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アジアに関する論文

アメリカ後のアジア
―― 米戦略の破綻と中国の優位

2026年4月号

ザック・クーパー アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート シニアフェロー

アメリカがアジアへの経済的・政治的関与を削減していくにつれて、中国が、同盟国やパートナーを切り崩していくリスクにわれわれは直面している。すでに、こうした諸国の多くは、これまでの同盟や連携を再考し、北京の方がより魅力的なパートナーかもしれず、中国が地域の覇権国になるのは避けられないとの結論に近づいている。このために、第1列島線上の少数の国の防衛を重視するアメリカの戦略さえ、もはや維持できないかもしれない。アジア重視路線から離れ、後退を受け入れることが、アメリカのアジアにおける利益を守る最善の方法ではない。だがそうなるのは、避けられないだろう。

アメリカは信頼できるのか
―― 思い悩むアジアのパートナー

2026年3月号

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会(CFR) シニアフェロー(東南アジア・南アジア担当)

西半球と米本土防衛を重視するトランプ政権は、「アメリカの利益に対する脅威としての中国」という認識を下方修正している。一方、これまでとは違って、 新しい米国防戦略では台湾は言及されていない。国家安全保障戦略でも、アメリカは「台湾海峡における現状の一方的変更」に反対するのではなく、単に「支持しない」とされている。日本のような、アジアにおけるもっとも緊密なパートナーとの防衛関係をめぐっても、アメリカの信頼性は疑問視されている。 いまや全てのアジア諸国がアメリカとのパートナーシップが信頼できるかどうかを再検証している。

ミャンマーは中国の勢力圏に
―― 不安定な均衡はいかに形成されたか

2026年3月号

アマラ・ティハ スティムソン・センター 中国プログラム 非常勤フェロー

ミャンマーにおける核心的な問題は、中央の軍事政権あるいは亡命政権のどちらが国家統一を回復できるかではなく、北京が永続的な国家分断の上に築いたシステムを維持できるかどうかにある。北京は軍事政権だけでなく、各地の有力な武装勢力とも直接的な関係を築いている。あらゆる勢力と友好関係を築くこの戦略の目的は、中国にとって重要な物質的利益、つまり、ミャンマーの重要鉱物資源へのアクセス、そしてインド洋への陸上輸送ルートを確保することにある。

二つの東南アジア
―― 大陸国家と海洋国家の分裂

2025年11月号

スザンナ・パットン ローウィー研究所 東南アジアプログラム・ディレクター

東南アジアには二つの国家集団が存在する。カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムなどの中国寄りの大陸国家、そして、米中間のバランスをとるインドネシア、マレーシア、シンガポールなどの海洋国家の集団だ。東南アジアの海洋国家は大陸国家よりも規模が大きく、世界貿易で重要な役割を果たし、より多くの投資や開発資金が外国から流入している。東南アジア諸国を構成するこれら二つのネットワーク間の格差は今後数十年で拡大し、大陸部東南アジアは中国の事実上の勢力圏になるだろう。現実には、この地域での米中バランスは、今後、ベトナムとタイとの関係に左右されることになると考えられる。

東南アジアの選択
―― なぜ中国に傾斜しているか

2025年8月号

ユエンフォン・コン シンガポール国立大学 公共政策大学院 教授
ジョセフ・チンヨン・リウ 南洋理工大学 教授

「米中のどちらかを選んでいる」という自覚はないのかもしれないが、東南アジア諸国の多くが、アメリカから離れて、中国へ傾斜しているのはいまや明らかだろう。しかし、そのパワーを北京がどのように使うかをめぐって、地域諸国が大きな懸念をもっているのも事実だ。実際、この地域のエリートを対象とする調査で「誰を信頼しているか」という問いで、第1位に選ばれたのは日本で、中国は4位だった。流れは中国にあるとしても、北京が地域諸国の懸念を和らげ、信頼を勝ちとるには、まだ、やるべきことが多く残されている。だが、2期目のトランプ政権の政策が、北京がこの課題を克服するのを容易にするのかもしれない。

インドの大国幻想
―― 多極世界のポテンシャルと限界

2025年8月号

アシュリー・J・テリス カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

「多極世界では、特定の一国が自国の意思を他国に強要できないため、世界の平和には多極化が必要になる」。インドは、この視点から、アメリカに近づきつつも、戦略的自立を維持し、公的な同盟関係を避け、イランやロシアといった欧米の敵対国との関係を維持している。多様な連携を通じて、インドは近い将来に中国、アメリカ、欧州と肩を並べる存在になり、その結果、単独で中国への対抗バランスを形成できるようになるとニューデリーは考えている。だが、それは幻想にすぎない。

米同盟諸国は自立と連帯を
―― トランプに屈してはならない

2025年7月号

マルコム・ターンブル 元オーストラリア首相

「原則を重視する寛大なアメリカ」を今も信じている人々にとって、いまは認知的不協和を引き起こすトラウマ的な状況にある。トランプ政権が作り出す現実は、はっきりしている。内外で法を顧みない行動をとり、各国へのいじめを繰り返し、協定や条約を破棄し、同盟国を威嚇し、独裁者に寄り添っている。米有権者は、この行動を最終的に(選挙で)判断することになる。だが、アメリカの同盟国はすでに心を決めているはずだ。トランプの威圧に屈する必要はない。同盟国が協力すれば、大きな影響力を行使できるし、ワシントンが作り出す大混乱に対抗できる。エマニュエル・マクロンが言うように、米同盟諸国は「いじめられない国」の連合を構築すべきだろう。

トランプと金正恩
―― 同盟国は悪辣な米朝取引に備えよ

2025年7月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

国際社会は北朝鮮の兵器開発・増強路線を止めさせることができず、いまや金正恩はこれまで以上に多くの交渉カードを持っている。当然、ワシントンのこれまでの北朝交渉モデルは選択肢にならない。条件を受け入れさせるには、大きな譲歩を示す必要がある。それは、北朝鮮を核保有国と認め、朝鮮半島から米軍を撤退させることを含む、同盟国に衝撃を与える内容になるかもしれない。ノーベル平和賞受賞への執着、ウクライナでの戦闘を終わらせたいという願望、そして金正恩に独特の友達意識をもつトランプは、北朝鮮の核保有を認め、同盟国を売り渡し、プーチンをなだめるような取引を、すべて「アメリカ・ファースト」の名の下に行うのかもしれない。

ミャンマーを操る中国の二重戦略
―― 地域覇権を狙う北京の分断戦略

2025年6月号

イェ・ミョー・ヘイン 東南アジア平和研究所 上級フェロー

ミャンマーの安定回復と中国との友好関係の促進を強調しつつも、北京は、崩壊寸前の軍事政権を支えつつ、少数民族武装勢力を自国の影響下に取り込む一方で、欧米との結びつきが強いとみている民主派勢力を排除している。現実には、中国はミャンマーのカオスのなかにチャンスを見いだしている。崩れかけた軍事政権を支えることで影響力を強化し、武装抵抗勢力の連帯を切り崩して、その一部への影響力を拡大して欧米の影響力を抑え込んでいる。軍事政権による統治が続き、国内が分断されたままであれば、中国にとって、ミャンマーをより管理しやすい状態に保てるからだ。実際、ミャンマーを弱体化した状態にとどめることが、中国が絶対的な地域覇権を確立する前提条件なのだ。

トランプの強硬路線とアジア
―― アジアを強制するか、見捨てるか

2025年6月号

リン・クオック ブルッキングス研究所フェロー

アジア諸国が「中国かアメリカか」の二者択一を迫られれば、どう対応するだろうか。中国が常に利益を得るとは限らないが、地理的に近く、この地域と広範な経済的つながりをもち、経済的関与を戦略的優位に転化させるスキルをもつ中国は、もっとも利益を確保しやすい環境にある。アジアに選択を迫っても、その答えはワシントンの気に入るものにはならないかもしれない。一方でトランプ政権が、選択を迫るのではなく、同盟国やパートナーを見捨てることで、習近平と世界を勢力圏に切り分ける「グランド・バーゲン」をまとめようとする恐れもある。ワシントンが今後も圧力と無視という路線を組み合わせれば、北京を警戒する政府を中国の懐に送り込んでしまう危険がある。

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