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2022.8.9 Tue

安倍ビジョンと東アジア安全保障
―― 中国、台湾、日本

多額の債務を抱え、人口減少によって長期的に不利な経済状況に直面するなかで、日本は今後防衛費を増額させていくことになるだろう。それでも、現状は安倍元首相が掲げたビジョンからはかけ離れているし、実際に彼のビジョンにたどり着けるかどうかも、わからない。現実には、市民も多くの政治家も、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な対策をとるのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。安倍は、安全保障議論を進めて国を導くことのできる知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった。(リンド)

中国にとっても、台湾統一を求める大きな動機はナショナリズムよりも、その軍事的価値にある。実際、北京が台湾を攻略して、そこに軍事インフラを設営し、フィリピン海への影響力を高めれば、中国の軍事的立場は大きく強化され、アジアの同盟国を防衛する米軍の能力は制限される。将来的に北京が静音型の攻撃型原子力潜水艦や弾道ミサイル潜水艦の艦隊を編成し、台湾の基地に配備すれば、北東アジアのシーレーンを脅かし、核戦力も強化できる。ワシントンの対中政策に関するすべてのジレンマが集約される場所であるだけに、台湾は世界でもっとも困難で危険な問題の一つだ。(グリーン、タルマッジ)

三つの核大国が競合すれば、二極体制の安定性を高めていた特質の多くが不安定化し、信頼性も低下する。中国がロシア同様に核大国の仲間入りすることをアメリカは阻止できないが、その帰結を緩和するためにできることはある。先ずアメリカは核抑止力を近代化しなければならない。同時に、核のパワーバランスに関する考え方を刷新し、はるかに複雑な戦略環境において抑止力を維持し、核の平和を維持する方法を新たに検証する必要がある。(クレピネビッチ)

安倍ビジョンと日本の安全保障
―― ナショナリズムと安全保障の間

2022年8月号 ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授

リベラル派は、安倍首相(当時)に日本の過去の暗黒部を直視して償うことを求め、保守派は、彼の国の誇りを重視する姿勢、軍事力増強と国際的安全保障活動への参加を強化しようする試みを称賛した。多額の債務を抱え、人口減少によって長期的に不利な経済状況に直面するなかで、日本は今後防衛費を増額させていくことになるだろう。それでも、現状は安倍元首相が掲げたビジョンからはかけ離れているし、実際に彼のビジョンにたどり着けるかどうかも、わからない。現実には、市民も多くの政治家も、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な対策をとるのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。安倍は、安全保障議論を進めて国を導くことのできる知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった。その死が日本にとって悲劇的な損失であることは誰もが認めている。・・・

米中にとっての台湾の軍事的価値
―― 台湾とフィリピン海そして同盟諸国

2022年8月号 ブレンダン・L・グリーン シンシナティ大学准教授(政治学) ケイトリン・タルマッジ ジョージタウン大学外交大学院 准教授(安全保障研究)

台湾は、日本、フィリピン、韓国を中国の威圧や攻撃から守る上で重要なフィリピン海へのゲートウェイとして、きわめて重要な軍事的価値をもっている。中国にとっても、台湾統一を求める大きな動機はナショナリズムよりも、その軍事的価値にある。実際、北京が台湾を攻略して、そこに軍事インフラを設営し、フィリピン海への影響力を高めれば、中国の軍事的立場は大きく強化され、アジアの同盟国を防衛する米軍の能力は制限される。将来的に北京が静音型の攻撃型原子力潜水艦や弾道ミサイル潜水艦の艦隊を編成し、台湾の基地に配備すれば、北東アジアのシーレーンを脅かし、核戦力も強化できる。ワシントンの対中政策に関するすべてのジレンマが集約される場所であるだけに、台湾は世界でもっとも困難で危険な問題の一つだ。だが困ったことに、そこにあるのは、災いをもたらしかねない悪い選択肢ばかりだ。

強大化する中国の核戦力
―― 変化するパワーバランスと抑止

2022年7月号 アンドリュー・F・クレピネビッチ ハドソン研究所 シニアフェロー

既存の2大核保有国と肩を並べることで、中国は核の三極体制という、きわめて不安定な核システムへのパラダイムシフトを起こしつつある。冷戦期とは違って、核軍拡競争のリスクが高まり、国家が危機に際して核兵器を利用するインセンティブも大きくなる。三つの核大国が競合すれば、二極体制の安定性を高めていた特質の多くが不安定化し、信頼性も低下する。中国がロシア同様に核大国の仲間入りすることをアメリカは阻止できないが、その帰結を緩和するためにできることはある。先ずアメリカは核抑止力を近代化しなければならない。同時に、核のパワーバランスに関する考え方を刷新し、はるかに複雑な戦略環境において抑止力を維持し、核の平和を維持する方法を新たに検証する必要がある。・・・

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2022年8月号(2022年8月10日発売)

Contents

  • 安倍ビジョンと日本の安全保障
    ナショナリズムと安全保障の間

    ジェニファー・リンド

  • 日独の自主路線と対米協調のバランス
    ポストアメリカの協調モデル

    マーク・レナード

  • 米中にとっての台湾の軍事的価値
    台湾とフィリピン海そして同盟諸国

    ブレンダン・L・グリーン、ケイトリン・タルマッジ

  • 問題を解決できる新国際システムを
    新システムの目的をどこに定めるか

    フィリップ・ゼリコー

  • ウクライナの再建を考える
    人口減、都市・経済インフラの破壊に対処する

    アナ・レイド

  • ウクライナとEU
    ヨーロッパへの第一歩

    マティアス・マタイス

  • 黒海と世界の食糧危機
    ロシアに対する軍事・外交オプションを

    マーク・カンシアン

  • 世界食糧危機をいかに緩和するか
    農業大国アメリカのポテンシャル

    カーライル・フォード・ランゲ、ロビン・S・ジョンソン

他全11本掲載

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