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2024.10.11 Fri
国家安全保障というブラックホール
―― あらゆるものが国家安全保障に
何が国家安全保障問題で、なにがそうでないかについて、もっと慎重な議論をしなければ、ワシントンは、そのリソースを広範な問題に薄く分散させてしまう恐れがある。2025年1月に大統領として宣誓する人物が誰であれ、国家安全保障の原則を考慮して、その定義を適正なサイズに戻すべきだ。(ドレズナー)
前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。(ハンソン)
ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。(ハレル)
国家安全保障というブラックホール
―― あらゆるものが国家安全保障に
2024年10月号 ダニエル・W・ドレズナー タフツ大学 フレッチャースクール 教授
さまざまなアジェンダを国家安全保障問題に加えようとする圧力は大きい。だが脅威リストを拡大するだけでは、予期せぬ事態に備えることはできない。米同時多発テロ、コロナ禍はその具体例だ。何が国家安全保障問題で、なにがそうでないかについて、もっと慎重な議論をしなければ、ワシントンは、そのリソースを広範な問題に薄く分散させてしまう恐れがある。2025年1月に大統領として宣誓する人物が誰であれ、国家安全保障の原則を考慮して、その定義を適正なサイズに戻すべきだ。そうしない限り、政策立案者は、すべてに手を出して、すべてに失敗するパターンに陥る恐れがある。
アメリカの新貿易コンセンサス
―― ロバート・ライトハイザーの世界
2024年3月号 ゴードン・H・ハンソン ハーバード大学ケネディスクール 教授(都市政策)
前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。
米中地政学とグローバル経済
―― 同盟国との経済連携の強化を
2024年2月号 ピーター・E・ハレル 元米国家安全保障会議 シニアディレクター
ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。分野別の小型の貿易合意、同盟国とのサプライチェーン協定を結ぶ一方で、グローバルサウスを引き寄せる必要もある。世界貿易機関が地政学の時代にそぐわないことも認識しなければならない。ワシントンが経済的リーダーシップを維持し、同盟関係を強化し、破滅的な結果を回避できるかを、成功を判断する基準に据えるべきだろう。