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2018.5.24 Thu

民主国家に浸透する権威主義
―― 民主的対抗策の原則を探る

オーストラリアの経験が特有なのはキャンベラが北京の脅威だけでなく、中国からの経済的報復を警戒する国内のビジネスリーダーたちの圧力をどのように押し返しているかにある。キャンベラはリスクを管理し、ダメージを特定する一方で、全般的なエンゲージメントを維持するという(問題と恩恵を)区別する対応をみせている。リスクとダメージを管理する一方で、相手にエンゲージし続けるためのバランスをとるのは容易ではない。この側面でのオーストラリアの努力を、いずれ同じような環境に遭遇するであろう他の民主国家の指導者たちは注意深く見守る必要があるだろう。(ガーナー)

民主国家をターゲットにするロシアの情報操作の目的は、アメリカやヨーロッパの主要国を中心とする民主国家の名声そして民主的システムの根底にある思想を多面的にかつ容赦なく攻撃することで、自国をまともにみせることにある。一方、中国の情報操作は、問題のある国内政策や抑圧を覆い隠し、外国における中国共産党に批判的な声を可能な限り抑え込むことを目的にしている。(ウォーカー、ルドウィッグ)

あらゆる権威主義国家が民主国家への影響力を行使しようとしているのは、民主国家が自国にどのようなアプローチをとるかで自国の体制存続が左右されると考えているからだ。権威主義国家は欧米諸国による批判や敵意を前にすると不安定化する傾向がある。このために、欧米による国内の政治的正統性(=民衆の支持)を損なう行動を阻止しようと、逆にリベラルな民主国家への影響力をもつことで、自国体制の存続を確保したいと考えている。要するに、民主国家による民主化促進策、反体制派への支援、経済制裁、体制変革策を阻止したいと考えている。(トルステン・ベナー )

中国の政治介入に揺れるオーストラリア
―― 民主的対抗策の原則を探る

2018年5月号 ジョン・ガーナー 元豪首相上級アドバイザー

オーストラリアにおける「中国の影響力とソフトパワーに対するとらえどころのない不安」は、「中国共産党による水面下での政治介入に対する明確な懸念」へとすでに変化している。中国とつながっている政治資金提供者が政治へのアクセスと影響力を強め、大学は中国の「プロパガンダのツール」として取り込まれている。一方、キャンベラは、明確な現状分析によって、リスクを管理し、ダメージを特定する一方で、全般的な中国とのエンゲージメントを維持するという問題と恩恵を区別する対応をみせている。リスクとダメージを管理する一方で、相手にエンゲージし続けるためのバランスをとるのは容易ではない。いずれ、同じような環境に遭遇する民主国家の指導者たちは、オーストラリアの経験と対策を注意深く見守る必要がある。

民主国家を脅かす 権威主義国家のシャープパワー
―― 中ロによる情報操作の目的は何か

2017年12月号 クリストファー・ウォーカー 全米民主主義基金 副会長(分析・研究担当)、ジェシカ・ルドウィッグ 全米民主主義基金 リサーチオフィサー

民主国家をターゲットにするロシアの情報操作の目的は、アメリカやヨーロッパの主要国を中心とする民主国家の名声そして民主的システムの根底にある思想を多面的にかつ容赦なく攻撃することで、自国をまともにみせることにある。一方、中国の情報操作は、問題のある国内政策や抑圧を覆い隠し、外国における中国共産党に批判的な声を可能な限り抑え込むことを目的にしている。権威主義国家の対外的世論操作プロジェクトは、ソフトパワー強化を目指した広報外交ではない。これをシャープパワーと呼べば、それが悪意に満ちた、攻撃的な試みであることを直感できるだろう。その目的は民主国家の報道機関に(自国に不都合な情報の)自己規制(検閲)を強制し、情報を操作することにある。

民主国家に浸透する権威主義
―― 蝕まれるリベラルな民主主義

2017年11月号 トルステン・ベナー 独グローバル公共政策研究所  ディレクター

欧米諸国による批判や敵意を前にすると国内が不安定化する傾向があるロシアなどの権威主義国家は、民主国家による民主化促進策、反体制派支援、経済制裁などを阻止するための盾を持ちたいと考えてきた。こうして、欧米の政治に介入したり、プロパガンダ戦略をとったりするだけでなく、資金援助をしている欧米の政党や非政府組織、ビジネス関係にある企業との関係を通じて、民主社会への影響力を行使するようになった。権威主義国家の最終的な目的は、自分たちの影響力を阻止できないほどに欧米の政府を弱体化させることにある。問題は、民主社会が外国の資金や思想の受け入れに開放的で、欧米のビジネスエリートが権威主義国のクライエントたちからも利益を上げようとしていること、しかも民主体制が弱体化しているために、彼らがつけ込みやすい政治環境にあることだ。・・・

2018年5月号

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2018年5月号(2018年5月10日発売)

Contents

  • 政治的秘密とリークと内部告発
    ―― 正当な告発と不当な告発

    マイケル・ウォルツァー

  • 誰も望まない戦争はどのように始まるか
    ―― 外交から戦争への転びやすい坂道

    ロバート・ジャービス ミラ・ラップ=フーパー

  • 北朝鮮に対する包括的強制策を
    ―― 外交で脅威を粉砕するには

    ビクター・チャ  カトリン・フレーザー・カッツ

  • 朝鮮半島をめぐる米中の攻防
    ―― 金正恩の訪中を演出した中国の思惑

    オリアナ・スカイラー・マストロ

  • 核能力の核戦力化を阻止せよ
    ―― 北朝鮮は非核化には応じない

    トビー・ダルトン アリエル・レバイト

  • 「新冷戦」では現状を説明できない
    ―― 多極化と大国間競争の時代

    オッド・アルネ・ウェスタッド

  • 中国の政治介入に揺れるオーストラリア
    ―― 民主的対抗策の原則を探る

    ジョン・ガーナー

  • トランプの台湾カードと台北
    ―― 急旋回する米中台関係

    ダニエル・リンチ

他全12本掲載

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