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中国に関する論文

グローバルサウスと米中競争
―― 途上国の立場

2022年9月号

マリア・レプニコバ ジョージア州立大学州立大学 准教授(政治学)

ワシントンがソフトパワー促進策の中核に民主主義の価値と理念を据えているのに対して、中国はより実利的側面に焦点を合わせ、文化とビジネスの魅力を統合しようとしている。一方、グローバルサウスの途上国では、アメリカと中国のソフトパワーは競合するのではなく、相互補完的とみなされていることが多い。要するに、世界の多くの人々は、米中がそれぞれのビジョンと価値によって、自分たちを誘惑しようとする状態に完全に満足している。ワシントンと北京はソフトパワー競争をゼロサムゲームだと思っているが、世界の多くの地域は、それをウィンウィンとみなしている。アメリカモデルと中国モデルのどちらがより魅力的かよりも、それぞれが何をオファーしてくれるかに関心をもっている。

次に何が起きるのか
―― ペロシ訪台と米中関係

2022年9月号

デービッド・サックス 外交問題評議会リサーチアソシエート

第4次台湾海峡危機を前にしているというには時期尚早だが、そこに向かいつつある。中国がこれまでにとった軍事的牽制策は、手始めにすぎず、今後数週間から数カ月の間に、中国は台湾に対する軍事的圧力をさらに高めてくると予想される。より多くの航空機を使った防空識別圏への侵入や中央線の越境がより頻繁に起きるかもしれない。また、台湾の領空や上空に軍用機を飛ばし、エスカレートさせることも考えられる。さらに台湾製品の輸入を禁止し、台湾企業の大陸での活動をより困難にしようとするかもしれない。ペロシ訪中の代償を台湾が支払う以上、アメリカは台湾の痛みを和らげるための努力をしなければならない。

米中にとっての台湾の軍事的価値
―― 台湾とフィリピン海そして同盟諸国

2022年8月号

ブレンダン・L・グリーン シンシナティ大学准教授(政治学) ケイトリン・タルマッジ ジョージタウン大学外交大学院 准教授(安全保障研究)

台湾は、日本、フィリピン、韓国を中国の威圧や攻撃から守る上で重要なフィリピン海へのゲートウェイとして、きわめて重要な軍事的価値をもっている。中国にとっても、台湾統一を求める大きな動機はナショナリズムよりも、その軍事的価値にある。実際、北京が台湾を攻略して、そこに軍事インフラを設営し、フィリピン海への影響力を高めれば、中国の軍事的立場は大きく強化され、アジアの同盟国を防衛する米軍の能力は制限される。将来的に北京が静音型の攻撃型原子力潜水艦や弾道ミサイル潜水艦の艦隊を編成し、台湾の基地に配備すれば、北東アジアのシーレーンを脅かし、核戦力も強化できる。ワシントンの対中政策に関するすべてのジレンマが集約される場所であるだけに、台湾は世界でもっとも困難で危険な問題の一つだ。だが困ったことに、そこにあるのは、災いをもたらしかねない悪い選択肢ばかりだ。

強大化する中国の核戦力
―― 変化するパワーバランスと抑止

2022年7月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ ハドソン研究所 シニアフェロー

既存の2大核保有国と肩を並べることで、中国は核の三極体制という、きわめて不安定な核システムへのパラダイムシフトを起こしつつある。冷戦期とは違って、核軍拡競争のリスクが高まり、国家が危機に際して核兵器を利用するインセンティブも大きくなる。三つの核大国が競合すれば、二極体制の安定性を高めていた特質の多くが不安定化し、信頼性も低下する。中国がロシア同様に核大国の仲間入りすることをアメリカは阻止できないが、その帰結を緩和するためにできることはある。先ずアメリカは核抑止力を近代化しなければならない。同時に、核のパワーバランスに関する考え方を刷新し、はるかに複雑な戦略環境において抑止力を維持し、核の平和を維持する方法を新たに検証する必要がある。・・・

太平洋の断層線
―― 高まる中国の影響力

2022年7月号

チャールズ・エデル 米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問

2022年4月、ソロモン諸島は「中国との安全保障協定を締結した」と発表し、5月後半には中国の王毅外相が同様の協定を取りつけようと太平洋の他の島嶼国を訪問した。しかも、ソロモン諸島との協定は「社会秩序を維持する」要請を受けた場合、中国は警察や軍を派遣できるとされている。こうした協定は中国軍の影響圏を拡大して、海上交通の要衝へのアクセスを与えることになる。こうして、太平洋諸島はグローバルな地政学的競争に引きずりこまれ、この地域の安全保障が損なわれる恐れがある。アメリカと同盟国は目を覚ますべきだ。北京がこれ以上、太平洋全域に軍事的プレゼンスを拡大するのを阻止するには、従来のアプローチを早急に見直す必要がある。・・・

紛争のエスカレーションリスク
―― 激化するロシアと欧米の戦い

2022年7月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ代表

ロシアの戦争目的が、もっぱらウクライナの「非ナチ化と非軍事化」だった段階はすでに終わっている。ワシントンと同盟諸国政府が、ウクライナの主権と領土の一体性を守るための支援に関与を限定してきた段階も同様だ。双方の指導者たちは、越えられないはずの一線を越えてしまっている。いずれ、両国は、相手の重要インフラに破壊的なサイバー攻撃をかけたい衝動に駆られるだろう。現状ではその可能性は低いが、核兵器の使用やNATO軍の投入さえも、もはや想定外とはみなせない。エスカレーションを阻むガードレールがなければ、この新冷戦のロジックがどこに向かうか、分からない状況にある。

台湾紛争と核戦争リスク
―― 米中衝突のエスカレーションシナリオ

2022年7月号

ステイシー・L・ペティジョン 新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー(防衛プログラム)
ベッカ・ワッサー 新アメリカ安全保障センター  フェロー(防衛プログラム)

北京は「台湾防衛のコストは極めて高く、たとえ北京が台湾に侵攻しても対抗措置をとることは割に合わない」とアメリカおよびその同盟国を納得させたいと考えるはずだ。そのための手段はいくつかあるが、北京にとって、核兵器を持ち出すことがアメリカをこの紛争に介入させないもっとも効果的なやり方だろう。実際、アメリカと同盟国の戦略家は、「台湾をめぐる紛争では、中国は通常戦力と核戦力の全選択肢を検討に入れている」という事実を認識しておかなければならない。アメリカが抑止力を強化して「台湾侵攻に成功できるかもしれないと中国が考えないようにするために」残された時間はなくなりつつある。最大のリスクは、ワシントンとその友好国が、行動を起こすチャンスをあえて見送ってしまうことだ。1―2年後には、もはや手遅れになっているだろう。

AIをいかに戦力に取り込むか
―― 未来の戦力をどう評価する

2022年6月号

マイケル・C・ホロウィッツ ペンシルベニア大学教授
ローレン・カーン 外交問題評議会(CFR)リサーチフェロー
ローラ・レズニック・サモティン コロンビア大学 ポストドクトラル・リサーチ・スカラー

AIは、いまや防衛技術における進化のすべての中枢に位置し、戦力の配備や戦闘方法にまで影響を与えている。ロシアとウクライナはともにアルゴリズムを使ってソーシャルメディアと戦場から入ってくる膨大なデータを分析し、自国の攻撃にこれらの情報を生かしている。一方、ペンタゴンはAIと自律型兵器システムを含む新技術の重要性を説きつつも、軍事領域での応用ペースは緩慢だ。こうしたアメリカのAI軍事技術開発の遅れは、もっともパワフルな地政学的ライバルである中国の動きとは対照的だ。AI技術を軍事戦略、計画立案、システムに統合することに向けて中国はより積極的な動きをみせ、台湾をめぐる未来の紛争の戦闘スキームにもAIを組み込んでいる。アメリカは現状に満足するのではなく、その軍事力を未来に向けて適応させ、再編していく必要がある。・・・

ロシアとの連帯という幻想
―― 中国の間違った選択

2022年6月号

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史・国際関係)

ウクライナでの戦争を欧米と中ロという二つのブロックを対立させる新冷戦の最初の一幕とみなす専門家もいる。かつての冷戦のように、今回も経済体制の違いだけでなく、イデオロギー的な違いもあるとみなし、新冷戦は「民主主義と権威主義、市場経済と国家主導型経済」の闘いと規定している。だが(かつての共産主義ブロックとは違って)現在の中ロは政治体制も経済制度も大きく違っており、一枚岩とはみなせない。豊かなエネルギーや鉱物資源がどれほど魅力的でも、近隣諸国との永遠の争いに明け暮れるモスクワの弱体政権との連帯が、中国の利益になるとは思えない。

中ロの行動をいかに抑えるか
―― 国際システムとアウトサイダー

2022年6月号

ステーシー・E・ゴダード  ウェルズリー大学教授(政治学) オルブライト研究所所長

中ロは連携しているが、まったく異なるタイプのリビジョニストであることを認識する必要がある。中国の攻勢はそれほど暴力的ではないが、大きな影響力をもっている。モスクワが破壊と暴力の戦略に依存してきたのに対し、北京はネットワークの拡大と国際秩序における地位を通じて影響力を行使してきた。冷戦後のアメリカは、現状に挑戦する手段と動機を兼ね備えたリビジョニスト国家を秩序に取り込む戦略をとってきたが、いまや新たなアプローチが必要だろう。アメリカは、国際秩序をライバルの基本的キャラクターを変革する枠組みではなく、こちらの意向を伝え、紛争を解決し、明確なレッドラインを設定するフォーラムとみなすべきだ。中国やロシアを変えるという高邁な計画でなくても、制度への取り込みを放棄しなくても、このやり方でリビジョニストを抑制できる。

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