸国政府の多くは、「民衆の忠誠心に依存しているか、あるいは民衆の従順さに依存しているか」のどちらかだ。「忠誠心」は民族、部族、宗教、あるいはこれらの組み合わせを基盤に形作られている。一方、「人々の従順さに依存する体制」とは、全体主義や共産主義の管理と強制のテクニックを用いるヨーロッパ流の独裁制のことだ。……だが、忠誠に重きを置くわけでも、これまでのように抑圧的でもなく、むしろ、同意と参加による統治の実現を模索する集団が増え、その重要性も増してきている。こうした集団の規模はそれほど大きくないし、今のところ目立つ行動はできない状態に置かれているが、このような集団が出現していること自体、きわめて画期的な出来事だ」。

日本の歴史認識と東アジアの和解を考える
――反動を誘発する謝罪路線の危うさ

2009年5月号

ジェニファー・リンド  ダートマス・カレッジ助教授

いかなる国であっても、多くの人が家族や家を失い、都市そのものが消失してしまうような凄惨な戦争の余波のなかで、自国の過去の行動を謝罪すべきだという提案が出てくると、国内で反動が起き、国論は二分される。戦後の西ドイツで謝罪路線への反動が「例外的に」小さかったのは、ドイツの統一とソビエトからの防衛という二つの外交上の大目標を実現する必要があったからだ。日本、あるいは日本と同様の立場にあるその他の国は、「謝罪」と(過去の歴史を正当化し)「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、アデナウアーがとったように、(謝罪ではなく)、過去の間違いを認め、一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだろう。この路線で東アジアの緊張が緩和されれば、自国だけでなく、世界が利益を得られるようなリーダーシップを日本は発揮できるようになる。

アメリカ衰退論は間違っている
―ワシントンは国際システムの改革を主導せよ

2009年5月号

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス大学准教授 ウィリアム・C・ウォルフォース/ダートマス大学教授

アメリカ帝国論をめぐって専門家が論争を展開していたのはわずか2~3年前のこと。それが今は、アメリカを唯一の超大国とする一極システムは急速に終焉に向かっていると広く考えられている。だが、事実を冷静に見つめれば、アメリカ帝国論がアメリカのパワーを過大評価していたのと同じくらい、最近の衰退論はアメリカのパワーを過小評価していることがわかる。……世界は新たな課題に満ちあふれているが、現在の国際システムではこれらにうまく対応できない。国際システムを新しい課題に適応できるように変革するには力ある国家のリーダーシップが必要であり、その任務に向けた協調を主導できるのは、衰退などしていないアメリカを置いて他にはない。

米中G2構想という幻想
―― 対中多国間アプローチを

2009年05月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター
アダム・シーガル 米外交問題評議会中国担当シニア・フェロー

グローバルな課題に対応していく上でアメリカは中国の協力を必要としている。だが、この観点から米中の二国間関係を強化しようと試みても、利益認識や価値観の違い、政策遂行能力の違いが災いして、うまくパートナーシップを形成するのは現実には難しい。中国との協力という言葉は心地よい響きを持つが、実際にはそれが一筋縄ではいかないことを認めなければならない。結局は混乱に直面して双方が反発しあうことになる。こうした関係悪化の下方スパイラルの渦にはまるのを避けるには、ワシントンは中国への対応をめぐって世界各国から支援を引き出すべきだ。現状における重要な問題のすべてに中国が影響を与えているとみなし、台頭途上のグローバルなパワーである中国からより多くの協調を引き出したいと考えているのはアメリカだけではない。アメリカが中国との関係を前に進めたいのであれば、他の国も中国との交渉に参加させる必要がある。

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

欧米とロシアとの関係の鍵を握るドイツ
――普通の国ドイツに求められる新しい役割

2009年4月

コンスタンツェ・ステルゼンミューラー/米ジャーマン・マーシャルファンド、ベルリン所長

ロシアのヨーロッパ戦略において最大の資産は緊密なドイツとの絆だし、一方、ドイツはモスクワとの「戦略的パートナーシップ」を模索している。これは、ロシアと欧米の緊張した関係の間に身を置くドイツがユニークな役割と責任を負っていることを意味する。「かつてのドイツ問題」はすでに解決されている。ドイツはヨーロッパ、そして欧米という枠組みにしっかりと根を下ろしている。しかし現在では、かつて同様に切実な「新しいドイツ問題」が生じている。それは「ドイツはロシアの行動を変え、必要ならモスクワに対して毅然と立ち上がるために政治資源の多くをつぎ込む能力と意思を持っているかどうか」という疑問に他ならない。

CFRミーティング
中国は内需を拡大し、為替操作を止めよ
――金融危機と米・アジア関係

2009年4月

パネリスト
セバスチャン・マラビー /外交問題評議会地政経済学研究センター所長
エドワード・アルデン /外交問題評議会シニア・フェロー
エリザベス・C・エコノミー/外交問題評議会アジア研究ディレクター
プレサイダー
ケイ・キング/外交問題評議会ワシントン・プログラム・バイスプレジデント

「米中双方にとって必要なのは、中国がもっと内需主導型の経済へとシフトしていくことだ。中国はこれまでの20年間、輸出主導型の経済成長戦略をとり、その結果、膨大な外貨準備を積み上げ、グローバルなインバランス(グローバル経済の不均衡)を作り出してしまった。これが、米中双方を苦しめている。」(E・アルデン)

「金融部門を規制し、銀行を適切に監督していれば、問題はここまで深刻にはならなかったかもしれない。だが、……規制でどうにかなるとは私は考えていない。膨大な資本が経済システムに流入すると、バブルが発生し、そのバブルが崩壊し、大きな経済的打撃を引き起こすことは避けられないと私はみている。 この意味において、アメリカにとって中国の輸出主導型の経済成長モデルは好ましくないし、中国にとっても好ましくない」。(S・マラビー)

経済危機は中国の共産党支配を揺るがすか

2009年4月号

ミンシン・ペイ /カーネギー国際平和財団シニア・アソシエーツ

「不満をつのらせる都市の中産階級、大学を卒業しても職を見つけられない若者、失業した季節労働者が、中国共産党(CCP)の支配体制に対する大きな脅威を作り出すかもしれない。これらの集団が連帯して力強い組織を作り上げれば、世界でもっとも長く権力を握っている政党も深刻な問題に直面するだろう。だが、そのような事態は現実には起こりえない。……むしろ、支配的エリート層の結束がゆるめば、支配体制を揺るがす脅威になるかもしれない。」

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