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中国に関する論文

中国の経済強制策を抑止せよ
―― 集団的レジリアンスの形成を

2023年3月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

北京はこの十数年にわたって、「台湾と交流し、香港の民主化を支持した貿易相手国、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットにおける抑圧を批判した国や企業」に禁輸措置をとり、大衆の不買運動を焚きつけて報復してきた。北京が貿易パートナーに対して経済的な無理強いをする理由の一つは、「相手国が自国に報復措置をとることはない」と自信をもっているからだ。だが、単独では劣勢でも、オーストラリア、日本、韓国、アメリカがまとまれば、中国に対抗できる。この4カ国の連帯に北京の無理強いに遭ったことがある諸国を参加させれば、集団的レジリアンスはさらに強力になり、中国の高圧的行動、経済的無理強いを抑止できるようになる。

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

それぞれのウクライナ戦争
―― 大国、主要国、途上国

2023年3月号

シブシャンカール・メノン 元インド外務次官

世界の多くの地域では、2022年のもっとも重要な問題は、ウクライナ戦争とはほとんど関係がなかった。途上国の多くはコロナ禍の大混乱から立ち上がろうとしている局面にあり、債務危機、世界経済の成長減速、気候変動などのさまざまな難題に直面している。中国にとっても、ウクライナ戦争は大きな足かせとなった。戦争は世界経済、中国のエネルギーと食糧の輸入、そしてロシアとの事実上の同盟関係に影響を与え、世界における中国の影響力は制約された。一方、日独は新しい道を歩み始めている。世界の多くの地域にとって、ウクライナ戦争は、世界秩序を再定義するよりも一段とさまよわせ、国際的な緊急課題にどう対処するかについて、新たな疑問を浮上させている。そして、現在の大国間対立に代わる第3の道はまだ視野に入ってこない。

アジアの安定と米国の優位
―― 大国間政治と非同盟主義

2023年3月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 上級講師(国際関係論)

ワシントンは、1980年代以降、アジアにおけるアメリカの優位と地域の安定は共存しているだけでなく、そこには、因果関係があるとさえ考えるようになった、いまや、支配的優位を維持することにこだわり、主要なグローバルライバルである中国を抑え込み、弱体化させることを意図している。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含むアジアの多くの国は、米中のどちらにも与しない非同盟主義を模索している。アメリカは、自らがイメージする平和への道をアジアに強要できないことを理解しなければならない。支配的優位を確立するという野心を抑え、パワーポリティクスを展開する抽象的舞台としてではなく、そのままのアジアに対応していく必要がある。アメリカは地域の平和を支援することも、地域的優位を模索することもできる。だが、二兎を追うことはできない。・・・

2023年のトレンドを考える

2023年2月号

マンジャリ・C・ミラー CFRシニアフェロー(インド、パキスタン、南アジア担当)
J・アンドレス・ギャノン CFRシャントン核安全保障フェロー
イヌ・マナク CFRフェロー(貿易政策担当)
エベニーザー・オバダレ CFRシニアフェロー(アフリカ研究)
クリストファー・M・タトル CFRシニアフェロー、ディレクター(リニューイング・アメリカ・イニシアティブ)

グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

高まる社会不満と政治不信
―― ゼロコロナ政策の深刻な帰結

2023年2月号

リネッテ・H・オング トロント大学教授(政治学)

薬局の棚は空で、病院での診療は受けられず、火葬場は長蛇の列だ。国からの信頼できる情報もない。突然解除された規制に対する民衆の不満は高まっている。今や、中国におけるコロナウイルスの新規感染者数は1日あたり約100万人で、ウイルスは制御不能な状態にある。習近平が固執してきたゼロコロナ政策からの大転換によって、不穏な雰囲気と政府に対する反発はむしろ高まっている。共産党に対する市民の信頼も失墜しつつある。社会的不満の高まりは、やがて党内エリートの結束も弱めるかもしれない。この間違いが引き起こす政治コストがどのようなものになるか、今のところわからない。しかし、共産党が自ら作り出したこの危機を無傷で乗り切れるとは考えにくい。

中国の衰退が招き入れる危険
―― その意味あいと対策を考える

2023年2月号

ジョナサン・テッパーマン 前フォーリン・ポリシー誌編集長

中国は、アメリカのメディアや指導者たちが描写するような台頭する覇権国ではなく、いまや、よろめいて崖っぷちに立たされている。問題は、アメリカの政治家の多くが、依然として、米中間の争いを中国の台頭という視点で組み立てていること、しかも、中国が高まる危機に直面していることを認めつつも、それをアメリカにとって中立的か肯定的な展開とみていることだ。だが真実はその逆だ。よいニュースであるどころか、中国が弱体化して停滞し、崩壊へ向かえば、中国にとってだけでなく、世界にとっても、繁栄する中国以上に危険な存在になる。

現状維持を望む台湾市民
―― 統一はもちろん、独立も望まぬ理由

2023年2月号

ネイサン・F・バトー 中央研究院(台湾)政治学研究所副研究員

圧倒的多数の台湾人が、北京に統治されることにはほとんど関心をもっていない。正式な独立宣言を表明したいわけでもない。独立への支持は年々上昇してきたが、半分をゆうに超える人々が「現状の維持」を望んでいる。なぜ統一に人気がないかは明らかだ。中国と統一すれば、台湾は苦労して手に入れてきた政治的自由のほぼすべてを手放さなければならなくなる。台湾は独自の歴史、文化、アイデンティティ、そして民族的プライドをもっている。ほとんどの人にとって、台湾はすでに完全な主権国家であり、中途半端な状態で存在する自治の島ではない。既成事実をあえて正式に宣言して、波風を立てる必要はない。自らの理想と現状との違いは微々たるものであり、争う価値はないと判断している。

中露の脅威にどう対処するか
―― 場所と課題を選んだ闘いを

2023年1月号

リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター会長

中ロと敵対する世界で、アメリカはどのように行動すべきか。これにどう答えるかが、今後の米外交の中核課題となる。中ロと、あらゆる課題をめぐってあらゆる場所で競い合うのでは、失敗するのは避けられないし、そうする必要もない。これら2大国の課題に対処する外交政策では、地域や課題について優先順位を決め、困難なトレードオフを判断しなければならない。冷静に優先順位を設定し、優先すべき地域と課題を特定し、無視するべきこと、(問題を)緩和するにとどめるべきこと、関心と資源のごく一部だけを割り当てるべきことが何であるかを決める必要がある。もちろん、同盟関係を強化し、国力を強化すべきだが、ワシントンはどこで何のために戦うかを慎重に判断しなければならない。

変化したグローバルな潮流
―― 多極化時代の新冷戦を回避するには

2023年1月号

オラフ・ショルツ ドイツ連邦共和国首相

ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・

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