インド変異株の悪夢
―― 変異株と政治災害が引き起こしたインドの悲劇
2021年6月号

世界における新規コロナ感染の三つに一つがいまやインドで起きている。だが、こうなる必然性はなかった。狼狽、間違い、奢りを通じて黙示録的世界を招き入れたのはモディ政権に他ならない。「国内のコロナを抑え込み、いまや世界のパンデミックを終わらせるのを助ける立場にある」と対外的に表明した彼の強気が裏目に出た。人々はマスクを外し、ソーシャルディスタンスのガイドラインを無視し始めた。保健担当大臣が偽医療を公的に紹介しただけでなく、ヒンドゥー教の大規模な宗教的祝祭(クンブメーラ)のために(ウッタラカンド州にある聖地ハリドワールへの)巡礼を認めたことでも政府は感染を拡大させてしまった。しかも、二つの変異株の特徴を有するB・1・617変異株が定着しつつあることを認識しつつも、この新しい敵を理解しようと政府が力を入れることはなかった。・・・