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中東に関する論文

時代後れで危険な湾岸政策
―― アメリカの湾岸政策のリセットを

2021年4月号

クリス・マーフィー  米民主党上院議員(コネチカット州選出)

「ペルシャ湾岸地域を支配しようとする外部勢力によるいかなる試みも、アメリカの死活的に重要な利益に対する攻撃とみなす」。この演説がその後「カーター・ドクトリン」として知られるようになり、以来、アメリカの中東政策の基盤とされてきた。しかし、いまやサウジよりもメキシコからより多くの石油をアメリカが輸入していることからも明らかなように、状況は大きく変化している。バイデン大統領は、新しい現実を見据えて政策をリセットし、むしろ、多角的で安定した国民経済、民衆の声に耳を傾けるような政府をもつ平和な地域へ湾岸が向かっていくのを助けるべきだろう。

イラン政策をトランプから救うには
―― イランとの関係正常化を模索せよ

2020年12月号

トリタ・パーシ  クインシー研究所 上席副会長

トランプ政権は、後継大統領のイラン政策を枠にはめ、アメリカが離脱した核合意の運命を封印したいと考えている。トランプは最後の10週間を利用して、洪水のごとく、経済制裁を乱発してイランを締め上げ、新政権の課題を実現不可能な状況に陥れるつもりだ。だが、バイデンはかつてオバマが(イラン強硬策にアメリカを向かわせようとした)ネタニヤフイスラエル首相を出し抜いたように、トランプの裏をかいて、核合意を超えて両国の関係を大局的に捉えるべきだろう。例えば、イランとの直接的な外交関係をもてば、アメリカがこの地域の紛争を避け、問題があるとワシントンが考えるイランの政策により効果的に影響を与えられるようになる。・・・

変化する中東地政学に即した政策を
―― より多くをより少ない資源で実現するには

2020年12月号

マーラ・カーリン  ジョンズ・ホプキンス大学  戦略研究ディレクター タマラ・コフマン・ウィッテス  ブルッキングス研究所中東政策センター シニアフェロー

パンデミックとその後の原油価格暴落という双子の危機によって、サウジを含む湾岸アラブ諸国は富の大幅な減少に直面し、内外でのプロジェクトをこれまでのように進められなくなっている。中国やロシアの影響力もそれほど大きくなっていない。ロシアの中東関与は依然として手探りだし、中国は経済関係の促進に熱心だとしても、地域紛争に関わって手を汚すつもりはない。要するに、アメリカは依然として大きなコストや長期的なコミットメントをしなくても、より安定した中東を形作る機会を手にしている。地域内の地政学的競争を抑え、イランの行動により効果的に立ち向かい、可能な限り(イランとサウジの)代理紛争を解決することに努力すれば、ワシントンは中東における支配的優位を失うことなく、関与を控えることができるだろう。

サウジアラビアとMBSの野望の終わり?
―― 壊滅的事態を避けるには

2020年9月号

F・グレゴリー・ゴースIII  テキサスA&M大学教授

パンデミックと原油価格崩壊という難局のなか、サウジの財政赤字は急増し、企業も迷走を続けている。ハッジ(メッカ巡礼)の規模も大幅に制限され、王国の士気は低下している。原油価格が1バレル当たり約40ドルに戻っても、サウジは財政バランスを取るために必要な歳入の半分しか得ていない。どうみても、コストのかかるイエメンへの軍事介入、ビジョン2030の壮大なプロジェクトを見直すべきタイミングだろう。しかもトランプ政権とサウジ王室との関係はアメリカ国内で激しく批判されている。ムハンマド皇太子にとって、トランプファミリーとの関係はプラスに作用したかもしれないが、2021年に誕生するかもしれない民主党政権への対応も考えておく必要があるだろう。

石油の崩壊
―― パンデミックと価格戦争が招いた悪夢

2020年5月号

ダニエル・ヤーギン IHSマークイット副会長

パンデミックで世界経済のかなりの部分が停止状態に追い込まれている。石油(価格と需要の)危機は当面悪化し続け、その余波は石油産業を大きく超えた領域にも波及するだろう。需要減で原油価格が下がり、しかも各国の戦略備蓄が満杯になれば、世界の石油生産量はさらに激減する。備蓄と市場が飽和状態になれば、1バレル当たりの価格はゼロになる。これは、新型コロナがさまざまな国の経済を混乱に陥れた結果でもあるし、一部の国がとった地政学的決断の結果でもあるかもしれない。多くの産業と同じように、石油市場を極端に悪化させているのは、新型コロナのパンデミックだが、石油の場合、その悪化には地政学的な要素も作用している。サウジとロシアの協調で市場の安定を維持しようとしたOPECプラス崩壊のインパクトはかなり大きい。

米軍の選択的撤退を
―― 現状維持と全面撤退の間

2020年4月号

トーマス・ライト ブルッキングス研究所 米欧センター所長

グローバルな関与からの撤退を求める立場が大きな流れを作り出しつつある。だが、それを追い求めるのは重大な過ちだ。必要なのは、外国でのコミットメントを「慎重に刈り込むこと」であって、数十年にわたってうまく機能してきた戦略を無条件に破棄することではない。現状維持でもない。アメリカの中東戦略に苛立つのは理解できる。しかし中東を理由に世界からの全面的撤退を模索するのは、ヨーロッパとアジアに関与することからアメリカが確保している恩恵を無視することになる。これらの地域には明確な目的と強力なパートナー、そして共有する利益が存在する。本当に重要な関与とそうではない関与を見分ける必要がある。

米金融帝国の黄昏
―― 金融制裁で損なわれるパワー

2020年3月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学  教授(政治学、国際関係論) アブラハム・ニューマン ジョージタウン大学  教授(政治学)

トランプ政権は、バグダッドが米軍のイラクからの撤退を強要するようなら、(世界が)みたこともない「対イラン制裁さえ控えめに思えるような、激しい制裁を(イラクに)発動する」と威嚇し、米連邦準備制度のイラク中央銀行の口座凍結さえ示唆した。ワシントンは、金融関係を帝国のためのツールに変えることで、アメリカは古代アテナイのやり方を踏襲しつつある。だが、アテナイがその後どのような運命をたどったかを理解すれば、ワシントンが、今後を楽観できるはずはない。同盟勢力を思いのままにするために金融力を用いたアテナイは、結局は、自らの破滅の時期を早めてしまった。

さらなる中東紛争を回避するには
―― 安定化には何が必要か

2020年2月号

ケリー・マグサメン アメリカ進歩センター 副会長(国家安全保障、国際政策担当)

「不必要な戦争」にこだわると大統領としての歴史的評価にどのような影響がでるか、トランプはジョージ・W・ブッシュに話を聞くべきだろうし、泥沼からいかに足を抜くかについては、オバマに電話をすべきだろう。イランにさらにペナルティを課すことを求める有志連合は存在せず、最大限の圧力も望ましい結果につながっていない。しかも、(思うままに行動してきた)トランプは国際コミュニティの潤沢な善意をうまく利用できるような立場にはない。多くの諸国は、トランプ政権のイラン政策を、イラン核合意からの離脱以降の一連のプロセスに派生する「身からでたさび」とみなしている。

気候変動対策か石油資源開発か
―― なぜ新資源の開発が停滞しているか

2020年2月号

エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ 米外交問題評議会シニアフェロー (エネルギー、環境問題担当)

多くの国がついに化石燃料への依存を減らそうと試み始めたタイミングで、石油や天然ガス資源の発見が相次いでいる。だが、途上国における化石燃料資源の発見が、これまでのように打ち出の小槌になることはもうないのかもしれない。うまくいっても、これが最後のチャンスかもしれない。闇雲に開発に向かうのではなく、「気候変動対策と途上国の経済開発のバランスをどうとるか」という側面に配慮しなければならないからだ。実際、気候変動重視派は、例えば、古くからの豊かな産油国であるノルウェーに対して、石油資源をもつ貧困国に市場を譲るために、国内の石油産業を閉鎖することを求めている。資源国にとって、石油と天然ガス輸出からの歳入に国家予算の多くを依存することのリスクと意味合いは大きく変化している。

ヒズボラが対米報復策を主導する?
―― ソレイマニ殺害とレバノン

2020年2月号 

ブライアン・カッツ 戦略国際問題研究所  フェロー(国際安全保障プログラム)

イラクの米軍基地に対するミサイル攻撃は、ソレイマニ殺害に対してテヘランが最初に示したシンボリックかつ公然たる報復攻撃だったが、今後、数カ月、数年にわたって報復は続くだろうし、そこで大きな役割を果たすのはレバノンのヒズボラになるはずだ。アメリカとの直接対決を回避しつつ、コッズ部隊とそのパートナーであるヒズボラは、中東における、あるいは中東を越えた地域での米軍を対象とする非対称攻撃の連携を試みるかもしれない。その目的は、「アメリカが中東でプレゼンスをもつことのコストは恩恵を上回る」と感じるほどに、その活動を混乱させ、脅かし、制限することに据えられるはずだ。

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