ロシアとウクライナの紛争リスク
―― キエフの親欧米路線とロシアの立場
2022年1月号

かつてはロシアとの対話に前向きな姿勢を示していたウクライナのゼレンスキー大統領も、いまや対ロ妥協路線を放棄し、欧米との協調を模索している。ウクライナとの国境線に部隊を動員しているモスクワはもはや外交の機会は失われたとみているのかもしれない。しかも、ワシントンが中国との競争に関心と資源をシフトさせているために、プーチンは「ウクライナはアメリカにとって周辺的な関心事にすぎない」と確信しているかもしれない。これまでウクライナのNATO加盟をレッドラインとみなしてきたロシアは、いまや欧米とウクライナの防衛協力の強化を看過できないとみなし始めている。モスクワが武力によって現在の均衡をリセットする環境が整いつつある。