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アジアに関する論文

戦争発言の真意
―― 習近平発言をどう受け止めるべきか

2023年5月号

ジョン・ポンフレット ワシントンポスト紙 前北京支局長
マット・ポッティンジャー 元米大統領副補佐官

2022年12月以降、中国政府は、北京、福建、湖北、湖南を含む各地で有事動員センターを相次いで開設している。国営メディアによると、台湾と海峡を隔てた福建省の各都市では、防空壕と少なくとも一つの「戦時救急病院」の建設や整備が始められている。しかも、習近平は、中華民族の偉大なる復興の「本質」は「祖国の統一」だと明言している。台湾の編入と「中国民族の偉大なる復興」の相関性を示唆しつつも、彼が、かくも明確にその関連を示したことはなかった。欧米は習近平の発言を真剣に受け止めるべきだろう。彼は、台湾を統合するためなら、武力行使も辞さないつもりだ。

モスクワの大いなる幻想
―― ウクライナ戦争とプーチン体制の本質

2023年4月号

フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 シニアフェロー
アンジェラ・ステント ジョージタウン大学名誉教授

ロシアは国際的に孤立してはいない。グローバルサウスでは、この戦争についてロシアが語るストーリーが支持を集め、多くの場合、欧米よりも、プーチンのほうが大きな影響力をもっている。しかし、今回の戦争で、ロシア側の死傷者は20万人に迫っている。戦争に反対か、徴兵を避けるためにロシアを出国した人もこの1年で推定100万人に達するとされる。それでも、プーチンが戦争を決意したら、その行動を抑止できる国やアクターはほとんど存在しない。ウクライナとウクライナを支持する国々は、ロシアがこの戦争に勝利すれば、プーチンの膨張主義がウクライナ国境を越えて拡大することを理解し、憂慮している。そしてプーチンは、いまもこの戦争に勝利できると信じている。・・・

欧米の対ロシア制裁を検証する

2023年4月号

ノア・バーマン アシスタントライター@www.cfr.org
アンシュ・シリプラプ ライター@www.cfr.org

欧米の対ロシア制裁は、金融からエネルギー、軍事技術までの広範な経済部門をターゲットにしている。しかし、中国やインドはロシアの石油や天然ガスの輸入を逆に増やし、ロシアの近隣諸国の一部は、中継貿易国の役割を担い、欧米の製品を輸入してはロシアに再輸出している。一方で、石油、肥料、小麦、貴金属など多くの重要なコモディティの輸出国として極めて重要なロシアは、制裁を課すのが難しいターゲットだと指摘するアナリストもいる。実際、国際通貨基金(IMF)は最近、ロシアの国内総生産(GDP)は2023年に0.3%成長するとの予測を示した。・・・

インド太平洋経済枠組みの試金石
―― いかに同盟国の同意をとりつけるか

2023年3月号

メアリー・E・ラブリー ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

アメリカが自由貿易合意への抵抗感をもっているために、インド太平洋経済枠組み(IPEF)は一般的な貿易協定とは違って、参加国に米市場への特恵的アクセスをオファーしていない。もちろん、米市場の開放という具体的な見返りがない限り、交渉参加国が、IPEFが求める労働政策や環境政策の見直しへの国内の反発を克服するのは難しくなる。「中国抜き」という条件を満たした国に米市場への特恵的アクセスを認めれば、生産コストを上昇させるような新たな義務を負うとしても、経済的には合理的かもしれない。だが、そうしない限り、ワシントンは急成長するインド太平洋地域の発展に影響を与えるチャンスを再び潰してしまう恐れがある。・・・

台湾の安全と平和を守るには
―― 最善の対策は軍事領域にはない

2023年3月号

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所  フリーマンチェア(中国研究)
ライアン・ハス ブルッキングス研究所 シニアフェロー

多くのアナリストや政策立案者が提言している軍事領域の決定で、アメリカの全般的台湾アプローチを規定してはならない。今後5年間に配備可能な米軍の追加戦力では、台湾海峡の軍事バランスを根本的に変えることはできない。ワシントンの政策の最終目標は台湾の平和と安定の維持であり、平和を維持するには、中国の不安の原因を理解し、習近平を追い込まないようにして、統一が遠い将来の課題であると認識させる必要がある。ときには、難題の解決をあえて目指さず、先送りすることが最善の政策になる。・・・

中国の経済強制策を抑止せよ
―― 集団的レジリアンスの形成を

2023年3月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

北京はこの十数年にわたって、「台湾と交流し、香港の民主化を支持した貿易相手国、新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットにおける抑圧を批判した国や企業」に禁輸措置をとり、大衆の不買運動を焚きつけて報復してきた。北京が貿易パートナーに対して経済的な無理強いをする理由の一つは、「相手国が自国に報復措置をとることはない」と自信をもっているからだ。だが、単独では劣勢でも、オーストラリア、日本、韓国、アメリカがまとまれば、中国に対抗できる。この4カ国の連帯に北京の無理強いに遭ったことがある諸国を参加させれば、集団的レジリアンスはさらに強力になり、中国の高圧的行動、経済的無理強いを抑止できるようになる。

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

それぞれのウクライナ戦争
―― 大国、主要国、途上国

2023年3月号

シブシャンカール・メノン 元インド外務次官

世界の多くの地域では、2022年のもっとも重要な問題は、ウクライナ戦争とはほとんど関係がなかった。途上国の多くはコロナ禍の大混乱から立ち上がろうとしている局面にあり、債務危機、世界経済の成長減速、気候変動などのさまざまな難題に直面している。中国にとっても、ウクライナ戦争は大きな足かせとなった。戦争は世界経済、中国のエネルギーと食糧の輸入、そしてロシアとの事実上の同盟関係に影響を与え、世界における中国の影響力は制約された。一方、日独は新しい道を歩み始めている。世界の多くの地域にとって、ウクライナ戦争は、世界秩序を再定義するよりも一段とさまよわせ、国際的な緊急課題にどう対処するかについて、新たな疑問を浮上させている。そして、現在の大国間対立に代わる第3の道はまだ視野に入ってこない。

アジアの安定と米国の優位
―― 大国間政治と非同盟主義

2023年3月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 上級講師(国際関係論)

ワシントンは、1980年代以降、アジアにおけるアメリカの優位と地域の安定は共存しているだけでなく、そこには、因果関係があるとさえ考えるようになった、いまや、支配的優位を維持することにこだわり、主要なグローバルライバルである中国を抑え込み、弱体化させることを意図している。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含むアジアの多くの国は、米中のどちらにも与しない非同盟主義を模索している。アメリカは、自らがイメージする平和への道をアジアに強要できないことを理解しなければならない。支配的優位を確立するという野心を抑え、パワーポリティクスを展開する抽象的舞台としてではなく、そのままのアジアに対応していく必要がある。アメリカは地域の平和を支援することも、地域的優位を模索することもできる。だが、二兎を追うことはできない。・・・

北朝鮮の脅威に向き合うには
―― 米韓と日本による抑止力強化を

2023年3月号

スー・ミ・テリー ウィルソンセンター アジアプログラム ディレクター

平壌の核開発はより危険な新段階に入りつつある。核弾頭の備蓄を急速に増やすと同時に、金正恩は、核使用のハードルを低くしている。核戦力を拡大し、核の先制使用ドクトリンを示し、アメリカとの非核化の話し合いには応じない姿勢をすでに明らかにしている。実際、平壌の判断ミスが戦争につながるリスクは高まっている。連携のとれた力強い対策をとるには、米韓同盟を深化・拡大するとともに、この地域のアメリカのもう一つの主要な同盟国である日本と韓国の協力を強化しなければならない。そのためには、日韓が国内における政治的な反発を克服する一方で、ワシントンが北朝鮮の動向にもっと大きな関心を寄せる必要がある。・・・

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