1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

中東に関する論文

追い込まれたエルドアン
―― トルコへの毅然たる新アプローチを

2023年11月号

ヘンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

「強い反応を示せば彼の挑発に乗ることにならないか」。ワシントンはこれまでエルドアンの挑発にどう対応するかに苦慮してきた。だが、ますます支離滅裂な即興路線をとり、トルコ経済の運営を見誤ったことで、ついに彼も追い詰められている。ほぼ間違いなく、トルコ経済は、国際通貨基金(IMF)の支援を求めざるを得なくなるし、大惨事を回避するには、アメリカから援助を求めざるを得なくなる。一貫して毅然と行動することで、アメリカはトルコとの新たな関係を築くことができる。イタリアやポルトガルとの関係に近い、正常な関係をトルコとの間で構築しなければならない。そのチャンスをつかむ必要がある。

イスラエルがガザに侵攻すれば
―― ヒズボラ、西岸、イラン(10/9)

2023年11月号

ブルース・ホフマン 米外交問題評議会シニアフェロー(テロ、テロ対策担当)

ヒズボラとハマスとの長年のつながり、そしてヒズボラとハマスをともに支えるイランがこれらのテロ集団を存続させることに大きな関心をもっていることを考えると、イスラエルがガザへの地上戦を開始した場合、ヒズボラは基本的に自らの意思だとしても、完全にイランの意向に同調して、イスラエルとの戦争に参戦する可能性が高い。この場合、その帰結は非常に大きなものになる。さらに、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ武装勢力はいつ行動を起こしてもおかしくなく、イスラエルが大規模な地上攻撃を試み、ガザを再占領すれば、そのリスクは一気に高まるだろう。この場合、別の疑問が生じる。三正面戦争に直面した場合、イスラエルは、テヘランがその手下に攻撃を控えるように求めることを期待して、イランをターゲットにして圧力を高める行動をとるだろうか。

ハマスのイスラエル攻撃
―― イランの関与レベルは(10/8)

2023年11月号

レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

サウジ・イスラエルの関係正常化が実現すれば、湾岸地域が対イランでまとまる危険があり、テヘランはそのような合意を阻止しようと躍起になっていた。イスラエルとイランの水面下での戦争はしばらく前から展開されてきた。革命防衛隊コッズ部隊のトップ、エスマイル・カアニ将軍が、ハマスの代表を含む過激派と会合を開き、イスラエルへの攻撃を調整するように促したとも報じられている。イスラエルも、イランの高官や科学者、シリアで活動するイラン系民兵組織を攻撃のターゲットにしてきた。一方で、(イランが支援する)ヒズボラの活動、レバノンに紛争が飛び火するかが、ワイルドカードとみなされている。・・・

中東の外交戦略と中国
―― 中東諸国の真意は何か

2023年9月号

ジェニファー・カヴァナ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(アメリカ外交)
フレデリック・ウェフリー カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(中東)

アラブ諸国が北京を受け入れたのは、アメリカの軍事プレゼンスが低下したからではない。むしろ、インフラや技術など、ワシントンが支援する能力や意欲が低いと思われる分野で中国を取り込みたいと考えたからだ。当然、ワシントンは中国の影響力拡大に対抗する親米ブロックの形成を中東で目指すべきではない。むしろ、人的資本の向上、教育、グリーン・テクノロジー、デジタル・プラットフォームなど、比較優位をもつ分野への政策ツールと投資をワシントンは拡大していくべきだ。傍流に追いやられないようにするには、アメリカは大国(中国)の介入ではなく、現地の社会経済問題と統治問題が、今後10年間における最大の脅威となる危険が高いことを認識しなければならない。

中露、イランの政治的強さの秘密
――革命が授ける独裁体制のレジリアンス

2023年9月号

ルーカン・アフマド・ウェイ トロント大学教授(政治学)

10年以上にわたって「悪漢たち」が勝利した時代を経て、世界はいまや独裁体制に背を向けつつあるようだ。ロシア、中国、イランという世界の3大悪党は、その権威に対する前例のない脅威に直面している。とはいえ、その脅威は、多くの人が期待するほど大きくはない。中国、イラン、ロシアは、革命を経験していることに深く根ざすレジリエンスをもっているからだ。実際、革命というルーツが、これら三つの体制が景気低迷や失政、支持率の急落を乗り切り、今後も長年にわたって強さを維持していく支えを提供している。これに対抗する効果的な戦略を考案するには、その本質と、ユニークなレジリエンスのルーツを理解する必要がある。

ワグネルの反乱とロシアの権力抗争

2023年8月号

トーマス・グラハム 米外交問題評議会 特別フェロー(ロシア、ユーラシア担当)

反乱(rebellion)の余波のなかで、体制内で権力の再編が進むかもしれない。(プリゴジンによる)反乱の芽を摘めなかった責任を誰かが取らなければならない。政府内部では、エリート派閥が自分たちを守ってライバルを陥れようと、責任のなすりあいが起きるだろう。今後数週間で、モスクワにおける勝者と敗者が明らかになるだろう。(今回の事件が)ロシア上層部の注意を戦争からそらすことは避けられないだろう。この反乱がどのように決着するにせよ、モスクワは今後同様の脅威が出現しないように、より多くの資源を投入しなければならなくなるはずだ。危機感を高めたモスクワが国内治安強化のために要員と資源を振り分けられるように、キーウはロシア国内の標的への攻撃(陽動作戦)を試みるかもしれない。

アメリカは中東をいかに失ったか
―― 米中東戦略の妄想

2023年6月号

リサ・アンダーソン コロンビア大学 名誉教授(国際関係)

ワシントンの中東戦略は「妄想」に過ぎなかった。それは、高潔な意図を抱いた政治家たちが、実際には知識も関心もほとんどない地域に「壮大なアイデアを押し付ける」ことで作り上げられてきた。ワシントンは長年、促進すべき何かではなく、「阻止すべき何か」で、中東をネガティブに定義してきた。現在のアメリカは中東で何を促進したいのか。ワシントンが中東におけるアメリカの国益を定義しない限り、間違ったエンゲージメント政策をとり、再び、何かを阻止することに終始するだけだろう。中国の最近の外交的勝利が示唆するように、そのような阻止戦略で失敗するケースは今後ますます増えていくだろう。

中東秩序の分水嶺
―― イラン・サウジ合意と米中競争

2023年5月号

マリア・ファンタッピー 在ローマ 国際関係研究所(IAI)
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 教授

サウジは、イランとの関係正常化交渉に中国を関与させるのが、合意を永続化させるための間違いのない保証になると考えた。イランも、習近平は信頼できる仲介者の役割を果たすことができると考えた。一方、「アラブ・イスラエル同盟がイランを封じ込める」という構図を期待してきたワシントンの立場は非現実的になった。リヤドはアメリカだけでなく、ロシアや中国とも緊密で独立した関係をもつことを望んでいる。エジプト、イラン、イスラエル、トルコとのバランスをとりながら、サウジの安全を守り、地域に影響力を行使する、重要な役割を担っていると自負している。

中国と中東
―― 中東における米中の役割

2023年5月号

トリタ・パルシ クインシー研究所上席副会長
ハリド・アルジャブリ 亡命サウジ人心臓専門医

2023年3月のイラン・サウジ国交正常化合意は、中東全域に前向きな衝撃を与えるだろう。中東での外交的仲介をめぐって、今回、中国が主導的役割を果たしたことは注目に値する。ワシントンの戦略的間違いが、イランとサウジの双方に信頼される数少ない大国の一つとして中国の台頭を促した。カーター・ドクトリンを封印したトランプがサウジをイランとの外交に向かわせ、バイデンの人権外交が、中東における仲介役としての中国の台頭に道を開いた。中国の安定性は、イラン、イスラエル、サウジと良好な関係を維持し、この三国間の争いに完全に中立を保っていることによって生まれている。・・・

トルコ地震とエルドアンの政治的命運
―― エルドアン政治の終わり?

2023年4月号

ソネル・カガプタイ ワシントン・インスティチュート  トルコ研究プログラム ディレクター

1999年のトルコ大地震では、民衆と家父長的国家間の「社会契約の限界」が露わになった。地震とそれに続く経済危機が社会不満を高め、オスマン帝国の残骸のなかで国を再建してきた「世俗的でしばしば非自由主義的なケマル主義者の政治体制」の崩壊が進んだ。その瓦礫のなかから、エルドアンと彼のイスラム主義政党が権力を握り、トルコを変貌させていった。だがいまや、エルドアンはかつてとは逆の立場に立たされている。今回の大地震は、約25年前の地震と同じように、石灰化した政治秩序を崩壊させるかもしれない。

Page Top