習近平政権の内憂外患
2012年12月号

経済成長の必要性を政治的コンセンサスで支えた胡錦濤と彼の側近たちは、他の新興国でさえもうらやむ経済成長を実現した。だが、その結果、余りに多くを外需に依存する経済、そして経済成長だけを重視するエリート文化を作り上げ、一方で、市民の生活の質を犠牲にしてしまった。そしていまや経済成長は鈍化し、民衆の抗議行動は増え、中間層は中国政府に対する不信感を募らせている。中国のジニ係数は0・5に近づいており、社会が不安定化するといわれる警戒数値の0・4をすでに上回っている。格差の増大だけではない。政治的自由が制限されていることに対する人々の不満も高まっている。いまや中国共産党は、中間層を犠牲にして、経済的機会へのアクセスを独占する政治エリート集団へと変化している。しかも、この2年間に、中国が地域的な強硬策に転じた結果、近隣国との関係も不安定化している。日中関係を含めて、中国が10年をかけて構築した安定した地域環境はいまや崩壊の瀬戸際にある。習近平を待ち受けているのは不満を募らす国内社会、そして、崩壊の瀬戸際にある地域秩序だ。