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2018.1.18 Thu

ドイツ政治の漂流
―― 既成政党に挽回のチャンスはあるのか

中道政党が長く統治を担ってきたドイツの政治構造に変化が生じている。ヨーロッパが、欧州の防衛、ユーロゾーンの改革、ブレグジットのような困難な問題へドイツがどのような対応を示すかを心待ちにしているタイミングにあるというのに、ヨーロッパ最大の経済国家として大陸の安定した中核を狙うべき国が地図のない海域で漂流している。(ウィルプ)

「ドイツのための選択肢」を例外とするあらゆるドイツの政党は、ペギーダを批判し、彼らの要求を検討することさえ拒絶している。だが今後、右派政党「ドイツのための選択肢」の支持が高まっていけば、ペギーダ運動が政治に影響を与えるようになる危険もある。(ホケノス)

中道右派と中道左派がともにより中道寄りの政策へと立場を見直したために、伝統的な右派勢力と左派勢力を党から離叛させ、いまやポピュリストがこれらの勢力を取り込んでいる。厄介なのは、ヨーロッパが直面する問題はEUの統合と協調を深化させることでしか解決できないにも関わらず、ヨーロッパの有権者たちがこれ以上ブリュッセルに主権を移譲するのを拒絶していることだ。(ブローニング)

ドイツ政治の漂流
―― 既成政党に挽回のチャンスはあるのか

2018年1月号 スーダ・デビッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ベルリンオフィス 副所長

中道政党が長く統治を担ってきたドイツの政治構造に変化が生じている。右派・ポピュリスト政党の「ドイツのための選択肢」は9月の選挙の結果、連邦議会で94議席を手に入れた。連立協議が崩壊した後、メルケルは社会民主党との大連立に向けた協議を模索しているが、解散総選挙というシナリオも依然として取り沙汰されている。ヨーロッパが、欧州の防衛、ユーロゾーンの改革、ブレグジットのような困難な問題へドイツがどのような対応を示すかを心待ちにしているタイミングにあるというのに、ヨーロッパ最大の経済国家として大陸の安定した中核を狙うべき国が地図のない海域で漂流している。

ドイツの極右運動ペギーダが動員するデモ隊は「重税、犯罪、治安問題という社会的病巣を作り出しているのはイスラム教徒やその他の外国人移民だ」と批判している。「ドイツはいまやイスラム教徒たちに乗っ取られつつある」と言う彼らは、「2035年までには、生粋のドイツ人よりもイスラム教徒の数の方が多くなる」と主張している。実際には、この主張は現実とはほど遠い。それでもドイツ人の57%が「イスラム教徒を脅威とみなしている」と答え、24%が「イスラム系移民を禁止すべきだ」と考えている。「ドイツのための選択肢」を例外とするあらゆるドイツの政党は、ペギーダを批判し、彼らの要求を検討することさえ拒絶している。だが今後、右派政党「ドイツのための選択肢」の支持が高まっていけば、ペギーダ運動が政治に影響を与えるようになる危険もある。

ヨーロッパにおけるポピュリズムの台頭
―― 主流派政党はなぜ力を失ったか

2016年7月号 マイケル・ブローニング/フリードリヒ・エーベルト財団 国際政策部長

ヨーロッパでなぜポピュリズムが台頭しているのか。既存政党が政策面で明らかに失敗していることに対する有権者の幻滅もあるし、「自分たちの立場が無視されていると感じていること」への反動もある。難民危機といまも続くユーロ危機がポピュリズムを台頭させる上で大きな役割を果たしたのも事実だ。いまやフィンランド、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スイスを含む、多くのヨーロッパ諸国で右派政党がすでに政権をとっている。「イギリス独立党」、フランスの「国民戦線」、「ドイツのための選択肢」など、まだ政権を手に入れていない右派政党もかなりの躍進を遂げている。中道右派と中道左派がともにより中道寄りの政策へと立場を見直したために、伝統的な右派勢力と左派勢力を党から離叛させ、いまやポピュリストがこれらの勢力を取り込んでいる。厄介なのは、ヨーロッパが直面する問題はEUの統合と協調を深化させることでしか解決できないにも関わらず、ヨーロッパの有権者たちがこれ以上ブリュッセルに主権を移譲するのを拒絶していることだ。・・・

2018年1月号

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2018年1月号(2018年1月10日発売)

Contents

  • 中国は北朝鮮を見限っている
    ―― 半島有事における米中協調を

    オリアナ・スカイラー・マストロ

  • 民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
    ―― モスクワの策略に立ち向かうには

    ジョセフ・R・バイデン、マイケル・カーペンター

  • 経済戦争時代と制裁
    ―― 抑止力としての経済制裁に目を向けよ

    エドワード・フィッシュマン

  • 消し去られた中国共産党の歴史
    ―― 共産党は歴史をいかに抹殺したか

    オービル・シェル

  • 金正恩とICBM
    ―― なぜ必要なのか、完成のタイミングはいつか

    ジェフリー・ルイス

  • 北朝鮮の核戦力の現状
    ―― ICBMによる核ミサイル能力は完成していない

    ジークフリード・S・ヘッカー

  • 人工知能と中国の軍事パワー
    ―― 戦場の「技術的特異点」とは

    エルサ・B・カニア

  • イエメン紛争の本質
    ―― サウジが軍事介入した本当の理由

    アシャー・オーカビー

他全12本掲載

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