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2016.08.26 Fri

TPPは実現するのか
―― 次期大統領と米国の選択

ドナルド・トランプは、「愚かな」交渉人がまとめたひどい貿易合意のせいで、中国、日本、メキシコがアメリカを貿易面で追い込んでいると訴えている。ヒラリー・クリントンでさえ、反対派に歩調を合わせざるを得なくなり、いまやTPPに反対であると明言している。現実には、貿易はアメリカに大きな利益をもたらしており…アメリカは貿易上の問題には直面していない。問題は、かつて非熟練労働者が中間層の仲間入りを果たすことに道を開いた経済的なはしごが壊れてしまったことだ。(アーウィン)

世界貿易の停滞は「ピーク・グローバル化」や「ピーク・トレード」の結果ではないし、保護主義が新たに蔓延しているわけでもない。貿易の停滞は、金融危機後の経済のシクリカルなスローダウンから世界経済が立ち直れずにいることを意味するにすぎない。…世界の貿易制度の改革は依然として必要だ。この試みを怠れば、より危険な時代にわれわれは足を踏み入れることになる。問題を正面から捉えるために、われわれは貿易に関する危険な妄想を取り払う必要がある。(ダドゥッシュ)

ドナルド・トランプとバーニー・サンダースはアメリカ社会のムードとアメリカ人が何を望んでいるかについておおむね適切に理解している。現在のアメリカ人は、終わりのない外国での戦争にうんざりし、格差に苛立ち、ビジネス・政治エリートたちに不信感をもっている。貿易を敵視し、対外介入を嫌がっている。…いずれにせよ、2016年のアメリカの政治を特有なものにしているトレンドが、近い将来に終わることはなく、むしろ現状はその入り口であることを認識する必要がある。(フォンテーヌ、カプラン)



貿易叩きという歴史的な間違い
―― なぜ真実が見えなくなってしまったか

2016年9月号 ダグラス・アーウィン ダートマス大学経済学部教授

ドナルド・トランプは、「愚かな」交渉人がまとめたひどい貿易合意のせいで、中国、日本、メキシコがアメリカを貿易面で追い込んでいると訴えている。ヒラリー・クリントンでさえ、反対派に歩調を合わせざるを得なくなり、いまやTPPに反対であると明言している。現実には、貿易はアメリカに大きな利益をもたらしている。雇用喪失の85%以上はオートメーション化による生産性の向上が原因で、貿易が原因による雇用喪失は13%にすぎない。それでも、大統領候補たちは貿易を激しく批判し、それが歴史的な間違いであるにも関わらず、議会によるTPP批准まで危険にさらされている。現実にはアメリカは貿易上の問題には直面していない。問題は、かつて非熟練労働者が中間層の仲間入りを果たすことに道を開いた経済的なはしごが壊れてしまったことだ。

国際貿易に関する危険な妄想
―― 貿易と経済と所得格差

2016年3月 ウリ・ダドゥッシュ カーネギー国際平和財団シニアアソシエイト

世界貿易の停滞は「ピーク・グローバル化」や「ピーク・トレード」の結果ではないし、保護主義が新たに蔓延しているわけでもない。貿易の停滞は、金融危機後の経済のシクリカルなスローダウンから世界経済が立ち直れずにいることを意味するにすぎない。たしかに、中国の需要に依存してきた原材料輸出国の経済も停滞し、貿易の流れをさらに淀ませている。しかし、これでグローバル化の拡大が終わるわけではない。途上国の台頭もグロ―バル化も終わることはなく、それだけにWTOの役目が終わったわけでもない。貿易改革を支える政治的コンセンサスは形骸化しつつあるが、TPPのような自立的で広範囲をカバーする地域貿易協定を通じてであれ、あるいは多国間交渉の新しいアプローチを通じてであれ、世界の貿易制度の改革は依然として必要だ。この試みを怠れば、より危険な時代にわれわれは足を踏み入れることになる。問題を正面から捉えるために、われわれは貿易に関する危険な妄想を取り払う必要がある。

トランプ・サンダース効果と次期大統領
―― アメリカの貿易政策と外交はどう変化するか

2016年7月号 リチャード・フォンテーヌ/センターフォーアメリカンセキュリティ 会長、ロバート・D・カプラン/センターフォーアメリカンセキュリティ シニアフェロー

ドナルド・トランプとバーニー・サンダースはアメリカ社会のムードとアメリカ人が何を望んでいるかについておおむね適切に理解している。現在のアメリカ人は、終わりのない外国での戦争にうんざりし、格差に苛立ち、ビジネス・政治エリートたちに不信感をもっている。貿易を敵視し、対外介入を嫌がっている。したがって、次期大統領は貿易をめぐってはより強固な社会的セーフティネットを準備して、国際貿易批判に対する防波堤を築く必要がある。外交領域では、介入して泥沼に足をとられても、一方で行動を起こさなくても大きなコストを抱え込むことになる以上、相互に関連する慢性的な危機にうまく対処できる政策を形作らなければならない。いずれにせよ、2016年のアメリカの政治を特有なものにしているトレンドが、近い将来に終わることはなく、むしろ現状はその入り口であることを認識する必要がある。

9月号から

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本誌最新号紹介

2016年9月号(2016年9月10日発売)

Contents

  • 欧州のシルバー民主主義と年金危機
    ―― その弊害をいかに緩和するか

    エドアルド・カンパネッラ

  • 日韓の核開発をアメリカは容認すべきか
    ―― 核の傘から「フレンドリーな拡散」へ

    ダグ・バンドウ

  • 次期米大統領のための新国防戦略
    ―― 形骸化した軍事的優位を再確立するには

    マック・ソーンベリー、アンドリュー・F・クレピネビッチ

  • かつてなく危険な世界
    ―― デンプシー前米統合参謀本部議長との対話

    マーチン・デンプシー

  • 貿易叩きという歴史的な間違い
    ―― なぜ真実が見えなくなってしまったか

    ダグラス・アーウィン

  • アメリカのイラン・ジレンマ
    ―― 和解と対立の間

    リュエル・マーク・ゲレチェット、レイ・タキー

  • 追い込まれた中国にどう対応するか
    ―― 南シナ海の領有権問題

    ミラ・ラップ・ホッパー

  • テロ情報共有で変化する米欧関係
    ―― プライバシー保護とテロ対策の間

    ミシェル・フロノイ、アダム・クレイン

他全13本掲載

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