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ヨーロッパに関する論文

ロシアとウクライナの紛争リスク
―― キエフの親欧米路線とロシアの立場

2022年1月号

マイケル・キメージ  アメリカ・カトリック大学 歴史学教授 マイケル・コフマン  新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

かつてはロシアとの対話に前向きな姿勢を示していたウクライナのゼレンスキー大統領も、いまや対ロ妥協路線を放棄し、欧米との協調を模索している。ウクライナとの国境線に部隊を動員しているモスクワはもはや外交の機会は失われたとみているのかもしれない。しかも、ワシントンが中国との競争に関心と資源をシフトさせているために、プーチンは「ウクライナはアメリカにとって周辺的な関心事にすぎない」と確信しているかもしれない。これまでウクライナのNATO加盟をレッドラインとみなしてきたロシアは、いまや欧米とウクライナの防衛協力の強化を看過できないとみなし始めている。モスクワが武力によって現在の均衡をリセットする環境が整いつつある。

地政学パワーとしてのビッグテック
―― 米中対立と世界秩序を左右するプレイヤー

2021年12月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ社長

ほぼ400年にわたって国家は国際政治の主要なアクターとして活動してきたが、それも変化し始めている。いまやビッグテックは政府に匹敵する地政学的影響力をもち始めている。ビッグテックの地政学的な姿勢や世界観を規定しているのはグローバリズム(アップル、グーグル、フェイスブック)、ナショナリズム(マイクロソフト、Amazon)、テクノユートピアニズム(テスラ)という三つの大きな思想・立場で、国家の立場ではない。国家的な優先事項を追求するために、大国の政治家が巨大テクノロジー企業をたんなる地政学的なチェスの駒として自由に動かせる時代は終わりつつある。テクノロジー企業は名実ともに独立した地政学アクターになり、米中対立だけでなく、今後の秩序を左右する大きな影響力をもち始めている。

アフガン撤退後の米欧同盟
――アメリカのコミットメントは信頼できるか 

2021年10月号

ロビン・ニブレット  英王立国際問題研究所 ディレクター

バイデン大統領は当初から、大多数の米有権者の利益に合致する「中間層のための外交」を優先すると表明してきた。そして、中国に対する関税を維持する一方で、パリ協定に復帰し、アフガンへの永続的介入を終わらせることは「中間層のための外交」の試金石だった。たしかに、アフガン国軍が蜘蛛の子を散らすように敗走し、政府が倒れ、カブールの国際空港が極度の混乱に陥るという展開は、アフガン情勢を読み誤ったバイデン政権に対するヨーロッパの信頼を揺るがした。とはいえ、アフガンからの混沌とした撤退が、21世紀のアメリカの世界的衰退を予兆しているわけではない。アメリカとヨーロッパは、アフガン戦争の混乱に満ちた終結を、安全保障への相互コミットメントを示す機会にすべきだろう。

アフガン難民はどこに行くのか?

2021年10月号

リンジー ・メイズランド  Writer@cfr.org

2021年8月、タリバンがカブールを含むアフガニスタンの多くの地域を掌握して以降、すでに数万人が国を後にしている。国連難民高等弁務官事務所によると、年末までに50万人が家を追われて難民化する恐れがある。その多くは、陸路で隣国のイランとパキスタンに向かっている。これまでのところイランとパキスタンは、これ以上の難民を受け入れることを嫌がり、国境線の一部を閉鎖し、文書をもたないアフガン難民は国外追放処分にすると表明している。今回の危機ですでにアフガンから国外へ逃れた8万人の一部はアフガン戦争中に米軍やその家族に協力した個人が利用できる特別移民ビザ(SIV)を保有するか、その対象とされる資格を満たしている。数千人のアフガン難民がアメリカへの入国を果たしたが、より多くのアフガン人が世界各地の米軍基地に一時的に収容されている状態にある。

アンゲラ・メルケルとその時代
―― その功罪を検証する

2021年6月号

コンスタンツェ・シュテルツェンミュラー  ブルッキングス研究所 シニアフェロー

2005年以降、ドイツの首相を務め、2021年に政界からの引退を表明しているアンゲラ・メルケルは、いまもドイツでもっとも人気のある政治家だ。しかし、政府の新型コロナウイルス対策への世論の不満が高まるにつれて、政権の支持率は急落している。忍び寄るメルケル時代の終焉は、後継候補が気にするだけにとどまらない重要な問いを浮上させている。それにしても彼女は権力をどのように形作ったのか、それは再現できるのか。メルケルはドイツ、近隣諸国、同盟国の環境をよりよいものに進化させられただろうか。そして未来に向けてドイツを備えさせているだろうか。現実には、連邦議会選挙を数カ月後に控えた今なお、メルケルの後継候補が誰になるかはっきりしない。・・・

追い込まれた民主主義
―― 台頭する権威主義、後退する民主国家

2021年3月号

ヤシャ・モンク  ジョンズ・ホプキンス大学准教授

冷戦終結以降、世界が目の当たりにしてきたのは、民主主義の後退と言うよりも、むしろ、中ロなどの権威主義国家の復活だった。アメリカとその民主的同盟諸国は、この歴史的瞬間の重要性を理解し、民主体制から民主国家が後退していくのを食い止める一方で、中国やロシアのような権威主義体制に対する統一戦線を維持していかなければならない。今後数十年は、民主主義と独裁体制間の延々と続く長期的競争によって特徴付けられることになる。実際、内に権威主義諸国を抱えるようになったEUとNATOは機能不全に陥り、価値を失っていくかもしれない。民主国家が大胆な行動を起こさない限り、さらに憂鬱な未来に直面する。

CFR in Brief
ブレグジットと英・EU貿易協力協定

2021年2月号

マティアス・マティス  ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院 准教授(国際政治経済)

EUは、イギリスが北アイルランドとアイルランドとの境界問題を実質的に回避することを受け入れ、北アイルランドには商品、サービス、資本、ヒトの自由な移動という単一市場の重要な「四つの自由」を維持することが認められた。イギリスもEUとの製品貿易について「ゼロ関税、ゼロクォータ」の条件を勝ち取った。そして、ブリュッセルの立場からすれば、今回の交渉をつうじて「EUからの離脱は容易ではない」という重要なメッセージを示すことができた。このプロセスは、離脱によって主権を取り戻せる一方で、単一市場のメンバーであり続ければ確保できたはずの経済的恩恵を失うというトレードオフを明確に示した。一方、イギリスは、困った状況をEUのせいにして非難することはできなくなった。それだけではない。アメリカとの貿易合意がスムーズに進むとは考えにくいし、しかも、イギリスは潜在的な国家分裂リスクも抱え込んだことになる。・・・

ビッグテックが民主主義を脅かす
―― 情報の独占と操作を阻止するには

2021年2月号

フランシス・フクヤマ スタンフォード大学 フリーマン・スポグリ国際研究所シニアフェロー
バラク・リッチマン デューク大学法科大学院教授 経営学教授
アシシュ・ゴエル スタンフォード大学教授(経営科学)

ビッグテックを抑え込むべきか。その経済的根拠は複雑だが、政治的にはそうすべき説得力に満ちた理由がある。強大な経済パワーを持っているだけでなく、政治的コミュニケーションの多くを管理する力をもっているからだ。つまり、ビッグテックが引き起こす真の危険は、市場を歪めることではなく、民主政治を脅かすことだ。すでにアメリカとヨーロッパの双方で、政府はビッグテックに対する独占禁止法違反の訴訟を開始しており、裁判は今後何年にもわたって続くだろう。だがこのアプローチは最善の方法とは必ずしも言えない。むしろ、この問題に対処できるのはミドルウェアだろう。現在、プラットフォームが提供するコンテンツは、人工知能プログラムによって生成された不透明なアルゴリズムによって決定されているが、ミドルウェアを使えば、ユーザーが管理を取り戻せるようになる。

ヨーロッパの地政学的覚醒
―― 危機を前に連帯を強めた欧州の自立

2020年10月号

マックス・バーグマン センター・フォー・アメリカン・プログレス シニアフェロー

パンデミックは、数十年にわたる経済的、政治的な眠りからヨーロッパ大陸を覚醒させ、わずか6カ月前には想像もつかなかった形でEU統合プロジェクトを再活性化したようだ。トランプ政権によって乱用されてきた大西洋同盟に甘んじたり、対外的リーダーシップを攻撃的に行使するようになった中国に期待したりするのではなく、ヨーロッパの指導者たちは「自分に目を向けなければならないこと」を理解し始めている。危機のなかで2兆ドル規模の「経済復興基金」を成立させたことも、この文脈で理解すべきだ。いまや「戦略的自主路線」は、欧州の指導者たちが議論すべきテーマとしてよりも、むしろ、早急に成立させるべき政策とみなされている。大きな問題を内に抱えつつも、今回の危機を経て、ヨーロッパがより強く、より統合されたグローバルプレーヤーになることはほぼ間違いない。

パンデミックとポピュリズム
―― 政治対立と反知性主義とポピュリストの再台頭

2020年9月号

ナディア・ ウルビナティ  コロンビア大学教授

ポピュリストの政治家は、ウイルスに関する科学的見解が不確実で可変的であることを根拠に、パンデミックそのものを「フェイクニュース」と呼んだ。世界のポピュリストたちは、一般にパンデミック対策への「リバタリアン的な反発」を示している。都市封鎖に移動の自由の立場から反対し、マスク着用やソーシャルディスタンスを保つことにも反発した。デマゴーグたちは、「絶対的な自由」を重視する戦略をとり、トランプも移動の自由や集会の自由に対する規制を緩和するように呼びかけた。社会(と経済)が全面的に再開すれば、われわれは深刻な失業と貧困の問題に直面する。つまり、ロックダウンに反対したポピュリストたちは、この段階でロックダウンを擁護した政府や多数派を攻撃するための勲章と棍棒を得ることになる。エスタブリッシュメント(の判断)に対する「忘れられた多くの人々(の不満と怒り)」を動員して、ポピュリズムはさらに力を得るかもしれない。

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