2026.9.8 Tue
核抑止力の崩壊?
―― 問われる核の存在理由
もはや核戦力では、安価なドローンによる敵の集中攻撃を抑止できない。この事実を、核保有国と核兵器の開発を望んでいるかもしれない非核保有国は、改めて認識する必要がある。実際、イスラエルの核抑止力は、イランの通常兵器による攻撃に対する歯止めにはならなかった。(ゴットモーラー)
軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、新しい軍事能力の登場によって、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、ハイリスクの環境において人間がどのように行動するかに関するこれまでの理解が覆され、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。(クレピネビッチ)
世界が目撃しているのは、過去の理論家が「総力戦」と呼んだものに似ている。だが、新テクノロジーと経済のグローバル化ゆえに、現代の戦争はかつての総力戦の焼き直しではない。全面戦争の時代における抑止をより信頼できるものにするには、戦争の定義が変化し、さまざまな抑止が必要になっていることを理解しなければならない。(カーリン)
核抑止力の崩壊?
―― 問われる核の存在理由
2026年9月号 ローズ・ゴットモーラー 元米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)
もはや核戦力では、安価なドローンによる敵の集中攻撃を抑止できない。この事実を、核保有国と核兵器の開発を望んでいるかもしれない非核保有国は、改めて認識する必要がある。実際、イスラエルの核抑止力は、イランの通常兵器による攻撃に対する歯止めにはならなかった。ウクライナに攻撃された核大国ロシアも同様だった。核保有を目指す国々は、代わりに通常兵器で防衛力を強化し、通常兵器やハイブリッド攻撃に対するレジリエンスを高める方法を模索すべきだろう。核兵器は、安全保障を確実にするどころか、新しく不安を抱かせるような危険を招き入れるだけかもしれない。
形骸化した抑止力
―― 多様化する攻撃の領域と能力
2019年2月号 アンドリュー・クレピネビッチ ハドソンインスティチュート シニアフェロー
冷戦後にアメリカが圧倒的な軍事的優位をもっていた時代は終わり、すでにわれわれは、ロシアと中国という二つのリビジョニスト国家と競い合う時代に足を踏み入れている。軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、新しい軍事能力の登場によって、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、ハイリスクの環境において人間がどのように行動するかに関するこれまでの理解が覆され、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。これらが重なり合うことで、厄介で不可避の結論に行き着く。現在の最大の戦略的課題は大国間抗争の時代への回帰でもなければ、先端兵器の拡散でもない。それは、抑止の形骸化に他ならない。
全面戦争の時代へ
―― 包括的紛争時代の多様な抑止力
2024年12月号 マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学教授
戦争は人間と知的マシンとが協力して、よりスピーディーに展開され、無人機(ドローン)などの自律型ツールに大きく依存するようになった。宇宙とサイバー空間がますます重要され、しかも、「紛争勢力が多様化」している。国、テロ組織、武装集団が入り乱れているだけでなく、ウクライナ国軍にはスペイン内戦以来と思われる規模の国際的義勇兵が参加している。世界が目撃しているのは、過去の理論家が「総力戦」と呼んだものに似ている。だが、新テクノロジーと経済のグローバル化ゆえに、現代の戦争はかつての総力戦の焼き直しではない。全面戦争の時代における抑止をより信頼できるものにするには、戦争の定義が変化し、さまざまな抑止が必要になっていることを理解しなければならない。


