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ヨーロッパに関する論文

アジアの世紀の到来と 欧米秩序の運命
――秩序の進化を阻む欧米のダブルスタンダード

2008年6月号

キショール・マブバニ  国立シンガポール大学公共政策大学院長

自分たちが主導する時代が終わりつつあること、そして、アジアの時代が到来しつつあることを欧米の指導者はなかなか受け入れられずにいる。国連安保理、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、主要8カ国(G8)などの主要なグローバルフォーラムにおける特権的な立場にしがみつき、いかに自分たちがアジアの世紀に対応していくべきなのかを考えようとはしない。アジアの目標はアメリカとヨーロッパが成し遂げた成果に続くことだ。欧米の成功を自分たちが再現したいと望みこそすれ、アジアは欧米を支配したいとは望んでいない。アジア諸国が地域レベル、グローバルレベルの課題への対応能力を強めつつあることを欧米世界は歓迎し、受け入れるべきだろう。

CFRインタビュー
ヨーロッパはイラクからの
米軍撤退など望んでいない

2008年5月号

ジョセフ・ジョフィ 独ツァイト紙編集・発行人

アメリカにとって、冷戦期における最大の戦略的重要性を持つ地域はヨーロッパだったが、いまや、それは大中東地域だ。世界のナンバーワン国家が怖じ気づいて、中東から逃げ出すとなれば、スーパーパワーとしての役割を放棄することになる。
 米民主党候補が公約しているように、イラクからの撤退を強行すれば、「非常に大きな戦略的帰結に直面することになる」と指摘するジョセフ・ジョフィは、「アメリカが中東から撤退することを望んでいるヨーロッパの指導者はいないと思う」と指摘し、「私はオバマがナイーブで理想主義的なジミー・カーターのような人物でないことを望む」とコメントした。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

CFRインタビュー
ロシアは欧米との関係改善を模索する

2008年4月号

アンドレイ・A・ピオントコフスキー (モスクワ)戦略研究センター所長

「メドベージェフとプーチンが対立していくかどうかはともかく、いずれ、メドベージェフとプーチンに仕える官僚たちが対立しだすのは避けられない」
 「二つのパワーセンターを抱え、ロシアはかつて経験したことのない海域へと入りつつある」と指摘するモスクワの戦略研究センター所長、アンドレイ・ピオントコフスキーは、一方で、欧米との関係は改善していくだろうと今後を予測する。そう考えるのは、メドベージェフが権力者になったからではなく、政治的必要性としての欧米との敵対路線、戦略的必要性としての欧米との協調路線が作り出すサイクルのなかで、対立局面が終わりつつあるからだと同氏は語った。
  聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティニグ・エディター)。

なぜ民族は国家を欲しがるか
――歴史を規定しつづけるエスノナショナリズムの力

2008年4月号

ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授

「(いまや世界各国で)都市化が進み、識字率が上昇し、政治的に民族集団を動員することも容易になっている。こうした環境下で、民族集団間に出生率や経済成長の格差が存在し、これに新たな移民の流れが加われば、今後も、国の構造や国境線がエスノナショナリズムによって揺るがされることになる。……エスノナショナリズムは、近代国家の形成プロセスが表へと引きずり出す人間の感情と精神にかかわる本質であり、連帯と敵意の源である。形は変わるとしても、今後長い世代にわたってエスノナショナリズムがなくなることはあり得ないし、これに直接的に向き合わない限り、秩序の安定を導き出すことはできない」

コペンハーゲン・コンセンサス
――デンマークでアダム・スミスを読む

2008年4月号

ロバート・カットナー
アメリカン・プロスペクト誌共同編集長

現在のデンマークモデルの中核は、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と雇用保障(ジョブ・セキュリティー)のバランスをうまく組み合わせた「フレキシキュリティー」という概念、つまり、労働市場の柔軟性と雇用保障を両立させていることにある。労使協調路線がとられ、極端に高い課税率も結局は、社会サービスとして市民に還元されている。世界でもっとも平等で社会格差が小さく、それでもきわめてリバタリアンな思想を持つこの国は、どのようにして平等と効率、社会的正義と自由貿易を両立させているのか。グローバル化がつくりだす問題に対処するために、資本主義国がデンマークモデルを取り入れる余地はあるのか。

CFRディベート
変化するグローバルパワーの
ダイナミクスにどう対応するのか
 ――米欧中のG3か、それとも「鍵を握る5カ国」との協調か

2008年4月号

ニーナ・L・ハチジャン  センター・フォー・アメリカン・プログレス上席副会長
パラグ・カーンナ  ニューアメリカ財団シニア・リサーチフェロー

安定した秩序を求める中国、インド、ロシア、EU(欧州連合)、日本は、われわれ同様に、テロリスト、地球温暖化、疾病・感染症、核拡散という脅威に対処していかなければならないと考えている。各国が力を合わせない限り、こうしたグローバル化がつくりだした負の側面に対処していくことはできない。(N・ハチジャン)

 対テロ作戦、紛争後の安定化、地球温暖化、開発政策、核拡散、問題国家などのトランスナショナルな対応を要する政策領域については、アメリカ、EU、中国が、G3の協議プロセスを立ち上げ、共有できるルールと規範をともに形作っていくことを提言したい。(P・カーンナ)

CFRインタビュー
コソボの独立宣言は紛争を誘発しかねない

2007年12月号

リチャード・C・ホルブルック 元米国連大使

コソボ自治政府は2008年早々にもセルビアからの独立を宣言し、これによって一気に情勢が流動化するとみる専門家は多い。ボスニア紛争を終結させたデイトン合意をとりまとめた人物として知られるリチャード・ホルブルックは、コソボが独立を宣言しても、「コソボ内のセルビア人地区は、独立したコソボの一部にはならないと宣言するだろうし、その結果、もう一つの分離独立メカニズムが生まれることになる」と警告する。さらに、これまで抑圧されてきたアルバニア人がコソボ内のセルビア人に報復策をとれば、セルビアがコソボに軍隊を派遣する危険もある。「1992年にボスニアが独立を宣言した際も、ボスニア内のセルビア人地域は独立を受け入れることを拒絶し、これによって、非常に凄惨なボスニア紛争が起き、多くの命が奪われた。これと同じことが、今回、コソボの独立をめぐって繰り返される危険がある」と指摘するホルブルックは、こうした事態を回避するには、現在コソボに展開している国際治安部隊(KFOR)を増強して、駐留を継続させる必要があると強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
サマーズ、ボルカーが語る 世界共通通貨の可能性

2007年8月号

スピーカー
ローレンス・H・サマーズ 元米財務長官
ポール・A・ボルカー 元連邦準備制度理事会議長
司会
ジェームス・D・グラント グラント金利オブザーバー誌編集者兼オーナー

まだまだ世界単一通貨の実現にはほど遠いというのが現実だが、この方向に向けた流れのなかで金融秩序は安定的に機能している。現在のようにドルが広く使われることは、金本位制だった当時は想像もできなかった。何かあれば、太陽(ドル)を離れて、月(金)に逃げ込むことができた。これがドルの限界だった。だが、金本位制からの離脱によってその限界はなくなった。ドルに対する信認さえあれば、世界が基軸通貨を持つことには大きな優位がある。(ポール・ボルカー)

私はドルの独占的な地位が永久に続くとは思っていないし、この点ではポールよりも悲観的な見方をしている。ユーロに関する限られた経験しかないとはいえ、多様な経済が、固定為替レートの共通通貨を持つことには問題があることをわれわれは知っている。世界中の国々のことを考えると、国家間の相違は(欧州連合〈EU〉内の)アイルランドとイタリアよりもはるかに大きい。(ローレンス・サマーズ)

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