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中東に関する論文

石油をめぐるロシア対サウジの最終決戦
――エネルギー安保の分水嶺

2002年3月号

エドワード・L・モース  前米国務副次官補(国際エネルギー担当)、ジェームズ・リチャード ファイヤーバード・マネジメント社ポートフォリオマネジャー

ロシアの石油企業によるロシア、中央アジア地域での開発が実現すれば、今後4年のうちに旧ソビエト諸国からの石油輸出の合計は、サウジアラビアの輸出にほぼ匹敵するものになる。九月十一日が、ロシア、アメリカ、石油輸出国機構(OPEC)にとって、全く新たな地政学状況を作りだしていることを、ロシアは、政治・経済的に立ち直る好機と捉えている。問題は、サウジアラビアが、ロシアの攻勢を阻止できるほどの、徹底した価格戦争を戦う余力があるかどうかだ。

新世紀の戦略的機会を生かすには

2002年4月号

ジョセフ・R・バイデン 米上院外交委員長

対テロ作戦をめぐっては、各国の国内法による取り締まりから情報活動の共有にいたるまで、われわれは同盟国、友好国の国際的協力を必要としており、孤立も単独行動主義もアメリカの選択肢とはなり得ない。単独行動主義を経て、やっと開かれた国際協調とアメリカのリーダーシップというドアをアメリカ政府が突然閉ざしたり、何度も開けたり閉めたりすれば、今後数十年にわたって秩序を規定するであろう力学をうまく形作れなくなってしまう。現在の機会を秩序の長期的安定へと向かわせるには、国際協調を基盤とする世界へのエンゲージメントを堅持しなくてならない。

以下は、二〇〇二年二月四日にワシントンで開かれた、米外交問題評議会主催のミーティング・プログラムでのジョセフ・バイデン米上院外交委員長の演説からの要約・抜粋。

中東諸国の政治・経済改革の断行を求めよ

2002年4月号

マーティン・インディク 前駐イスラエル米大使

ワシントンはこれまで、社会変革によるカオスか、状況を放置したままでの腐敗の継続かという二者択一のなか、中東の腐敗した政権を支援することを選択してきた。だが、腐敗したサウジアラビア、エジプトの政権を支援した結果、アルカイダを誕生させるような社会土壌を育んでしまった。もはや同じ過ちを繰り返してはならない。ワシントンは新たな取り決めの一部として、中東諸国での政治・経済改革を強く求めていくべきである。

イスラム主義と民主主義は両立する
――中東社会の自由化こそ最善の対テロ政策

2002年4月号

グラハム・E・フラー 元CIA・国家情報会議副議長

抑圧的指導者を交代させることもできず、反政府的意見を表明すれば弾圧される。社会問題の対応は放置されたままとなり、民衆の怒りは行き場を失う。これこそ、アメリカが維持しようとしている中東の「安定」の真の姿だ。必要なのは、人々を対米テロの支持へと向かわせる社会の閉塞状況を終わらせるイスラム社会の自由化・開放である。
対テロ作戦が、反米主義とテロを台頭させた中東の劣悪な社会環境をますます悪化させるようであれば、アメリカと中東にとって壊滅的な事態となる。

悪の枢軸と国際協調の行方

2002年3月号

アル・ゴア 前米国副大統領

ブッシュ政権は時にこれを逆さにして、「そうせざるを得ない時は他国とともに、可能であれば単独で」事を運んでいる。世界には「貧困と無知、疾病と環境破壊、腐敗と圧政」という「もう一つの悪の枢軸」が存在する。われわれが現在直面しているのは、膨大な規模の民衆が感じている幾重もの悲しみからほとばしる怒りの表れなのだ。重要なのは、アメリカがテロリストに対して毅然たる態度をとるだけでなく、経済的機会と民主的自由を支持しなければならない、ということだ。

パレスチナの混迷と内部対立
―和平プロセス再開の条件を探る―

2002年3月号

ハリル・シュカーキ ビルザイト大学政治学助教授

和平プロセスが破綻し、民衆が自治政府の統治能力をほぼ見限ったために、自治政府の正統性は大きく損なわれ、民族主義運動の新世代派が大きく台頭しつつある。アラファト議長は、この新世代派を懐柔しようと、彼らがイスラム主義勢力と共同歩調をとることだけでなく、イスラエル軍との過激な対立路線をとることも容認した。西岸とガザ地区からイスラエル軍を撤退させ、PLO主流派の力を弱め、主流派に取って代わることを夢見るこの新世代派の台頭こそ、第2次インティファーダの本当の理由なのだ。

対イラク侵攻というアメリカのジレンマ

2002年3月号

ケニース・M・ポラック/米外交問題評議会・国家安全保障問題担当シニア・フェロー

イラクに対する制裁や抑止策では、もはやサダムが核兵器を獲得するのを阻止できない。ほかのすべての選択肢が大きな問題を伴う以上、最後の手段であるイラクへの軍事侵攻を、対テロ作戦との兼ね合いに配慮しつつ、タイミングをみて実施せざるを得ない状態にある。アメリカが現在対処すべきジレンマは、拙速なイラクへの侵攻は対テロ戦争の成果を台なしにするかもしれないが、侵攻を先延ばしにすればするほど、作戦の遂行は困難になり、サダムが核武装するリスクを高めてしまうことだ。問題は、イラクに侵攻するかどうかではなく、どのようなタイミングでサダム・フセイン政権を打倒するかにある。

サダム追放策の全貌を検証する
―― 国際協調と単独主義の間

2002年3月号

スピーカー
レオン・ファース/クリントン政権・国家安全保障問題担当補佐官
リチャード・パール/レーガン政権・国防次官補

戦略的に好都合だからという理由でサダム追放策に焦点を合わせれば、すでに開始している対テロ作戦の実行に必要な国際的支援を失いかねない。テロ・ネットワークは、サダム同様に、アメリカに対して生物兵器を使用する能力を持っていることを忘れてはならない。(ファース)
テロリストに聖域を提供するテロ支援国がなくなって初めて、われわれはテロ・ネットワークを打倒できる。われわれは開放的な社会で暮らしており、個々のテロ集団に対処するだけでは、アメリカの安全を守ることはできない。(パール)

サダム・フセイン政権存続の謎

2002年3月号

オフラ・ベンジオ/テルアビブ大学中東研究所上席研究員

サダム・フセインが権力を維持しているのは、その無慈悲なキャラクターと、反対勢力の失策のためであり、さらにはバース党、治安機構、軍部、取り巻きの派閥というイラクにおける権力の支柱のすべてをきわめてうまく管理しているからだ。彼の2人の息子たちへの権力継承も視野に入りつつあるが、2人は父親同様に残忍な人物で、政権交代は地域的な安全の高まりを意味しない。軍の指導層が民間の啓蒙グループや亡命者集団と手を組めば状況は大きく進歩するのであり、このためにも欧米は、サダムを封じ込めつつもイラク民衆の窮状をやわらげる措置をとるべきである。

軍事作戦後の対立を回避せよ

2002年2月号

マイケル・ハワード オックスフォード大学歴史学教授

「テロリストは英雄ではなく犯罪者である」とみなす前提が中東世界で受け入れられていない状態で、民間人に犠牲が出ることが避けられない対テロ軍事作戦を続けるのは、敵に勝利を与えるに等しい。テロに対する闘いを成功へと導くには、軍事作戦を早く終え、欧米にとって未知なるイスラム世界において「人心を勝ち取る闘い」を展開する必要がある。そして、この闘いの最前線はアフガニスタンではなく、近代化志向の政府が伝統主義者の反動によって脅かされている中東のイスラム諸国である。

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