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2021.4.12.Mon

大国化した中国といかに向き合うか
――  日中の歴史的遺産

「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・(ワイス)

1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。(ジョンソン)

日本本土が攻撃されても、日米の部隊は中国の攻撃を間違いなく押し返すことができる。しかし、最大のリスクは、尖閣諸島や琉球諸島南部で日本が迅速な反撃策をとれば、壊滅的な敗北を喫し、政府が中国との戦闘を続ける意思と能力を失う恐れがあることだ。日本は東シナ海における戦力と戦略を見直す必要がある。紛争初期段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、最初の攻撃を生き残り、敵の部隊を悩ませ、抵抗することで、最終的に敵の軍事攻撃のリスクとコストを高めるような「積極的拒否戦略」をとるべきだろう。(ヘジンボサム、サミュエルズ)

日中戦争をいかに記憶するか
―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

2021年4月号  ジェシカ・チェン・ワイス  コーネル大学准教授

「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。台湾との関係を育んでいくことへの関心、未解決の戦争の過去を日本に思い出させるという思惑もあるのだろう。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・

中国と日本の相互認識
―― 歴史的遺産とイデオロギー的遺産の呪縛(1972年発表)

2012年11月号 チャーマーズ・ジョンソン 日本政策研究所・所長(論文発表当時)

1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。中国人から見れば、日本はもはやアジアではなかった。日本は、紛れもなく帝国主義国家そのものだった。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。

日本の新しい防衛戦略
―― 前方防衛から「積極的拒否戦略」へのシフトを

2018年9月号 エリック・ヘジンボサム マサチューセッツ工科大学国際研究センター 首席リサーチサイエンティスト リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授(政治学)

日本本土が攻撃されても、日米の部隊は中国の攻撃を間違いなく押し返すことができる。しかし、中国軍が(尖閣諸島を含む東シナ海の)沖合の島に深刻な軍事問題を作り出す能力をもっているだけに、東京は事態を警戒している。実際、中国軍との東シナ海における衝突は瞬く間にエスカレートしていく危険がある。最大のリスクは、尖閣諸島や琉球諸島南部で日本が迅速な反撃策をとれば、壊滅的な敗北を喫し、政府が中国との戦闘を続ける意思と能力を失う恐れがあることだ。日本は東シナ海における戦力と戦略を見直す必要がある。紛争初期段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、最初の攻撃を生き残り、敵の部隊を悩ませ、抵抗することで、最終的に敵の軍事攻撃のリスクとコストを高めるような「積極的拒否戦略」をとるべきだろう。ポイントはこの戦略で抑止力を高めることにある。

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本誌最新号紹介

2021年4月号(2021年4月10日発売)

Contents

  • インド太平洋戦略の幻想
    ―― 東アジアを重視すべき理由

    ヴァン・ジャクソン

  • アジアでは日本に従え
    ―― 日米逆転はなぜ起きたか

    チャン・チェ

  • 日中戦争をいかに記憶するか
    ―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

    ジェシカ・チェン・ワイス

  • イノベーション戦争
    ―― 衰退するアメリカの技術的優位

    クリストファー・ダービー、サラ・セウォール

  • 資本主義と民主主義は共生的か
    ―― 市場価値と自由

    ビニヤミン・アペルボーム

  • トライバリズムを克服するには
    ―― 寸断されたアメリカのパワー

    ルーベン・E・ブリガティー

  • 介入と後退の歴史
    ―― グローバル世界でのアメリカの役割

    ロバート・ケーガン

  • 変異株とグローバルな集団免疫
    ―― 終わらないパンデミック

    マイケル・T・オスタホルム、マーク・オルシェイカー

他全11本掲載

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