2020.9.18.Fri

<9月号掲載論文より>
迫り来るパンデミック恐慌 、ワクチンナショナリズムを回避せよ、パンデミック後の日本

20世紀の大恐慌以降のいかなる時期にもまして、いまやコロナウイルスが「世界のより多くの地域をリセッション(景気後退)に陥れている」。当然、力強い経済回復は期待できず、世界経済が2020年初頭の状況へ回帰するには、かなりの時間がかかるはずだ。この危機は前回のグローバル金融危機と比べても、世界経済活動の崩壊の規模と範囲が大きいために、さらに深刻な金融危機になる。かつては大きな流れを作り出したグローバル化潮流が停止すれば、世界経済が大変調を起こすのは避けられない。1930年代と似たムードが漂い始めている。(ラインハート)

開発中の新型コロナウイルスのワクチン候補は160に達し、すでに治験に進んでいるものも21ある。開発国を含む富裕国は、早い段階でワクチンを入手しようとすでに競い合っている。各国の目的は、他の地域におけるCOVID19の感染拡大を抑えることではなく、自国市民を優先することにある。このような「ワクチンナショナリズム」は、広い範囲で深刻な帰結をもたらす。効果が確認された最初のワクチンが出現する日が近づいているだけに、グローバルレベルでの公平な分配をめぐる執行可能なシステムを準備する時間は少なくなってくる。(ボリキー、ボウン)

アメリカへの移民の流れは今後か細くなっていくかもしれないが、一方で、移民を受け入れ、多様性、ダイナミクス、新しい才能という移民がもたらす社会的恩恵を引き出す国も出てくるだろう。そして日本ほどこの流れから大きな恩恵を引き出せる国もない。社会的に安全で安定しているし、失業率も低く、より多くの労働者を必要としている。パンデミックが経済を破壊し、欧米の大学がかつてのようなアクセスも魅力も失うにつれて、移民や学生の目的地としての日本の魅力と優位はますます際だってくる。この流れが根付けば日本企業だけでなく、日本社会もいずれ世界の一部として統合されていくはずだ。(グラシア)

迫り来るパンデミック恐慌
―― 1930年代が再現されるのか

2020年9月号 カーマン・ラインハート  ハーバード大学 ケネディスクール教授(経済学) ビンセント・ラインハート  BNYメロン チーフエコノミスト

20世紀の大恐慌以降のいかなる時期にもまして、いまやコロナウイルスが「世界のより多くの地域をリセッション(景気後退)に陥れている」。当然、力強い経済回復は期待できず、世界経済が2020年初頭の状況へ回帰するには、かなりの時間がかかるはずだ。それどころか、企業が倒産し、不良債権が肥大化していくために、いずれ世界の多くの地域で金融危機が発生する。途上国のデフォルト(債務不履行)も増えていく。この危機は前回のグローバル金融危機と比べても、世界経済活動の崩壊の規模と範囲が大きいために、さらに深刻な金融危機になる。しかも、かつては大きな流れを作り出したグローバル化潮流が停止すれば、世界経済が大変調を起こすのは避けられない。1930年代と似たムードが漂い始めている。

ワクチンナショナリズムを回避せよ
―― パンデミックを終わらせる国際協調を

2020年9月号 トマス・J・ボリキー  米外交問題評議会 シニアフェロー(グローバルヘルス担当) チャド・P・ボウン  ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

開発中の新型コロナウイルスのワクチン候補は160に達し、すでに治験に進んでいるものも21ある。開発国を含む富裕国は、早い段階でワクチンを入手しようとすでに競い合っている。各国の目的は、他の地域でのCOVID19の感染拡大を抑えることではなく、自国市民へのワクチン供給を優先することにある。このような「ワクチンナショナリズム」は、広い範囲で深刻な帰結をもたらす。有効性が確認された最初のワクチンが出現する日が近づいているだけに、グローバルレベルでの公平な分配をめぐる執行可能なシステムを準備する時間はなくなりつつある。先ず短期的な国際合意をまとめる必要があるだろう。国内における重要な公衆衛生上の目的を達成するための目安、つまり、医療関係者などを含めて、ワクチンをどのような職種の人にどの程度接種すべきかについての信頼できる研究があれば、国内人口のすべてにワクチンで免疫をつけさせるという考えを政治家が先送りし、他国とワクチンを共有することに前向きになれるかもしれない。

パンデミック後の日本
―― 世界の労働者と留学生は日本を目指す

2020年9月号 ファーラー・グラシア  早稲田大学教授(社会学)

アメリカへの移民の流れは今後か細くなっていくかもしれないが、一方で、移民を受け入れ、多様性、ダイナミクス、新しい才能という移民がもたらす社会的恩恵を引き出す国も出てくるだろう。そして日本ほどこの流れから大きな恩恵を引き出せる国もない。社会的に安全で安定しているし、失業率も低く、より多くの労働者を必要としている。いまや欧米へのコスト高の留学に前向きでなくなった世界の学生を魅了できる優れた大学もある。パンデミックが経済を破壊し、欧米の大学がかつてのようなアクセスも魅力も失うにつれて、移民や学生の目的地としての日本の魅力と優位はますます際だってくる。この流れが根付けば日本企業だけでなく、日本社会もいずれ世界の一部として統合されていくはずだ。

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2020年9月号(2020年9月10日発売)

Contents

  • 迫り来るパンデミック恐慌
    ―― 1930年代が再現されるのか

    カーマン・ラインハート、 ビンセント・ラインハート

  • 資本主義後の社会経済システム?
    ―― ピケティ提言の問題点

    アルビンド・サブラマニアン

  • ワクチンナショナリズムを回避せよ
    ―― パンデミックを終わらせる国際協調を

    トマス・J・ボリキー、チャド・P・ボウン

  • パンデミックとポピュリズム
    ―― 政治対立と反知性主義とポピュリストの再台頭

    ナディア・ ウルビナティ

  • CFR Briefing
    ワクチンの夢とロシアの現実
    ―― なぜロシアはワクチン開発を急いだか

    ジュディ・トゥイッグ

  • 神の時代の終わり?
    ―― 世界における宗教の衰退

    ロナルド・F・イングルハート

  • ネイティブアメリカンの民族浄化
    ―― 「この土地はあなたのものではない」

    デービッド・トルーアー

  • パンデミック後の日本
    ―― 世界の労働者と留学生は日本を目指す

    ファーラー・グラシア

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