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2021.12.1. Wed

アジアにおけるアメリカと中国
―― 米中冷戦は不可避だったのか

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。(キッシンジャー)

時は流れ続け、重力の法則は変わらない。同様に変わらない法則が新たに出現しつつある中国との冷戦も規定しているのだろうか。そうだとしても、その背後にどのような「不可知の要因」が潜んでいるのか。冷戦の歴史が不確実性を生き抜き、成功を収めるための枠組みを提供しているとすれば、アメリカは自らの最高の伝統を具現し、偉大な国家として存続していく価値があることを証明しなければならない。未来が、私たちが予想するものではなく、ほとんどの点で私たちが過去に経験したことのないものになるとしても、歴史の研究によって、未来をナビゲートする最良の羅針盤が提供されるはずだ。(ブランズ、ギャディス)

「アメリカは恐怖と羨望に駆られて、あらゆる方法で中国を封じ込めようとしている」。ワシントンの政策エリートは、このような考えが中国国内で定着していることを明確に認識しつつも、そうした敵対的環境を助長しているのは中国ではなく、「中国共産党の権力を弱体化させようと、長年にわたって介入し続けているアメリカの方だ」考えられていることを見落としている。これほどまでに異なる近年の歴史解釈が米中間に存在することを理解すれば、競争を管理し、誰も望んでいない壊滅的な紛争を回避する方法を両国が特定する助けになるはずだ。(王緝思)

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号 ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

米中新冷戦とハイブリッドな覇権
―― 米ソ冷戦と歴史の教訓

2021年12月号 ハル・ブランズ  ジョンズ・ホプキンス大学 教授(グローバルアフェアーズ)   ジョン・ルイス・ギャディス  イェール大学 教授(陸軍・海軍史)

時は流れ続け、重力の法則は変わらない。同様に変わらない法則が新たに出現しつつある中国との冷戦も規定しているのだろうか。そうだとしても、その背後にどのような「不可知の要因」が潜んでいるのか。冷戦の歴史が不確実性を生き抜き、成功を収めるための枠組みを提供しているとすれば、アメリカは自らの最高の伝統を具現し、偉大な国家として存続していく価値があることを証明しなければならない。民主主義に対する内なる脅威を辛抱強く管理し、世界の多様性を守るために道徳的・地政学的な矛盾を許容する必要がある。未来が、私たちが予想するものではなく、ほとんどの点で私たちが過去に経験したことのないものになるとしても、歴史の研究によって、未来をナビゲートする最良の羅針盤が提供されるはずだ。


北京では、中国の国家安全保障、主権、国内の安定に対する外からの最大の脅威はアメリカが作り出しているとみなされている。「アメリカは恐怖と羨望に駆られて、あらゆる方法で中国を封じ込めようとしている」。ワシントンの政策エリートは、このような考えが中国国内で定着していることを明確に認識しつつも、そうした敵対的環境を助長しているのは中国ではなく、「中国共産党の権力を弱体化させようと、長年にわたって介入し続けているアメリカの方だ」考えられていることを見落としている。これほどまでに異なる近年の歴史解釈が米中間に存在することを理解すれば、競争を管理し、誰も望んでいない壊滅的な紛争を回避する方法を両国が特定する助けになるはずだ。

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本誌最新号紹介

2021年12月号(2021年12月10日発売)

Contents

  • 地政学パワーとしてのビッグテック
    ―― 米中対立と世界秩序を左右するプレイヤー

    イアン・ブレマー

  • より公平な新経済システムへ
    ―― 増税と政府による経済管理

    フェリシア・ウォン

  • 米中新冷戦とハイブリッドな覇権
    ―― 米ソ冷戦と歴史の教訓

    ハル・ブランズ、ジョン・ルイス・ギャディス

  • 米中対立と大国間政治の悲劇
    ―― 対中エンゲージメントという大失態

    ジョン・J・ミアシャイマー

  • 米中対立とアジアの軍事化
    ―― 軍事ファースト路線の弊害

    ヴァン・ジャクソン

  • 「だましの時代」のプレイヤーたち
    ―― 政府とソーシャルメディアの責任

    ジャミール・ジャファー

  • 膨大な中国の債務問題
    ―― 恒大集団は氷山の一角にすぎない

    ベン・ステイル、ベンジャミン・デラ・ロッカ

  • 世界は石炭使用量を削減できるか

    リンジー・メイズランド

他全11本掲載

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