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テーマに関する論文

同盟諸国のリスクヘッジ策
―― トランプリスクと同盟諸国の対応

2018年3月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ナショナリスト的外交政策を展開しようと、トランプ政権が、戦後アメリカが構築してきたシステムに背を向けたために、リベラルな国際秩序はきしみ音をたてている。予想された通り、新政権の路線を前に同盟国やパートナー国はリスクヘッジ策をとっている。現状がアメリカ外交の一時的な逸脱であることを願いつつも、同盟諸国はすでに事態の変化に対応できる計画をまとめつつあるし、アジア諸国のなかには、中国にすり寄ってバランスをとろうとする国もある。経済、軍事領域で各国は自立性を高め、貿易政策や温暖化対策をめぐっても、アメリカ抜きで対策を進めつつある。トランプの大統領就任からたった1年でアメリカのリーダーシップへの国際社会の信頼は劇的に低下している。

ポストアメリカの世界経済
―― リーダーなき秩序の混乱は何を引き起こすか

2018年3月号

アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所 所長

ドナルド・トランプは、アメリカが築き上げたグローバルな経済秩序に背を向け、経済と国家安全保障の垣根を取り払い、国際的ルールの順守と履行ではなく、二国間で相手を締め付ける路線への明確なコミットメントを示している。世界貿易機関(WTO)の権威を貶め、いまや、主要同盟諸国でさえ、アメリカ抜きの自由貿易合意や投資協定を模索している。すでに各国は貿易やサプライチェーンの流れ、ビジネス関係を変化させつつある。経済政策の政治化が進み、経済領域の対立が軍事対立にエスカレートする危険も高まっている。アメリカが経済秩序から今後も遠ざかったままであれば、世界経済の成長は鈍化し、その先行きは不透明化する。その結果生じる混乱によって、世界の人々の経済的繁栄は、これまでと比べ、政治略奪や紛争に翻弄されることになるだろう。

ロシア封じ込め政策を提言する
―― もはや攻撃を看過すべきではない

2018年3月号

ロバート・D・ブラックウィル(米外交問題評議会シニアフェロー)
フィリップ・H・ゴードン(米外交問題評議会シニアフェロー)

ロシアが地域的にも世界的にもより大きな役割を果たすには、アメリカのパワーを弱めなければならないとプーチンは判断しているようだ。アメリカ社会を分断させ、すでに存在する亀裂をさらに大きくしようと試み、国家としての一体感と統合そのものを攻撃のターゲットにしている。すでに米政府の最新の国家安全保障戦略も、ロシアは「情報ツールを使って民主主義国家の正統性を傷つけようとしており、アメリカのパワー、影響力、そして国益に挑戦している」と結論づけている。問題は、ロシアの攻撃に対するアメリカのこれまでの対応がひどく不適切なことだ。ワシントンは、モスクワに真のダメージを強いる措置を講じる一方で、未来の攻撃に備えて防衛を強化し、モスクワの路線にもっとも脅かされるヨーロッパ同盟国への軍事的コミットメントを強化しなければならない。

トランプを待ち受ける嵐
―― ドナルド・トランプの本当のコスト

2018年3月号

エリオット・コーエン ジョンズ・ホプキンス大学教授

トランプは就任1年目に偉大なことを成し遂げたと考え、「評論家たちは悪意に満ちているし、間違っていたことが立証された」と感じているようだ。実際には、アメリカの政府機関の志気を大きく低下させ、(就任後に)彼がもっと成熟した政治家になることを期待していた内外のすべての人々を失望させた。任命した高官の多くを疲弊させ、しかも、バックアップ体制を準備していない。最悪なのは「自分は何をしているかを分かっている」と誤認していることだ。外交が嵐に遭遇しなかったのも、本人の成長ではなく、側近たちの抵抗によるものだ。「自分が天才だからだ」と理由づける多くのことは、単に幸運に恵まれた結果にすぎない。早晩、彼の運も使い果たされる。その時がやってくれば、トランプ大統領が強いた本当のコストがはっきりしてくる。

中国が支配するアジアを受け入れるのか
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

2018年3月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

資本主義と社会保障のバランスが崩れたことへの政治的対応が放置され、格差が拡大した。こうして欧米でポピュリズムが台頭し、アメリカもヨーロッパも政治的に分断され、戦後のリベラルな国際秩序への信頼も大きく損なわれている。一方で、ソーシャルネットワーク、グローバル化した金融システムなど、ネットワーク化された国際システムを利用して、ロシアは民主的システムへの直接攻撃を試み、中国は対外的経済エンゲージメントを強化する一方で、外からの影響を国境線で遮断している。しかも、資本主義システムにおける権威主義国家から流れ込む資金の影響力が大きくなっている。こうして市場経済民主主義の魅力は薄れ、一方では、人工知能が未知の変化を社会と経済に与え始めている。北朝鮮の核武装化による差し迫った軍事的脅威も存在する。「変化した時代」をどのように捉え、「新しい現実」にどのように向き合うべきか。フォーリン・アフェアーズで見通す2018年の世界とは。

女性を経済活動に参加させよ
―― 女性が経済成長を支える

2018年2月号

レイチェル・ボーゲルシュタイン 米外交問題評議会シニアフェロー

女性の権利向上を目指す活動家たちは、長年にわたって、男女平等を道徳的な問題として訴えてきた。しかし現在のグローバル経済において、女性の経済参加を妨げる障壁を取り除くことは、経済戦略からみても合理性がある。実際、女性の労働力への参加と経済成長の間に相関関係があると指摘する研究の数は増えている。2013年に経済協力開発機構(OECD)は、少なくとも先進諸国で労働力人口上の男女間バランスが形成されれば、国内総生産(GDP)は12%上昇するとの予測を示した。しかし、世界銀行によると、世界155カ国で女性の経済活動は依然として何らかの形で制限されている。例えば、財産権の制限、就業への同意を配偶者から得る義務、契約や融資契約の締結禁止などだ。この現状を変えていくことが、社会と経済を変える大きなきっかけとなる。

ポーランドにおける急進右派勢力の台頭
―― 主流派イデオロギーとなった排外主義思想

2018年2月号

ボルハ・チャーニッシュ プリンストン大学フェロー

ポーランドではカトリックのキリスト教根本主義と結びつく形で急進右派が台頭し、排外主義感情が高まり、超国家主義やファシズムへの流れが生じている。「経済的な不満と難民の流入」というヨーロッパにおける急進右派の復活を促している全般的要素が作用しているのは事実としても、それだけではこの現象を説明できない。実際には、ポーランドの排外主義とキリスト教根本主義には、奥深い歴史的ルーツがある。「カトリック教徒のみが良きポーランド人だ」というこの国の排外主義的思想は戦間期に遡ることができる。宗教保守主義とポーランドのナショナリズムが融合し、これを、極右の政治運動が利用している。しかも、こうした右派的信条をいまや政権党となった「法と正義」が取り込んでいる。・・・

北朝鮮危機に外交で対処するには
―― 非核化は棚上げし、核武装国家の脅威削減を

2018年2月号

マイケル・フックス 前米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)

北朝鮮は、対米抑止に必要な態勢を整えたと確信するまで、交渉には関心を示さないかもしれない。しかし、平壌がミサイルと核実験を停止することに応じ、ワシントンが韓国との合同軍事演習を停止することを受け入れれば、双方が交渉テーブルに着く道も空けてくる。北朝鮮が報復攻撃を試み、大規模な犠牲者が出ると考えられる以上、アメリカの先制攻撃を前提とする受け入れ可能な軍事オプションは存在しないし、(外交交渉を通じて)北朝鮮が核兵器を近い将来に手放すこともあり得ない。それでも、平和を維持するには外交を機能させる必要がある。少なくとも現状では、非核化は(交渉を実現するためにも)棚上げにせざるを得ない。むしろ、交渉を通じて、核武装した北朝鮮が突きつける脅威を低下させることを短期的目的に据えるべきだ。・・・

最低賃金の真実
―― 雇用破壊効果も格差是正効果も小さい

2018年2月号

アラン・マニング ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 経済学教授

かつて最低賃金の導入に批判的だった国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)も、いまやそれが適正なレベルの引き上げなら、最低賃金をうまく考案された労働政策の一部として位置づけるべきだと提言している。だが妥当なレベルをどのように決められるだろうか。穏当なレベルの引き上げなら、最低賃金レベルの就労者の所得は増える。だが、過度に最低賃金を引き上げれば、雇用は少なくなっていく。仮にシングルマザーがまともな生活を送るには20ドルの時給が必要だとされ、それが実現しても、かなりの確率で失業率は上昇する。さらに、最低賃金を引き上げても、その効果は平均的労働者に近づいていくにつれてほとんどなくなっていく。最低賃金の引き上げでは、格差を是正し、世界で政治を覆している経済の流れを覆すことにはならない。

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